買ったまま使っていないノートがあった。20年近く前にニューヨークを旅したとき、MOMA美術館で買ったモレスキンのノートだ。アートコレクションのいうラインのA3サイズのスケッチブックだ。黒のハードカバー。水彩でも透けたり滲んだりしないよう紙は厚めのマット紙になっている。プロダクトとして魅力的だったので思わず買ったのだけれど、そもそも旅先でスケッチをするような習慣がない。どちらかといえば絵は苦手だ。結局一度も使うことのないまま、かといって捨てるわけにも行かず、タンスの肥やしになっていた。最低限の持ち物で暮らすのを理想とするぼくの悩みの種でもあった。