日曜の朝、コーヒーを淹れていたら海に行きたくなった。淹れたてをそのままポットに詰める。妻と娘とそれぞれデッキチェアを抱えてビーサンで浜辺に行った。フリスビーとトングも忘れない。
　

　アスファルトを掃く竹箒の音で目覚める。歯を磨く。髭を整える。顔を洗う。植物を霧吹きで湿らせる。作業服を着る。玄関に並べたフィルムカメラを始めとする貴重品を身につける。自販機で缶コーヒーを買う小銭をポケットに入れる。手入れの行き届いたシンプルな白いスニーカーを履く。いつも置き去りにされる腕時計がほとんど語られない平山の過去を静かに物語っている。
　

　三浦半島で暮らして15年。平均して週に3日ほどは仕事で東京へ行く。バスと電車で往復4時間。週に12時間。1ヶ月で48時間。1年で576時間。この15年間でどのくらいの時間を通勤に費やしているのかを計算してみたら累計で360日あった。
　

　反抗期なんだろうか。
　

　YouTubeの子どもに対する広告が問題視されているのを聞いて、子どもの頃、学校の校門の前で色のついたひよこが売られていたことを思い出した。生き物に抵抗感が強かったぼくは欲しいと思うことはなかったけれど、当時何人もの同級生が親に買ってくれとせがんでいた。その様子は半ばヒステリックですらあった。
　

　ぼくが子どもの頃、コンビニのおにぎりは存在していなかった。少なくともぼくの町には。家で米を炊き、塩を振って握ったものをホイルにくるんで持ち出すのがスタンダードだった。高校の購買部で売られていたのもパンだけだった。
　

　仕事で首都圏のある町を訪れた。
　

　子どもの頃、生徒を殴る教師がいた。ルールを逸脱する生徒を暴力で従わせようとしている大人のようでもあったし、ただ感情的になっている子どものようでもあった。
　

　地位が人を育てる。子どももまたそうみたいだ。
　

　ライブハウスを訪れるのは本当に久し振りだった。
　コロナ禍。子育て。そして都会を離れての海辺暮らし。プライベートでライブを観ること自体6年か7年振りだったんじゃないだろうか。