フランスも日本のゴールデンウィークみたいに、もっと祝祭日を連結してくれればいいのにと思ったりします。でもフランスでは夏の休暇が3週間から1ヶ月くらいあるから、まーいいのか。
ではでは、今号ではクマムシトリビアをお届けします。
★クマムシトリビア その8
読者からのクマムシにまつわる様々な疑問に対して堀川が回答します。
◆ 質問:
近所のコケからクマムシを見つけました。何の種類か知りたいので、ぜひ鑑定してもらえないでしょうか?(その2)
◇ 回答:
クマムシの種同定は面倒くさい、という前回の話の続きです。今回は、クマムシの種類を見極めるために必要な具体的なプロセスについてお話しします。
・標本作り
まず、見つけたクマムシの標本を作ります。種同定の作業で最も罪悪感に苛まれるステップです。そう、クマムシを殺さなくてはいけないからです。
クマムシの標本作りについては、研究者ごとに流派がありますが、ここではクマムシ分類研究者の阿部渉さんに伝授していただいた方法、すなわち阿部流標本作製法をお伝えします。
最初に、スライドガラスの上にクマムシを水とともにのせます。そして、ライターでスライドガラスの下から火をあぶります。このとき、水が沸騰したり蒸発しない程度にスライドガラスを熱するところがポイントです。
こうして、クマムシはお亡くなりになります。残念ながら。でも、仕方ないのです。そう自分に言い聞かせます。最低8回。
熱せられて亡くなったクマムシの体は組織が硬直して、体の構造が保たれやすくなります。
次に、別のスライドガラスにホイヤー液という封入液を一滴たらします。これはハチミツのように粘度の高い液体です。この液体にクマムシを漬けると、柔らかい組織が分解されて透明になり、他の比較的固めの組織や器官が観察しやすくなります。
亡くなったクマムシを極細の筆の毛先でピックアップし、このホイヤー液の水滴の中に移します。その後、上からカバーガラスをかぶせて完成です。
このとき、研究者によっては器官を観察しやすくするためにカバーガラスを上から指で押しつぶしてクマムシの体を強制的にうつぶせ状態にする人もいます。
しかし、阿部流では、これはタブーです。