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図書室の鏡
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図書室の鏡

2021-07-23 20:01

     小学校の図書室に噂があった。4時頃だか5時頃だか……。とにかく放課後に図書室に行くと、図書室の鏡に女の人の影が映るって噂だ。当時は自称霊感少年少女が売るほどわいていたから、俺はそんな胡散臭いもの、と思ってはいたんだが、どうしてもそれを確認したくなった。当然じゃないか。その時俺は生まれてから10年も経っていなくて、世間の常識とかそんなものは知らなかったんだから。だから、自分の目で確かめるほかに、その妙な噂が本当かどうか調べる方法を知らなかったんだ。

     かといって、その光景を誰かに見られるのは決まりが悪いもんだ。俺は一応クラスの中では幽霊否定派だったから、確認に来ているところなんて見られたら、幽霊を信じている、なんて言われかねない。当時の俺はそういう噂の渦中に立たされるようなことが好きじゃなくて、もしそんなことになったら、すぐに目くじら立てて否定するような性格だった。そしてそれをからかわれるという事を繰り返していたから、当然人には見られたくなかった。だから、放課後になってもしばらく学校中をうろついて時間を潰していた。結構粘ったが、だいたい5時半くらいだった。そろそろ帰らないと先生に強制的に門まで連行されるくらいの時間だった。俺はもう誰もいないだろうと図書室に向かった。途中、鬼ごっこをしていたらしい3人組とすれ違ってどきりとしたが、違うクラスの連中だったし、あっという間にどこかへ行ってしまったから、俺はほっとしてまた図書室へ向かった。

     ところがだ。図書室に入ろうと思ったんだが、図書室のカギは閉まっていた。本が盗まれないように、先生か図書委員がいるとき以外はカギが掛かっているんだろう。俺は諦めかけたが、扉についている窓ガラスだけは透明で、中が覗き込めるのに気付いて俺は顔を扉に近付けた。そこからは噂の鏡が見え、本がぎっしり詰まった本棚を移していた。俺は、図書室に夕日が差し込み始めていることに気付いた。それで、その窓から見えるかぎり図書室をぐるりと見てから、また鏡に焦点を戻すと、その鏡には髪の長い女が映っていた。当時の俺に原理がわからなくても、感覚的にその鏡の反射から女がいるはずの所は分かった。だから、その光景がおかしいこともわかった。鏡に映ったその女は、その鏡の前にはいなかったんだ。

     俺は恐ろしくなったが、目を離せずにいた。金縛りにあったように指一本さえ動かない。その鏡に映った女はと言えば、俺に気付いているのかこっちをじいっと見ていたんだ。鏡とガラスをはさんだ睨み合いが続いた。ものすごく長い時間だったように感じたが、下校時刻を知らせる放送が入った瞬間、俺がびくりと体を震わせて瞬いた隙に女は消え、動けるようになった。

     次の日、隣のクラスの図書委員とその友人やら3名ほどが、学校を休んだので、また例の噂がささやかれた。いつの間にかその女の影を見ると、体調が悪くなるとか不運に見舞われるとか尾ひれがついていた。クラスメイトは俺に対して反対の意見を期待して話を振ったのだろうが、とてもじゃないがはっきり否定する事は出来なかった。


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