目が覚めるとそこはオークの村でした 1
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目が覚めるとそこはオークの村でした 1

2014-02-18 04:19

     さて、異世界の存在について考えたことはあるだろうか?
     存在するのか?
     あるとしてどんな世界か?
     モンスターが生きているのか?
     魔法が使われているのか?
     剣や槍で戦う戦士がいるのか?
     などなど、上げ出せばきりがない。
     しかし、俺はそもそも異世界の存在については、これっぽっちも信じてなどいなかった。電気エネルギーを用いた現代の科学技術がその存在を証明できないなら、異世界なんて存在しない、と。地球以外に生命体の存在する惑星があるかもしれない、ぐらいの認識は持っているが、それは異世界ではなく、この世界での新たな可能性の話だ。

     ここで俺は最初の質問に答えよう。異世界の存在について、俺は存在しないものだと考えていた。
     そう、この考えはすでに過去のものになってしまったのだ。
     異世界の存在を否定できなくなってしまったのは、たった数時間前のことである。


     AM 25:00
     そろそろ寝ないと明日に差し支える時間だった。
     俺はプレイ中のオンラインゲームからログアウトし、パソコンの電源を落とした。ハードディスクの回転音が静かに消えていったのを聞き届ける。明日はどうも豪雨らしい。雷も伴うのだという。万が一の落雷に備えて俺はコンセントを抜いた。
     片づけも終わったところで、明日の準備を簡単に行う。
     明日は朝から体育の授業がある。体操服を準備しておく。授業内容はなんだったかな、と小さく呟いたところでサッカーだったことを思い出し、ゲンナリした。なんで足で球を操る遊戯なんてあるんだ。忌々しい。
     通学用の鞄の中身を確認し、制服もすぐに着られるようにしておく。はい、オッケー。これで明日の遅刻と忘れ物はないだろう。ちゃんと時間通りに起きることができれば、だが。
     スマホの目覚ましを7:00にセットしたところで俺は照明を落とし、布団に潜り込んだ。
     目を閉じると、徐々に意識が沈んでいく。そのまま身を任せる。そして俺はぐっすりと夢の世界へ誘われた。

     翌朝。
     俺はスマホのアラームによって覚醒した。
     開いているかわからないような目を頼りにスマホを探す。昨晩と同じく枕元に置いてあった。掴み、画面をタッチする。音がやんだ。俺はゆっくりと体を起こした。

     そこは俺の部屋ではなかった。俺が寝ていたベッドまでは見覚えがある。しかし、そこから先は全く覚えのない風景が広がっていた。

     大草原である。
     気持ちの良い風が吹きぬけていた。太陽は温かい日差しを大地に送っている。俺の体も中から温まっていくのが分かった。しかし、心がすーっと冷えていくのを俺は感じていた。

     ここはどこだ。
     本当にどこだ。

     半分ぐらいしか覚醒していなかった脳ミソが一気にフル回転を始めていた。それもそうだ。この現状に体も心も追いついていない。どういうことなんだ、これは。わけがわからない。わからなさすぎる。

     俺はとりあえずベッドから降りることにした。柔らかい草の感触、その向こう側に少し湿った土の温度が足の裏から伝わってきた。俺は昨日寝る前と同じ、裸足だった。
     
     左から右へ、ぐるっと視界を動かす。取り合えず草原のようだ。草と時々木とまれに岩ぐらいが見えた。振り返ろうという気持ちにはならなかった。

    「どこだよマジで……」

     遂に呟きが漏れた。いよいよ余裕がなくなってきた。
     その時、俺は一つの可能性を思いついた。
     そう、夢である。
     俺はまだ自室のベッドの上で寝ていて、こんな大草原の夢を見ているのだ。なるほど納得できる。そうだ、そうに違いない!理由はないが確信に迫った気がした。
     そこで、俺は寝ようと考えた。もう一度寝たら、今度は自分の部屋で起きることができると思ったからだ。
     ベッドに横になろうと振りかえる。すると。

    「Grrrrrrrrrrr……!」

     謎の巨人がベッドを挟んで向こう側に立っていた。その手には棍棒。すごく、怖い。

    「はい?」

     すごく間抜けな声が出てしまった。
     その直後、巨人は棍棒をブンと振りおろした。棍棒はベッドに着弾し、粉々に吹き飛んだ。とんでもない威力、いや怪力である。

    「Brrrrrrrrrrrr!!!」

     明確な敵意を俺は人生で初めて感じ取った。この巨人は明らかに俺を敵視している。ていうかその棍棒で殺すつもりなのだろう。俺を。殺してどうするのだろうか。いやそんなことを考えている場合ではなかった。夢だとしても、俺は死にたくない!
     回れ右をして、俺は全速力で逃げた。それはもう今まででこんなに本気をだしたことはないだろうというぐらい全力だ。腕もぶんぶんふっている。必死すぎて物凄くおっかない表情になってしまっているだろうが、それどころではない。

     ずしんずしんと地面が軽く震えのが分かった。後ろを振り返る。巨人は俺を追いかけてきていた。すっげえ速さで。怖い、怖すぎる!
     俺は必死で走った。走り走った。
     しか考えればすぐにわかることだ。巨人はその名の通り巨人で、3メートルくらいは余裕でありそうだ。対する俺は170センチぐらい。一歩一歩の歩幅が違いすぎる。すぐに距離を詰められた。巨人の影が俺を覆い尽くしていた。
     影が動く。巨人は棍棒を振り上げていた。そのまま俺に振りおろすつもりだろう。たぶん真上から来る。動いてる影がちょうど視線の先にあった。俺は咄嗟に左に跳ねた。棍棒が振りおろされる。左足首を激痛が襲った。かわし切れなかった。

    「っでえええええええええええええ!!!!」

     ゴロゴロと無様に地面を転がった。受け身なんてとてもじゃないがとれなかった。今までに味わったことのない痛みだった。思わず左足を抱える。完全につぶれていた。ていうか千切れていた。もうない。涙を浮かべながら巨人の棍棒の先をみた。地面がえぐれてる。足はたぶんぺしゃんこだろう。
     俺はもう逃げられなかった。あまりの痛みと恐怖のせいで、体が言うことをきかなくなってしまっていた。
     巨人がこちらに向き直り、一歩二歩と距離を詰めてきた。そして棍棒を振り上げた。
     死ぬ。夢かどうかなんて考えはなかった。恐怖が染みついていて、そこにあるのは迫る死の実感だけだ。
     棍棒が振り下ろさせる。

     終わった。
     堪えるように目を瞑った。
     
     しかし、いつまでたっても何も訪れない。変化はこない。俺はまだ生きている……?

     俺は恐る恐る目を開けた。するとそこには、炎に呑まれもだえ苦しむ巨人の姿があった。
     3mもの体躯が炎に包まれ、徐々に焦げ初めている。動きも鈍くなってきた。やがて巨人は膝から崩れ落ち、動かなくなった。
     プスプスという音と、肉の焦げた匂いが鼻についたが、意識はそこまで回らなかった。

    「大丈夫!?」

     女の子の声が聞こえた。
     人間の声だ。俺を心配してくれている。
     助かった、生き残れた。そう感じた俺は、ゆっくりと地面に倒れこみ、意識を失った。


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