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  • 【連載物語】不思議堂 黒い猫【阿吽】~ふたりの陰陽師編~ /第五話【羽化の刻】

    2025-05-28 17:00  
    season2~ふたりの陰陽師編~
    第五話『羽化の刻』

    著:古樹佳夜
    絵:花篠
    (第四話はこちら)
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    満月が運転する車で蘆屋家の本家へ向かう道中、
    鳴り響いた携帯の着信は非通知だった。訝しみつつも阿文は電話をとった。

    『おお、阿文か? ワシじゃ、ワシ! 
    ちょっと困ったことになっておる。助けてくれぬか』
    『阿文さん! お久しぶりです!』
    電話口からは少年の声と、その言葉に被せるように男の声も聞こえる。
    随分と騒がしい。その声には聞き覚えがあった。以前、とある怪異を追う中で
    知り合いとなった酒呑童子と、その舎弟の茨木童子。
    彼らは大江山に住んでいる鬼だ。二人とは長い付き合いで、今でも定期的に手紙のやり取りをしている。
    「携帯にかかってくるなんて思いもよらなかったです」
    酒呑童子は現代のテクノロジーに慣れていない。ゆえに阿文は