先々週のむしマガvol.55では、既得権益について書きました。既得権益側にいる人間は、自分たちが既得権益側にいること無自覚である場合が多いという話です。今回のお話は余剰博士問題についてです。結論から言うと、余剰博士問題が生じたひとつの大きな原因として「博士=既得権益層」というのがあると考えています。
余剰博士問題とは、大学院重点化のもとにポスドク一万人計画が実行された結果として、国内に大量の博士が生み出され、供給過剰になっている状態を指しています。
博士号を取ると、多くの人はポスドクになります。ポスドクは数年間の任期付の研究員であり、終身雇用のポジションゲットを目標に研究活動を行っています。僕は海外にいますが、僕もそんなポスドクの一人です。
しかし博士が供給過剰になっている現在では、大学の助教などのポジションを得るのは大変難しく、ポスドク先を転々としながらいつ首が切られるか分からない生活を余儀なくされている博士が多くなっているのです。
そして、この当事者(自分も当事者ですが)の博士の中には、余剰博士を救済するために政府が積極的に介入すべきだ、つまり、セーフティネットを設けるべきだと声を上げる人がいます。
政府の政策が余剰博士を生み出した要因であるので、これを救済するのは政府の責任だということ、そして、博士を育てるためには税金が使われており、その税金で育てた博士を活用できないことは税金を無駄にする、という論理です。
確かに政府の政策にも、この原因の一因はあると思いますし、税金が投入されて博士が育成されていることも事実です。しかし、ちょっと待て、と言いたいのです。