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病院(十三回戦)
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病院(十三回戦)

2013-07-22 19:12
    抗酒剤(シアナマイド)が冷蔵庫の中身を圧迫している。毎回二週間分処方されるくせに、一日おきに飲んだり飲まなかったり、「今日と明日は土日だから抗酒剤は飲まなくていいだろう」などといった謎の理由をつけて二日連続で飲まなかったり、「昨日は抗酒剤を飲んだせいで寝つきが悪かったから今日は寝酒を飲もう」などと考えて飲まなかったりするせいである。こんなこと医師に伝えたらきっと叱られるに違いない。
     でも私は病院へ向かっていった。抗酒剤のほかに睡眠導入のための抗うつ剤や安定剤を処方してもらっているので、薬がなくなったら病院へ行かなければならないのである。病院へ通うようになって数年、薬なしでは少しも眠くならず、ただ体調だけが悪くなっていく体質になってしまった。これも一種の依存症ではないだろうか。この薬依存症及びアルコール依存症及びうつ病及び発達障害が感知するのはいつになることか、全く見通しが立たない。というか発達障害は治るものではないらしいのでますます望みは薄くなる。私は一生病院へ通い続けるのか。
     でも私は病院へ向かった。病院へ向かわなければ障害者手帳の更新ができないのである。障害者手帳は私にとって私の将来にとって大切な身分証明書である。これがなければ私はきっとちゃんとした企業に入ってちゃんと働くことはできないだろう。今は障害者を集めて開かれている作業所に通っている。おそらく税金でまかなわれているのだろう。健常者がこれを知ったら「もったいないからやめろ」とか言うかもしれない。恐ろしいことだ。
     診察受付時間は三時なのに私は二時半に病院へ入った。さっさと診察を終わらせて欲しかったのである。持っていった本は新海誠「小説・秒速5センチメートル」本岡類「住宅展示場の魔女」淺沼宏太「天使の飼いかた躾けかた」である。一回戦の時よりだいぶ減っている。これは進歩と呼んでいいのではないだろうか。褒められはしない進歩ではあるが。
     それから私は待った。「小説・秒速5センチメートル」を読み終わって「住宅展示場の魔女」を読み始めてもまだ待った。「秒速5センチメートル」は薄い本だったが、それにしても長すぎである。結局、四時二十分になってからやっと名前を呼ばれた。およそ二時間待ちである。
     診察室に入った私は早速今の薬量ではなかなか眠りに導入できないことを医師に訴えた。
    「じゃあレスリンを増やしておきますね」
     ほぼ毎回薬の量は調整が行われている。おかげで毎回薬局では結構な時間待たされる。じゃあ調整しなきゃいいじゃん、という意見もあるだろう。私もそんな気がしている。
    「お酒の方はどうですか?」
     私は正直に話した。飲まない日もある、と。
    「じゃあ断酒は一応出来てますね、シアナマイド余ってます?」
     意外なことに叱られなかった。きっと叱らず治そう、という意識を持った病院なのだろう。
    「じゃあシアナマイドの量は減らしておきますね」
     それでも冷蔵庫に溜まり溜まった抗酒剤を飲みきるのにはかなりの時間が必要となるだろう。じゃあ酒を飲まなければいいのに。私もそう思う。
    「あとインターネットとかしてませんか? ネットに依存するとねえ、ちょっと危ないんですよ。読書とかテレビとか、そういったアナログな生活を送って欲しいんですけどねえ」
     それは前にも言っていた。私の趣味は読書である。しかし履歴書にこんなこと書いたらほぼ無趣味だと思われてしまう。心外である。しかも私が読む本の半分はライトノベルである。残りの半分の半分は漫画で、残った四分の一が一般小説である。偏っている。
    「まあライトノベルとかでもいいんですけどね、ラノベが原作の深夜アニメとか見るとあー挿絵に似てるなーって思いませんか?」
     そりゃあ挿絵を元にキャラデザが起こされるんだから当たり前のことである。
    「僕が子供の頃にはね、こう、挿絵付きの本があったんですよ。今もあるのかわからないけど。そういうのと同じですよね、ライトノベルって」
     この医師は児童書のことを言っているのだろうか。角川つばさ文庫とか知らないのだろう、きっと。
     そんな無駄話を少ししたが、結局今回は薬の量を調節する、という結果だけが残った診察だった。処方箋を受け取り、病院を出て、さっきも書いた通り薬局で結構な時間待たされて、やっと帰る段になった。古本屋によってから帰ろうとすると雨が降っていた。
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