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記事 3件
  • 「Soul Searching Journey」第3回 麻枝 准×折戸伸治対談 対極のメロディ~Keyが生み出してきた音楽たち~

    2020-07-10 20:00  
    聞き手・構成:坂上秋成
     麻枝 准対談企画「Soul Searching Journey」の第3回をお届けする。
     Key、あるいはTacticsはノベルゲーム業界における名作をいくつも世に送り出してきた。
     この場合、小説でも絵画でもなく“ノベルゲーム”という媒体であるという事実はきわめて重要だ。
     このジャンルは、テキスト、図像、音楽といった要素を組み合わせることで成立するものであり、それらを用いた演出があるからこそ、ユーザーに他ジャンルとは違う感動を与えてくる。
     実際、Key作品における“名場面”の多くは、文章とCGだけでなく、そこに圧倒的な音楽が重なることで“泣き”を生み出してきた。
     そして今回の対談は、折戸伸治と麻枝 准という、Keyの音楽における屋台骨と言える二人によって為されたものだ。
     『鳥の詩』、『風の辿り着く場所』、『Philosophyz』、『アルカテイル』といった素晴らしいOP曲をつくり、印象的なBGMをいくつも作成することでゲームに一層の厚みを持たせてきた折戸。
     シナリオライターとして数々のゲーム・アニメの脚本を担当しつつ、作詞・作曲もこなせるマルチプレイヤーとしてKeyを支えてきた麻枝 准。
     二人は一体互いの音楽をどのように捉えているのか。
     そして二人にとって、お互いの存在はどのような意味をもつものなのか。
     ――Keyが生み出してきた“音”にまつわる対話が、いま始まる。 
    ――今日は、これまでKeyを音楽面で支えてきたお二人に、過去のエピソードや音楽に対する考え方などについて、深く訊いていきたいと思っています。初めに、折戸さんと麻枝さんがTacticsで顔を合わせた時の印象について教えてください。
    折戸
     Keyの初期メンバーとしては自分が最後にTacticsへ合流したんですが、当時の麻枝くんはひたすらPCに向かって仕事をしていました。それほどたくさんコミュニケーションをとっていたわけではないんですが、その姿は印象に残っています。
    麻枝
     自分の方は、Leafで『雫』の音楽を担当していた人がチームに加わってくれるということで、久弥直樹くんと一緒に「これは凄いことになったぞ」と興奮しながら話していました。当時の自分はLeaf作品のおっかけみたいなことをやっていて、業界のトップとしてシナリオライターの高橋龍也さんを意識していましたし、折戸さんの曲も把握していたので、相当にテンションが上がりましたね。
    ――折戸さんはもともと独学で音楽をやっていたと聞いていますが、どういう流れでLeafに務めることになったんでしょうか。
    折戸
     現在アクアプラス(注:Leafは株式会社アクアプラス内のブランド)で代表を務めている下川直哉さんが声をかけてくれたのがきっかけですね。下川さんとは高校時代につるんでいた仲間で、別の高校だったのにしょっちゅう遊んでいたんです。だから自分が作曲をできることも知っていて、仲間内でわいわいやっている流れのまま、仕事としても一緒に活動するようになりました。
     
  • 「Soul Searching Journey」第2回 麻枝 准×樋上いたる対談~時を刻んだ戦友~

    2020-06-05 19:10  
    聞き手・構成:坂上秋成
     『Soul Searching Journey~麻枝准対談企画~』第2回をお届けする。
     今回は『Kanon』、『AIR』、『CLANNAD』といったKeyの代表作、およびTactics時代の『MOON.』『ONE~輝く季節へ~』において原画を務め、長年麻枝 准とタッグを組んできたイラストレーターである樋上いたる氏を招き、麻枝氏との対談を行ってもらった。
     樋上氏は「いたる絵」とも呼ばれる個性的かつ魅力的なキャラクターを描き、まぎれもなくKeyが成功するための立役者となった人物だ。そんな彼女が盟友である麻枝氏とどのようなことを語るのか。彼らのあいだにどのようなドラマがあったのか。
     本対談で、ぜひその点を確認してもらいたいと思う。
     それは間違いなく、Keyというブランドについて、そしてクリエイターが作品を生み出すとはどういうことかについて、深く知るための手掛かりとなるはずだ。 
     
    ――今日はお時間を作っていただきありがとうございます。麻枝さんと樋上さんは、お話をするのもだいぶ久しぶりのことになるんでしょうか。
    麻枝:
     最後に会ったのは自分が病院のベッドで寝ている時でしたね。2016年に病気で倒れて入院してるところへ、樋上さんがお見舞いに来てくれたんです。
    樋上:
     あの時はめちゃくちゃ驚きました。私は麻枝くんへの面会が許可されたという連絡を受けた時、香港にいたからすぐに駆け付けられなかったんですよ。
    ――今日はお二人の出会いから話を初めて、徐々に現在へ近づいていくようなかたちでお話していただければと思っています。そもそも、麻枝さんと樋上さんが出会ったのはいつ頃なんでしょうか。
    麻枝:
     最初に会ったのは、自分がTacticsに入った時ですね。そこで樋上さんが先輩として働いていたんです。
    樋上:
     もともと私はTacticsというブランドができる前、同じNEXTON内のメイファーソフトという18禁ゲームのブランドに所属していました。それを畳むことが決まってから、18禁ゲームを作りたいというメンバーが残ってTacticsを作ったんです。そこにシナリオライターとして麻枝くんが入ってきてくれました。
    麻枝:
     自分が入る前にTacticsが出した『同棲』はシナリオが外注だったんですよね。その後で社内に専属のライターを入れたいということで募集をかけ、そこに自分が応募したという流れです。
    樋上:
     第一印象としては「なんか物静かな人が入ってきたなあ」という感じでした(笑)。
     
  • 「Soul Searching Journey」第1回 麻枝准・久弥直樹 同時インタビュー「彼らが見つけた“尊敬”のかたち」

    2020-05-10 15:00  
    聞き手・構成:坂上秋成

     麻枝 准とゲストとの対談企画「Soul Searching Journey ~麻枝准対談企画~」の第1回をお届けする。記念すべき初回のゲストとして、私たちはシナリオライターの久弥直樹氏を招き、お話をうかがうことができた。
     久弥氏はかつて麻枝氏とタッグを組むようなかたちで『MOON.』『ONE~輝く季節へ~』『Kanon』という三つの名作を生みだした人物である。いわばKeyおよび麻枝氏を非常に古くから知る人物であり、第1回のゲストとして最高の相手と言えるだろう。
     ただ、二人の“対談”は叶わなかった。
     私たちは久弥氏と麻枝氏のそれぞれにインタビューを行い、さまざまな角度から質問を投げかけ、熱の入った言葉を収録させてもらうことができた。それでも、二人は今回顔を合わせていない。
     麻枝氏と久弥氏は、久弥氏が『Kanon』制作後にKeyを辞めてから、およそ20年間一度も会っていないのだ。そうした状況で、いきなり顔を突き合わせて深い話をするということに難しさを感じる部分もあったのだろう。
     それでも、互いが互いに対する関心を持ち続けていたことは間違いない。それは実際のインタビューにおける二人の言葉を読んでもらえば明らかだ。まぎれもなく麻枝 准と久弥直樹のあいだには、それぞれを心の底から尊敬する気持ちがある。
     本企画では、二人が一緒に仕事をしていた当時どのような思いを抱いていたのか、そして2020年現在に互いをどのような存在として認識しているのかについて、徹底的に話をしていただいた。両者の発言を照らし合わせると、事実関係における齟齬が見られるところもあるが、今回そこを調整することはしなかった。久弥氏には久弥氏の、麻枝氏には麻枝氏の記憶があり、それぞれの真実に他人が手を加えることは間違っていると思えたからだ。
     顔を合わせての対談ではなく、それぞれに同じような質問をすることで行われる変則的な個別インタビュー。だが、この形式だったからこそ浮かび上がってくる、二人の特別な感情があったのだと、私たちは確信している。その確信とともに、二人のクリエイターの言葉を、この場で世に送り出す。
     願わくば、そこにある美しい想いが、読者にも届かんことを。
     

    ◎第1部:久弥直樹へのインタビュー
    ――初めに、久弥さんがシナリオライターを目指すようになった理由と、影響を受けた作品について教えてください。
    久弥:
    僕は子どもの頃に特定の作品に深くハマったという経験がないんですよ。小中学生の頃はアニメもほとんど観ていなかったし、ライトノベルにどっぷり浸かったということもない。その中であえて熱中していたものを挙げるなら、TRPG(テーブルトーク・ロールプレイングゲーム)になると思います。『退魔戦記』や『ソード・ワールド』といった作品を友人と遊んで、その時の様子を録音して「リプレイ」 を書いたりしていました。それを友人に面白いと言ってもらえたのが嬉しかったし、今でも物語を書く上での原体験のようになっていると思います。その時の影響で、就職先としてゲーム会社を探すようになりました。
    ――それは何歳くらいのことなんでしょう。
    久弥:
    20歳くらいの時ですね。当時は大阪の実家に住んでいたので、そこから通える範囲の仕事先を探したんですが、そもそも当時のPCゲーム会社は求人自体が滅多になかったんですよ。たまに見つけても実務経験者のみの募集というケースがほとんどでした。シナリオライターになるためには、先にシナリオライターになっていないといけないわけです(笑)。
    そんな中、PCゲームの雑誌を読んでいる時にTactics の『同棲』(1997年)というゲームの広告の中に、シナリオライター募集と書かれているのを見つけたんです。勤務先は大阪だし、何より経験者のみという条件もなかった。これはもう、ここに応募するしかないと考えました。
    ――なるほど。なかなかに運命的な出会いですね。
    久弥:
    当時の僕はシナリオや小説を一切書いたことがなかったんですけど、シナリオを同封すること