• 原型のようなもの

    2019-09-08 00:21




    存外アクセスしてくださる方がおられ驚いています。
    本編に先立って書いた原型的なものが出てきたので
    こちらの同じ棚に収納しておくことにいたしました。
    ソルジェラさんヒーラー説はずいぶん前からのもの。
    ギアさんキレ芸マインドセット説は最近のものです。













    月を負う鷹







    ひゅ、とか、ざ、とかの音がやや遅れて聴こえる。
    チッ、と微かな金属音がしたのも剣が鞘に収まり
    姿勢すら戻ると同時…音の感覚が狂いそうになる。
    斬られた藁束や緑の竹が静かに斜めに滑り落ちる。
    ばさぁっと人の胴ほどの束が重みで傾いて落ちた。
    すっげぇ真っ平ら…麦藁の真ん中の竹の切り口が
    鏡みたくピカピカしてた。
    「おおう…」
    解るのはいつも「終わった」後そういう男だった。
    ツレもそうだが「答え合わせ」を逆算し事を知る。
    ぶっつけ本番で…これだもんな…感嘆しか出ねえ…


    「確認を。」
    素っ気無く言うとソルベの旦那はオヤジに剣を返した。
    淡く光る腕輪の手で顔を覆ったベールをするりと外す。
    この真珠色の細いキレイなのはいつものツレのやつだ。
    旦那の分身「バングルス」初見で肩透かされたもんだ。
    飾りモンだと誰でも思う、スタンドにはまず見えねえ。
    アクセサリータイプ、自動性も自我も持たない超レア。
    肌の直接接触で生成、対象の人格がその形状を決める。
    精神直読み読解ってのがどんな感覚か想像つかないが、
    手当てや模擬戦で使われてみてスゲーもんだと解った。
    一瞬目が合ったと思う、きちんと見たかモノにしろと。
    目が合うたびキンと音でもしそうな眼だなと思ってた。
    シビレるってのは…こういう感覚か。


    抜いて確かめられる刃は刃こぼれどころか曇りひとつ無い。
    剣がスゲーのか使う側がスゲーのか…まあ両方なんだろう。
    「あ…ああ、はい…ありがとう、えらいもん見せてくれて。」
    武器商のオヤジが二百年前のサムライの剣仕入れたとかで
    高く売るために使って見せてくれと言ってきたのが昨日だ。
    ああ、剣じゃあなく刀…カタナって言うんだっけ、日本刀。
    あんたら刃物はお手の物だろデモ撮影に協力してくれ、と。
    美術商や骨董商が扱う品だがこの武器屋は解釈がチト違う。
    アレな後輩の内緒の保釈金にツレがヘソクリ使い果たして
    口には出さないが明らかにゲッソリしてた旦那は珍しくも
    自分からスタントを買って出た、…とホルマジオに聞いた。
    そのホルマジオは隣で笑った顔のまんま完全に固まってる。
    チーム入る前からの腐れ縁で器用で何でもこなせるからと
    頼まれたのはコッチだがドル換算の仕入値チラ見てヒいて、
    ビビリが聞いて脅しまくった、折りでもしたらどーすんだ、
    それ旦那が聞いて…って話だ、組織には秘密の小遣い稼ぎ。
    その割りに差し出された封筒はそこそこ厚い…太っ腹だな。
    受け取るとそれまで黙っていたリゾットはツイと前に出た。
    そのへんに立てかけてあった反射板を拾うと、
    最後に真っ平らに斬られた藁束の上へ乗せた。
    ベアリングの玉を板の真ん中へ上から落とす。

    …こん、こ。

    玉は落とされたのと同じ位置で微かに跳ねて、静止した。
    ヒュウ、と口笛。
    「…水平とはな。」
    ひゃあっとオヤジがでかい声を上げリゾットの眉が上がる。
    「すばらしいっ!もう一度、もう一度やってくださらんか!
     固定カメラ長回しでそこまでワンテイクで撮りましょう!
     キャッシュで倍いや三倍!すぐ準備を、その間食事でも!」
    旦那、迫る顔にベール畳みながら親指しゃくり大将へパス。
    仕事は絶対に直接じゃあ受けつけない、大将か仲間を通す。
    乗り気なわけでもない、ノリで動く性分でもそもそもない。
    リゾットは額を押さえてる…とはいえ…今は懐具合がだな。
    「…ソルベ。」
    スィ、とだけ答えた細身が滑るように移動し椅子にかけた。
    大将やらかしたな、珍しいな、血が騒いでつい…だろうが。
    刃物のエキスパートが目の前であんな刃物扱いされちゃあ。



    部下二人がせっせと二回目の準備をし直すのを横目に見て
    用意された軽食をパクつく、おし晩飯代浮かすぜラッキー。
    旦那がフッと手首見る、いつ見ても洒落てんなバングルス。
    「ぐふっ!げほげほっ!」
    横向いたらむせたっ…は、ハナに…炭酸水入っ、
    食わずに飲むだけ飲んでた大将、呆れ顔で苦笑。
    「ギアッチョ?慌てて食うな子供か。」
    「げほ、…ちが…今、何でもねーッ、」
    オレは悪くねぇーッ…くそ…カッコ悪ぃとこ見せちまった!
    「そういえばどうしてついて来てる?」
    「勉強しろっつったのはあんただろ。」
    「勉強するには特殊過ぎると思うが。」
    せーな解ってるよ、つかおまゆう、今回はお互い様だろッ!
    「カタナとかどこで覚えるんだよ?何でもやるなー旦那は。」
    テイスティングだけして黙って手酌する空気は凪いでいる。
    実は覚えてはなかったりしてな、初めて握ってたりしてな。
    いやどうだかわかんねーけど、わかんねえぞぉ旦那だけに。
    酒とブルスケッタ持ったままふいと立って広間の隅へ行く。
    ドイツのナイフのカタログ見てる…オマケしてもらおーぜ。


    「藁と竹には何か意味あんのか?ジダイゲキに出てきたが。」
    「人体を両断する鍛錬用、竹は背骨役。…のように見える。」
    「うは…本家コメの藁だろ、麦藁のが硬えぞ、本家超えか。」
    空の皿を手に戻って座る、同じ具のを取ってサクリと齧る。
    「引きながら同じ角度で完全に振り切ればいいんだろうが、
     それが難しい、対象の抵抗に重み、…刃の角度も厚みも。」
    「つーかよお…、角度の絶対感覚みてーなもん?持ってる?
     あるだろ絶対音感とか、方向感覚とかさあ。どうなんだ?」
    両側からリゾットとホルマジオが見るが黙って流すだけだ。
    無視じゃあない、当人的にフツーの事なら答えようねーわ。
    これで返事をしろと怒り出すのはプロシュートぐらいだが、
    業界の先輩だろーがチームの先輩は旦那だし別にいいだろ。
    怒り方がまた関係改善してぇのについイライラ、みたいな。
    メシでもどうだの一言でいいのに小言に変わるルーティン。
    言われた側は律儀に謝り言った側もソレ見て凹むコメディ。
    若いの預かるとか大丈夫かよ…存外化けると大将は言うが。


    滅多に酒飲まねえ人だ、炭酸水同士でグラス合わせて乾杯。
    アジア系は見た目が若ぇ…大将と同い年とかびっくりした。
    無口で冷静で…極東っぽいがチャイナ系だと主張するよな。
    日系じゃあねえのと訊いたことがあるが知らんと流された。
    けど日本刀イミフなほど似合うし絶対サムライの子孫だろ。
    我慢して我慢してキレたら殲滅とかパールハーバーかよと。
    ナイフやスプーンの扱いも一分の隙もねえ、絵になってる。
    あんま喋らずに実力で語るとかクール過ぎると思うワケよ。
    怖ぇヤツラに拾われたもんだ…目の前イイ漢しかいねえし。
    こんなふうな物の感じ方が出来るようになったのも二人の…
    旦那とそのツレの、精魂こめた「手入れ」のおかげだしな。
    何にでも逆毛立てていつまでも怒ってた獣…無様だったな。



    にんまり見てたらオヤジが酒と貝料理の皿を追加してきた。
    「シシリー産のいいもんですよ、いかがです。」
    おっうまそーだな、と手を出しかけたらリゾットが制した。
    鋭い黒い眼が武器商人を射すくめる。
    「故郷の味をありがとう。で何を追加しろと?」
    あ…と、目を合わせるとホルマジオもフォーク引っ込めた。
    大将の出処の名産な…あーはいはい。
    愛想笑いを浮かべるオヤジの目が泳いだ。
    「ああいや、その…本番では、ベールを、」
    「顔は撮らせない約束だ。」
    ざっくり断った横で旦那が音を立てずカトラリーを置いた。
    気配がスッと変わるというか消える、人形っぽくも見える。
    ツレも…こんなふうだ、時々だけど…人間に見えなくなる。
    たまたま気付いてしまうとヒヤッと、
    …しはするものの。
    「モザイクはもちろん掛けますよ。見てみたいんです。
     いったいどういう表情であれをやってのけるのかを。
     だいいちね、…そのね、口はばったいようですがね、」
    旦那を見る視線は既に魅了されたそれだった。
    「この威風、エキゾチック!何が楽しくて隠しなんぞ!」
    生臭ぇ秋波や何やとは別モノ、解る。
    旦那の動くトコ見たヤツにだけ解る。
    これは美術品だと。
    まごう事なき変人だがこのオヤジ目が利くし全くブレない。
    変人だから武器商なのに昔の剣も売り買い、じゃあなくて。
    美術品とみなして武器を売るから日本刀も扱う、が正しい。
    「いったいどこを探せばこんな逸品を拾えるというんです?
     懸賞つきの中には居ませんな。軍人…傭兵崩れですかな?」
    あーあ…と揃って肩を竦める、「美術商」の血が騒いだな。
    習いたいことだらけ、というタテマエでついて来て正解だ。


    流麗な細身の長身、タテガミか冠羽めいた黒髪、黒づくめ。
    神速と解析で徹底して本体を喰らうスタンド殺しの黒い鷹。
    速く強いことに特化した一級の生物兵器、全身これ機能美。
    カメラでだって捕まえてみたくもなる、解るぜ、その興奮。


    「感動したんですよ。額に入れて飾っておきたいほどにね。」


    オヤジにしたらこの上なく褒めてるつもりだったらしいが。
    嫌というより何かゾッとしたのは、オレだけのわけがない。
    「…帰るぞ。」
    ガンと文字通り床を蹴り椅子を倒し、リゾットが席を立つ。
    「報酬分の仕事は済んだ。デモならさっきの映像で充分だ。」
    尋常でなく怒ってる、漏れた磁力でカトラリーが震えてる。
    「いや、…いや待ってくださいよ足りませんか、」
    憮然とホルマジオも立つ。
    「商人がそう素直にゲスい本音垂れ流してていいのかねぇ。」
    「顔バレると危ねー仕事なんだ。カネカネうっせぇバーカ。」
    とかタテマエを叩き付けて、オヤジの肩をこづいてやった。
    「だ、だからモザイクなら必ず掛けると…痛いぞこのガキ!
     カネに困ってるんだろ、顔出すだけで済むオイシイ話だ。
     おい待ってくれ、あんたはどうなんだ!ええと、名前は、」
    リゾットを追い帰ろうとする旦那の袖を掴み身振り手振り。
    「名前…なんだっけ、あんたウチの社員になる気は無いか!
     デモにも教導にもいい、組織から買うよ元はすぐ取れる!」

    名乗ったしさっき目の前で大将が呼んだが覚えてねえよな。
    商人が取引相手の名前忘れるとかねえけど覚えてねえよな。
    懸賞つきの一覧も覚えきる達者な記憶力でも残念ながらな。
    気安く触んな、と割って入りかけたら旦那の片手が制した。
    我慢し過ぎて相手が図に乗るが、格下には寛大な人だった。
    哀れむような悲しむような…ごく静かにオヤジを見下ろす。

    「断る。三度目だ。」


    はあ?、と、赤ら顔が口を開けた。
    「何をばかなっ、あんたみたいなのを見たら忘れるわけが、」
    「ジェラート。」
    リゾットの冷えた声が言葉を遮る。
    白い姿が目の端にフワと現れてオヤジと部下が飛び上がる。
    「うわ…うわっ!誰だ、どこからっ!」
    部下どもが銃を向けたが背後から三人ともの頭にすぽりと
    半透明の羽の生えた優美なヘッドフォンが嵌まった。
    ジェラートの分身、三体の「ドリーム・シアター」。
    不可避の暗示を運ぶスタンド、素早いカワイイ怖い使い魔。

    『俺たちのことは気にしない。』

    唇がその言葉の形に柔らかく動いたのがこの距離なら判る。
    撮影用ライトを一瞬チカと弾いたのは氷色の大きな猫目か。
    力を操るジェラートは背景に音楽でも流れてるかのようだ。
    甘く神託めいた声はしかし分身を通してしか発せられない。
    ツレ同様の超レア形態…常在・複数・そして…声とセット。
    「あ…あー、」
    きょとんと…部下どもは握った銃を見る。
    「しまえよ。」
    「お前こそ。」
    「仕事…仕事の途中だ、あんた手当てははずむから…あれ?」
    ぶるッと頭を振ったオヤジがまた旦那を探してキョドるが、
    『片付けないと。仕事は終わり、上出来だ。』
    唇がまた動くとぱあっと笑顔になりパンパンと手を叩いた。
    「さあさあ早く片付けておくれ!いいもんが撮れたからね!」
    ほくほく映像を見返す、部下どもも機嫌よく掃除を始めた。


    「面倒をかける。が、見事だ。」
    リゾットが近付き、横に立つと細く尖った肩に手を掛けた。
    逆側にいつの間にか旦那が立ってる白い細身の影のように。
    頭一つ違う長身が遮り、人形じみた横顔の表情は見えない。
    ジェラートは一緒に来てずっと広間の隅で一部始終見てた。
    対象との接触で生成するツレのバングルスが保てる距離で。
    ツレの美技見てはしゃいだり奇妙な仮面でオレ吹かしたり。
    エビのブルスケッタとワイン渡されて旨そうに食ってたり。
    オヤジと部下どもが「気にしなかった」だけのことだった。
    誰かが名を呼ぶまで気が付かない「決まり」なだけだった。
    旦那の名を覚えられないのもそういう決まりなだけだった。
    猫目の白い王様が出会いがしらの勅命でそうと決めていた。


    体重が無いかのような優雅な歩みと、氷色した指揮者の瞳。
    すらすらと歌うように唇が動く声無き声が命じる淀み無く。
    あんたのソレが気になって、みんな読唇を覚えちまったぞ。
    『カタナは早く売ってしまおう。売れば映像は用済みだね。』
    『防犯カメラのHDDは壊れてる。昨日から何も映らない。』
    『馴染みのギャングが役に立った。目立つ者は居なかった。』
    『いつもの奴らさ。気にならない。』
    天使のかたちの使い魔たちが蕩ける美声を下僕の耳へ注ぐ。
    オヤジも部下どもも、カメラすらも二人の記憶は残さない。
    もともと使用後デモ映像を処分させるため一緒に来ていた。
    なんとも華麗な残酷な、だが胸の疼く魔法を並んで眺めて。


    もうこっちには目もくれない三人に背を向け、
    はじめから室内に居た五人して場を後にした。








    「ワインはちょいと惜しかったな。ラベル見たかい。」
    咥えタバコの飲んべがぼやくからみんなでニヤつく。
    カメラなんぞはどこにも無い人通りの無い暗い裏道。
    オレら襲えるような無謀バカもどこにも居ねえしな。
    「メシについてたのより明らかにランクが上とかよ。」
    「そう言うな。業者としては良心的だし腕も確かだ。」
    「毎度熱烈スカウト、やべえご執心だと思うがねぇ。」
    「好きが高じて武器を売るオタクに常識を求めるな。」
    リゾットもちょい酔ってるな、…ヤケクソ方面だが。
    「一度目の暗示に抵抗した執念にはたまげたけどな。
     ああ素直じゃあ早死にする、ま、しょうがねえな。」
    刈り込みの後ろ頭に手を組んだホルマジオの背後を、
    タンタンと靴を歌わせて軽いステップがついてゆく。
    「何してんだジェラート?」
    月明かりの中、息を切らした小さい白い顔が揺れる。
    『け・ん・ぱ!』
    息と口の動きだけだが叫ぶ、いつだって楽しそうだ。
    「けんぱ?何だぁソレ。」
    使い魔たちが頭上の暗がりでふわふわと一緒に踊る。
    「古い遊びだと聞いた。」
    ああ旦那が教えたのか…暗がりの顔と、真珠色の輪。

    カン、カン、カン

    黒い靴がいい音立てて石畳で同じステップを踏んだ。
    片足で二度、両足で一度、繰り返して、跳んで反転。
    いつ誰から「聞いた」のかどこの遊びか判らないが。
    カンカンカン、カンカンカン。
    単調な子供の遊びでこんなに優雅だとか、オカシイ。
    ジェラートはリゾットに追い付くとふぅふぅ言って、
    長身の肩に手を掛けて息遣いだけでころころ笑った。
    飲むの好きだが酒弱いよな、グラス一杯でご機嫌だ。
    楽しい大好き嬉しい嬉しい、月光のように幸を放つ。
    はいカワイイ、とホルマジオが笑って呟くから同意。
    これでワーカホリックの敏腕とか笑うしかねえわな。
    息切れが早すぎねーか、…出張キツかったようだが。
    「疲れただろう、背負ってやろうか?」
    また始まったよコリねーなこの大将。
    二人とホルマジオで話が済んだトコわざわざ同伴だ!
    旦那に何回「ツレは男だ」って微ギレで諭されても
    「そういうことにしといてやる」でスルーしやがる。
    初見でムスリム娘に変装しててヤバかったと聞くが。
    骨細だもんな腰も尻も背が延びる頃のガキに似てる、
    髭は生えねーし詰襟しか着ねーから疑惑が晴れねー。
    スタンド何体か喪くすうちにこう育った…とか言う。
    カッコ悪いよね内緒だよと…約束したから黙ってる。
    あんたカッコいいから安心しろとは言いそびれたが。


    背中向けかけるとすかさず旦那が来てサッとかっ攫う。
    酔っぱらいがプロの使い魔を出し抜けるとかなぜ思う。
    「すまなかったな、ソルベ。」
    すぐにくーくー寝たツレ背負った旦那に、
    並んで歩きながら、低く通る声が詫びる。
    「余計な事をした。嫌な思いをさせたな。」
    そんな事かと言いたげに後姿が月を見る。
    「報酬はお前たちで折半してもらいたい。」
    「断る。約定に反する。」
    少しざらっとした低い…旦那も滅多に居ねえイイ声だ。
    プールと経費を除いて全員で分配、約定上はそうだが。
    その経費に超細かいんでがめつい呼ばわりされてるが。
    「例外だ。プールから出すはずのメローネの保釈金を
     ジェラートのヘソクリから出させたろう。返すなよ。」
    「受け取っとけよ旦那。あんただから稼げた金額だぜ。」
    封筒上着にねじ込む大将と逆側で加勢するホルマジオ。
    「白状するがわざと聞かせた。イルーゾォのヤローが
     弁償騒ぎになるとやべーから旦那にパスしろってな。
     でもあんたあのオッサン苦手だろ、言いづらくてよ。
     目の前で困ってみせりゃ一発だってプロシュートが。」
    めちゃめちゃ旦那解ってんなやっぱ気に入ってんのな。
    その扱いの的確さをコミュニケーションに生かせよと。
    「三人がかりでハメられて、オレの興味で絡まれたと。
     すまないなソルベ、やはり報酬は入れてはもらえん。」
    「分けたらいくらにもならねえ。家賃払っちまいなよ。
     …ああ悪ぃ、こないだヤサ行ったとき、管理人にな。
     向こうもあんたらの顔を覚えてねーからオレにさぁ。」
    バツ悪そうに下向く旦那くそカワイイ、いや深刻だが。
    ジェラートちゃん助けて→解ったすぐ行く!→尻拭い。
    ツレがこう仲間に盲目じゃあカネに細かくもなるって。
    見てくれだけ無駄にイイ問題児、二ヶ月連続はヒデェ。
    ジェラートのメシしか食えんとかくすぐり過ぎだバカ!
    「誰も文句など言わん。次からは隠すな、頼ってこい。」
    「面目ない。」
    「はっは、元気出せ旦那、イエスマンなのは承知だぜ!」
    何がはっはだ可哀相だろ、どんだけ旦那に乗ってんだ!
    問題児もツレも乗っかってるしオレも世話かけてるし!
    ジェラートはいいんだよ最終的になんとかするからな!
    けど二人無しじゃあチーム回んねえ、これはダメだろ!
    オレだけカッカするんだが怒んねえのもやっぱ旦那で。
    すまん旦那絶対強くなって恩返すからもうちょい待て。



    脚をあんまり上げないで歩く、旦那の足音だけが無い。
    さっきいい音で鳴ってた同じ靴なんだが不思議だよな。
    肩の上の金髪が月から落ちたもののようにほの明るい。
    上半身が揺れねーから運ばれんの快適…経験者は語る。
    月の明かりがしっくり来る…撮影のライトなんかより。
    海風が気持ちいい…夏が終わる。
    「シンガポールでは休めなかったようだな。」
    請われてレンタル、要人家族の人質奪還、最短で突貫。
    二人にしか出来ねえ、そのくせ上も二人を認識しねえ。
    報酬やっすいがどんだけボッてるか知ったら顎外れた。
    文句ひとつ言わず笑ってるがクタクタなのは見て判る。
    チームの保健も二人して一手に引き受けてくれてるし、
    秘書役も事務役も女将役も、…ほんと…大した奴らだ。
    蜂蜜色の髪に触ろうとしてスッと離れられた手が泳ぐ。
    大将もマメだがガードも固いぜ…なお当人平和に熟睡。
    修羅場で見せる魔術師だか王様の雄姿はどこに消えた?


    人畜無害な寝顔を見ながら歩いてたリゾットがポツリ。
    「変人は変人だが、買えば無理などさせんのだろうな。」
    「リゾット。オレではツレにあんな顔はさせられない。」
    ヤケクソ風味のぼやきを、珍しく食い気味に一刀両断。
    声出さなくてもジェラートは全身で喜んでた、いつも。
    「オレたちをモノ扱いする輩にあんたは誰よりも怒る。
     オレたちを隠す不都合に黙って無理してくれている。
     ツレもオレも解っている。どれだけ嬉しいか解るか。」
    ろくすっぽ喋んねーが言葉が足りないわけじゃあない。
    月明かりの下に朗読のように流れる言葉に返答は無い。
    穏やかだが底熱い素直な感謝はほろ酔いの涙腺に来る。
    「あんたはオレの王の盟主だ。…それにな。」
    肩越しに振り向いた逆光の横顔に胸が鳴る。
    「奴の部下程度じゃあ、磨く気にもならん。」


    名前を呼ばれたら、身体は勝手に前へ出た。
    回り込むが、なんだか顔が見られなかった。


    「あんたの拾ってくる原石は、物が違う。」


    きた必殺技、予測回避なんぞ絶対不可能。
    ので自分から罠にかかりに行くスタイル。
    ぽんぽん、と癖っ毛の頭を軽く叩かれた。
    なんでそう煽ててノセんのが上手ぇかな。
    やべえ琴線ヤラレたっ返事…返事だ急げ、
    「一生離れねーッ、つか抱けチクショウ!」
    茹だって斜め上を口走った記憶はあるが。
    気が付くと大将にプランと担がれていた。
    「セクハラという言葉を知ってるか阿呆。」
    あーそのテのジョーク厳禁だったわ旦那。
    旦那キックも回避不可…あと、おまゆう。







    ボコられて拾われて一年、秘密の壁のオレも一角だ。
    経歴も本名も知らないが透き通る気配を纏っていた。
    オレらの他にはだあれも知らない覚えない姿と声と。
    桁違いの汎用性とマッチング、生まれ持ったチート。
    旦那もジェラートもあまりにも特別すぎ美しすぎて、
    他の誰の目にも記憶にも残しておくことが出来ない。
    異常に警戒されるか欲しがられるか、今日のように。
    家族を巻き込むのが嫌で隠れるんだと大将に聞いた。
    強い奴が好きだとも言う、強い奴は死なねーもんな。
    獣のガキに術を掛け人にしてくれた魔術師と使い魔。
    居なくなる事なんか考えらんねえ、考えたくもねえ。
    誇りたいのに隠しぬく、そんなオレらの宝物だった。


















    …そんな…








    ありふれた夜をそれほどくっきりと覚えてるんだが。
    そこから二人の顔の記憶だけがすっぽり抜けている。
    目鼻、口の動き、輪郭、髪の色艶、肌の色。
    何もかもを覚えてるのに、繋がんねえ。
    あいつらはどんな顔をしていた?
    どんな表情でオレを見てた?
    すげえ嬉しかった憧れてた、
    ずっと見てたその筈なのに、


    二人を覚えてるのは、
    オレらだけ…なのに、


    邪魔をしやがるのは…
    あの、変わり果てた…








    精魂込め人にしてもらったはずだったが。
    心は凍りつき感情が砕けて欠けちまった。
    ジェラートが本当に物言わぬ人形になり。
    旦那が額縁に収められて帰ってきたとき。
    現実感が無いまま二人だと認めないまま。

    …感動したんですよ…
    …額に入れて飾っておきたいほどにね…

    売った爆弾で死んだオヤジの声が脳裏に。
    刻んだゲスも同じ事を考えそうしたかと。
    微かでも納得できるとしたらそんだけで。
    後は意味がわからず時だけが呆然と過ぎ。
    屈辱と疲労の渦中で漸く息を継ぎながら。
    答え合わせはまだかまだ来ないか早くと。
    待ち続けるうち逃げ遅れ獣に戻っていた。
    答え合わせなんぞとうに終わってたのに。
    どうしてもどうしても諦めきれなかった。


    それほど希望も幸福も二人と共に在った。











    どこへも引き返せないところに今は居る。
    前にはあとひとりだけ後ろには大将だけ。
    人のままでは居させねえその想いだけで。
    人たる所以を根こそぎにしたクズどもを。


    『敵を感じた段階であらかじめキレとこうか。』
    『副交感神経に働いてもらうタイミング調節。』
    『何でもいいんだよ慣用句でも映画ネタでも。』
    『キミの脳も身体もクールダウン苦手だから。』


    消えた今もオレを護る甘やかな声を聴く。
    思い出せない慈しい顔たちを仕舞い込む。
    半瞬の例外も無い怨嗟を抱えてきた二年。
    負けやしねえオレは強い…さあ行こうか。








    ヤツらを探し出すために……


    『根掘り葉掘り聞き回る』の…
    『根掘り葉掘り』……ってよォ~~









    (完)



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  • オマケのようなもの

    2019-07-31 05:491









    本編にブッ込めなかった空気感なんぞを一席。












    あれはいつのことだったか









    「怖ぇこと言い出すなよ!土壇場で思い出したら、」
    「くっくっくっ。大変だろーなぁ、思い出したら。」
    「て…てめ…わざとかよッ、どーゆー性格なんだ!」
    「言っとくが思い出すのはてめーの勝手だからな。」
    古いSFホラーの酒飲み話だが、シャレにならない者もいる。


          「「ミクロの恐怖」だ?くっそ…ヤなヤツ…」
          「この話は終わりな。しかし良く寝てんな。」
          「「爆睡」って言葉の意味がすげー解るわ。」
          「少なくとも人の三倍四倍は頭使うもんな。」
          睡眠は脳みその休暇整頓ゆえ仮眠とはいえコイツは容赦ない。


    「寝落ちっつーけどガチで落ちるのな。」
    「子供みてーだよな。旦那そろぼちか。」
    「けど大将呼んでく意味あったのかね?」
    「あるよ。置いてくとほら…解んだろ?」
    周りのハラハラどこ吹く風、ZZZZZ…、てな具合である。


          「落書きしても気付かねーかな。瞼に目とか。」
          「やってみたらどうだ命が惜しくねーならよ。」
          「言ってみただけだ逃げ切れる自信ねーって。」
          「こういうのはむしろ喜びそうな気がするが。」
          すちゃ、と取り出したのは銀パッケージのピンクのルージュ。


    「わざわざ買ってきたのか?」
    「いや女が忘れてったやつ。」
    「けっこう高ぇやつじゃね?」
    「パチモンだが色はいいぜ。」
    そろそろと近付く、目を覚ます気配は全く無い、幸せそうだ。


          「起きるなよーーー…ぬーりぬり…っと。」
          「やりやがった…ちょ待て無駄に似合う!」
          「色が白いからなー…イイと思ったんだ。」
          「されるがままだな。…待て待て…こう、」
          商売道具のよく磨いだ刃先で手早く、眉を整え産毛も剃って。


    「気ぃ付けろよ…傷一つつけてみろ命ねーぞ。」
    「話しかけるな気が散る。おお…いんじゃね?」
    「ネコネコしいな、人のいるトコで寝るしよ。」
    「野郎の肌じゃあねー…つーか幾つだこいつ?」
    もともと陶人形じみたのが柳眉になると破壊力が当社比三倍。


          「女っぽいってわけでもねーんだがな。」
          「真ん中…でもねーな。両方…も違う。」
          「されて嬉しいこと全部やる感じかね。」
          「至芸だそーだぜ、小姑が言うにはよ。」
          ガミガミ細かく言うからって小姑呼ばわりはあんまりだろう。


    「あーあー髪ボッサボサ。」
    「櫛ならあるぜ。ほらよ。」
    「細かい傷わりとあるな。」
    「自分だけは…だもんな。」
    他人の傷は跡形も無く癒すが自らだけは医師頼りという皮肉。


          「なんでこんなトコに居るのかねえ…」
          「まあいろいろ…あったんだろうよ。」
          「大将に訊いたがクっソ睨まれたわ。」
          「勇気あんな…空気読まねーってか。」
          悲劇だからか、自分だけが知ってるとの密かな優越だからか。







    ふいにドアノブの回る音がした。
    「帰った。変わった事は無いか。」
    聞き慣れた舞台役者ばりによく通る、美しいがおっかない帰還の一声に、
    ガラにもなくしんみり眺めていた悪ダチ同士が、文字通り飛び上がった。
    あばばばっとルージュや櫛を隠すが、視線は既に寝顔に貼り付いている。
    「…塗ったくったのはどっちだ。」
    返事せずとも目線で正解を選び取った右手が、まっすぐに胸倉へ伸びた、

    ぱし。
    「…、」

    届く寸前の右手を、その下から伸びた左手が包み受け制めていた。
    なぜ制めると訝る顔に静止したままキロと眼の動きだけが応える。
    「あ…ああ、その…悪気…は、」
    ぎぎ…と、掴んだまま力ずくで筋肉の盛り上がる腕を下ろさせる。
    特に頑張っている様子でもない、厳しい顔立ちは穏やかなままだ。
    このご面相で極めて…温順で我慢強く波立たない性格ではあった。
    た、助かった?

    滑るように、ソファーの前に来てしゃがんだ。
    額に触れる、手首に真珠色の環が浮き上がる。
    微熱は上がらないままで下がったらしかった。
    掌にすっぽり入る肩に手を掛け、軽く揺らす。

    「…………。」

    枕元に三つの白い影がぼんやり浮かび濃くなってゆく。
    寝コケていたツレが薄目をぱちぱちし、口を動かした。
    おかえり、と息だけで。
    「確認したいがいいか。」
    片手が合図用の小鏡を出し、その顔の前へ差し出した。
    ???、と、ぽけらっと見ていた目が、大きくなった。

          ガバッと飛び起き…るが血圧低いせいでヨタる。
          ぴょんと使い魔どもが跳ねわちゃる、混乱混乱。
          両肩を支えて座らせすくりと立つ、姿がブレた。

    ――― ぶん ―――

    何が起きたか皆が理解するまでに数秒を要した。
    ソファーの横を大の大人が伸身縦回転で舞った。
    天井の高さと受け身の訓練が無ければ死んでる。
    着地はケツから。
    「!!!!!!」
    人間、本気で痛い時には声なんか出ないものだ。


          「ルージュはカップが汚れる、…と言っている。」
          大将に負けず劣らずの低音イケボが理由を説明。
          片腕と背でブン投げてからごくごく平静に説明。
          着地の角度考えて投げるからダメージそこそこ、
          だが重力消されるコワさは味わってみれば解る。
          傍であり得ない光景を見るコワさも、以下同文。


    「…それもそうだ。礼儀というのは大切だ…が、」
    大将の呆れた流し目がケツと同じくらいイタい。
    「当人が嫌かどうかを確かめるほうが先、だな。
     すまなかったな、次から順序に気を付けよう。」
    いや待て気を付けるべきはお仕置きの程度では?
    「時に、カップにつかないタイプのルージュも
     最近はあると聞くが、…ああ、ただの雑学だ。」
    座ったままほよほよと首を横に振られ潔く撤退。


          細い指がちょちょいと動くと真ん中の使い魔が、
          脂汗流して悶絶している丸刈り頭にスポと装着。
          ピンクに塗られた唇が塗った相手を向いて呟く。
          歌うようなその声が優しいことを皆知っている。
          びっしり浮いていた脂汗が見る見る引いていく。
          ふはーっ…と、詰めていた息を吐き顔色が戻る。


    ふらふらーと立ち上がるとユニットバス方面へ。
    ふわふわと三体の使い魔たちが後をついて飛ぶ。
    「頭を冷やしてついでに洗う、…と言っている。」
    「長湯は良くないぞ、よろけているが大丈夫か。」
    一歩踏み出しかけた大将の前へ長身がスと移動。
    動線を華麗に遮っておいて手首をじいっと見る。


          顔を動かす前にキロと目だけ向ける独特の仕草。
          き…来たこっち来た…何…でしょうか逃げたい。
          「眉は助かるが次は石鹸かローションを頼むと。」
          …は?、…と固まる、…大将がうんうんと頷く。
          「肌が傷むからな。形は悪くないとオレも思う。」
          「顔剃りの代金が浮くのは助かると。…それと、」


    耳元に口を寄せるとぼそぼそと、小声が囁いた。
    ツレのそれはくすぐったく可愛いばっかりだが。
    言われた意味を反芻し理解すると、腰が砕けた。
    「…言っておくが、思い出すのはお前の勝手だ。」
    ぞぞぞと鳥肌が立って脂汗がだらだら流れ出す。
    「…自分がやられて嫌なことは仲間にはするな。」


          大将が名前呼びながら何度か揺さぶってきたが、
          けっこう長いこと反応できずにいた…気がした。









    「それからあいつらには平謝りすると決めてる。」
    「食べないならくれないか。冷めてしまうだろ。」
    「何皿食うんだよどこ入ってんだアホだろお前!」
    有り合わせの田舎風煮込だがあいつのは美味い。
    フライパンで手焼きしたでかいフォカッチャを
    添えて食べると絶品だ、生地も何か独特だった。
    制されてむくれながらクラムで汁までさらえる。
    「何がどう怖かったか今イチ解らないんだがな。」
    「説明ヘッタクソだよな。整理整頓して話せよ。」
    「まず最初のSFホラー?どんな話だったんだ?」


          謎光線だかなんだか浴びた男がどこまでも小さくなる話だ。
          「仕事」の待ち時間にどこぞの書斎で読んだ英語の児童書。
          主人公は元に戻れず最後は原子レベルの世界へ紛れ消える。
          何かのハズミでもし「能力」の歯止めが壊れたらどうなる。
          コントロールできるつもりでも「能力」には謎が多いよな。
          はじめ笑っていたがだんだん真顔になり顔色が悪くなって…


    「…それをアレに言うとか…」
    「…悪趣味にも程があるな…」
    呆れる氷点下の三つの目玉。
    悪かった、反省はしている。
    反省嫌いだが今回ばかりは。


          「で?最後の囁きの内容は?」
          「…言いたくねぇ…怖ぇ…。」
          「ビビリが他人は脅すかよ?」
          「る…るせ…言うよ…言う。」
          思い出したくもねぇのによ。


    気が付くともう間合に入られている。
    初動が大概追えない、足音もしない。
    東洋系だからか体臭ってもんも無い。
    ニンジャってやつは実在するんだな。
    僅かにザラつく低いイケボの説得力…



    ――― お前の入った鏡の前に同じ鏡を立てたらどうなる ―――



          ああ、とクソ生意気が顔見合わせる。
          「出口を間違えたらどうなるのかな?」
          「うわぁやめろ怖ぇだろーがあああ!」
          「まあ思い出すのはあんたの勝手だ。」
          「だから反省してるつってんだろぉ!」
          けらけら笑って手付かずの皿を略奪。
          「食欲無いだろ、やっぱりもらうよ。」


    だがしかしクソ生意気の片割れ沈黙。
    手が止まっている…眉間に深い縦皺。
    「…どうしたんだい、食べ過ぎかな?」
    ぼそぼそ…と返答、よく聞こえない。
    「うるさい属性なのにどうしたんだ?」
    「この話の怖ぇのはそこじゃあねえ…」
    カップを持つ手が震え水面が揺れる。


          伊達眼の奥の三白眼のまばたきが無い。
          「寝てたんだよな…ホラー話してた時。」
          は!と、両サイドが気づいて凍結した。
          あいつの睡眠はそれはハンパなく深い。
          カーチェイスの最中だろーが熟睡する。
          寝たふりなど有り得ない、なにせ多忙。
          隙あらば回復しないと心身共もたない。
          「…おっかねーのは…どっちなんだよ?」


    あれだけ深く眠っていても情報入れてる側なのか?
    熟睡中に聴いた事すら読み解いてしまう側なのか?







    「…そんなこともわかんねーのか?」
    むくり…と、ソファーから起きる影。
    アイマスクの下から鮮やかな青い瞳。
    女神が金筆で描いたような眉が寄る。
    「ぐだぐだうるせえ、寝られねーぞ。」
    つかつか寄ってフォカッチャを掴む。


          血の気の引いた三人尻目に丸かじり。
          「美味ぇ。それ手付かずか?よこせ。」
          無造作に略奪しエレガントに食らう。
          「目ん玉どこにつけてるんだかなぁ。」
          「なんだよ小姑。てめえ判んのかよ。」
          「誰が小姑だッ。もう一人いただろ?」


    そいつだよ、と…目に染みる青い瞳が笑う。
    「ソレを普通に拾って普通に扱う怖ぇのが。」
    とても真似はできねーな…と回すフォーク。
    「アレも一種の魔法かも、と思う時がある。」
    雑多な鬼才を受け容れる魔法、生かす魔法。
    故郷を囲む海よりも広く深いその稀有の懐。




    …違いねぇ、と気が晴れた。













    そんな日だってあったのだ
    あれはいつのことだったか
    思い出せないその暇も無い
    もう痛みも無い融けてゆく
    寂しがりの魔法使いが憩う
    そんな日が続くと思ってた
    そんな日だってあったのに










    (完)










    原作つきMMDはスターシステムの後継の一つとも思う今日このごろ
    投稿九つ目になりますのでこれにて失礼いたします、多謝多謝の多謝。
    また他ジャンルででも何か書けたら楽しいな。



  • 後書きのようなもの

    2019-07-20 23:20






    この拙い文を最後まで読んでくださる方がおられたなら。
    貴重なお時間いただき、本当にありがとうございました、
    ご不快は無かったでしょうか…それだけが気がかりです。
    ジョジョの奇妙な平行世界の一つ…
    ですらない、単なる私的な実験レポートでありましたが。
    さて実験は成功したのか失敗したのか…

    区分けは「ジョジョ五部MMDの二次創作」でしょうか。
    技術の進化と発想の自由闊達さには目を見晴らされます。
    たまには年齢相応の無駄息子だとか邪神コロネ暴走とか、
    お仕事を選ばない涙ぐましい暗チだとか、
    暗チのいる日常だとか、暗チの有効活用法とか、
    暗チのキャラ崩壊とか、暗チのドタバタ青春劇とか、
    暗チとちいさいのだとか、静画と動画で始まる謎解きだとか、
    リーダーが細部は完璧なのにズレてるとか、
    なんという影響力か…MMDっていいなぁ…学ぶしかないな!
    職人様がたに対しては伏して感謝申し上げる他ございません。

    ソルジェラさんを生き証人として解説してもらうという目的で、
    一番傷が少なくて身体が丈夫そうな人に居残ってもらいました。
    だがッ!ジャンプならッ!嘗ての強敵は最も頼れる味方のはず!
    そんなばかなアンタは死んだはずだあッ!は日常茶飯事のはず!
    ゲームとかには絶対使えない個性的なスタンドがいいなあとか…
    ソルベさん一言(断末魔)だけか残念、じゃあ静かな人でとか…
    ジェラさんCV無いのか、寂しいな喋るなということか、とか…
    原作ジェラさんは凛々しく、ソルベさんは渋く、良い男ですね。
    物語の二年前に亡くなっているのでメンバーとは二歳ズレると。
    弱い人が取られたなら皆の怯えとの合いが悪いので強かろうと。

    スタンドって魔法だよなースタンド使いは魔法使いだよなー
    そんなところから入っています(が最推しは波紋の初代様)
    うっかりモバイルとエロゲ投入したのはオーパーツでした、
    あと…ティッツァごめんティッツァごめんごめんごめんな!
    恥パで戻ってきたフーゴさん側近で活躍しているだろうか、
    シーラ嬢もムーロロさんもポルさんもお達者か。などなど。


    とりとめもなく。
    当方、十数年ぶりのファンアートです。
    では、これにて失礼をば…(深々礼)


    京アニ…辛い。
    国の宝たる夢売り職人が…
    …辛い。辛い。


    こんこん 2019.07.20