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  • 【連載物語】不思議堂 黒い猫【阿吽】~ふたりの陰陽師編~ /第二話【陰陽師一族】

    2024-10-31 17:50  
    season2~ふたりの陰陽師編~
    第二話『陰陽師一族』
    著:古樹佳夜
    絵:花篠
    第一話 前編第一話 後編◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

    雪明の急襲を受け、負傷した吽野の右腕を満月は見る。
    「腕がもげなくてよかったな。胴にくらってたら危なかっただろう」
    「怖いこと言うのやめてくれない?」軽口だろうが、今の吽野にとっては恐怖でしかない。
    「強運だって話さ。とはいえ、呪詛は強力だし放っては置けない。……雪明を探すにも、まずはこいつの手当てだな」
    「満月さん、お願いします。先生を助けてください」阿文の真摯な訴えを聞き、吽野は内心嬉しく思っていた。日頃は尻を叩かれ、時に呆れられ……様々なお小言も受けてきたが、こんな風に大切にされると、阿文が相棒で良かったと思わされる。
    「ついてこい」二人を引き連れ、神社を後にした満月は、脇目もふらずに歩み始めた。どこに向かうのかはっ
  • 【連載物語】不思議堂 黒い猫【阿吽】~ふたりの陰陽師編~ 第一話【黒の陰陽師】/後編

    2023-09-18 12:17  
    season2~ふたりの陰陽師編~第一話『黒の陰陽師』後編
    著:古樹佳夜
    絵:花篠
    前編はこちらからお読みいただけます◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
    吽野と阿文、そして満月は、
    不思議堂の裏手にある暗い夜道を進んでいた。
    月は南に向かって宙空に昇り、雨雲の隙間から上弦を覗かせている。
    「あ〜あ。俺のネギマ……」
    吽野はガックリと肩を落とした。歩きながら、飲み足りないとばかりに、
    ブツクサと文句を垂れるのである。そんな相棒を、阿文は肘で小突いた。
    「なんでもないならそれでいい。その時は、また店に戻って一杯やろう」
    宥める満月に向かって、吽野は特大のため息を吐いた。
    「ねえ、なんでそんなに急ぐのさ」
    「別に急いじゃいない。お前こそ、さっさと歩けよ」
    「んなこと言ったってぇ……」
    上背のある満月の歩幅は大きい。投げやりにそぞろ歩くだけの吽野など、
    すぐに置き去りにす
  • 【連載物語】不思議堂 黒い猫【阿吽】~ふたりの陰陽師編~ 第一話【黒の陰陽師】/前編

    2023-07-13 21:30  
    season2~ふたりの陰陽師編~第一話『黒の陰陽師』前編
    著:古樹佳夜
    絵:花篠
    ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
    梅雨明けを目前にひかえた六月の末。
    肌にムシムシとした湿気を感じながら、
    吽野と阿文は商店街を並んで歩いていた。
    馴染みの赤提灯の店で、焼き鳥でも食べたいと、吽野が駄々を捏ねたからだ。
    「いつまで経っても、先生は浪費癖が抜けないな」
    「別にいいじゃん。今日は不思議堂の上がりもあったでしょ」
    「売り上げは店の維持に使うんだ。店の老朽化も激しいし、やはり天井の雨漏りが――」
    「わかったよ。じゃあ、今日はネギマだけにする」
    阿文は特大のため息をついた。
    「嘘ばかり。飲み出したらそれだけじゃきかないくせに」
    「じゃあ、阿文クンも飲むといい。下戸じゃないでしょ」
    阿文は吽野の背中を思わず叩いてやりたくなった。
    とはいえ、この自堕落な相方を正すことは難しい。
  • 【連載物語】不思議堂【黒い猫】~阿吽~/朗読短編【呪いのゲーム】

    2023-06-20 22:27  
    朗読短編『呪いのゲーム』
    著:古樹佳夜
    絵:花篠
    本編生朗読のアーカイブは「令和5年5月記」でご覧いただけます!
    吽野:浅沼晋太郎
    阿文:土田玲央

    チャーリー:浦和希
    御宅:梅田修一朗
     
    アーカイブ前半 https://www.nicovideo.jp/watch/so42235756
    アーカイブ後半 https://www.nicovideo.jp/watch/so42236203

    ◆◆◆◆◆不思議堂◆◆◆◆◆
    阿文 「ただいま〜」
    吽野 「おおお〜〜! ちゃんと映ってんじゃん!」
    阿文が買い物から帰ってくると、居間から吽野の声がした。
    阿文 「どうした。何を騒いでいるんだ」
    吽野 「じゃーん! 見てよ、これ!」
    阿文 「これはまた……ずいぶん懐かしい。レトロなブラウン管テレビだな」
    吽野 「ついに! 不思議堂にもテレビを導入してみたんだ」
    吽野はテレビのリモコンを連打し、次々チャ
  • 【連載物語】不思議堂【黒い猫】~阿吽~/朗読短編【桜川】

    2023-06-20 22:06  
    朗読短編『桜川』
    著:古樹佳夜
    絵:花篠
    本編生朗読のアーカイブは「令和5年4月記」でご覧いただけます!
    吽野:浅沼晋太郎
    阿文:土田玲央
    少年:木島隆一

    アーカイブ前半 https://www.nicovideo.jp/watch/so42132040
    アーカイブ後半 https://www.nicovideo.jp/watch/so42132048

    ◆◆◆◆◆道・夕方◆◆◆◆◆
    夕方、吽野と阿文は大きな袋を両手にぶら下げて、
    不思議堂への帰路についていた。
    吽野 「ぐぬぬ! 米、醤油、砂糖、塩……!」
    阿文 「大丈夫か、先生」
    吽野 「大丈夫なわけないだろ! 俺の細腕は万年筆しか持てないんだ!それなのに、なんだって、こんな、重いものばかり買い込んだの!一度に無くなったわけじゃないでしょうに!」
    阿文 「先生が買い出しの誘いを何度も断るから、買う物が溜まって一気に買う羽目になる」
  • 【連載物語】不思議堂【黒い猫】~阿吽~/朗読短編【春の奇術師】

    2023-05-04 20:51  
    朗読短編『春の奇術師』
    著:古樹佳夜
    絵:花篠
    本編生朗読のアーカイブは「令和5年3月記」でご覧いただけます!
    吽野:浅沼晋太郎
    阿文:土田玲央
    奇術師・天蛙:河西健吾
    アーカイブ前半 https://www.nicovideo.jp/watch/so41987185
    アーカイブ後半 https://www.nicovideo.jp/watch/so41987200
    ◆◆◆◆◆居酒屋◆◆◆◆◆
    吽野 「は〜〜! 美味しいお酒だねぇ、阿文クン!」
    吽野は勢いよくジョッキを飲み干した。
    宵の口、行きつけの居酒屋は活気付いている。
    阿文 「どうした先生。もう酔っ払ったのか」
    吽野 「ふふふ、いやー、それがさ〜」
    珍しく上機嫌な吽野に阿文は目を光らせていた。
    度を越して呑んでしまっては明日の原稿が上がらない恐れがある。
    そんなことなど気にもとめずに、吽野は懐に手をつっこんだ。
    吽野 「この金のカエ
  • 無料公開中【連載物語】『不思議堂【黒い猫】~阿吽~』第一話

    2023-05-04 15:10  
    著:古樹佳夜絵:花篠吽野:浅沼晋太郎阿文:土田玲央★第二話はこちらhttps://ch.nicovideo.jp/kuroineko/blomaga/ar2115953-------------------------------------------◆第一話第一章「大江山よりの便り」下町の風情漂う商店街。最奥に不思議堂がある。
    ボーンボーンと
    真向かいの時計店の振り子時計が夕暮れ時を告げた。
    裏手の飲み屋から、ガヤガヤと酒呑たちの笑い声が
    聞こえてくる頃だが、そんなことなどお構いなしで、
    吽野は一心不乱に売れない冒険小説を執筆していた。
    吽野「裏の飲み屋、楽しそうだな……それに引き換え、俺は机に齧り付いて、何してんだろうねぇ……」
    吽野の集中は完全に切れてしまった。
    吽野「あ〜ダメだ……。阿文クン……」
    阿文「時計屋から聞こえただろう。今は五時」
    吽野「そうじゃなくてぇ、お茶ちょうだい
  • 無料公開中【連載物語】『不思議堂【黒い猫】~阿吽~』第二話

    2023-05-04 15:05  

    著:古樹佳夜
    絵:花篠吽野:浅沼晋太郎阿文:土田玲央★第三話はこちらhttps://ch.nicovideo.jp/kuroineko/blomaga/ar2115955------------------------------------------第二話序章「次なる演目は」
    ◆◆◆◆◆不思議堂◆◆◆◆◆
    吽野「う〜〜〜ん……」
    吽野は文机に向かって、頭をガリガリと掻いていた。
    後ろから、心配した阿文が声をかける。
    阿文「先生、何を唸っているんだ。お腹でも壊したのか」
    吽野「お腹は壊してない。今ね、舞台の題材を思案中なんだ〜」
    阿文「ほう、舞台か」
    吽野「次回は二人芝居の予定だよ」
    阿文「二人だけ? 他の役者を呼んでも良さそうだが」
    吽野「予算の問題だよ。出演は俺と阿文クン」
    阿文「ええ、また僕も出るのか」
    吽野「不満げだね」
    阿文「うーん、本当に僕でいいのか? 僕は、演技に関しては
  • 無料公開中【連載物語】『不思議堂【黒い猫】~阿吽~』第三話

    2023-05-04 15:02  
    著:古樹佳夜絵:花篠吽野:浅沼晋太郎阿文:土田玲央★第四話はこちらhttps://ch.nicovideo.jp/kuroineko/blomaga/ar2115964----------------------------------------------------
    第三話第一章 文豪の集い

    ◆◆◆◆◆不思議堂◆◆◆◆◆

    吽野「寝癖直んないな……ま。いっかぁ」

    吽野は前屈みになりながら

    右手で前髪をいじり、ぶつぶつ言っていた。

    阿文「おや、先生が鏡台の前で髪を整えている。まるで猫みたいだ」

    部屋に入ってきた阿文はくすくすと笑った。

    足元をすり抜けたノワールが、目を細めて、細く鳴いた。

    ノワール「ニャー〜」

    阿文「ははは。確かに、ノワールの言う通りだ。猫だったらあんな寝癖はつけてない」

    吽野「悪口が丸聞こえなんだけど」

    阿文「おっと、気づかれた」

  • 無料公開中【連載物語】『不思議堂【黒い猫】~阿吽~』第四話

    2023-05-04 15:00  
    著:古樹佳夜絵:花篠吽野:浅沼晋太郎阿文:土田玲央
    ★第五話はこちらhttps://ch.nicovideo.jp/kuroineko/blomaga/ar2149215-----------------------------------------------------

    第四話序章「狛犬」

     

    ◆◆◆◆◆不思議堂◆◆◆◆◆

     

    その日、吽野は上機嫌で、阿文に話しかけた。

     

    吽野「阿文クン、春だね」

    阿文「ああ。そうだな」

     

    店内の片付けをしていた阿文は、

    手を止めることなく受け答えした。

     

    吽野「春といえば、なんの季節かわかるかな?」

    阿文「そうだな……うーん、桜の季節……かな?」

    吽野「それ! いやー俺たち気持ち通じ合っちゃってるよね〜」

    阿文「それはよくわからないが」

    吽野「あらそうなの?」

    阿文「そういえば、ちょうど今、裏手の神社は桜