戦前に乗っ取られていた〝電力網〟
――関東大震災の火事場泥棒資本主義
▼謎の日本地図
ワシントンの国立公文書館に、戦前にアメリカで作られた、ある日本地図が保管されている。1910年~1929年の日本外交問題に関する国務省資料の一部である。この地図は、東京・大阪・名古屋などを中心に同心円が描かれている。まるで放射能汚染の避難区域のようにも見えるのだが、当時はもちろん原子力は存在しない。だが、原発と無関係な地図ではない。
この地図に描かれた同心円(下記の図)は、日本の主要都市の〝電力網〟をあらわしている。言わば、電力会社の縄張りである。アメリカの企業が〝日本の電力網〟を記録して国務省に報告した資料なのだが、なぜこんなものが作られたのかという理由はあとで述べる。とにかく、まるで日本を原発列島にする青写真のようなものが戦前に作られていたのである。
この資料が示す1910年~1929年というのは、元号で言えば、明治43年から昭和4年までということになる。ここで私たちは、ひとつの錯覚に気づく。明治から昭和までというと、それなりに年月が経っているように思えるが、実際にはたった19年しか経っていない。その間に、伊藤博文の暗殺、韓国併合、第1次世界大戦、大正バブル景気、大正デモクラシー、米騒動、関東大震災、世界大恐慌までの出来事が、すべて入っている。