八月に入ってすぐの雲ひとつない晴れた日の午前中。隣町の空港のロビーで真由ちゃんの到着を待っていた。
羽田発の飛行機は、いつになく異常なほど乗客に子供の割合が多かった。ロビーには、かしましい子供達の声が響き渡っている。聞いたことのない方言が飛び交い、やけに遠方から訪れた子供達であるらしいことが耳に入った。距離でいったら真由ちゃんがいちばん遠いに違いない。アメリカのジョン・F・ケネディ空港から日本の成田空港に来て、羽田空港から北海道の東端にある小さな空港目指して飛んでくるのだから。
十一歳の真由ちゃんは、いったいどんな女の子に変身しているのだろうか。四年振りの再会だった。
「ねえ、お姉ちゃん」
「なあに」
「真由ちゃんって、前に会ったとき、ブリッ子だったよね。変わってないのかな」
美穂はあけすけに、真由ちゃんの印象を口にした。
「きっと、ごきげんようとか、そうかしらあって言うんだよ。うふっ」
美穂は、真由ちゃんの面影を想像しては、口振りや仕草を真似て一人で笑っている。
真由ちゃんは、スチュワーデスが持つような取っ手の長いローラー付きの小振りのトランクケースを滑らせて、私達家族の前に、ひょいと現れた。いきなり私の首に抱き付いて、お互いの頬を軽く合わせ、
「花菜ちゃん、会いたかったわ、久しぶり」
と言うので、私は手のやり場に困ってしまった。真由ちゃんは、私から離れると、
「おじさま、おばさま、ご無沙汰しておりました。今回は色々と手配して下さってありがとうございます」
と、丁寧にお辞儀をした。