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「白い闇」
2023年7月7日、外は白い闇だった。海霧。内陸の熱い空気が冷たい海上に達することで発生する濃霧である。
海も空も夏の新緑までもが幕で覆われたように白く、一寸先も見通すことができない。その光景は今日のぼくに「白い闇」という不条理小説を想起させた。ノーベル賞作家ジョセ・サラマーゴによるパンデミック小説。突如失明し、視界が白い闇に包まれるという伝染病が瞬く間に世界中に蔓延した中で「見えなくなった人々」と「世界で唯一失明しなかった主人公」が生き延びようとする物語だ。
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「2023年の海開き」
夏空を真っ白な鳥が気持ちよさそうに旋回している。カモメだ。ぼくらは浜辺のテントに寝転んでいる。波の音が聞こえるが視界に入っているのは夏の空だけ。だんだんどっちが上でどっちが下なのかわからなくなってくる。空を見下ろしているような錯覚に陥ってくる。
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「人生は長い暇潰しである」
娘が夏休みの計画表を作っていた。
「やるべきこと」と「やりたいこと」を書き出してカレンダーの空欄を埋めていく。
「先生がね、無駄に過ごす日を作らないようにして下さいって」
「無駄に過ごす日ってどんな日?」
「だらだら、ごろごろしているとか」
無駄に過ごす日があってもいいと思うけどな、とぼくは言った。
「まだまだ先は長いんだからさ」
無駄に過ごさなければ一生気づかなかったこともたくさんある。無駄の効用とでも言おうか。まあ、無駄の大切さに気づくのは人生の第二章ででも遅くはないのだけれど。
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