●ナマ怪談の巻&●怪談の闇を見るの巻

[有名事故の知られざる話]

 昭和50年ぐらいだったか、東京の下町のある場所に無人の屋敷があって、長いこと幽霊屋敷と言われていた。そこはもともと三河島事故で亡くなった人の家だった。持ち主がいなくなったまま放置されていたのを、金町あたりの古い人なら知っていると思う。

 三河島事故が起きたのは、昭和37年のことだが、その記憶は10数年たってもまだ十分に生きていた。線路上を歩く集団亡霊の目撃談は、昭和50年頃の最も有名な怪談のひとつだった。昭和38年の鶴見事故も悲惨だったが、幽霊の話が突出したのがなぜ三河島事故だったかというと、現場が小塚原刑場や下山事件の現場の近くだったことがある。また、死亡者の1人の身元が結局わからなかったりして、何かと話のタネが尽きなかったのだ。

 それでひとつ思い出したことがある。たぶんこの話の真相を知っている人は、今後も黙ったままだろう。一般の人はまったく知らないことなので、ひょっとしたら永久に知られないままかもしれない。だから、ここで話してみようと思う。