二次創作 狼の城と魔法使いの話~史上最強のソルジェラ~ あるいは、暗殺者チーム練成法、その一例 その1
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二次創作 狼の城と魔法使いの話~史上最強のソルジェラ~ あるいは、暗殺者チーム練成法、その一例 その1

2019-07-18 21:28






    夜半からぐずついていた空は明け方になり晴れた。
    過ごしやすいネアポリスとはいえ年の瀬となるとさすがに冷える。
    黎明の空気は好きだけれど湿気を含んだ冷たい風は好きではない。
    窓を閉めようか…ええと、午前の予定はたしか…めんどくさいな…
    オジサンたちはすぐ親や祖父気取ってマウントしたがるんだから。
    ぶっちゃけ僕には親なるものが良くは解らない、と、笑ってみる。
    解らないものを気取られたって扱いに困るだけだよ、無駄なこと。
    だのに僕こそ、そのよく解らないものになることを求められてる。
    妙案はあったんだ、…反則だけど、
    そう起死回生、おとぎ話の大団円。
    けどそれも…計画変更が必要かも。
    ふと隣を見る、
    ねえどうしますかあなたなら…代わりが見つかると思いますか?
    たまに気配を感じる気がして…そんなわけない、弱気のせいだ。
    ほら胸を張れ、あの人の賭けに相応しい黄金の子たる僕であれ。

    …とはいうものの…、
    それはそれで扱いには困る…あのままってわけにもいかないし…
    独断でどうこうしていいものでもない、バトンは捨てられない。
    というより…諦めるにはあまりにもったいない、それが本音だ。
    さんざん「投資」はしてきた…精魂込めて、細かいところまで。
    もう大丈夫だと思ったんだけど…そこからが進展無し、…長い。
    難物揃いってことだろう、さてどうしたものか…

    「お早うジョルノ。良かった、起きててくれて。」
    呼ばれて振り向くとバッグを片手にフーゴが静かに歩いてきた。
    まだ薄暗い夜明け、窓辺で外の空気を吸っていたところだった。
    僅かに緊張した面持ちに「予感」を覚えた。

    「お早うフーゴ。何か変わったことが?」
    「「彼」が病院から消えた。夜中過ぎ。」
    「…、そう。」
    きた…きた、よし計画変更の計画変更、
    そのうえ思ってた以上のこの手ごわさ!
    それでこそだ、あとは僕の手腕しだい。
    明るい緑の瞳に浮いた困惑が消え覚悟を孕む凛々しいそれに
    なったのを、今ではすっかり穏やかになった面持ちが眺める。

    「そうなんだ…。怪我人は出ましたか?」
    「看護師が片足に凍傷、警備員が右手の親指を無くしたそうだよ。」
    ああ、と痛そうな顔をするこの優しさは変わらず好もしいものだ。
    言葉遣いや態度もすっかり出会った頃みたいになってしまってる、
    言葉の選び方が丁寧なのはネイティブではないからなんだろうが、
    スラングや威張った言葉は実際似合わない…これで良い気もする。
    この方がしっくり来るから身内の前でだけ、と頼み込まれたのは、
    「彼」の存在を密かに知らされその扱いを相談されたときだった。
    反対するなんて選択肢は無いものの、驚きもしたし気後れもした。
    けれど他ならぬ我らが「ジョジョ」のたっての願いというのなら、
    憩いの場にでも知恵袋にでも…穏やかな眼で眺めながらそう思う。
    「彼」に関することは組織に先住する面倒な大人たちと同程度か
    それ以上に、この若いカリスマにままならなさを感じさせている。
    大丈夫「ジョジョ」仕掛けはしっかり仕込んでおいた、幾重にも。

    「でもやっぱり被害は少ない、埋め合わせは僕だけで出来る。」
    「意図してそうなったか偶然の成行かは判らない。どうする?」
    忌憚無く反対意見も頼むと言われてる、君の大切な仕事だと。
    「ミスタを呼んでください。先に病院に寄ってから追います。」
    外出着に着替えはじめる背をやや心配そうにフーゴは見やる。
    「了解。だが治療を先にしていていいのかい?」
    「ええ。行き先は決まってるし、もし途中で怪我人が出るなら、
     それは怪我しても仕方の無いたぐいの人達だろうと思うから。
     病院には長いこと無理を言いました、後回しには出来ません。」
    「信用は大事だからね。しかし、ミスタは納得しているのかな?」
    話しながら片手が盟友への緊急メールを送る。
    寝起きの悪い「上司」じゃあない、車に着いた時はもう居るだろう。
    いいえ、と、襟を閉じ振り向いたジョルノはにっこり笑った。
    「だから一緒に行くんですよ。留守番、お願いしますね。」
    「了解。幹部さんたちの陳情もついでに整理しておこう。」
    「ありがとう!フーゴが戻ってくれて、本当によかった。」
    片手を取り両手でギュッと、…生国式の拝む仕草が出る。
    こんなふうにふざける顔を見せるようになったのも最近だ。
    ジョルノなりにギャングの親玉「らしさ」をみたいなのを
    模索した結果、こんな感じのキャラの使い分けに落ち着いた。
    超引きこもり気質の先代は別人格まで持ってた細心だったが、
    アレとカブるのだけは嫌だ、あんな人間不信の親あるものか。
    もともと明るい金髪のフーゴだが、それを更にジョルノと
    そっくり同じ色に染め、緩やかに伸ばしてくれていた。
    年恰好も発想も近いから声音を似せてベールの一枚も通せば
    じっとしているのを好まない「ボス」に自由を与えてくれる。
    腹心の秘書、参謀役、護衛に影武者を過不足無く兼ね、
    このように苦手分野の負担もさりげなく受けてくれる彼は、
    今や新生パッショーネにとってもジョルノにとっても
    掛け替えの無い近しい存在に立ち戻っていた。

    「…本気なんだね。」
    革のビジネスバッグがジョルノに渡る。
    「君がそれを?」
    受け取って朝日のような笑顔が応える。
    「それもそうだ。出かけるには少し寒い。寒いの苦手だろう?」
    と届いたばかりの仕立ての良いチェスターコートを羽織らせ、
    「これはとても暖かくて手触りがいいんだ。持っておいきよ。」
    しなやかなスエードの手袋も手渡される。
    緑の瞳が薄く潤む、無言で袖を通す、お礼は無事の帰還後だ。
    キレてない時のフーゴはちょっと僕の生まれた国の人っぽい、
    懐かしそうに言われた時から不思議なくらいキレなくなった。
    「かっこいいよ。行っといで、待っている。」
    頑張れ「ジョジョ」勝負服のプレゼントだ。
    お小遣いは余ってるから、君のおかげでね。
    飽くなき冒険を命題とする、君は我らが黄金の子。

    元気良く通用門へ降りたジョルノの前にはお忍びの外出用の
    年季の入った車が横付けされていた。
    入団以前のジョルノが小遣い稼ぎに使っていたのと同じ車種と色、
    なりこそ古いがガラスはじめ隅々まで改造済みの防弾仕様だ、
    小さいわりに座り心地も良く、リムジンよりよほど気に入りだった。
    運転席に仏頂面のミスタ、とカルツォーネに食いつくピストルズ。
    助手席に座ると、フン!!、とぬくぬくを差し出される。
    「お早うミスタ、いただきます。」
    「腹ごしらえしねーとな。病院までは連れてくぜ。けど。」
    わちゃわちゃ食いつくピストルズ押しのけ残りを口に咥えたまま
    ガッとアクセルを踏み込んだ、機嫌が悪い。
    タメ口きかないミスタなんてミスタじゃあない!とのことで、
    フーゴと同じく以前の口ぶり。
    対等ごっこ、友達ごっこだ?序列が命のクソジジイどもに解るかよ、
    オレらはオレらの流儀で「共存」を模索していくんだ見てるがいい。
    忠誠心なら誰にも負けない、念のため。

    「オレぁやっぱ、反対だ。やば過ぎんだろ。」
    「やばいですね。なにしろ、既にしてやられてる。
     思った以上の強敵ですよ。あ、飲み物ください。」
    もぐもぐ食べながら膝横の革バッグを撫でる。
    「何だかんだで頼んだものみんな揃えてもらえました。
     フーゴは応援してくれてます。」
    「奴はお前にゃゲロ甘だからな、でもオレぁ絶対やだぜ、なにせ」
    「あ、待ってミスタ、停めて、早く!!」
    「え、ちょ」
    ギキイイイイッッ、とすごい音立てて車がスピンした。
    気にする様子もなく窓を開け、ジョルノは伸び上がり手を伸ばす。
    卵大のてんとう虫のブローチが飛んできて、華奢な掌に収まった。
    ミスタのきつい黒い目がジト目になり、いやあな顔で黙った。
    「そら予想通り。早く片付けて向かいましょうよ。」
    対してジョルノは得心の笑み。

    手をきれいに拭き、さっそくバッグを開き中を確かめる、
    「さすがフーゴ、こんなのよく見つかったなあ。
     ん、すごくまとまって…え、これ最高っ!!この発想は無かった!!
     ほらねやっぱり、フーゴ戻して大正解だったじゃあないですか。
     人材って何より大切ですからね、これは必要な試練なんですよ。」
    一緒にすんな…と、深い深いため息ついて、ミスタは車を走らせる。
    なんでこう冒険のノリで始めるかねぇ、まあ冒険は男の華だけどな?
    何でも出来るお前さんだから、これっくらいが丁度いいのかもだが。
    ピストルズよ、ボスに登んな、馴染むな、ぬおぉ緊張感がねぇーッ!!
    「はぁ…思い出すだけであちこち痛ェんだがな。こことかよォー。」
    脂汗かきデコ撫でる…残りはどーぞ使い魔ども、オレもう食欲ねー…
    なんだかんだでゲロ甘なのは、もとよりフーゴだけではないのだ。

    流血のクーデターから8ヶ月。
    げんなりした運転手と明るい緑の眼の少年を乗せ、
    小さなお忍び自動車は、静かな夜明けの通りを走り抜けていった。





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