「一日一漸」
毎日何かひとつ締め切りがある ( それはとても感謝すべきくことだし、うれしいことだ ) 。本当は二つも三つもあるのだけれど、一日にひとつしかできない。若い頃は頭を切り替えて二つも三つもこなしていたような気もするのだけれど、ひとつの原稿に対する責任感や到達度が上がったからか、もしくはぼく自身のパフォーマンスが落ちたかで当時のようには行かない。
毎日向き合う原稿のそれぞれがまるで違う脳を使う。月曜には月曜のぼくがいて、火曜には火曜のぼくがいる。自分でも明確に書き分ける為にこれは小原信治の仕事、これは青葉薫の仕事と気がついたら区別するようになっていた。
頭を切り替えるには走るか、酒を呑むか、さもなくば眠るしかない。日をまたぐときは眠っている間にも思考が続いている。だから眠りが浅い。一方でクライアントに原稿を送ってしまった後は眠りが深い。翌日に直すことになっても自分の中では一度手放しているから客観的な作業として対応できる。
中には一度書いたら終わりではなく、小さな締め切りを何度も重ねてキャッチボールしながら紡いでいるものもある。一度潜水した場所に休憩を経てもう一度潜っ...