美しき日本のシンガポール化
――華僑の国という未来ヴィジョン
日本のシンガポール化というのは、もちろんいまに始まった話ではなく、1990年代から言われていたことである。記憶している人も多いと思うが、石原慎太郎が東京都知事になった1999年に、都の財政再建策としてお台場カジノ構想をぶちあげた。当時はピンと来なかった人も多いかもしれないが、この人はそれなりに時代を先取って発言する性癖があり、言い換えれば表に出ていない国策の一端をバラすのが得意だった。
北方領土はユダヤ人を入れて東洋のイスラエルにすればいい、と受け取られるような発言もかつてあったが、多くの日本人にはピンと来ない発言をして、案の定マスコミはあまり話題にしない。一種のアドバルーン発言なのだが、良くも悪くもこうしたことを平然とできる、あるいは許された政治家というのは、おそらく石原だけだった。これは別に誉めているのではなくて、事実そうだったというだけである。
その意味での石原の後継が橋下徹であることは見当がつくと思うが、彼には石原ほどの政治的寿命は与えられていないらしい。