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  • 病院(十六回戦)と父に会う

    2013-09-03 00:03
    日曜日、電話がかかってきた。父からだった。
    「明日から仕事で東京へ行く。時間があったら夜にでも会わないか」
     私は家族を蔑ろにできない上に会えば必ずお小遣いをくれる存在を無視できるほど人間ができていないので、私はそれに対しイエスという旨の返答をした。駅前で幸福実現党の支持者らしい中年女性が「私たちの生活なんですよ。私たちの生活が大切なんですよ。だから公務員の給料は減らして、その分減税するべきなんですよ」と行っているのを聞いた直後だった。ちなみに父は地方公務員である。
     その翌日、月曜日。午後から病院へ行った。3時に病院について、診察室から名前が呼ばれたのは5時半だった。小路幸也「キサトア」を読み始めてほとんど読み終わる頃になって名前を呼ばれた。
     私の担当医はニュースをチェックすることを重要視しているらしいので、私はブラック企業大賞がワタミに授与されましたね、みたいな感じのことを言った。
    「ブラック企業っていう言い方は黒人さんに失礼だと思うんですけどね。言い方を変えるべきじゃないですかね。搾取企業とかそんな感じで」
     じゃあキュアブラックは黒人じゃなきゃならんのか。ポケモンブラックの主人公は黒人じゃなきゃいけなかったのか。でもきっとこの仕事熱心でネット界隈に無理かいな私の担当医はプリキュアもポケモンもほとんど知らないだろうからそう言うのはやめておくことにした。言っても「?」みたいなリアクションしか帰ってこないだろうし。
     診察を終えると午後6時を回っていた。もう今から薬局へ行っても閉まっている。処方箋の薬の受け取りは明日に回さねばなるまい、と諦めて池袋行きの電車に乗り込んだ。
     6時半、池袋へ着いた。さすが急行は早い。でも父と昨日約束していた会う時間である午後7時半まではあまり余裕がない。私は池袋の「たしかこのあたりに居酒屋あったよな」といったあたりを歩き回り、大体のあたりを北海道料理を出すらしい居酒屋に定めて待ち合わせ場所であるジュンク堂書店へ向かった。
     ジュンク堂で時間を潰していると、父から「遅れる」とのメールが届いた。7時半時点で鶯谷にいるらしい。じゃあ8時にしとけばよかったのに。これが宮崎出身者特有の日向時間というやつか。私も宮崎出身だけど。
     そして8時にジュンク堂で合流して、2人して適当に好みの本を買ってから飲み屋へ向かうことになった。歩きながら、最初に決めておいた北海道居酒屋にするか、それともその店のすぐそばにある貝を中心とした魚介を出す居酒屋にするか迷ったが、結局北海道居酒屋にした。きっと貝の居酒屋にはザンギがないだろう、肉がないのは寂しい、と思ったからである。
     一杯目を飲みながらそんなことを父に話すと、「俺はじつは貝があまり好きではないのだ」と、長年親子してきて初の情報を父が繰り出してきた。私の判断は間違っていなかった、ということになる。今後の自己肯定のための材料にしよう。些細なことの積み重ねが重要なのだ。
     で、しばらく飲んだり食べたりしたのだが、私と父の趣味は全くかち合わないことが明らかになった。父は小説を読まないしテレビも「これが見たいから見る」みたいな感じではなく適当に流し身する程度だし、私と違って戦闘機が好きだ。でも「風立ちぬ」を見る気がしない、という点では意見は一致した。あの有名な戦闘機設計家の半生を描いていながら戦闘機が出てこないとなるとどうにも見る気が失せる、というのが父の意見で、ジブリなんだからどうせ来年の今頃になればテレビで見られるからいいや、映画って高いし。というのが私の意見だった。
     そんなわけで父と私でチューハイ及びビール及び日本酒を合計8杯程呑んだ。そしてイカソーメンだのイカの炙り焼きだの刺身五点盛りだのシーザーサラダだのを頼んだところ、会計が1万円になった。友達と一緒に飲む、という経験に乏しい私にとってこれが高いのか安いのかはわからない。けど少なくとも10日分の食費になるな、とは思った。
     それから父は山手線に乗り、私は西武池袋線で所沢に帰ってきた。まだ日付変更には時間があったのでゲームセンターに寄ってクイズマジックアカデミーに登校した。準決勝で落とされた。そして結果発表時に夏の水着がもらえるキャンペーンのスタンプが押されなかったことに気づいてから始めて、私は新学期が始まったことを実感した。
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  • 病院(十四回戦)

    2013-08-05 19:44
    「箱庭療法」というやつはみなさんご存知だろう。有名だし、「かってに改蔵」のラストにも使われたし、知らない人はいないだろう。砂が敷かれた箱の中に自分だけの世界を作っていくという例のアレだ。時折世間を使って箱庭療法を、つまり「俺王国」みたいなものを作ろうとしている健常者がいるが、そういう人間は直ちに心療内科にぶち込んだほうがいい。
     私も精神系列の障害者であるからして、箱庭療法に使われる箱、というものを見たことはある。一時期セラピストのもとに通っていて、その診療室に何も置かれていない、砂と枠組みだけの箱庭があったのだ。私はそれを使ったことがない。つまり箱庭療法を実践したことがない、ということだ。そのセラピストはどうせもいい話を2~30分話しただけで5000円も取るというあくどい商売をやっていた。人の話を聞くくらいもっと安価でもできるだろう、と今でも思っているし、そのあくどいセラピストは今でも海老名で商売を続けている。抗議の電話を今からでもかけたいくらいだ。でもそんなことをすれば「警察呼びますよ」とテンプレートなことを言い返されるに決まっている。以前やったときはそう返された。だから何も言えない。世の中には悪人がはびこっている。歯がゆくて仕方がない。

     まあそんな気持ちを、病院帰りのブックオフで「大市民日記」を読みながら感じた。この漫画の作者は自分に賛同しない奴のことはきっと馬鹿だ愚かだ独身の童貞野郎だふーん意見なんか聞いてやるもんかぷいっ、みたいな態度をとるに違いない。まるでネトウヨのようだ。
     今回の病院では2時間待たされた。おかげで危うく蝉川タカマル「青春ラリアット!!2」を読み終えてしまうところだった。
     ところで医師はこんなことを言った。
    「あ、クイズゲームね、それならいいですよ、まあゲームは推奨しないんですけど、人を殺したりするから」
     ところで私は能動的に人を殺すことを目的とするゲームを知らないんだが、どなたかご存知ですか。ゲームオーバーになるとプレイヤーである自分が死ぬとかじゃない感じのやつで。
     とにかく今回は待たされたことが印象に残っている。大事をとって診察開始の1時間前から病院で受付を済ませていたのに、これじゃあ診察開始時刻に病院に入ったほうが待たずに済んだのじゃあるまいか。
    「クイズゲームやるんだったら、ほら視聴者参加型のクイズ番組とかあるでしょう、あれに出てみるとかやってみませんか」
     医師の言である。医師の頭の中の社会は80年代で停止しているのだろうか。毎日仕事と新聞の社会面だけで暮らしているとこんな常識知らずの言動をするようになってしまうのだろうか。ちゃんとインターネットを有効活用しよう。自分の意にそぐわない意見でも一応耳に入れるくらいのことはやっていこう。病院から帰りながらそんなことを思った。
  • 病院(十三回戦)

    2013-07-22 19:12
    抗酒剤(シアナマイド)が冷蔵庫の中身を圧迫している。毎回二週間分処方されるくせに、一日おきに飲んだり飲まなかったり、「今日と明日は土日だから抗酒剤は飲まなくていいだろう」などといった謎の理由をつけて二日連続で飲まなかったり、「昨日は抗酒剤を飲んだせいで寝つきが悪かったから今日は寝酒を飲もう」などと考えて飲まなかったりするせいである。こんなこと医師に伝えたらきっと叱られるに違いない。
     でも私は病院へ向かっていった。抗酒剤のほかに睡眠導入のための抗うつ剤や安定剤を処方してもらっているので、薬がなくなったら病院へ行かなければならないのである。病院へ通うようになって数年、薬なしでは少しも眠くならず、ただ体調だけが悪くなっていく体質になってしまった。これも一種の依存症ではないだろうか。この薬依存症及びアルコール依存症及びうつ病及び発達障害が感知するのはいつになることか、全く見通しが立たない。というか発達障害は治るものではないらしいのでますます望みは薄くなる。私は一生病院へ通い続けるのか。
     でも私は病院へ向かった。病院へ向かわなければ障害者手帳の更新ができないのである。障害者手帳は私にとって私の将来にとって大切な身分証明書である。これがなければ私はきっとちゃんとした企業に入ってちゃんと働くことはできないだろう。今は障害者を集めて開かれている作業所に通っている。おそらく税金でまかなわれているのだろう。健常者がこれを知ったら「もったいないからやめろ」とか言うかもしれない。恐ろしいことだ。
     診察受付時間は三時なのに私は二時半に病院へ入った。さっさと診察を終わらせて欲しかったのである。持っていった本は新海誠「小説・秒速5センチメートル」本岡類「住宅展示場の魔女」淺沼宏太「天使の飼いかた躾けかた」である。一回戦の時よりだいぶ減っている。これは進歩と呼んでいいのではないだろうか。褒められはしない進歩ではあるが。
     それから私は待った。「小説・秒速5センチメートル」を読み終わって「住宅展示場の魔女」を読み始めてもまだ待った。「秒速5センチメートル」は薄い本だったが、それにしても長すぎである。結局、四時二十分になってからやっと名前を呼ばれた。およそ二時間待ちである。
     診察室に入った私は早速今の薬量ではなかなか眠りに導入できないことを医師に訴えた。
    「じゃあレスリンを増やしておきますね」
     ほぼ毎回薬の量は調整が行われている。おかげで毎回薬局では結構な時間待たされる。じゃあ調整しなきゃいいじゃん、という意見もあるだろう。私もそんな気がしている。
    「お酒の方はどうですか?」
     私は正直に話した。飲まない日もある、と。
    「じゃあ断酒は一応出来てますね、シアナマイド余ってます?」
     意外なことに叱られなかった。きっと叱らず治そう、という意識を持った病院なのだろう。
    「じゃあシアナマイドの量は減らしておきますね」
     それでも冷蔵庫に溜まり溜まった抗酒剤を飲みきるのにはかなりの時間が必要となるだろう。じゃあ酒を飲まなければいいのに。私もそう思う。
    「あとインターネットとかしてませんか? ネットに依存するとねえ、ちょっと危ないんですよ。読書とかテレビとか、そういったアナログな生活を送って欲しいんですけどねえ」
     それは前にも言っていた。私の趣味は読書である。しかし履歴書にこんなこと書いたらほぼ無趣味だと思われてしまう。心外である。しかも私が読む本の半分はライトノベルである。残りの半分の半分は漫画で、残った四分の一が一般小説である。偏っている。
    「まあライトノベルとかでもいいんですけどね、ラノベが原作の深夜アニメとか見るとあー挿絵に似てるなーって思いませんか?」
     そりゃあ挿絵を元にキャラデザが起こされるんだから当たり前のことである。
    「僕が子供の頃にはね、こう、挿絵付きの本があったんですよ。今もあるのかわからないけど。そういうのと同じですよね、ライトノベルって」
     この医師は児童書のことを言っているのだろうか。角川つばさ文庫とか知らないのだろう、きっと。
     そんな無駄話を少ししたが、結局今回は薬の量を調節する、という結果だけが残った診察だった。処方箋を受け取り、病院を出て、さっきも書いた通り薬局で結構な時間待たされて、やっと帰る段になった。古本屋によってから帰ろうとすると雨が降っていた。