【小説】向日葵のキミが好き
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

【小説】向日葵のキミが好き

2015-09-05 17:00
  • 2

向日葵のキミが好き


作:木村あおい   



ジリジリと焼きつく真夏の太陽
でも僕は『暑い』の一言も言わなかった

『いらっしゃい』

僕の言葉よりも先に花屋の優しげな女将さんが笑顔を向けながら僕を招いた

『こんにちわ、、えっと』

何の花を買うのは決まっているのにキョロキョロ花を選ぶ振りをする僕に

『はい。』

女将さんは笑顔を壊さないまま僕に何かを手渡してきた


『毎年買ってくれてるから、おぼえてるよ。この花だよね?』

手渡された花束を見て僕は一瞬戸惑ったけど、それと同時に胸を締め付けられる感覚と込み上げてくる涙を感じた



ーーーーー・・・もう私のことなんて忘れちゃうよね?




里香ちゃん


君の事忘れてない人は

ここにもいたよ


だから泣かないで?





【向日葵のキミが好き】





キーンコーンカンコーン
始業ベルが僕の耳に入ってきた

『うわっ!ちょっと待って』

あと二分、いや一分早く起きればいいって分かってるけど、
毎朝この調子になってしまう。

『河野!また遅刻』

赤いジャージを膝まで折り曲げ
Tシャツから逞しい腕をだしている担任の菅野先生が校門に立っていた

「せ、先生!今日は見逃して!!」

「『今日は~~』??
たくっ…、今日もだろ?」

6年になってからこの菅野先生が6年2組の担任になったんだけど
怖い外見の割に意外に優しい言葉に
毎回僕は驚かされていた。


「それより、今日は転入生が来るから、あんまり羽目はずすなよー」

僕の頭をぽんと大きい手で叩くと菅野先生はくるっと背中を向けて校舎に入っていった


ーーーーーー・・・


「きをつけーれい」

日直の号令で僕らはうなだれるように頭を下げる

クーラーも効かないこの教室
田舎だからそんなに広い教室じゃないけど

だからと言って扇風機1台はかなり辛い

マニュアル通りのような挨拶をしたあと僕らはだらーっとしたまま我先に席に着いた


ここまでいつもの状況



でも今日は違った

「あー、今日は転入生を紹介する」


だらけてたクラスメイトの目が何故か輝いていく

まあ、僕もそうだけど
転入生ってものすごい楽しみだ

男なのか、女なのか、いやそんなのどうでもいいんだ


友達になれるかな


そんな期待を胸にあふれさせながら転入生の出番を待った


「いいよ、おいで?」

菅野先生は僕らには絶対聞かせないであろうと言う様な声で廊下側のドアに声をかけた
それと同時だっただろう

僕たちクラスメイトもドアに注目


そして

ーーー…ガラッ


ゆっくりドアが開いたのを確認した


一歩、二歩、

新品の上履きが教卓の方に歩みを進めていく


僕はずっと上履きしか追えなかった


なんでだろ?

早く顔が見たいのに

どんな子か知りたいのに

友達になれるか、、、

知りたいのに


視線はずっと上履きばかり。


「はい、じゃあ自己紹介してください」

菅野先生の声で僕は何故か緊張した

僕が自己紹介するわけじゃないのに


膝の上の手をギュッと握って僕は何かを決めたように顔を起こして行った




「初めまして、花崎 里香です」



いつもうるさい僕らのクラス

それなのに、転入生の挨拶でざわめき一つなく静まっていく

「みなさんよろしくお願いします」


僕と同じ年齢なのにしっかりした口調でぺこっと頭を下げる
僕はずっとその彼女の姿を見ていた


「花咲さんは東京から来たばかりだから、みんなあまりアチコチ連れまわすなよ~
それと、席は…そうだな。
じゃあ河野、お前の隣な」


突然呼ばれた自分の名前に僕はガタっと席を立った


「・・・え」


数秒クラスメイトも菅野先生も、そして転入生も僕のその意味不明な行動に呆気にとられていたけど


「え、あ?」


「おい、河野!そんなにアピールしなくても大丈夫だぞ」

菅野先生の一言でさっきまでの張りつめた空気が急に柔らかくなって


そして

転入生も僕をまっすぐ見て


「河野君、よろしくね」




そう言って笑ってくれた



これが僕と里香ちゃんの初めての出会いだった


ーーーーー・・・


「里香ちゃん、東京から来たん?」
「東京って楽しい?」
「お父さんの転勤できたんだ?」
「その髪留めかわいいね?やっぱ東京で売ってるものかわいいね」


案の定、僕の隣の転入生は休み時間ごとに質問攻撃を受けていた
だけど
その質問に嫌な顔一つしないで、ちゃんと答えていた


そんな横顔を僕は机に伏せた姿勢でこっそり覗いてた



「…ん」



「…君」


伏せていた僕の耳に隣から聞こえる声


勘違い?

空耳?



「河野君」


勘違いでも、空耳でもない
僕だけを呼ぶ声


今すぐにも顔を起こしたいけど
まだ周りに誰かいるんじゃないっかって思って面倒くさそうに頭を起こす

そしてゆっくり顔を隣の里香ちゃんに向けた



「あ、やっと起きてくれた」


彼女はにっこり笑って首を傾げた


「教科書見せてほしいなって」


彼女の言った言葉に僕は、ただただ頷くだけで
机にぐちゃぐちゃに入ってる算数の教科書を渡して
僕はまた机に顔を慌てて伏せた



だってさ


絶対


顔赤くなってる


その後も、なんだか隣から聞こえたけど
もう僕は石になったかのように顔を起こすのをやめた


ーーーーーーー・・。





放課後


僕はいつもより早くランドセルを背負って教室から飛び出そうとした





今日は誰とも話したくなかった

誰の顔も見たくなかった


だって、今誰かと会ったら僕はまた


彼女の顔が見たくなって視線を追いかけてしまうから。



そう思いながら教室を飛び出そうとした



ところが


「河野君」


僕を止める声




「待って、河野君」

下を向いたままの僕に近づいてくる上履きの音


きっと今までだったら呼ばれても振り向かないでさっさと教室から飛び出ていたはずだ


でも今は


「河野君、教科書ありがと。」


僕の顔を覗き込んで、さっき貸した算数の教科書を差し出してきた


差し出された教科書を僕はひったくるように受け取って何も言わずに走って行った


ーーーーー・・・


今思えばこの時の行動が里香ちゃんに印象づいたのかな
だから…僕は、いや、話を戻そうかな


あ、そっか
この教科書の話続きがあったんだ


これで僕は少し勇気が出せたんだったね



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー・・・



家に帰った僕は算数の教科書を机に置こうとした


「・・・あれ?」

なんだこれ



教科書からピョコンっと出てる紙切れ


何だろ?

僕は不思議に思って、その紙切れを教科書から引っ張った





【教科書ありがとう。でも2時間目は国語だよ♪】





「ははは…」

僕は手紙を見てから、自分のとった行動が急に恥ずかしくなって

明日は僕から彼女に挨拶しよう、

そして国語の教科書も必ず持っていこうって心に決めた


ーーーーーー…



ーーーー翌朝




彼女は来なかった



先生曰く、用があって遅刻するみたいだ


「河野の遅刻とは訳がちがうんだぞ~~~」

って先生の言葉にクラス中が笑っていた。
もちろん僕も苦笑したけど

隣の空いた席がもどかしくて、教科書にしまった国語の教科書をぎゅっとつかんだ




2時間目



「おはよう」

来たばかりの彼女の声に僕は慌てて振り向いた


緊張して声が出るかわからなかったけど

声が裏返っても、どもっても、もういいと思ってた



「おはよ」


よし、まともに声がでた

心の中でガッツポーズした僕


そんな僕に彼女はきょとんとした顔をしてから、暫く経ってから
また昨日の笑顔を見せてくれた


ふわっとした可愛い屈託のない笑顔


昨日の僕なら教室から飛び出してるレベルだけど


今日の僕はちょっと違う


僕もつられて笑って見せようとしたけど


「河野ーーー顔赤いぞーー」


クラスメイトの一人が遠くから叫んだせいだ



僕は




気付いたら、僕をからかった相手を殴っていた


女子たちが騒ぐ所に菅野先生がやってきて僕は職員室に呼ばれた


教室を出る時、ちらっと彼女を見たら


悲しそうな表情で僕を見上げていた


ーーーーーーーーー・・・



あれから二週間、いや三週間


席替えもして僕は更に彼女と話す機会がなくなった


彼女は社交的な性格だったお蔭で、クラスにもすぐに馴染んで
僕以外のクラスメイトとはすっかり仲良くなっていた




「来年は中学生だからな!気をひきしめていこう!」


夏バテの僕らに喝を入れるように菅野先生の説教ホームルームがようやく終わって
僕は、疲れた顔で教室からでていった


最近帰るのはいつも一人だ


あの喧嘩をしてから僕はクラスメイトに煙たがれる存在になってるようだ


学校も面倒で行きたくないけど…


でも、行くのは…




学校へ行く理由を考えたその時だった


少し強めの風が僕の顔に当たると同時に鼻を擽る香り



何の香り?

爽やかで少しだけ甘くて



僕はその香りの元を探した

何度か左右を確認して、香りを求めて
通学路から外れた道まで走っていた


田んぼ道を通ってこの近くには珍しい信号を渡り
小高い丘を上った時だった




「これ…」



僕の眼下は黄色い世界だった





「…うわ…向日葵?」



え?


僕は僕以外の声に驚いてその声に振り返った



「あ…」

僕はまた言葉を失いかけた
だってそこにいたのは、紛れもなく


彼女がいたからだ


僕は眼下の向日葵よりも、彼女から目を離せなかった

いたたまれない気持ちも合ったけど…


また話したい気持ちが強かった


でも、あんな姿を見られて…僕は恥ずかしかったんだ


真っ赤になった顔を誤魔化すために友達を殴ったことを
あれから毎日悔やんでたんだ


素直に謝れない自分が恥ずかしくて
距離を置いて、みんなから離れていったんだ


じゃあ、今なら?

今なら話せる?



いや、まだ話せないよ

何で?

なんでって…



僕の頭で天使と悪魔が葛藤




…もういい
このまま帰ろう



悪魔が僕の頭を支配しようとした時だった



「河野君、向日葵きれいだね」



髪を押えながら僕を見上げて微笑む彼女


「・・・」


「何?あたしなんか顔についてる?」

僕があまりにも見てたせいか彼女は急に顔を赤くして自分の頬を覆った


「え?…い、いいや、ついてないよ」

僕は精一杯の勇気を振り絞って声を張り上げた



そんな僕を見て彼女は更に嬉しそうに笑った



そしてこう言ってくれたんだ


「やっと河野君の声が聴けた」


ーーーーーーーー・・・



あれから僕たちは放課後何回もこの丘に来ていた
他の友達には、この場所は内緒にしようって約束して
芝生に座って他愛のない話をした


毎回、彼女は元気に笑って、僕もその笑顔につられてよく笑うようになった



「そういえば河野くんって下の名前なんて言うの?」

「真夏、8月25日生まれの夏生まれだから【真夏】。単純だろ」

僕が苦笑していると



「真夏君…うん!!いい名前!!私もそう呼んでいい?」

「え?」

「はい!決まり!」

「いや、あの」

「何?嫌なの?」

口をとがらせた彼女に僕は思わず戸惑い、慌てて首を横に振った



「はい!決まり!真夏君、今日は向日葵畑いってみよ!?」


スカートについた芝生を払い、僕に手を差し伸ばしてきた



「ね?向日葵みにいこ?」


僕は彼女の笑顔に引き寄せられるように、その手をつかんだ




そうか。
やっと気づいた


この笑顔



向日葵みたいだ



ーーーーーーーーー・・・




向日葵畑は丘から300mくらい歩く距離だった


思った以上に遠くて、この炎天下で僕らは額から汗が滲んできていた


「向日葵畑、結構遠いね」


僕がそう彼女を見た時だった



ーーーーーガクンッ…


「…は、花崎さん?!」


彼女は突然しゃがみこんだ

いや、膝から倒れこんだって言った方が当たってる



「だ、大丈夫??!!」

僕は彼女の手をつかんで起こそうとした

何が悪いのか何をしていか全くわからない状態だ
ただただ焦って彼女の名前を呼ぶ


「花咲さん?大丈夫!?」


何回目かの僕の質問に


ようやく彼女は僕へ顔をあげてくれた


「…大丈夫。ごめんね?」




うそつきだ

全然大丈夫じゃないよ

鈍感の僕だってわかるくらいの真っ青の顔色

暑くて出てるわけでもない汗が彼女を包んでた



「花崎さん…大丈夫じゃないよ…もう帰ろう」



僕がそう言うと彼女は悲しそうに僕を見てから小さく頷いた


彼女が頷いたことを確認すると僕は彼女の前に背中を向けて屈んだ

「…真夏君??」

「帰りも倒れたら辛いだろ?だから負ぶってあげるから」


こんなことしたことないけど
僕が疲れるより、彼女が倒れることが嫌で仕方なかった



負ぶってる間
何度も「重くない?」って聞く彼女に僕は「大丈夫だよ」って言ってたけど

3回目同じこと聞いたときは

「重いよ」

って言ってやった

「え??!ひど…!お、おろしていいよ」


僕の背中でばたついてたけど、僕は笑って小さく息を吐いた



「重いけど、ちゃんと送るから家案内して?」


僕の言葉に、ようやく背中は静まってその代り小さくうなずく声と
首に回ってる手が強まったように感じた





ーーーーーーーーーーー

家まで送ると花崎さんのお母さんが何度も僕に頭を下げてくれた
お礼にって、高そうなクッキーの詰め合わせまで渡された

僕は高級そうなクッキーの入った紙袋を持って
帰ろうとした


空はもう夕暮れで太陽が真っ赤になっていた




「真夏君!!!」


空を見上げてた僕の耳に聴きなれてきた声が響いた



振り向いたら


2階の窓からもう部屋着の彼女が顔をだしていた





「また…」

「え?」


「また行こうね!!」



「向日葵畑一緒にいこうね!!?」



僕は何も言えなかった


だって

彼女…



泣きながら僕に叫んでいたんだ





ーーーーーーー・・・・




夏休み

たくさんの宿題に追われながらも、時間が余るとあの向日葵畑に足を運んだ



彼女はあの日から夏休み始まる日まで学校を休んでいた

菅野先生から聞いた話では体調が悪いみたいだ


だから、あの日から僕は彼女に全く会えなかった


でも

もしかしたらこの向日葵畑来れば、彼女に会えるんじゃないかって思って
夏休みが始まってからは毎日のように僕は通い詰めた


夏休みの予定カレンダーに過ぎていく日を×していった
イコール彼女と会えなかった日を×していった



そして8月25日




僕の誕生日


誕生日って何歳になっても何故かうきうきするけど、僕は逆だった

もし今日彼女に会えなかったら
もう二度と会えないんじゃないかって脳裏を過ぎった


僕はいつもよりも早く起きて
自転車を飛ばして向日葵畑へ急いだ

今日は長期戦だから、冷蔵庫から食べ物を持って鞄に詰め込んだ


これなら、日が暮れても向日葵畑にいられるけど問題はこの暑さ


「どこか涼めるところないかな」


僕は自転車から降りて丘の上から広がる向日葵畑を見下ろした。





「…え?」

僕は思わず声をあげてしまった

だって



「真夏くーーーん!!」


向日葵畑から両手を大きく振っている彼女がいるんだ



「向日葵きれいだよーー早くおいでよ」



向日葵に包まれながら彼女はまた大きく声を張り上げた



僕はつかんでいた自転車を横に倒して、丘を滑るように走っていた
こんなに頑張って走ったのはどれくらい振りだろ


初めての持久走大会で2位だった時以上に頑張ってる気がする




いや、そんなのはどうでもいいんだ


会えた…



会えた!





「ゴーーール!」


走りきったゴールには彼女が拍手していた

「は、花崎さん、体調大丈夫なの?」


僕の質問を無視して
彼女はくるっと背中を向けてハサミで何かを切ってきた




「はい!ゴールのお祝いと…お誕生日おめでとう!!」




向日葵の束を僕の前に差し出した



「え、、覚えてくれてたの?花崎さ「もう!真夏君いつになったら名前で呼んでくれるの?」」

僕の台詞に被せるように彼女は口を膨らませて言った



「え、あの」

「里香って呼んで」

「え?!いや…女の子の名前とか呼んだことないから」

「じゃあ尚更!私が一番だね?!はい!里香!!」


復唱しろとでも言ってるかのように
彼女は自分の名前を僕に呼ばせようとする



「・・・・」

「きこえません」

「里香ちゃん…?」

「聞こえないでーす」


彼女はそっぽ向いて耳に手をあてた



僕はハアっと溜息をついた後

近くの向日葵を2、3本切って彼女に歩み寄った





「里香ちゃん、来てくれてありがとう」


そして僕も彼女に向日葵を手渡した





それが嬉しかったのか里香ちゃんは僕があげた向日葵を抱きしめて
いつもの笑顔をみせてくれた





ーーーーー・・・


「ねえ、真夏君?」
「ん?」


僕らは向日葵畑で横たわった

何処を見ても黄色の世界


その中に僕と里香ちゃんだけだ



「空って青いね」

「そうだね」


「きっと空は涙を吸い取ってるから青いのかな」

「・・・?」

「寂しかったら空を見上げれば悲しみはなくなるのかな」

「里香ちゃん?」


「人っていなくなっちゃったら、忘れちゃうんだよね」

「…そんなこと」

「転校したとき絶対手紙書くとか、電話するとか、会いに行くとか、、、」


里香ちゃんはそこまで言うと言葉を詰まらせて両手で顔をかくした




泣きだす里香ちゃんに僕はどうしていいかわからなかったけど

体を起こして彼女の手を取った



「僕は忘れないよ!里香ちゃんが例え転校しても忘れないから!!だから泣かないで??!」


僕の精一杯の気持ちだった



本当に忘れないよ



例え転校して遠い街に行っても会いに行くから







そう思ってた


ーーーーーーーーーーーーーー






9月1日


夏休みも終わって今日から新学期


里香ちゃんとは僕の誕生日に会ってから、また会えなくなっていた


また体調悪いのかな


そう思いながら、里香ちゃんから
もらった向日葵を挿した花瓶の水は毎日かえた



だけど今日からまた学校が始まるし

また里香ちゃんと向日葵を見に行けると思うと、毎日遅刻の僕も今日は余裕持って家を出れた。



教室に入ったらまず、殴ったあいつにちゃんと謝って


りかちゃんに国語の教科書を貸して…あ、もう買ったかな



ーーーなんて心弾みながら


教室のドアを開けた


ガラッーーーー・・・







ドアを開けるとみんな僕を見ていた


なんだよ…まだ根に持ってるのかよって

また以前の僕みたいになる時だった





「河野くん…里香ちゃん、3日前…」


一人の女子がそこまで言うと嗚咽を漏らしながら机に伏せた




それと同時に他の女子も、男子も泣き始めた



「お、おい、みんな??!どうしたの?里香ちゃ、、、花崎さんがどうしたの??」




みんなが泣く姿に僕は誕生日に泣きながら言った里香ちゃんの言葉を思い出した




ーーーいなくなったら忘れちゃう



「え、花崎さん、、転校…し「河野…花崎さん3日前亡くなったんだ」」










ーー河野君?あの…教科書見せてもらえるかな






ーー2時間目の授業は国語だよ♪






ーー河野君!!あ!やっと声聴けた!






ーーーねえ名前なんて言うの?



ーーー真夏君!?いい名前だね







ーーーはいゴール!そしてお誕生日おめでとう!!!











ーーーーねえ?真夏君?



ーーーー空は青いねーー・・・



ーーーーきっと空は涙を吸い取ってるから青いんだろうね








ーーーー涙を吸い取ってくれるから青いんだよね










━━……人っていなくなったら忘れちゃうんだよね










忘れるわけないじゃないか

どんなに離れた街でも会いに行くよ









ーーー花崎さん3日前、亡くなったんだ




この短い時間で僕は走馬灯のように里香ちゃんの言葉が駆け巡った






そして


「河野??!!」


菅野先生の声が僕の背中に響いたけど


僕は教室から飛び出した







嘘だ


嘘だよね




僕は皆の言った言葉と、さっきの情景をもみ消すように走って行った




またちょっと体調が悪いんだよね?


じゃあ病院帰りにまたここに寄ってくれるよね?





僕が息をきらして走ってきたのは、あの向日葵畑だった


夏休みの時より少し元気のない向日葵が増えたけど
それでも初めて見たとき同じように黄色の世界は変わらなかった




きっと来てくれるよね





「真夏君!」





ほらきた!




クラスメイトの冗談なんて僕には通用しない…




僕はいつものように振り向き、きっと僕の視界に里香ちゃんが入ってくるって信じていた



だけど




「真夏君、やっぱり来てくれたのね」





ーーー送ってくれてありがとうね?

ーーーーこれお家で食べてね



僕の視界には以前、向日葵畑で倒れたとき
連れ帰って会った里香ちゃんのお母さんがいた




僕は頭を下げて、里香ちゃんの姿を探した




「里香が真夏君に渡してほしいって」


里香ちゃんのお母さんは僕へ封筒を一枚渡してくれた


僕はそれを受け取ると小さく頭を下げた






「里香と仲良くしてくれてありがとう…」



消え入りそうな里香ちゃんのお母さんの声に僕はだんだん現実から目を逸らせなくなってきてた



「真夏君は元気でね」

肩を撫でてくれて里香ちゃんのお母さんは小さく微笑んで僕に別れを告げた






暫く里香ちゃんのお母さんの背中を見ていた僕は
ふと我に返って、さっき渡された封筒に視線を落とした





糊付けはしてなかったから、すぐに中身を取り出すことができた



そこには



白いワンピースを着て帽子をかぶり

僕のあげた向日葵を抱いて笑ってる里香ちゃんの写真が入ってた



そしてその写真の裏には





【真夏君へ

忘れないでね?

私も忘れないよ。


ありがとう


里香より】






僕はそれを見たとき初めて
人間ってこんなに泣けるんだって思うくらい泣きじゃくった


声をだして泣くなんて
物心ついてからなかった


でも今は、かっこ悪くてもいいんだ




里香ちゃん




もう会えないなんて嫌だよ




里香ちゃん











大好きだった








絶対忘れないから…







ーーーーーーーーーーーー・・・・





じゃりじゃり…


革靴で来るのは失敗だったかな



砂利道を歩き僕は目的の場所に到着した


さっき花屋で女将さんに渡された花束を僕の目の前に置いた




「毎年、この時期は暑いね…里香ちゃん」


「俺さ、この場所来る時いつも里香ちゃんとの出会いを思い出すよ」


「だから里香ちゃんとの出会いの小説くらい書けるくらいだよ」


「…だから忘れてないだろ?」


「寂しくないよね?」




返答のない里香ちゃんに僕は向日葵の束を飾った


「やっぱり、里香ちゃんには向日葵が似合うよ」


里香ちゃんからもらった最初で最後の写真を墓石において僕は両手を合わせた









真夏君…人はいなくなったらみんな忘れちゃうんだ




忘れないよ

僕はきっと忘れない



君が空を青くしてくれてる限り




僕は永遠に君を忘れないら…。





ずっと


その向日葵のような君が大好きだよ







向日葵のキミが好き 



END





広告
×
泣ける
48ヶ月前
×
感動しました
もういっかい曲きいてこよ
46ヶ月前
コメントを書く
コメントをするには、
ログインして下さい。