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  • 【No.75】あやふやな東電の説明と緊急停止の謎

    2020-12-03 23:58
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    木野龍逸の「ニッポン・リークス」     2020/12/3(No.75)
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    【No.75】あやふやな東電の説明と緊急停止の謎
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    東京電力は11月12日午前11時12分に、福島第一原発1号機の格納容器内部のガスを管理している排気ファンが全台停止したことで、格納陽気ガス管理設備の放射線検出器の監視ができなくなったとして、運転上の制限(LCO)の逸脱を宣言しました。

    検出器は午後2時30分に異常がないことが確認でき、午後2時40分にLCO逸脱から復帰しました。

    運転上の制限(LCO)は、原発を問題なく管理するための保安規定で定められているさまざまな機器の稼働条件を指します。定められた運転条件の範囲をはみ出すと、LCO逸脱になって原子力規制庁や立地町村などに通報する必要があります。

    止まってしまった排気ファンは、メルトダウンした格納容器内部のガスを吸い出して内部状況を監視する検出器に通して、フィルター経由でまた戻すためのものです。ファンが止まるとガスの流れも止まって、格納容器の中の状態を確認できなくなります。1〜3号機まですべてに付いています。

    今回の場合はすぐに復帰したので、物理的な環境への影響はなかったのですが、問題はその後の東電の対応です。そもそも起こるべくして起こった事故であることや、事故発生から3週間が経とうとしているのに、未だに説明していないことがある上、質問しても回答がないものがあるのです。

     
  • 【No.74】原子力災害伝承館は誰のために何を伝承するの?

    2020-12-02 15:10
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    木野龍逸の「ニッポン・リークス」     2020/12/2(No.74)
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    【No.74】不思議な展示内容の伝承館は誰のため?
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    <放射能汚染地域を通って伝承館へ>

    9月20日、福島第一原発が立地する福島県双葉町に「東日本大震災・原子力災害伝承館」がオープンしました。

    伝承館の建設費は約53億円。けれども開館前から、展示内容を議論していた会議の議事録が黒塗りで公開されたことが報じられたほか(2020年8月25日付朝日新聞)、開館直後には伝承館で東日本大震災や原発事故の実情を伝える「語り部」の人たちが参照するマニュアルに国や東電を含む「特定の団体」の批判などをしないよう書かれていたこと(2020年9月22日付朝日新聞)が明らかになるなど、ドタバタの状態が続いていました。

    ではいったい、どんなものが展示されているのか。10月上旬に見に行ってみました。

    伝承館の場所は、双葉町の駅から東に向かって約2キロメートルの、今は広大な空き地になっている津波被災地の中にあります。隣には地上4階建ての双葉町産業交流センターが建っています。

    伝承館も産業交流センターも、周辺に何もないため(放射性廃棄物の仮置き場や、海岸沿いの防潮堤工事しか見えません)に建物が目立つことを含めても、かなりの大きさです。

    ちなみに産業交流センターは、3階と4階に東京電力の福島復興本社が入居します。福島復興本社は富岡町にあったのですが、産業交流センターの開館に合わせて移転しました。中にはフードコートも併設されていて、浪江町役場の横にあった浪江焼きそばも、ここに転居した聞きました。私が行ったときには交流センターのオープン前日で、食べることはできませんでしたが。

    伝承館に行くには、双葉駅からバスか、歩くか、車で行くかになります。バスは双葉駅~産業交流センターの間を電車の時刻に合わせて1時間に1~2本、運行しています。

    双葉駅から東に向かって進むと、かつて「原子力 明るい未来のエネルギー」の看板がかかっていた道を通って、国道6号線を渡り、双葉厚生病院(避難にあたって多数の死亡者が出た大熊町の双葉病院とは別)を横目に見ながら東に進みます。

    双葉駅は、富岡町の夜ノ森駅や大熊町の大野駅などと一緒に、2020年3月4日に避難指示区域が解除されました。といっても、駅に通じる道路が解除されただけで、周辺の街区は立ち入り禁止のままです。政策的に駅周辺だけを解除したことがよくわかります。

    そんな状況なので、放射線量率はまだ下がっていません。双葉厚生病院の横にあるモニタリングポストは、私が行ったときには1.7μSv/hを表示していました。目立つ場所なので除染をしていると思うのですが、それでもこの程度はあります。東京の空間線量率は新宿で0.0336μSv/h(12月2日)なので、ざっと50倍です。


    <地元の人もびっくりのプロローグ動画>

    そんな放射能汚染の中を通って、さらに東の海の方に向かうと、伝承館や産業交流センターの建物が見えてきます。国道6号線から東側は特定復興拠点なので、道路の整備が進んでいます。何もない場所にきれいな道路だけがある、なんとも奇妙な光景です。

    伝承館でまず驚いたのは、駐車場の広さです。HPによれば、乗用車110台、大型バス10台が止められることになっていますが、1台分のスペースに余裕があるのか、それ以上に広く感じます。

    いよいよ伝承館の中に入りますが、まずは入館料、600円を払います。けっこうなお値段です。比べるのもおこがましいですが、広島の平和記念資料館は、入館料200円です。あの充実した展示内容で、200円です。600円なら、どれだけすごいものになるのでしょうか。ドキドキです。

    伝承館のHPによれば、目的は「福島だけが経験した原子力災害をしっかり伝えること」です。はたしてそうなっているのでしょうか。

    入館すると、まずはプロローグとして、床や壁に設置された7面の大スクリーンで約3分の動画を見ます。福島第一原発が運転を開始し、日本の成長を支え続けたけれども、震災の津波で全電源喪失になり水素爆発。それ以降、地域住民はみんな一所懸命に努力しているものの、今はまだ復興半ばにあるという経緯が紹介されます。

    半世紀以上の経緯を、原発事故まで含めて3分で流すので、ものすごく駆け足です。終わった時、私の前に座っていた地元の人らしきおじいさん、おばあさんグループ3人が、「え?」と言って顔を見合わせていたのが印象的でした。

    原発の建設時から、地元は賛成反対に分かれてたいへんな苦労をしてきました。そうした負の側面にはまったく触れていません。慎重に、原発に対する批判を避けているような印象を受けました。

     
  • 【No.73】使用済み燃料プールからの取り出しや海洋放出議論など

    2020-08-04 00:23
    326pt
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    木野龍逸の「ニッポン・リークス」
                       2020/8/3(No.73)
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    【No.73】使用済み燃料プールからの取り出しや海洋放出議論など
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    <スケジュールの遅れを取り戻すために計画を前倒し>

    使用済み燃料プールからの核燃料の取り出しが、なかなか思うように進みません。建屋上部が吹き飛んだことやメルトダウンしていないために放射線量が低かった4号機は、なんとか完了しましたが、放射線量が高いうえに、建屋の爆発時にガレキがプールに落ちて核燃料の集合体が変形するなどした3号機は、かなり手間取っています。

    東電の予定では、3号機の使用済燃料プールからの燃料取り出しは、2020年度内に終了する計画です。ところが燃料取り出しのための設備に不良があったり、多くのガレキがプールに落ちていたりで、当初の計画からは大幅に遅れています。

    それでも東電は、今年春に作業再開してからは予定通りに進んでいると強調しています。作業に係る人員を増やしたり作業時間を延ばしたりすることで、スケジュールに間に合わせようとしています。

    一方で、東京新聞の作業員日誌が伝えているように、どんな作業でも、スケジュールを早めていくと作業員に負担がかかります。3号機も例外ではありませんが、東電は詳細を発表はしません。

    現場の実態はなかなか伝わりません。新型コロナの影響で、従来から使っていた作業員の防護服が不足し、質の低いものに変更されていた時期が長く続きましたが、透湿性や耐水性の違いについて、東電からあまり説明はありませんでした。東京新聞は質の違いについて、作業員から、汚染があるのではないかという不安の声が出ていることを伝えていましたが、東電は批判を正面から受けとめていないようでした。

    こうした情報発信は事故後から一貫しているので驚きはないのですが、作業の質に影響があるのではないかという不安はつきまといます。

    東電は福島県の「労働者安全衛生対策部会」で、2019年度の労働災害の発生状況を報告しました。6月17日のことです。

    報告によれば2019年度は18年度に比べて災害人数は45.4%増、人数は22人から32人に増えました。災害の重大性は全国平均に比べると低い状況ですが、人数の増加は見過ごせません。基本的には熱中症が多かったという報告でした。

    ところが東電は、この報告書を、定例会見では一度も説明していません。福島県に報告した時にも、定例会見ではひと言も触れませんでした。7月2日の中長期ロードマップの会見時に、記者から指摘があり、ようやく説明をしました。