「1+1は2じゃなくて『大きな1』じゃないの?」に対する現代数学的反論を考えてみた
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「1+1は2じゃなくて『大きな1』じゃないの?」に対する現代数学的反論を考えてみた

2016-05-22 22:58
  • 163
発明王エジソンは小学生時代、学校の先生にこう尋ねたと言われています。

「1+1はどうして2になるの? 1と1を足したら、大きな1になるんじゃないの?」

この話が本当かどうか知りませんが、「1+1はなぜ2になるのか」という疑問はときどき話題にあがる興味深い疑問です。
結論から言えば、もちろん1+1=2ですし、数学的にそれを証明することもできます。
ここではその証明を見ながら、「どうして大きな1じゃないのか?」という点を考えてみたいと思います。

「大きな1」派の主張

どうして1+1が大きな1になるのか、その根拠はこんな思考実験(?)です。
粘土のボールが1個あり、もう1個同じものを持ってくる。
それをくっ付けて、こねると、大きな1個のボールが出来上がる。
これは、1と1を合わせた結果、大きな1になったと言える。

一見正しい議論に思えます。我々はこれを切り崩さないといけません。

数の定義

突然ですが、数とはなんでしょうか。1+1=2を証明するためには、まず数とは何かを考えねばなりません。
現代数学では、数は「集合」を使って定義されます。

集合とは、「ある条件を満たすものだけの集まり」のことです。
ちょっと分かりにくいですが、例えばこの世にあるすべての本を集めたら、それは「本の集合」になります。
他にも、「1,2,3,4,5,6,7,8,9」を集めれば、それは10未満の自然数の集合になります。これを数学では、
 {1,2,3,4,5,6,7,8,9}
という記号で表します。

ちょっと注意しておくと、「本の集合」と「本」は別物です。本の集合は「本の集まり」のことなので、本そのものではありません。
{1,2,3,3,4,5,6,7,8,9}も、10未満の自然数の集合ですが、これ自体は10未満の自然数ではありません。
敢えて分かりにくい例を挙げると、1と{1}も別物です。前者は数1ですが、後者は「1だけが入った集合」を表します。

数を定義するには、空集合を使います。空集合とは、「中身が空っぽの集合」のことです。
「ワンと鳴く猫の集合」には何も集まらないので、空集合です。
これを数学では、
 {}
という記号で表します。
厨二病をこじらせた人なら、“無”を表すのに“Φ”と書いたことがあるかもしれません。実はΦも空集合を現す記号です。数学ではどちらの記号もよく使います。

ではいよいよ数を定義しましょう。まず、0を定義します。
0は、このように定義されます。
0={}
ゼロとは空集合のことです。中身が空っぽの集合こそが、ゼロなのです。
厨二病をこじらせた人なら、《ゼロ》を《Φ》と書いたことがあるかもしれません。それはΦが空集合を現し、空集合がゼロを定義しているからだったのです。

次に、1を定義しましょう。
1は、このように定義されます。
1={0}
 ={{}}
おわかりいただけただろうか?

ちょっと分かりにくいですね。これは「中に空集合だけが入っている集合」です。もっと言うと、「中に0だけが入っている集合」です。
先ほども注意しましたが、これは0ではありません。0と、「0だけが入った集合」は別物です。
1は、「0だけが入った集合」として定義されるのです。

次に2は、このように定義されます。
2={0,1}
 ={{}、{{}}}
0と1だけが入った集合が2です。
以下同様に、3,4,5,6…も定義されていきます。
3={0,1,2}
 ={{},{{}},{{}、{{}}}

4={0,1,2,3}
 ={{},{{}},{{}、{{}}},{}{{}},{{},{{}}}}}

5={0,1,2,3,4}
 ={{},{{}},{{}、{{}}},{}{{}},{{}、{{}}}},{{},{{}},{{}、{{}}},{}{{}},{{},{{}}}}}}

6={0,1,2,3,4,5}
 =……(諦めた)
数が大きくなるごとに、どんどん書くのが面倒くさくなっていきますが、構造は案外単純です。一度自分で書いてみると、すんなり理解できると思います。

足し算を定義する

数を定義したので、次は足し算を定義しましょう。
足し算も集合を使って、このように定義されます。

m+1=m∪{m}
m+(n+1)=(m+n)∪{m+n}
おわかりいただけただろうか?

だいぶ分かりにくいですね。
まずいきなり出てきた「∪」ですが、これは和集合を現す記号です。和集合とは、ふたつの集合の中身をあわせた集合のことです。
例えば
 {猫}∪{犬}
だったら、
 {猫,犬}
となります。猫だけの集合と、犬だけの集合の和集合は、猫と犬だけの集合になります。

m+1=m∪{m}という式は、「mに1を足す」という操作を定義しています。
例えば、「3+1」で考えてみましょう。これは、
 3+1=3∪{3}
となります。
ところで、
 3={0,1,2}
でした。よって3+1は、
 3+1=3∪{3}
    ={0,1,2}∪{3}
    ={0,1,2,3}
となります。
ところで、{0,1,2,3}は、4の定義でした。そこで我々はいま、次の式を証明したことになります。
 3+1=4

足し算を定義するもうひとつの式も、解説しておきましょう。ここまででは、まだ「1を足す」という操作しか定義できていません。
もうひとつの式は、
 m+(n+1)=(m+n)∪{m+n}
でした。わかりにくいですが、この式の右側は結局、
 (m+n)+1
と同じです。
カッコの中から計算するのが原則なので、この式はつまるところ、
 「nに1を足してからmを足す操作は、mとnを足してから1を足す操作と同じ」
と言っているにすぎません。

これで本当に足し算が定義できているのか、ここでは3+3で考えてみましょう。これは、上の式でm=3,n=2の場合です。
 3+3=3+(2+1)
    =(3+2)∪{3+2}
    =(3+(1+1))∪{3+(1+1)}
    =((3+1)∪{3+1})∪{(3+1)∪{3+1}}
ここで、3+1=4は既に示したので、
    =(4∪{4})∪{4∪{4}}
    =({0,1,2,3}∪{4})∪{{0,1,2,3}∪{4}}
    =({0,1,2,3,4})∪{{0,1,2,3,4}}
    =5∪{5}
    ={0,1,2,3,4}∪{5}
    ={0,1,2,3,4,5}
    =6
となります。途中、カッコが入り乱れてわかりにくいですが、要は3とか4とかを、定義に従って書き下しているにすぎません。
これで、
 3+3=6だった!!
と証明できました。

1+1=2を証明する

ここまで来れば、どうやって証明するのか、もうおわかりだと思います。
以下が1+1=2の証明です。
1+1=1∪{1}
   ={0}∪{1}
   ={0,1}
   =2
ね、簡単でしょう?

1+1はなぜ大きな1ではないのか?

いよいよ本命の疑問です。
実はこの疑問に対する解答は、こんなに長々と記事を書かなくとも、たった一言で済んじゃったりします。でもその一言に説得力を持たせるため、ここまで長々と書きました。

「大きな1」派の主張は、粘土玉をくっ付けると大きな粘土玉になることを論拠としていました。大きな粘土玉になることから、「大きな1になる」と主張したわけです。
解答の一番のポイントは、「大きな1」とは何か、という点です。
現代数学では、
 1={0}
と定義しているのでした。
逆にいえば、これ以外のものは1ではありません。ここが重要な点です。

このことを、粘土玉に置き換えて考えてみましょう。
「大きな1」派は、最初に用意した粘土玉を1と定義しています。つまり、これ以外のものを1と認めてはなりません。
粘土玉には、大きさや形、重さなどの特徴がありますが、それらの特徴が最初に用意した粘土玉と全く同じものでなければ、1とは呼べないのです。

用意した粘土玉同士をくっ付け、大きな粘土玉にしてみましょう。この大きな粘土玉は、最初に用意した粘土玉とは、大きさも重さも異なります。
大きさも重さも異なる以上、これを1と呼んではいけません。1と呼べるのは、最初に用意した粘土玉と同じ特徴を持つ粘土玉だけだからです。

「だから、それを『大きな1』と呼んでいるんだよ」と反論されそうですが、その反論は破綻しています。
現代数学的に考えると、「大きな1」と「1」は別物です。
そして、「大きな1」を「2」と定義しているのです。
1∪{1}={0,1}を2としたように、1である粘土玉をくっ付けたものを2と定義するのです。

結論

【疑問】
 1+1は「2」じゃなくて「大きな1」ではないのか?

【解答】
 その通り。ただし、「大きな1」を「2」と定義した。
これが、エジソン少年の疑問に対する私なりの解答です。
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他153件のコメントを表示
×
粘土で屁理屈言う子供には「リンゴにリンゴ足したら大きなリンゴになるか?」って返せば済むんじゃね
52ヶ月前
×
屁理屈こいてんじゃねえよ。一般常識で考えろ。
52ヶ月前
×
結構盛り上がってますね。
エジソン少年の議論については置いておきましょう。
しかし、本題とされている足し算について、定義と示すべきことがはっきりとしていないと感じました。

数の定義まではいいとして、その全体をNとしましょう。
m+1=mU{m}
はNからNへの写像です。これをxとします。
他方、
m+(n+1)=(m+n)U{m+n}
はxを用いて定義するN×NからNへの写像です。

以上に注意すると、示すべきことは以下のようになると思います。
任意のN×Nの要素(m、n)に対して、
y(m、x(n))=x(y(m、n))
を満たすようなN×NからNへの写像yが一意に存在する。
更に、このyと任意のNの要素pに対して、
x(p)=y(p、x(0))
が成り立つ。

こうやって、+1の操作であるxとyを使って行う1を足すという操作が一致することを言おうとされてるのではないですか?

変な奴だと思われたら無視して下さい。
52ヶ月前
×
皆様コメントありがとうございます。
どうして突然こんなにコメントが増えたのか謎で、ちょっと怖いのですが……。

コメントを読んだ感じですと、「個数じゃなくて体積に注目すれば、1+1=2になっている」と反論される方が多いようですね。
私も一時はその考え方で納得していたのですが、ふと、
「でも、どうして体積に注目するのだろう? 個数に注目してはいけない理由は、あるのだろうか?」
と疑問に思ったことが、今回の記事を書いたきっかけです。
楽しんで頂けたのなら幸いです。
52ヶ月前
×
本筋とはまったく関係ない話ですが, 3 = {{}{{}}{{}{{}}}} 等の表示で,
ある { の右側に連続する } の数は, "それ自身を含んで左側にある { の個数を 2 で割れる回数" と一致 (ただし右端の連続のみ 1 多い)
という事実があります.
N = { 0, 1, 2, ... } = {{}{{}}{{}{{}}}...
で考えれば右端の例外も外せます.
52ヶ月前
×
0+1+1=+2

答えは、+2の大きさ
37ヶ月前
×
1+1を計算して2とすればよくね?
17ヶ月前
×
りんごが1コ バナナが2コ お皿が3枚 たかし君が5人 おやつを食べるのに最適な環境の部屋が1室 さて合計は?

 
16ヶ月前
×
>>171
たかし君がクローンなら1
残りの4人が起源が別のたかし君なら0.2
10ヶ月前
×
>>162
正しい時と正しくない時があるからまとめられないって反論されそう…
10ヶ月前
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