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その65:2017年 夏虫草
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その65:2017年 夏虫草

2017-08-18 05:23
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≪注意≫
このブロマガはキノコ屋見習いの観察をまとめたものです。実際の同定に利用できるものではありません。
記事内容に訂正・補足がある場合はコメント等でご指摘いただければ幸いです。
なおキノコの正確な判別は経験者でも間違えるほど難しいものです。慣れない内はベテランの方に付き添って
もらうなどして、素人判断での採取・喫食は行わないでください。死にます。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※≪2017年の夏虫草≫
 今年の夏に見つけた虫草まとめです。これら以外にも案内されて見せてもらったものもいますが基本自分のフィールドで自力発見したものだけにしています。




 

ハナヤスリタケ
 以前虫草の大師匠たるどろんこさんに案内していただいて(記事:その51)見たことはありましたが、地元での自力発見は初です。というか菌生菌の坪を地元で見つけたのはこれが初! 今まで宿主になるツチダンゴはいくつも見ているのに肝心の虫草が全然生えないとぼやくのもこれまでです。

 ただ今回見つけたハナヤスリタケ、どろんこさんに案内されて見たものとは違うように思っています。そもそも案内された時に見たのは春先でこれを見つけたのは梅雨時期。春と秋に出るキノコ、もしくは梅雨と秋に出るキノコというものはいますが、春と梅雨に出るキノコというのはあまり聞きません。気温の変化で見たらざっくりこんなイメージ。


 そしてもう一つ気になるのは宿主のツチダンゴです。春先に見たものは外皮に大理石模様の入るアミメツチダンゴという種類でしたが、今回梅雨時期に見たものは模様のないノーマルのツチダンゴ。実はこの違いがけっこう大事だったりします。

 先の記事(その51)でも書いている通り、ハナヤスリタケは春型と秋型の二種類がいると言われています。そしてその違いがどうやら宿主によるらしいのです。聞いた話によると春型のハナヤスリが出るのはアミメツチダンゴで秋型のハナヤスリが出るのは普通のツチダンゴ。アミメツチダンゴは西日本に多く、無印ツチダンゴは東日本に多い傾向にあるのだそうです。

 以上のことを踏まえ、今回見つけたハナヤスリタケは秋型のものかそれに近い種なのではないかと考えています。なので次の課題は秋に同じ場所を探して出ているかどうかですね。地元で見つけるとこういった定点観察がしやすくて助かります。




 

ツブノセミタケ
 もういいっちゃもういいってくらい見てきた虫草ですね。成熟すると保護色で見つけにくいやつなんですけど、若いうちだと結構簡単に見つかります。私の目が虫草に慣れてきたというのもあってか、今年はもう散々見つけてきました。なので基本見つけてもスルーしています。

 ただ一回とある公園内でのキノコ調査に出たときに見つけたのはデータを残すために採取しました。4枚目の写真のがそれです。よりにもよって長いのが出てきたので「ツブノセミタケ実は短い説」を唱えてきた私にはいろんな意味で苦しい相手でした。あ、でも今まで私が掘ってきた数で言えばやっぱり短いやつのが多かったからまだ自説が崩れたというわけではありませんね。今後検証していくためにはより多くのサンプルが必要になってくるでしょう。
 なのでもう二度と掘りません。




 

クモタケ
 何気に地元でずっと探している相手です。絶対いるはずなのにどうにも見つかりません。
 この写真は海一つ向こうの香川県で撮影したものです。ちょっと神社にお参りに行ったついでに周りの山を歩いていたらいい具合の発生地を見つけました。クモタケはとにかく群生する虫草なようで一本見つけたら周りにあるわあるわ。全体で100本以上は出ていたんじゃないかと思います。そんだけ出るのに宿主が途絶えないのはなぜなのか。単に数が多いだけか、もしくはクモタケの出る時期が産卵した後だとか上手いことやってるのかもしれませんね。




クモ生アナモルフ
 多分コエダクモタケあたりだろうと思っています。以前まだ成熟していないのを見つけていて(記事:その57)成熟しただろうという頃合いに見に行ったらこれでした。有性胞子を作るテレオモルフはできておらず、無性胞子を飛ばすアナモルフだけができていました。
 おそらくこれは今年の梅雨のせいだと思われます。梅雨入り前にそこそこ雨が降っていたので菌糸伸ばし始めたのに、パタッと雨が止んだせいでテレオモルフからアナモルフに切り替えたとか。一概に全部がそうとは言えませんがテレオモルフとアナモルフではテレオモルフの方が栄養や環境への条件が厳しいようです。実際にテレオモルフを使って胞子を飛ばした後、残った栄養でアナモルフを作るというようなものも見ることがあります。
 それにしても成熟楽しみにしてたのになぁ……。




 

ハチタケ
 これも前々から探していた虫草。普通種も普通種なのに全然見つからず、何が普通種だ! この野郎! お前らみんな見つけてるからそうやってすぐ見つかるとか、そこらへんにいるよとか言えるんだよ! と半ばキレ気味になっていたところ、他の虫草を探しているときにあっさり見つかりました。

 しかもその後も見つかる見つかる。この夏だけで6か所くらい見つけました。
 そこら辺にいるね、こいつ。
 ただ見つかるのは小型のハチから出ているのが多く、特に一枚目のベッコウバチの仲間から出ているのは3回くらい見つけました。ハチタケの宿主はハチだったら小型から大型まで幅広く出ます。小型のハチからでは上のような小さな子実体しか作れませんが、これが大型のスズメバチ、特に女王蜂から出ていたりするととてつもないことになります。


 こんな具合に。さっきのもハチタケ、これもハチタケ。悔しいことにこれを見つけたのは私ではないんですよね。発生している場所はわかったので、次はこういう立派な個体を探すようにします。目指せスズメバチ! でも生きてる奴は帰れ!




ハチ生アナモルフ
 ハチの繭から出る虫草。ずっとメタリジウム属の仲間だと思ってましたが、アカンソマイセスという意見も出ているのだとか。とりあえずこの場はハチ生のアナモルフとだけ。右の写真は繭を剥がして中のサナギを見たものです。色味が赤くて気持ち悪いなと思いながら作業してました。この画像で宿主が何かわかったりしないかな? 虫屋さんお願いします。(分野違いを盾にした無茶ぶり)




 

ウスキヒメヤドリバエタケ
 小さすぎて何が何やらわからないのはご愛嬌。とにかく小さな虫草です。宿主はミズアブの幼虫。アナモルフであるマユダマヤドリバエタケが群生している坪でぽつぽつとウスキヒメヤドリバエタケが見つかります。実はこう見えて結構探しやすいほうの虫草です。小さいのは小さいのですが、土の色に白色が目立つので探していたらすぐ目に入ります。ハチタケ同様に今年に入ってから急に目について見つかったやつです。
 ただ分布に偏りがあるみたいで、県北の方では3か所くらい発生を確認しているのに対し、県南では見たことがありません。宿主の好みか虫草の好みか、冷涼な気候を好むようです。


 クリーニングしたのがこちら。アブの幼虫って要はウジ虫ですよね。ブロマガ用にリサイズしているのでわかりにくいですが、先端の結実部には淡い黄色の子嚢殻ができています。




 

ウンカハリタケ
 名前の通りウンカから生えるハリタケ型の虫草。一枚目からわかるとおり小さいは地味だはでかなり見つけにくい虫草です。子嚢殻が微細なのも特徴で、ルーペで覗くまでぱっと見子嚢殻がついているのがわからないほど。

 このウンカハリタケは一度広島の方の坪を案内していただいたときに教えてもらった虫草です。最初に紹介したハナヤスリタケもそうですが、案内された相手を地元で見つけることができるというのは教えられたことをちゃんと身に付けられているようで嬉しいものですね。こうして知識や経験を受け継いでいくことが教えてくださった先輩方への何よりの恩返しだと思っています。こういうこと言うと「いや飯でもおごって返してくれよ」とか言われそうですが、
私はこれが何よりの恩返しと思っていますので。






不明虫草
 よくわからなかった奴ら。というかどっちも未成熟なので判断の仕様がありません。ベテラン勢になったらこれだけでも絞り込んだりできるのでしょうか。8月中にもう一度見に行って、その時に成熟していることを祈ります。コエダクモタケの二の舞にはなってくれるなよ。



 これらの他にも岡山県内ではオサムシタケやジムシヤドリタケ、コメツキムシタケなど見ていますし、案内された広島の坪ではフトクビハエヤドリタケやツキヌキハチタケなども見ています。こうして見ればこの夏だけでかなりの発見があったことに驚きます。虫草を勉強し始めて3年。まだまだ新米のつもりでいてもそれなりの経験は積んでいるようです。採取に関してもツブノセミタケ相手に臆するようなことはなくなりましたし、当然ギロチンだってしていますが、それも含めて自らの糧にできていると思います。

 まあ何が言いたいかと言いますと、私もそろそろ新米虫草屋の域を出てベテランとは言わずとも中堅どころにはなれたんじゃね? みたいな? いや実際のとこ観察会で講師の真似事みたいなのもやったし、既にある程度なら人に教えられるレベルなのでは?

 ――そんなことをネタ交じりにでも考えていた矢先、それは現れました。

 ちょうど記事:その64で紹介したハチスタケを探していた時のことです。ハチスタケを見つけるためにまずウサギの糞を探していた私は別のものに目をとめました。ムラサキホウキタケモドキが生えている中に一本だけ異なるシルエット。表面に見える粒々はまさしく虫草のそれでした。私は他のメンバーに一声かけて、その虫草を相手にすることにしました。




 この時点で私はまだ相手が何者なのか理解していませんでした。子嚢殻が斜めに埋まった斜埋生と緑色を帯びた色合いからメタリジウム属の何かだろう。その程度の認識で土を掘り始めたのです。

 掘り始めて1分。相手がなんであったのかに気付く。
 掘り始めて5分。憧れだった相手を見つけたことに喜び、昂揚感に包まれる。
 掘り始めて10分。事の重大さに気づき始める。
 掘り始めて20分。見つけたことを後悔し始める。
 掘り始めて30分。呪詛の言葉を一人吐きつづける。
 掘り始めて40分。絶望に支配される。
 掘り始めて50分。虚無。

 そして採取を開始してから1時間強。地中の菌糸を見失った私は最後の望みをかけてスコップによる一括掘りを決意。奇跡を信じて土塊を掘り出し、対象を完全にロストしました。私は呆然と自分の掘り返した穴を覗きこみ、そういえば途中経過の様子とか全然撮影してなかったな……なんてことをぼんやりと考えていました。

 今まで採取難度の高いと言われる虫草にはいくつかであってきました。地下部が長いツブノセミタケも採取しましたし、菌糸が脆いマヤサンエツキムシタケには連敗しつつも近づきつつあることを実感していました。しかしこいつは、そんなちっぽけな自負さえも吹き飛ばす圧倒的な力で私の心を打ち砕いていったのです。




 その名はカンピレームシタケ。
 ただひたすらに長く、そして細い。採取難度最高クラスの虫草界のラスボスです。一時間強の時間をかけて私が掘り出したのは15㎝ほどの長さでした。しかしこれも図鑑などを見るにまだ1/3程度でしかありません。掘れば掘るほど穴は深くなり、作業スペースは狭くなり、光源は遠く暗くなる。掘っても掘っても終わりが見えない。たどり着く気配すらない。ゴールも知らずに走らされるマラソンのように体力は削り取られ、精神はすり減り最後にはただ無心で掘りつづける無間地獄。全てが台無しになった時、私の自尊心は粉々に崩れ去っていました。

 いやマジで、調子乗ってすんませんでした……。靴舐めます……。


 結局掘り当てることのできなかった宿主はハチのサナギだとか甲虫の仲間だとか言われています。そもそも発見数が少ない上に見つけてから採取するのが難しく、ベテランの虫草屋にさえ二度と掘りたくないと言わしめるレベルです。掘り始めて数分は「おいおい、もしこれ採取しちゃったら俺、相当ドヤ顔できるんじゃないの?」とか思ってましたが、思って数秒で「あ、これダメな奴だ」とわかりました。

 図鑑では暫定的にメタコルジセプス属(現在はメタリジウム属)に置かれていますが、それも先ほど説明した緑色系の色合いと斜埋生の子嚢殻といった形態的特徴によるもので、妥当なものかどうかは検討を要するとのことです。つまりまだ詳しいことはわかっていないということです。この個体が採取できていれば何らかの研究の一助になったかもしれませんが、とりあえず言えるのは分布地域に岡山があるということくらいですかね。

 ほんと力及ばず、申し訳ありませんでした……。
 今日から床でご飯食べます……。


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ちょっとレベル上がってきたんで意気揚々と新マップに入ったらラスボスとエンカウントして負けイベント発生した気分
46ヶ月前
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宿主がまだよくわかってないって、じつは虫草じゃなかったりして(笑)
胞子を虫に植えつけて、生えるかどうか片っ端から調べるほうが掘るより早かったりして(笑)
46ヶ月前
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実は短い説ww
46ヶ月前
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よくちっさい虫草見つけるなあ・・・
キノコ眼が鍛えられてるからなのでしょうか
46ヶ月前
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