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雨と聖歌
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雨と聖歌

2019-10-29 20:38





    フリーだの石仮面パードレ仕えならまだしも。
    ギャング組織の中の人となるとやはり組織人。
    大ペリーコロみたいな常人幹部が上で仕切る。
    下克上を防ぐために上は押さえるのだろうし、
    人間不信のピンクパパは数字管理しそうだし。
    する側はラクでもされる側は杓子定規で苦労。
    人を超えた力あるのにどうにもしんどい立場。
    五部は短いけどいろいろ考えさせられるなあ。

    彼らが組んだ理由は互助しかなさそうですし。
    寄り添うからには寄り添う実利が絶対に必要。
    「あの」彼らをチームとして連動させるには、
    リーダーとの間に接着剤が要る気がするなと。
    参謀兼ヒーラーというのは取り回し良き良き。

    そして処刑人というのはいついかなる世でも。








    雨と聖歌








    雨はやだね、髪が重い。
    ろくでもないことは大抵雨の日に。




    最近は腹空かすことも無くなったな、と思う。
    預金残高が二桁三桁になることもついぞなくなった。
    オレ様の場合なんとかしようと思や出来る筈ではあるが。
    自分で言うのもナンだけどオレ様の能力ってチートだからよ。
    ひょいと手を突っ込む、こういう店って鏡だらけだもんなあ。
    チャラと指先で掬い上げるでかい氷色の石のチョーカー。
    これいいねなんか似合いそうじゃね?持って帰るか。
    地味なカッコしてるが磨けば光ると思うのな。

    「なーんてな。」
    見るだけ見たら飾り台に置き直し引っ返した。
    ドア開けて洗面所に向かい洗面台の鏡から出る。
    明らかな冷やかし客を店員も怪しげな目で見送る。
    すかさずウインク、女店員のフリーズ尻目に退去。
    宝石なんざ買わねーよ能力チートでも庶民でね。
    盗品贈るとかだっせえし、喜ぶわけもねーし。
    そもそもの話、

    …そこは考えねえ決まり、てことで。

    雨をよけ別の店へ足早に。
    あいつの眼と同じ色の石で興味湧いたそんだけの話。
    軽くいこうぜ、か~るく。



    「おーいジェラート!」

    紙袋持ちアジトへ戻る。
    今回のオーダーのオレのパート無事終了。
    戻ってる筈なんだよなもう追加指令いらねえから。
    地球の裏側から帰ってきて二日だ、働きモンの女将な。
    頭使うんだから甘い物がいいだろ気が利くオレ様。
    「バッチのチョコ買ってきてやった…ぜ、」
    定位置覗いたが居ねえ。
    なんだよとカウチ見たら気に入りのペン。
    出がけ胸ポケに挿してたな…やっぱ戻ってる。
    トイレも風呂も気配ナシ、…ってことは。

    口笛吹き吹き階段昇る、アメリカンポップスさいこー。
    あいつ体力は難アリだがガチ巧え、踊りに誘うか?
    ツレとしか行かねえがいいだろオレにだって護れるぜ?
    アンタの場合単体でも充分身は護れるんだろうが。
    しかしまあアンタら二人して高えトコが好きだよねえ。
    ツレは給水筒やら手すりの上へ立ってる、鳥かよ。
    アンタもよく屋上から街や海を眺めてる、背伸びして。
    前住んでたトコだだっ広いド田舎だったらしいな。
    たまに高えトコから見渡さねえと落ち着かねえとかで。
    なんだっけ動物園のアレ、スリカータ?窓覗く猫?
    んな感じでミョーに切実でカワイイんだな絵面がさあ。
    くつくつ思い出し笑いしながらひたすら階段昇る。
    エレベーターなんざクソだね故障してて幸いってもん。
    地道な努力続けてこそのこの美腹筋ってワケだよ。



    しかしまあツイてたさすがオレ様。
    組んだのがここのヤツらで良かった、楽しー。
    ホルマジオの野郎もいい大将見っけてきたもんだ。
    仕事の間が開くとマジで飢えるからなー冗談さておき。
    飲んだばっかの三人組おっ死んだの聞いて危機感あった。
    組織の上と掛け合うとか言ってたがほんとにやるとはね。
    胸から上だけ胸像みたく並んでただとかカビてたとか。
    幹部のツテもカネもねーのに話が通るかよアホめ。
    発見現場で鉢合わせたヤツに誘われて来たが。
    大当たり、やっと息つけた感じだ。
    大将がイイよなー怖えが威張んねーし公平で。
    若えのにあのトーチャン感は何なんだよ惚れるわ。
    ホルマジオはカネがらみだけは信用出来る腕利きだし。
    プロシュートも口悪ぃが安定のってやつ…気も回るしよ。
    ソルベの旦那は…速ぇって実もフタもねえ事なんだなと。
    ヒーロー変身する最中で攻撃みてえなモンよ反則だろ。
    ボコられるとかマジ初めてだぜ痛えモンなんだな。
    あれからとにかく先制・速攻を心がけてんよ。

    「VS旦那は別の意味な早く済む、痛えのが。」
    『その速攻が出来ない「状況」作んないこと。』

    腫れを引かせてくれながらくすぐるような耳打ち。
    ああそうだなアンタの判断はいつも誰よりも正しい。
    アンタのアドバイスきちんと聞いてりゃオレは無敵。
    自分で言うのもナンだけどオレの能力ってチート。
    ふう…移動距離長ぇさすがにちょい疲れたわ。
    一緒にチョコ食って一服しよーや。


    窓から見える空は灰色だ雨足が強まってる。
    おやおや…ほんとに居るかね濡れちまう。
    屋上に出るドアをそっと開けて覗いた。

    んーやっぱ居たわ雨ん中に一人で。

    ちっちぇーなおい!と毎度の第一印象。
    いやタッパはそこそこあるんだが何故か。
    骨格が細えんだわそれがオレらと並ぶから。


    護ってやりたくもなるわなあ…壊れそうじゃね。
    こないだ寝てるとき顔イタズラしてマジごめん。
    やめろっつったのにホルマジオがやらかすから。
    オレはいつだってアンタの味方だ忘れんな?
    サインくれねーか枕の下入れっから。
    アタマ良くなる絶対。


    何してんだろうねつか何見てるんだろうね。
    立ってるトコはだいたい同じ方向も同じ。
    ん?そういやツレも方向は。
    どっちだっけあれ?
    方角は…東か。
    東には何が見える?
    街と遠くの海しかねえけど。
    二人して別々に同じ方向をなんで見てる?
    不思議だなちょいと様子を伺ってみようか。

    ドアを閉めタタタと階段降りて。
    二階下の踊り場の鏡へダイブ。
    左右逆の階段タタタと登り屋上。
    ダッシュで手すりの鳥よけへ。
    モザイクに鏡が紛れてたぜ確か。
    こっからだとアンタのすぐ横。
    曇りを拭いて片目で覗き込んだ。

    細い足がまず見えたから上へ上へ。
    肝心なトコ必ず隠れる服着てんだよな。
    ナニとか咽喉仏ついてる?はっきりしねえ。



    …歌?



    横顔を見上げたと同時そう思った。
    親指の爪ほどの鏡からじゃよく見えん。
    ちょい曇った小さな覗き窓に密着。
    口の動き息の長さ…やっぱ…歌ってた。
    声出せねえジェラートが歌ってた。

    また意外な…
    けど考えてみりゃ能力者になる前は普通に喋れた筈。
    スタンド経由でしか聴けんが超イイ声。
    聴こえねーけど巧いんだろうな。
    円を描きゆっくり周る白いスタンド達。
    読唇は覚えかけだし視界悪くて歌詞は判らなかった。
    何の歌かね…

    おっと風邪でもひいたら。
    気にはなったが戻ってドアから普通に呼んだ。
    ずぶ濡れ魔法使いは戻ってフロ入り喜んでチョコ食った。
    バカ話して笑い転げたが歌の話はしなかった。
    鳥よけの鏡は後で磨こう。






    「だからどーゆーこったよ!」
    癇癪もちがテーブル叩くと室内なのに霜が降る。
    興奮すんな冷気が漏れてるただでさえエアコン古ぃのに。
    つかうるっせえないちいち腹から声出すなって。
    「座ってろ。説明するから。」
    大将がドス効かして下を指すかなり苛立ってる。
    「何が気に入らねえ!なんで懲罰金差っ引かれたんだよ!」
    組織と折り合わねえ社長すげ替えが依頼だった。
    不自然ねえようにとの厳命。
    愛人のアスリートのドーピング発覚させ騒ぎに。
    セックススキャンダルと脱税に飛火させ無事辞めさせた。
    期限も後釜もオーダーどおりにやれてたんだよ。
    なのに懲罰金で手取り四割?
    証拠は残してねえ愛人はもともとズルやってた。
    摂取量をほんの少し間違えさせ発覚を確実にしただけだ。
    オレが増量しギアッチョが弁護士を遅刻させた。
    愛車の「偶然の」故障でな!
    凍らせたエンジンが溶けりゃ何の細工跡もねえ!
    こんなイイ仕事オレらの他の誰に出来るふざけやがって!
    「使ってた興奮剤がウチの組織の商品だったと。」
    はぁ?そこ?知るかよボケ!

    薬の商標名が知れ渡り売りにくくなったって?
    売り上げ落ちた割合を差っ引くのが規則?
    組織に損害与えた場合の罰則だと?
    大量に売れるモンでもねえ…
    もともと流行り廃りの早えクスリ…
    計算方法オカシイあんまりってもんだぜ…
    な情報無かったし新社長の上納金で潤ったろ…

    分け前に期待して揃ったメンツが静まり返る。
    誰も言い出せねえが半分以下はさすがに…

    「今回の分け前は辞退する。」

    静まり返った室内に低いイケボが唐突に。
    振り向くと旦那に凭れジェラートが俯いてた。



    本体が元気ねえからスタンドたちもじいっと止まってた。
    「皆すまなかった、それで我慢してくれと。」
    作戦中は大抵だが長身のツレの膝に乗って手に触れてる。
    読解スタンドの通信速度&精度の為の接触。
    自分のスタンドに声取られてるからツレに発声任せてる。
    筆談も囁きも出来るが会議には向いてねえ。
    こんな時にナンだがアンタそうしてる時が一番映えるわ。
    並びがイイんだよすげー小さく白く見える。
    アンタと並ぶためにデザインされたよーなツレだもんな。
    絵面見てると何か落ち着く…変な話だがよ。
    「こちらのリサーチ不足で迷惑かけた。以後徹底すると。」
    「いやジェラートちゃんは悪くないだろう!」
    オレほか何人かが反論するより先にメローネが怒鳴った。
    会議中だ大音量でその呼び方やめろや変態。
    「誰がジェラティーナだボケがジェラティーノって言え!」
    「ギアッチョよ静かにしなそこじゃあねえ。」
    冷静になぎ倒すプロシュート強えダテに小姑やってねえ。
    「リストすらねえのにチェックしきれるか。」
    「そうだぜ気にすんな、アンタの着想には助けられてる。」
    何だかんだでホルマジオもアンタびいきだ。
    「オレらじゃあ脅す殺すの話になるトコ大したもんだぜ?」
    「俺も死人を出さず片付くから気が楽だぞ。」
    自動追跡で愛人突き止めたメローネはもう機嫌直してた。
    「俺は四割でいい、なんならキスするかい?」
    「オレも四割でいい!事務のクソどもブチ割っていいか?」
    「良くない。…振り込んどくから先に帰れ。」
    大人の話があるからと話にならんクソガキ二人放り出す。
    大将がデコ押さえてる大変だよなアンタも。



    小姑と伊達男が並んで葉巻ふかしたちまち部屋が煙る。
    ペース速ぇな機嫌激悪だわまあ無理もねえけどよ。
    「その規約は知ってるが無縁だと思ってたぜ。」
    「適用されたこと無かったしな、今まで?」
    振られた大将が運ばれたコーヒー一口。
    「偶々だと思っている。今回だけは。」
    「そう偶々。該当する品を見つけた。」
    軽く乗り出し青い眼が剣呑に大将睨む。
    「で報酬を削る判断をした。前例はねえ。」
    「問題はその判断をどこがしたかって話だよ。」
    そっちはグラッパ、ペッシはミルク、オレは黒茶。
    旦那どこのカメリエーレだよ給仕が板につき過ぎだぜ。

    いつもなら一緒に飲み物運ぶジェラートが元気ねえ。
    リゾットが立って傍へ寄るとその額に掌を当てた。
    いつもなら阻止するソルベの旦那が黙ってた。
    「休めジェラート。…だが、一つだけ。」
    熱があるんだな濡れたせいかな。
    「どう思う?」

    細い人差し指が上を指し、魔法使いは退室した。
    黒い使い魔も付き添い大将のヤサに引き上げた。


    「カネ持たせたくねえ…って事ですよね。」
    どう思うか訊かれたペッシが上目遣いで核心を突く。
    黙り込んでたが若手の中じゃあ飛びぬけてマトモだ。
    そう思ってても誰も口に出来なかったが。
    やっぱそうだよな…そうとしか見えねえ。
    「ムカツクよな。仕事が軌道に乗ってるってのによ。」
    「逆だぜイルーゾォ。軌道に乗ってるからこそだよ。」
    と半眼で葉巻を突きつけるプロシュート。
    「ちょい目立ち過ぎちまったってことか?」
    「だろーよ。無理難題なんでもクリアするだろウチ。」
    二人して交互にきれーーに灰皿に灰を並べてやがる。
    「仕事頼んどいて巧くやり過ぎるなって…」
    隣のペッシが気の毒だぜ一旦消しとけよ。
    ツテもねえ野良犬の群れが頼られてチヤホヤされて。
    上から見りゃあ調子乗んなとクギ刺したくもなると。
    「こんなもんスかね。儲けさせてんのに。」


    切なげに愚痴るヒヨコ見たらイラッときて立ち上がった。
    頬骨に指当てて黙ってる大将にもなんかイラついた。
    充満した葉巻の匂いの濃い煙にもイライラした。
    「悪ぃ今日もう帰るわ、ヤボ用あるんでね。」
    リアクションはアンタらに白紙委任な。
    雨の日は嫌いなんだよ髪が重てえ。        ち…
    四割でも独りの頃よりマシだ。        腹立つ…
    当分困らねえからいいさ。        暗ぇなおい…
    頭いいだろアンタら。        いやそれもだが…
    どうにかしなよ。        見損なったぜ大将よ…
    茶を呷った。        なんで謝らせたまま帰す…
    外は雨。        あんな顔してんの見た事ねえ…
    寒…        アンタも下に痛みを投げるだけの…



    乱暴に髪を解く。
    葉巻の匂いが鼻についた。
    熱いシャワーで頭洗って夜の街へ。
    どこ行くってんでもないただイラついた。
    暗がりに浮くカジノやリストランテの灯りより、
    入り組んだ暗い路地が馴染みの生い立ち。
    どこも幹部どもの入り組んだシマ。
    オレのものなんて何もねえ。
    あんだけカネ稼がせても。
    これほど力があっても。
    マシだと思ってたのに。
    見下されがんじがらめ。
    なんにも変わってねえ。
    今日は…どうかしてる。
    ああヤだな思い出した。
    雨の日ってのは…嫌だ。


    (出来るんだろ、芸を見せな)


    「るっせ…っ!!」
    濡れたステンドグラスに振り上げた手を、
    横から誰かに停められた。
    「怪我をするな。」
    穏やかな鷹の眼。
    ウチのヒーラー…だった。
    「居てくれて助かった。…頼まれてくれ。」
    「え、…ああ…。」

    大通りに見かけて追いかけたと。
    甘口の赤ワインと果物と骨付きの子羊肉。
    商店は閉まってるが馴染みの露店主から買う。
    ツレの熱が高いんで食材が欲しかったと。
    人目につけねえから困ってたと。
    「すまんな。助かった。」
    盗る発想は…アンタはねえよな。
    「遠出から帰ったらリゾットが飲んでた。」
    そうだろうな酒豪ってよりはありゃ酒が主食。
    大将は今夜は帰んねえらしい、後始末か。
    土産の礼に飯食いに来いと言う。
    そういや腹も減ってる…
    「実はツレは少し落ち込んでる。」

    そりゃあ一大事と思ったからついてった。





    匙をふーふー。
    葛湯飲んでる口が猫々しい。
    お互いチョコから後は食ってねえ。
    大皿にクスクスと子羊の煮込みと野菜。
    ジェラートには子羊のスープのコメの粥。
    食後のホットワインもうめえ…あったまる。
    「リゾットからだ。懲罰金は二割で済んだ。」
    メール見せる旦那はスタンドを解除してる。
    落ち込んでるときは心読まねえいい相棒だ。
    「助かるな。車がそろそろ限界きててよ。」
    『運転慎重だから長もちしたでしょー。』
    「日本車の耐久性も狂ってるしな。」
    『最後に乗っけてくんない?』
    お安い御用よ。

    ちびちび飲みながら話した。
    反発もマズいが放置も不利になる。
    言い返さねえと見られて次もやられる。
    押さえに来たのはたぶんボスじゃあない。
    幹部たちや親衛隊だ、唐突で不用意過ぎる。
    『下が目立ちすぎるとロクなことないから。』
    気をつけなくちゃなと細い手で頬杖をつく。

    「…落ち込んでる理由ってそんだけなのか。」
    もうちょい深刻な気がしたからツッコむ。
    ツレとちょっと顔を合わせて目を伏せ。
    『騒いだら俺たちのことがバレる。』

    ああ…それ気にしてたのか。
    なるほどなあ。

    否定はしねーよそれはある。
    アンタらに気休め通用しねえよな。
    「それ「騒げねえ」んじゃあねーから。」
    え?と四個の眼が見る、勘違いすんなよ?
    「「騒ぎたくねえ」んだからな。間違うな?」
    でかい猫目と鷹の目が黙ってオレ見つめる。
    「こっちの都合だ。アンタらには関係ねえ。」
    うるうるすんなよな実際そうなんだからよ。
    イルーゾォ、と、涙目の魔法使いが笑う。
    『髪ほどくとイケてるね。かっこいい。』
    「オレ様はいつだってイケてるわ!」
    何故か旦那に吹き出された。
    ツボ変じゃね?




    騒げねえと大将に言わせねえために泥を被った。
    恥はかかせず奮わせてオレらの不利も不満も散らした。
    やっぱたまんねえわアンタらまとめて嫁に来な?




    礼の礼をさせてほしいと言われた。
    ありがたくお受けして半分酔った頭で白状した。
    「メンタルケアとかアリかアンタ?」
    身体の不調は毎度診てもらってるが心はどうだ。
    『ナシじゃあないよ、話してみる?』
    囁く息が熱くてエロいんだがツレは席外すしよ。
    「チーム来るかなり前のことだが…」
    あの時も冷たい不快な雨が続いて髪が重かった。
    「成金BBAにレンタルされてよ…」

    表向きはオモチャ屋の未亡人だったがいわゆる死の商人。
    係争地に地雷やトラップ流して儲けてた。
    気ままに取引を繰り返してたら大勢に現場を目撃された。
    それをリストアップし全員殺してこいと。
    中には目撃したかどうか定かでない者も何人かいたんだ。
    後回しにし最後に確認したら札束で顔を…

    どんな密室にも入れるイヌだろ出来るんだろ芸を見せな!

    固い札束とヘドが出る言葉とにボコられて殺しに行った。
    善良そうな若い娘…妹はクララ姉さまと。
    見せしめだから惨く、と…仕方ねえからナイフでハデに。
    言われたとおり密室で…即死はさせたが…
    札束投げつけたBBAの爆笑と遺族の妹の泣き叫ぶ声が。
    すげえ腹が立って惨めで、忘れられねえ。
    「同じなんだよオレも娘も、オモチャにされたって点で。」
    返り血と雨で髪が…身体が心が重かった…


    気が付いたら寝転んでてジェラートが膝枕してくれてた。
    熱でめちゃくちゃ熱くて痩せっぽちだが気持ちよかった。
    「ムカついて、ムカついてよ…こういうこと、ある度に、」
    こんなん他の誰にも言えねーみんなどう処理してんだよ?
    『辛いね。…忘れたい?』
    囁かれて考える、どうなんだろうなオレは忘れたいのか?
    『記憶から消すことは出来るけど。…改ざんすることも。』
    目の端にアンタの真っ白なスタンドがふわふわと飛んだ。
    ドリーム・シアターの暗示…脳に働きかける忘却の魔法。
    「…いや…」
    ラクだろうが…それをやったら自分じゃあなくなる気が。
    うんそう言うと思った、と魔法使いは涙目のまま笑った。
    『思い出した時は、何度でもキレにおいでよ。待ってる。』









        …忘れてたまるかと思うキミの強さを忘れるな。
        …人たる所以を手放すなそうしていればいつか。


















    あれから…前ほど雨は嫌でなくなった。
    やりきれなさにキレても我慢強く聞いてくれるヤツがいる。
    雨の日の悪くねえ思い出も出来たしな。
    あの日アンタが歌っていたのはレクイエムだったんだろう?
    減給の話はアンタが最初に聞いたんだ。
    目立ったこと仲間を巻き込んだことそれが悲しかったんだ。
    だから東に向かって鎮魂歌を歌ってた。
    巻き込んで死なせたと思い込んでる前の家族に詫びながら。
    東の遠くは、彼らが眠るアンタの故郷。
    なんでそれに気付くかって?アンタが熱出すタイミングだ。
    仲間を困らせたそう思った時だろうが。
    思い出して怯えるんだろまた亡くしちまうかもしれねえと!

    あいにくだな無力な前の家族とは違う。
    こんな生業だがアンタ残して死ぬ気なんざねえ強ぇからよ!
    言ってやりたいが…言えねーもんだな。
    おっかなびっくり気にしてんのも、案外悪くはねえんだが。
    ツレが口出さねえ何が地雷か判んねえ。
    感謝するとか慣れてねえからどうしたもんだかわかんねえ。


    ファン心理ってのはよこんな感じだろ?


    そこでオレのチート能力の出番てわけ。
    目の細かい耐水サンドペーパーで石膏の曇りをはぎ取って。
    銀磨き布で磨く便利な物があるもんだ。
    宝石屋なんぞ無縁だと思ったが役に立つこともあるんだな。
    聖歌でも歌ってたことあるだろアンタ。
    そのとびきりの「発声」は、素人さんじゃあねえもんなあ。
    「おっし。ま、こんなもんでいいだろ。」

    屋上の鳥よけの鏡がピカピカになってる事には気づくなよ?
    疚しかねえぞこれは必要な見守り窓さ。






    次は笑って歌いなよ、特等の観覧席、誰にも絶対教えねえ。







    (完)







    本編その六の最後で触れたオサゲさん話を。
    ワーキングプアの悲哀と、恥パ設定いじり。
    暗殺屋らしからぬ人間臭さが際立ってた彼。
    一番メンタルケアが要りそうなんですよね。
    親衛隊の姫との折り合いもつかないかなと。
    描かれなかった二人は優秀な触媒になれる。

    あと二人…ガチガチの耽美方面もアリかな…
    とはいえあの場面は触ったら駄目って気も…



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