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【東方二次創作】首吊り峠の怪 その二
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【東方二次創作】首吊り峠の怪 その二

2016-02-21 23:26
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    東方二次創作注意
    独自設定・解釈・妄想などが含まれます
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    第三の眼

     妖怪の力を捨てた一族の末裔である父と母。二人の間に生を受けた私は生まれながらにして心を読む力を持っていました。両親の血統によるものなのか、唐突な先祖返りなのか、あるいはあるべき力を否定し続けた反動なのか。それはわかりません。確かなことは誰かに知れれば疎んじられ、かつての祖先のように拒絶されるということでした。
     けれど幸運なことに――そして不幸なことに――私の力が露見するよりも先に私はそれがどういうものなのか理解してしまいました。
     まだ私が赤子だったころから両親は常に私の能力のことを案じていました。自分の子が先祖の力を引き継いでやしないか。この瞳に呪われた力が宿っているのではないか。伴侶にすら明かしていない一族の業に父母はどちらとも心の奥底で怯えていたのです。
     そんな両親の心を見て育った私は自分の能力を自然と隠すようになりました。その頃はまだ忌避されるわけを完全に理解したわけではなく、ただ父も母も嫌がっているからという単純な動機からでした。子供心に欺くことへの罪悪感はありましたが、幼子の私にとって親に嫌われることは何よりも恐ろしいものでした。

     私は周囲を騙しながら覚りの力を隠し続けました。元より口数の少ない性分でしたので、日常を過ごすだけならそれほど苦でもありませんでした。今にして見れば稚拙なごまかしも幾度かありました。それでも常識を持った人間からすれば異能を受け入れるよりは多少強引ながらも理屈に流れる方が楽だったようです。
     また両親についてはそれとは別の理由もあったものと思います。人は自分の見たいものを見て、聞きたいものを聞くものです。きっと父と母は一族の力を疑いながらも信じたくはなかったのでしょう。浮かび上がる疑念を抑えつけ、そんなはずはないと言い聞かせる心を私の瞳は捉えていました。
     そんな父母の想いも虚しく、私の隠しだても余所に読心の力は日に日に強くなっていきました。心を読める範囲は広がり、その内容もより鮮明なものになりました。慣れないうちは頭に飛び込んでくる言葉が口に出されたものかどうか判別がつかず戸惑うほどでした。
     ある日私の前に目玉が現れました。比喩などではなく本当に文字通りの眼球です。宙に浮いたそれは半透明に向こうの景色を透かし、表面を覆った赤い目蓋からは血管のような紐が伸びていました。紐の先を辿ると私に繋がっていました。不思議と怖いと思うことはなく、これは覚りの力が具象化したものだと直感でわかりました。
     目玉や紐は他の人に見えておらず、触れることもできないようでした。衣服や壁も通り抜けるので邪魔にならないのには助かりました。ただ誰にも見えないというわけではなく、どうやら人によっては見えてしまうこともあるようです。
     ある時私の住む峠町を修行僧の一団が通りがかったことがありました。その中の一人、まだ若いお坊様は私の周りを漂う目玉に大層驚かれていました。心を読む限り私が何かの妖怪に取り憑かれていると思われたようです。結局その方は先を歩く先輩方が気付いていないことに気後れして、何も言わないまま立ち去られました。意志の弱さを悔いて心の中で謝られるお坊様には申し訳ありませんが、ほっと胸をなでおろしたことを覚えています。それ以降は一人のときでも服の袖や髪の中に目玉を隠し、人目に触れないよう気を付けることにしました。

     それからの数年はとても落ち着いたものでした。これと言って危なげなこともなく、私の猫かぶりも堂に入ったものになりました。幼い私はこのまま平穏な日々が続くものと信じていました。けれどその予想はあえなく覆されることになります。
     このように書くと何か良くないことが起こったように思われるかもしれません。いいえ、そうではないのです。どころか、それはとても素敵なことでした。ああ、本当になんて喜ばしいことでしょう。私に可愛らしい妹ができたのです。
     その日のことは今でもはっきりと覚えています。
     通された部屋には母が寝ていて、その腕に新しい家族が抱かれていました。生まれたばかりの小さな体は、それでも瑞々しい命にあふれていてまるで輝いているようでした。
     その時の光景は今でも忘れることができません。
     すやすやと眠るあどけない表情。触れれば折れてしまいそうなか弱い手。
     その両手の間には大きな目玉がしっかりと握られていました。
     私はこの時どんな顔をしていたのでしょうか。


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