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むしマガ Vol. 28【森山和道インタビューその3「サイエンスライターの存在意義」】
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むしマガ Vol. 28【森山和道インタビューその3「サイエンスライターの存在意義」】

2012-06-25 14:47
     こんにちは。6月最後の週のむしマガをお届けします。

    飛ばないテントウムシが作出される

     近畿中国四国農業研究センターなどの研究グループにより、飛ばないテントウムシが作出されたそうです。

    飛ばないテントウムシを開発 害虫アブラムシ退治のため

     テントウムシは害虫アブラムシの天敵、つまり益虫なのですが、農場に離しても飛んで逃げていってしまいます。

     そこで飛ばないテントウムシを作出するために、飛ぶのが苦手なテントウムシを選別して交配させて、さらに飛ぶ能力が落ちた個体を選別して....という作業を何年にもわたって繰り返したのだとか。

     新規の変異体を作るのにはバイオエンジニアリングが主流の昨今ですが、こういう昔ながらの地道な品種改良技術によって成果を上げるところには個人的にぐっとくるものがあります。

     分子生物学自体は大変素晴らしいものですが、皆が皆そこに流れてしまい取り残した宝の山が見過ごされている場合も多々あります。手前味噌で恐縮ですが、たとえばクマムシの人工飼育系の開発などもそのひとつです。

     やっぱりハイテクに頼らなくても、面白い成果は出せるよなーと再認識されるような、飛ばないテントウムシのお話でした。

    ★むしコラム「森山和道インタビュー(第3回)」

      森山さんと初めてお会いしたのは、2006年12月に東京大学で開催された「第1回クマムシ研究会」でした。僕が発表を終えた後に、名刺をいただいたのを覚えています。

     その時はそれっきりで終わったのですが、後に慶応大のクマムシ研究者、鈴木忠さんと共著でクマムシ本を出すなど、クマムシ周りでは有名なサイエンスライターさんでした。

    「クマムシを飼うには」鈴木忠/森山和道 著

     僕がブログやtwitterを始めてからもたまに絡んだり、こちらのブログ記事を紹介してくださったりと、ネット上でゆるい交流をしていましたが、今年の3月に久々にお会いして今回の対談となりました。

     森山さんはサイエンスメールというメルマガに、研究者へのインタビューをコンテンツとして載せているのですが、今回は研究者である僕からインタビューを受けるというユニークな形になっています。

    サイエンスメール

     それでは、どうぞお楽しみください。

    ☆プロフィール☆
    森山和道(もりやま・かずみち)
    http://moriyama.com/

     フリーランスのサイエンスライター。1970年生。
    愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。

     1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、
    科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。

    メールマガジン「サイエンス・メール」、
    http://www.mag2.com/m/P0003148.html
    「ポピュラー・サイエンス・ノード」編集発行人。
    http://www.mag2.com/m/0000014382.html
    共著書に『クマムシを飼うには 博物学から始めるクマムシ研究』(鈴木忠、森山和道 /地人書館)。

    第3回「
    サイエンスライターの存在意義」

    森→森山
    堀→堀川

    堀: 今、これだけネットが普及して、現場の人たちがダイレクトに自分のやっていることを解説したり紹介するようになりましたよね。

     そうすると、現場の人と一般市民を繋いでいたジャーナリストとか、もちろんサイエンスライターもそうだと思うんですけど、厳しい言い方をすると、そういう中継ぎ役の方々の意義って何?っていうことになると思うんですけど。例えばサイエンス系のブログでも、匿名の研究者がやっているブログで人気の
    あるのが結構ありますよね。

    森: はいはい。ありますね。

    堀: たとえば、蝉コロンさんとか。ああいう人が出てくると、サイエンスライターとかジャーナリストとしては、どういう風にして対抗するのかな、っていうのがお聞きしたいんですが。

    森: どうなんですかね。僕自身は、本当によくわからないところがありますね。なんかこう、時々書くというのと、常に書くというのは、やっぱり根本的に違うので。そこは一つ大きいところではありますよね。

     あとは、言ってみたら僕らはある意味、寄生虫みたいなものだな、と思うんですけど。寄生虫が宿主にどういう恩恵をもたらしうるか、ということですよね。宿主に何らかの恩恵を与える共生微生物になれる可能性はあるんじゃないですかね。ひょっとしたら、宿主にとって共生微生物の良い遺伝子は宿主に吸収されちゃうかもしれないですけど。

    堀: 何かしらのメリットを研究者に与えながら、ということですか。それは具体的に言うと、宣伝するとかそういうことになるんですか。

    森: どうなんでしょうね。何が一番いいのかは僕はちょっと分かりませんけど。

    堀: ふーん。

    森: でも、いわゆるジャーナリストってあるじゃないですか。自分で「私はジャーナリストだ」って名乗っている人は、だいたい物事を批判的に語るのが仕事ですよね。社会の木鐸(ぼくたく)と言うか。まあ木鐸って本来は叩かれる方ですよね。まあ、ある意味そういう役割が期待されているのがまず一つありますよね。つまり、研究者と迎合するような人は、まずなれないですよね。

    堀: そうかー。

    森: ただ、昔から海外でもよく言われていることらしいですけど、サイエンスの分野を取材をしている人は、取材対象とと迎合しやすい傾向があるようです。それは、良くもあるけど悪くもあると。共感しやすいというか。良く作用した場合には、分かりやすく伝えてくれるということですよね。それはあるんだけど、でも逆にそうじゃない部分もありますよね。その辺でどうすればいいのかというのがまず一点。

     あと、外部の人間が何をすればいいのか。まあ単純に言って、本人が「楽しいですよ」って言うのと、「こんな楽しい人たちががいるんだよ」って伝える側というのは、別々のそれぞれの役割があるのかな、と。笑顔を振りまく人と、その笑顔を写真で撮って広める側ですよ。そういう違いがあるのかもしれませんね。 
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