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寺嶋由芙とBiSから考えるアイドルの「コンセプトマッチング」問題
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寺嶋由芙とBiSから考えるアイドルの「コンセプトマッチング」問題

2017-05-28 10:22
    唐突だが寺嶋由芙というアイドルがいる。彼女が歌う「わたしになる」は邦楽史に残すべき名曲だと勝手に思っている。こんな昭和から活動してる音楽家みたいな円熟味溢れるサウンドを20代の音楽家が作ってしまうなんてJ-POPの未来は明るい(願望)。



    で、この寺嶋由芙(ファンからは「ゆっふぃー」と呼ばれている)というアイドルについて語る時、当然ながら経歴の話になるのだが、彼女は「BiS」(ビス)というアイドルグループに所属していた事がある(当時の名前表記は「テラシマユフ」)。

    BiSを知っている人ならばお察しなのだが、こんな事をやっていた。



    スクール水着で汚物は消毒だみたいな野郎どもと撲殺天使バットで顎パッカーン系である(自分でも何を言ってるのかわからなくなってきた)。ついでに女子同士で血糊をぺろぺろである。なんでもござれのカオス上等アイドル、それがBiSというものであり、その事自体はファンがそれぞれ自分の価値観で評価すればいい。

    だが、このコンセプトと寺嶋由芙本人の意識は必ずしもマッチングしなかったと言ってよいだろう。このあと彼女はBiSを脱退する。事務所発表では脱退理由は「真面目すぎるがゆえにBiSの方向性についていけなかったため」との事である(⇨参考リンク:「音楽ナタリー」記事より)。

    ここで重要なのは、寺嶋由芙という存在がBiSにとって不要だったわけではないという事だ。現在ソロアイドルとして活動しており前述の動画からもお解りの通り、彼女のボーカルは例えパンク的音楽であっても存在感を放っている。

    ではそのまま寺嶋由芙はBiSにいれば良かったのかと言われれば、それは総合的に考えて残酷すぎる話であろう。前述の通り方向性についていけなかった人間に「お前の声に価値があるから続けろ」というのはグループの利益だけ考えればプラスだが、彼女の人生を考えれば圧倒的なマイナスだ。どう考えてもWIN-WINの関係にはなり得ない。

    そして寺嶋由芙は自らにとっても幸福になれる道を選んでゆく。愛してやまない「ゆるキャラ」の伝道師として活動を始め、でんぱ組.inc等を擁するディアステージの所属タレントとなった。それを聴いた時おいでんぱ組的な萌えキュン電波ソングを歌うのかと思ったが冒頭のPVの通りである。自己紹介でも使われる「古き良き時代からきましたヾ(゚ω゚)ノ真面目なアイドル、真面目にアイドルー!」のコンセプトを忠実に表現した楽曲とビジュアルである。

    繰り返しになるが、彼女の声をもってしてすれば、パンクだろうが王道ポップスだろうがあらゆる楽曲を歌いこなす事は可能だし、ゲスい話をすればコンセプトと本人の希望がベストマッチングだったからと言って商業的結果が伴うとは限らない。それを言ったら私が愛してやまないAKBグループは変動メンバー制のグループなのでメンバー個人の個性と楽曲がマッチしていない事だらけである。にも関わらずAKBグループは一定規模の商業的結果を生み出している。

    アイドル混沌時代へと突入した結果、マネジメント側によるグループの個性をどう際立たせるかの競争は熾烈を極めている。楽曲面からの個性づくりも当然試みられており、様々な職業作家はもちろん、いちアーティストとして人気のある人にも楽曲制作依頼をかけたりしている。全てではないだろうが作家に委ねられる自由度が高い場合もあり、むしろアイドルとの仕事の方が音楽家としてやりたい事が出来るという声すらある(⇨参考リンク:元電気グルーヴ・CMJKさんのインタビュー)。

    ただ「試み」が多いという事はミスマッチが多い可能性もあるという事である。またAKBグループの様に大所帯な変動メンバー制プロジェクトになる場合はそもそもシステム的にミスマッチを回避しにくい。シングル曲「UZA」はバキバキのかっこいい曲にも関わらず明らかにこの楽曲が似合う筈のメンバー(具体的には秋元才加など)が選抜されていなかった。これまた現実的な話だが「楽曲に合っているメンバー」という理由だけでは選抜されないのがファンとしては悩ましい所である。AKBグループは寧ろ非選抜・選抜常連じゃ無い人がプリキュア歌手になったり(仲谷明香)、アニソン歌手になったり(出口陽)、アイマス声優としてキャラソンが評価されたり(佐藤亜美菜)と、何でこの個性在籍中に表舞台に引っ張り出せなかったんだよ(号泣)という事例が多い。



    従ってこれかもこの「コンセプトマッチング」問題はアイドル業界の中で続いている事だろう。悲しい事だがそれで決して幸せなアイドル人生とは言えない人も出てくるかもしれない。最終的には自分で決めろという冷たい話になってしまうのだが、できればファンもメンバーもマネジメントも、関わる人々全てが幸せになれるベストマッチングが多く発生することを願いたいものである。
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