【CoC】オリジナルシナリオ~暗黒の泉~
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【CoC】オリジナルシナリオ~暗黒の泉~

2015-09-30 18:25

    クトゥルフ関係ではご無沙汰してます。どうも、くろやりです。

    クトゥルフ神話TRPG用のオリジナルシナリオです。キーパー向けのシナリオページなので、プレイヤー専門の方にはネタバレになりますのでご注意ください。

    pixivに投稿したシナリオですので、そちらの方が見やすいかもしれませんhttp://www.pixiv.net/novel/show.php?id=5861492

    推奨人数は3~4人、使用時間はSkypeのボイスセッションで3時間前後。基本ルルブがあれば遊べます。
    形式としては簡単な現代クローズド物で、初心者向けに低難易度を目指しましたが、ベタな神話生物に飽きてきた熟練者でも楽しめるよう意識して作りました。

    注意点としましては
    ①登場する神話生物について作者独自の解釈があること
    ②作者オリジナルの呪文が登場すること
    ③重要な部分でPOW対抗が発生するため、POWが低すぎるor人数が少なすぎると難易度が跳ね上がる可能性があること
    が挙げられます。

    シナリオの使用・改変についてはご自由に行っていただいて結構です。ただし、シナリオの無断転載および作者偽装は絶対にお控えください。
    リプレイの投稿に関しては、一言いただけると嬉しいです。

    ==========================================

    短編クローズド『暗黒の泉』  作成者:くろやり

    難易度……★★☆☆☆
    所要時間…Skypeのボイスセッションで3時間前後
    推奨人数…3~4人 推奨技能…探索技能があれば問題なし。戦闘は「一応」あり。
    舞台……現代日本ならばどこでも良い。


    ~あらすじとネタバレ~
     銀丈三郎は、かつては普通のサラリーマンだった。
     仕事が忙しく家族との間に溝があり、前に住んでいた町で娘がいじめにあっていることに気付けなかった。そのことで妻は去り、娘を連れて新しい街に引っ越してきた。
     しかしこの街でもいじめは起きた。新しい職場を探すことで必死になっているうちに、娘は自殺。学校や保護者、PTAにも訴えかけたが取り合ってもらえず、いじめは無かったことにされた。何もできなかった自分自身を呪い、娘を死に追いやった街を憎んだ。
     そんな折、教団・暗黒の泉の存在を知る。腹の中に抱えた行き場のない黒い感情を救うことができると言われ、街への復讐心で入団。やがて幹部まで上り詰める。
     そしてある日、教祖が神を呼ぶ方法にたどり着く。不浄の儀式を行い、彼らは渇望していた祝宴を始めるため、アブホースを目覚めさせようとして呪文を使った。
     だが、その呪文は不完全だった。アブホースは棲家である暗黒の洞窟から自らの体の一部を切り離し、中途半端な分裂体を教会の地下へと向かわせた。
     教祖はこのアブホースが完全体でないことに気付き、儀式の失敗を察してアブホースを追放しようとする。だが、その教祖を後ろから撃ちぬいて儀式を乗っ取った銀丈は自らの願いをアブホースに伝える。

    「私が望むのはこの街への復讐だ。街の住民を喰らい尽くしてくれ」

     皮肉な精神を持つアブホースはその願いを受け、手始めに「街の住民である信者」を食らった。一人残された銀丈は、自らが過ちを犯したことにやっと気づいたが遅かった。アブホースは体の一部を銀丈に取りつかせてこう言った。

    「生贄を持ってこい」

     本来アブホースは棲家から動くことのない神だが、不完全な儀式で自分を呼ぼうとする哀れな人間を利用して、この地で力をため込んでから再び本体の下へ戻ろうと考えたのだった。
     アブホースの従者となった銀丈はアブホースの命令に従い、街の人間を教会へおびき寄せることにした。彼は「怪しい教会がある。肝試しにうってつけ」などとネット上に書き込み、教会の調査をするように探偵に依頼して、人を呼ぶことにした。
     過ちに気付きながらも、彼は復讐を完遂することに憑りつかれていた。娘のために何もしてやれなかった父親として、娘の無念だけは晴らそうと。彼の中に渦巻く"暗黒の泉"は、やがて探索者にまで及んだ。


    ~NPC~
    ◆銀丈 三郎(ギンジョウ サブロウ) 40歳 男
     STR6 CON7 POW14 DEX5 APP9 SIZ14 INT14 EDU15 HP11 SAN0 DB±0
     拳銃251d8×2回)、隠す50、聞き耳65、図書館70、目星65、オカルト50、心理学50、クトゥルフ神話5

     教団「暗黒の泉」を率いていた幹部。ただ一人生き残り、アブホースの従者として生贄を呼び寄せようとしている。
     体には落し子が寄生しており、アブホースを裏切れば体内から消化されてしまうという状況にある。基本的には彼に従って探索を行うことになるが、難癖をつけて従わない探索者がいた場合は、彼の拳銃で脅しても良い。
     交渉技能を使っても何も情報を出してくれない。〈心理学〉を使うと本心が見えないということだけがわかる。探索には加わらない。
     現在独り身で家族はいない。一人娘がいたがいわゆるAPPが足りていない少女だったため、引っ越してきたこの街でもいじめられ、自殺してしまった。そのことで気が狂った三郎は、娘の仇討と言わんばかりに街の人間すべてを敵視してアブホースに飲み込ませようと考えている。
     礼儀正しく、羽振りのいい男性を演じると良い

    ~導入例~
    ・探偵、オカルト研究者など
     探索者の下に一人の男がやってくる。彼は銀丈 三郎と名乗った。
     彼は老後に住むところを探してこの街に最近引っ越してきたらしい。近くの森に迷い込んで雨に打たれ途方に暮れていたところ、さびれた教会を見つけたので雨宿りのため中に入ってみたのだという。
     すると、教会の中から不気味な声のようなものを聞いたのだと言う。街に住む以上、不気味な教会が気になって安心できないので、探偵やオカルトに精通している者に調査を依頼しにきたのだった。

    ・ジャーナリスト、作家など
     上司や担当から最近噂の幽霊屋敷を調査してほしいと言われる。聞き込みやネットで調べると、匿名で書かれた記事に行きあたる。内容は「荒廃した郊外の教会でエイリアンを見た」というもの。とても信憑性があるように思えないが、火のないところに煙は立たないため調査に乗り込むことになる。

    ・友人の捜索
     探索者は溝谷 亮平という男性と友人関係にある。
     頭の軽いチンピラのような男だが、気さくで話しやすいと言う印象だ。彼は噂話が好きであり、すぐに自分の目で確かめてこようとする癖があるらしい。
     そんな彼との連絡がここ数日途絶えているのだ。手掛かりとして思い至るのは、彼が最近インターネットのホラーサイトに出入りしていたということだ。

    ・その他
     特に理由の思いつかない探索者は、ネットの記事を見て肝試しに来たということで良い。

    ~教会につくまで~
     聞き込みやネットでの調査が可能。聞き込みには相応のRPか〈幸運〉〈信用〉〈説得〉のどれかで判定する。

    ・聞き込みでわかること
     郊外の林に怪しげな宗教団体が建てた教会がある
     元は個人の所有していた館を改修して教会にしたらしい
     何をやっているのかはわからないが、最近は音沙汰がない
     ネットで胡散臭い幽霊屋敷の記事が広まっている

    ・ネット
    〈図書館〉か〈コンピューター〉でネット検索を行う。
    「暗黒の泉」という宗教団体が存在すること、大きな組織ではなく個人の広めた宗教であることなどがわかる。
     また、ホラー好きの建てた掲示板で幽霊屋敷の噂が見つかる。さびれた教会の近くで不気味な影を見た、というものである。「カメラを持って肝試しに向かう」という書き込みが「地下通路を見つけたから入ってみる」という書き込みで止まっている。

    ~郊外の教会へ~
     郊外の林の中にある。街から20分ほど歩いたところにあるので、車などで向かうことになるだろう。
     人がめったに訪れないようで、足元は伸び放題の草が生い茂っている。教会は傍から見た限りではそこまでボロボロというわけでもないが、窓が割れて雨ざらしになっているところを見ると寂れた印象を受ける。十字架などはなく青い屋根に煙突があるくらい。

    〈目星〉
     ドアの隙間から中をうかがうと、雨ざらしになった床板ははがれて地面が露出していることがうかがえる。人の姿は見受けられない。

    〈聞き耳〉
     風で木が揺れる音くらいしか聞こえない。この状態で〈アイデア〉に成功すると、動物の声も聞こえないことに気付く(落とし子が動物を食べているため)。


    ~教会内部~
     薄汚れた樫の扉を開けて中に入る。割れた窓から吹き込んだ雨風で長椅子や床は汚れており、奥には石造りの祭壇がある。内装はそこまでぼろくないので、使われなくなったのはここ最近だとわかる。
     教会にはトイレや寝室があるが、目ぼしいものは見つからない。泥棒にでも持ち去られたように何もないが、マッチやライトなどの小道具なら見つかっても良いかもしれない。

    〈目星〉
     床に人の足跡が見つかる。新しいもののようで、ネットの記事を調べた探索者であればこれが肝試しに訪れた掲示板の人間ではないかと思える。

    〈追跡〉
     足跡がどこへ向かっているのかを調べるのに必要。風に晒されているので足跡はとぎれとぎれで、この技能が無いと見つけられない。
     足跡は祭壇の前で途切れていることに気付く。普通に探索してもわかる程度の情報なので、〈追跡〉持ちがいたら振らせるくらいで良い。


    ~祭壇を調べる~
     一番怪しく思えるのはこの祭壇。司祭が立つ壇の奥にあり、異様な存在感を放っている。
     横に動かすことができ、重厚そうな見た目に反して押せば一人の力で動かすことができる。その下には地下へと続く階段を見つけることができる。
     火は灯っていないが燭台が壁際にあるので、火をつけて行けば照らすことが出来そうである。

    〈目星〉
     祭壇を引きずった跡を見つけ、何人かの人間の足跡が祭壇の前で途切れていることに気づく。


    ~教会の地下~  

     地下は人工的な遺跡のようになっている。石造りの壁が続いており、火のついていない燭台がいくつか壁にかけられている。  
     階段を降り切ると、石レンガの長い廊下が続いており、部屋が左右に二つずつある。マップ下が階段である。


    ・戻ろうとすると
     祭壇が動かされて閉じ込められていることに気付く。これは銀丈の仕業である。もし祭壇に何か細工を施しておいても、彼は強引に閉じてしまう。強引に閉じた場合は、祭壇が動く物音が聞こえる。  
     彼は祭壇を自らの操る落し子で封じてしまっているので、どれだけ押しても開くことは無い。閉じ込められたことに気付いた段階で、0/1のSANチェックが発生する。  
     地下に入らず待機していると、足元から現れた灰色の不定形に不意打ちで飲み込まれ、地下への階段に放り投げられる。1/1d6のSANチェック+落下ダメージ1d6が発生。  
     閉じ込められたことに気付いて地下を掘って逃げようとする探索者がいたら、そこから落とし子が這い出して襲われることになる。教会地下の地面は落とし子の棲家であり、岩肌の隙間から染み出して至る所から現れる可能性がある。  
     祭壇が閉じたタイミングで携帯電話の電波が不安定になる。助けを呼ぼうにもご都合主義でつながらなくなるので、探索者だけでなんとかしてもらうことになる。

    〈聞き耳〉  
     廊下の奥から、何かネチャネチャという水っぽい音が聞こえる。また、そこら中から何かが這うような音が聞こえるが、姿は見えない。


    ~左手前の小部屋~  
     どうやら執務室のようである。木でできた扉は普通に開く。  
     中には木製の椅子と机、簡易的なベッドと燭台があるだけの質素な部屋である。机の中を調べると、鉄製の鍵が見つかる。  
     机の上には手紙がある。内容は日本語であり、この教会を建てた司祭が書いたものであるとうかがえる。
     ※冒頭に娘へ、と書いてあるが宛先は無い。この手紙は、亡き娘へ書かれたものである。

    「親愛なる娘へ。喜んでくれ。私はついにやり遂げた。
     私は神に近づく権利を得た。長い信仰と修行が報われたのだ。
     時は来た。今こそ我らの神を目覚めさせ、お前を迫害した街の人間たちに復讐を果たそう。
     娘よ、どうか私を見守っていてくれ。いあ! いあ!」

    〈目星〉
     燭台の近くにまだ使えそうなマッチ箱を見つける。そして、この燭台は持ち歩くことが可能である。
     ・燭台……技能〈杖〉、威力1d6+DB、耐久10、〈幸運〉成功で延焼(毎R終了時に1d6の炎上ダメージ)
     ・燃えている蝋燭……技能〈拳〉、〈幸運〉成功で延焼(毎R終了時に1d6の炎上ダメージ)

    ・部屋を出ようとすると……
     ―部屋の探索を終えて外に出ようとした時、探索者の耳に奇妙な音が届く。
       それはネチャネチャという、水っぽい何かが蠢くような不快な音。
       その音は部屋の至る所から聞こえ、やがて目の前に現れた。
       扉の近くの石壁の隙間から、灰色のスライムのような生物が這い出てきたのだ。
       それは鼻を衝く異臭を放ち、意思を持って探索者たちの行く手を塞いでいる。
       この星の生物と思えない奇妙な怪物を目の当たりにし、1/1d6SAN喪失


    ◆灰色のスライム (1d3体、全員同じステータス)
     STR5 CON9 POW8 DEX6 SIZ9 INT6 HP9 MP8 DB-1d4 SAN喪失1/1d6  
     つかむ30、吸収100(掴まれた次のラウンドから、ラウンド毎に1d6のダメージ)  
     装甲は無いが、1ラウンド毎に1d20のHPを回復する。
     物理攻撃は有効。HPが0になると飛び散って霧散する。
     一体のスライムが掴めるのは一人の対象だけ。  
     掴まれた者は振りほどくことができないが、他者がSTR対抗で助け出すことは可能。
     吸収攻撃を受けると皮膚がただれたようになる(服も一緒に溶けてしまう素敵イベントがあっても良いかもしれない)。  
     火と煙が苦手であり、探索者が火を持っているとわかるとこの部屋のスライムはすぐに姿を消す。


    ~右手前の小部屋~  
     木製の扉で、少し開いている。  
     中はまるで牢獄のようで、床には血が飛び散り、壁には人がはりつけにされていたような跡がある。焼かれた人間の生皮がそのまま壁の染みとなっており、配信者に対してひどい拷問を行ったのだとわかる。0/1d2のSANチェック。  
     壁際には燭台があるが、これは取り外せない。

    〈目星〉  
     部屋の角にビデオカメラが落ちているのを見つけることができる。壊れており、そのままでは見ることができない。

    〈機械修理〉  
     ビデオカメラを修理し、中身を見ることができる。  
     二人組の男性が教会に侵入するところからカメラは回っている。最初は軽い感じでやり取りをしており、祭壇の隠し階段を見つけるとテンションが上がっている。  
     そして最初にこの牢獄に入り、雰囲気をかみしめている時にカメラを持っていた男が悲鳴を上げる。天井から現れたスライムが背中に張り付いたのである。そこでカメラは落ちるがまだ録画は続いており、黄色いパーカーの男がジッポライターの火で相方を助けようとする。
    「コ、コイツ、もしかして火に弱いのか!?」  
     その声と同時にスライムは二人から遠ざかり、火に弱いことに気付ける。火のついたライターを持ったまま一瞬安心する二人だが、逃げようとした二人を今度は別の巨大スライムが襲う。男の踵が当たったビデオカメラは壁まで滑っていき、画面が砂嵐状態になって撮影が止まる。  
     最後に残ったのは、二人の声にならない絶叫だけである。この映像を見た者は1/1d4のSAN減少。
     ビデオを見た探索者の中に溝谷 亮平の知り合いがいれば、黄色いパーカーを着ているのは彼だと認識できるだろう。


    ~左奥の小部屋~  
     扉はしまっている。書庫のようで、様々な書物と共に雑貨が乱雑に置かれている。  
     壁際には燭台があるが、取り外せない。

    〈目星〉  
     金色の杯を見つける。〈考古学〉や〈博物学〉があれば、これが純金で出来た杯だとわかる。また、教会内部の見取り図が見つかり、右奥の大部屋(儀式場)の奥に扉があることがわかる。

    〈図書館〉  
     分厚い経典のようなものが見つかる。そこには「暗黒の泉」が神とあがめる存在について書かれている。  
     その名は不浄の源・アブホース。かつて宇宙の彼方より来訪し、今は地球上のどこかの暗黒の洞窟で眠っているという神。人と交流することのできると言われるこの神に接触し、願いを聞き入れてもらうことがこの教団の目的だったらしい。  
     経典の最後には《アブホースを呼ぶ》という呪文が乗っている。読み終えると1/1d4+1の正気度を失い、〈オカルト〉に5%の追加(教団が自作した不完全な魔道書のため)。

    《アブホースを呼ぶ》※作者オリジナル呪文  
     POW1とSAN1d6を消費し、下がった〈幸運〉の半分の値が成功率となる。失敗したら再び同値を消費するが、二度目以降の〈幸運〉は半分にはならない。
     24時間後にアブホースが現れ、消費したPOWと同じ数だけ生贄を求めてくる。生贄を捧げれば、アブホースは身体の一部を術者に分け与え、落し子を操る能力を与えてくれる。操れる落し子の数は捧げた生贄と同じで、ステータスは全て2d6で決定する。

    ※この呪文は《神格との接触》の不完全な形態であり、呼ばれるのはアブホースの分裂体である。このことはシナリオ終了時まで伏せておくこと。シナリオが終了したら、呪文の説明にこのことを書き加えて伝えること。


    ・書庫を出ようとすると……
     扉を開けて何者かが入ってくる。ビデオカメラに映っていた黄色いパーカーを着た青年と同じような姿である。  
     よく見ると四肢の先端がスライム状になっており、体の色も灰色になっている。牢屋でビデオを見た後なら、彼がスライムに飲みこまれてこうなったのだと察するだろう。
     スライムをまだ見ていない場合は1/1d6、見た後なら0/1d3、溝谷の友人は追加で0/1d3SANチェックの後、戦闘ラウンドとなる

    ◆溝谷 亮平  スライムに飲まれた青年
     STR10 CON11 POW11 DEX12 SIZ13 INT11 HP11 MP11 DB±0 スライムを纏っていることで装甲+1
     ナイフ351d4+2)、つかむ30、吸収100(掴んだ次のラウンドからラウンド毎に1d6

     スライムに飲み込まれた青年。彼が持ち込んでいたナイフをスライム状の腕の中に隠しており、突き刺して襲ってくる。
     このスライムは火を恐れずに襲ってくる。溝谷の身体に加えてスライムの肉体が融合しているため、装甲がある。
     直接攻撃をした場合、自動的に相手のつかむ攻撃が成功したものとする。
     耐久値をゼロにすればスライムは溝谷から剥がれ落ち、どこかの隙間から逃げる。
     溝谷に回復技能を使えば意識を取り戻し、命を救うことができるが、瀕死の重傷のため探索に加わることはない。
     ちなみに相方は既にアブホースに食われている。

    〈目星〉  
     スライム状の右腕の先端に、ナイフの切っ先のようなものが隠れている。
     また、飲み込まれている青年に意識はなさそうだが死んでいるわけではなさそうだと感じる。

    ~右奥の大部屋~
     一際大きな両開きの扉がある。ここまで来ると技能を使わずとも何か粘着質な水っぽい音が聞こえてくる。
     内部はまるで儀式場だ。他の部屋と同じく、明かりはついていない。
     石造りの四角い部屋の中央には豪奢な教壇があり、その向こう側は地盤をえぐったようにぽっかりとした大穴になっている。

     その大穴を満たすように、悪習を放つ大量の水が波打っていた。
       その水たまりの中から灰色がかった忌まわしい塊が縁から溢れそうになっている。
       それはまるで創造上の手違いと忌まわしさとの終局の源のようであった。
       塊は身を震わせながら、絶え間なく膨らみ続けている。
       そしてそこから多様な形の分体が生み出され、あらゆる方向へ向けて這い出ている。
       まさしくそれは不浄の源と呼ぶべき存在。人知を超えた宇宙的恐怖の片鱗だった。
       外なる神・アブホースとの対面により1d3/1d10SAN喪失

    ◆アブホースの分裂体
     STR40 CON100 POW20 DEX1 SIZ30 INT13 HP65 DB+1d6 SAN減少1d3/1d10
     つかむ60%(そのまま吸収に派生する。飲みこまれたラウンドから1d6のダメージ)

     不完全な呪文により呼び出されたアブホースの分裂体。
     本体よりも大きくないのでステータスやSANチェックは控えめ(KP裁量で1d3/1d20にしても良い)。
     その場から動かず、生贄を待っている。あと一人分の生贄を捧げればこのアブホースは望みを聞いてくれる。
     アブホースは人間にテレパシーで語りかけることができる。
     物理的な攻撃に対しては1ラウンドに20ポイント回復する。
     火や魔術によるダメージは普通に受ける。HPがゼロになると地下に身を潜めるが、やがて上へと染み出してくる。

    ◆アブホースの落し子
     STR7 CON4 POW11 DEX5 SIZ8 INT5 HP6 DB-1d4 SAN減少はここではナシ
     つかむ30、吸収100(次のラウンドから1d6
     装甲は無いが、毎ラウンド1d20HPを回復する。
     戦闘開始前に、2d3体の落とし子が本体から産み落とされる。
     火を使った攻撃に成功すれば、落とし子は怯んで一回行動しなくなる。

    ・アブホースのテレパシー
     探索者の目の前に現れた不浄の神は、どこからか声のような音を発して探索者の脳内に語りかけてくる。

    「汝らは生贄か。違うのであれば、生贄を連れて来い。そうすれば、汝らの中で一人だけ望みを聞いてやろう」

     アブホースとは短い会話ならここで出来るが、あまりしつこく話していると強制的に打ち切られる。
     会話が終わると戦闘ラウンドとなる。アブホースの体から産まれた2d3体の落とし子と、アブホース自身も探索者を食おうとしてくる。
     生きた人間を一人犠牲にすればその場で戦闘は終わり、アブホースに望みを伝えることができる。アブホースが望みを聞くのは一人だけであり、全員合わせて一回限り。 
     生贄を用意する際は、部屋の外で待機している溝谷もしくは探索者の誰かを生贄にするか、外部の人間を捕まえて連れて来ることになるだろう。
     探索者を生贄にするなら、仲間同士で殺し合いをさせても良い。外部の人間を連れて来る際には、アブホースに〈交渉技能〉を使う必要がある。
     交渉に成功すればアブホースは自らの落とし子をその探索者に寄生させて、生贄を連れて来るのを待つ。もし裏切れば、落とし子に食われてしまうだろう。
     溝谷は当然生贄になるのを拒むが、抵抗できないほどボロボロなのでアブホースの前に転がり出せば簡単に条件は満たせる。KPは相応の演技で溝谷の最期を飾ってやると良いだろう。もし溝谷を生贄にした場合、友人探索者は0/1d6SANを失うことになる。

    〈言いくるめ〉〈説得〉〈値切り〉
     何かしらの言い逃れをRPで行ってもらう。成功すれば、アブホースの攻撃を一回だけやめてもらえる。手持無沙汰になったアブホースは近くにいる落し子を一体捕まえて貪り食う。

    〈目星〉
     中央の教壇に本が一冊置いてあることに気付く。拾いに行くまで1ラウンド消費する。
     名の無いその本は、経典とは異なる装飾の分厚い本であり、とあるページが開かれたままになっている。そこには《アブホースの追放》という呪文が記されている。呪文を読むだけならSAN消失は無いが、時間をかけてこの本を全て読むと1d4/2d4SANを喪失し、〈クトゥルフ神話〉が3%成長する。
     他の呪文は決めていないが、キーパーが適切と思った呪文が載っていることにしても良い。推奨されるのは《アブホースを目覚めさせる》だろう。


    《アブホースの追放》※オリジナル呪文
     アブホースを棲家である暗黒の洞窟に追い返す呪文。この呪文は術者以外の人間も協力することができる。
     まず、術に参加する人数一人につき1ポイント分のHPを消費し、血を純金属の杯にそそぐ。
     これは術者以外の人間の血でも良い。この行程に1ラウンド消費する。
     続いてこの呪文に参加する者のSAN1d4消費する。
     最後に任意のMPを杯に投入し、投入したMPの合計値とアブホースのPOWを対抗させる。
     術に失敗した場合、次のラウンドにやりなおすことができる。
     SANの消費は最初の一回だけで良いが、MPは帰ってこない。


    ~アブホースを追放する~
    ・呪文で追放
     探索者たちが呪文を唱え終ると、暗黒の洞窟を満たす灰色の塊が、突如発生した光の渦に包まれていく。
     この世の物とは思えない不快な呻き声が探索者の脳内に響いたかと思えば、光が消え去るとともにあの忌まわしい不浄の神は姿を消していた。
     後に残ったのはポッカリと空いた大穴と、彼の身体で塞がれていた鉄扉だけだ。

    ・生贄を与えて追放
     アブホースに生贄を捧げて「元の居場所へ帰れ」と望みを伝えると、アブホースは不定形の触手を一本伸ばして生贄を掴み取り、一言テレパシーを残した。

    「気にいったぞ」

     生贄を掴み取った触手から、あの灰色の落とし子がズルリと産み落とされる。アブホースの体の一部である落とし子は、探索者の服の隙間に入り込むと、まるで体の一部になったかのようにその肉体と融合していた。
     アブホースは満足げに、大穴の底へと沈んでいく。床に空いたヒビから地中へと流れ込んでいき、姿を消した。
     後に残ったのはポッカリと空いた大穴と、彼の身体で塞がれていた鉄扉だけだ。
     落とし子に寄生された探索者は1/1d3SAN喪失。

    ・それ以外の望みを言った場合
     アブホースが叶えられる望みであれば、生贄の提供者に外なる神としての威厳を以て叶えてくれる。POWを増やす、《クトゥルフ神話》を増やすなどが無難である。アブホースは呪文を持たないので、呪文は教えられない。
     しかし、その願いを聞いたところでアブホースは元の住処に帰ることはない。
     出口も開けてくれないので脱出も出来ず、願いは一度きりなのでもう一度交渉することもできない。
     つまり、アブホースを呪文で追放する以外に手段がなくなるのである。

    ・アブホースを倒した
     もし、何らかの方法でアブホースのHPをゼロにした場合、アブホースは地下深くへと姿を消す。
     だが彼は住処へと帰ったわけではなく、体力が回復次第再びこの場へと現れるだろう。
     探索者はアブホースを追放したわけではない。やがていつの日か、この街に顕現するであろう。

    ~教会からの脱出~
     アブホースが姿を消すと、彼のいた地盤は乾いた岩肌へと戻る。潰れた部屋の反対側に、アブホースによって隠されていた扉が見つかる。その扉には鍵がかかっており、執務室で見つかる鍵が使える。もしくはSTR20との対抗か、6ポイント以上のダメージを与えれば開くことができる。
     扉の先は上へと続く階段になっており、登りきった先には地上へ出られるハッチがある。教会の裏手の地面に隠されていた隠し扉から探索者は脱出する。

     探索者たちは晴れて、おぞましい教会から脱出することができた。まさしく「暗黒の泉」と呼ぶにふさわしい化け物から逃れ、日常に生還することができた探索者たち。願わくば、もう二度とあんな事件には関わりたくない。そんな思いを胸に、探索者たちは忌まわしき廃屋を後にするのだった……。


     アブホースを呪文で退散させた場合は、銀丈に寄生していた落し子を含めてすべてのアブホースが退散するが、アブホースが自らの意志で帰った場合には落し子は残る。銀丈は落し子に食われ、行方不明となってしまう。アブホースを元の場所に帰還させることが出来ればシナリオクリアとなる。
     真EDの場合でも、全てを失った銀丈は残された教会の中で首を吊ってこの世を去る。

    ~エンディング~
    ・アブホースを呪文によって追放する(トゥルーED)……1d10+1d3の正気度回復。
    ・アブホースに生贄を捧げて帰らせる(ノーマルED-A)……1d10の正気度回復。
    ・アブホースを帰らせることができなかった(ノーマルED-B)……1d6の正気度回復。


    ~あとがき~  
     このシナリオに目を通していただき、ありがとうございます。  
     色々と独自の解釈が入ったシナリオです。アブホースは人間には何の興味も持たないかもしれない神ですが、このシナリオでは皮肉な精神の持ち主ということで少しだけ人間にちょっかいを出しに来ています。「そんな呪文使われてもワイこの洞窟から動けないんやけどなぁ。なんやあいつら必至やし、ちょいと見に行ったろうやないかい。ほな、来てやったで。街の住民を食えばええんやな。じゃあまずお前らから食ったるわ」といった感じです。  
     また、アブホースの落とし子の能力値も独自の数値を当てはめています。ルルブ曰く様々な形態がある、とのことなのでシナリオの都合に合わせて設定しています。  
     オリジナル呪文に関しても、ルルブに従ってそれっぽいものを作った次第です。「クトゥルフ神話に関わって何事もなく日常に戻れると思うなよげへへ」ということで、冒険の記念にプレゼントしてあげてください。他のシナリオで役に立つとは思えませんが。

    皆様に楽しいCoCライフがあらんことを。


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