ネック反りの補正
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ネック反りの補正

2014-10-09 21:00

    配信で出た話題ではないけれど、備忘録的にまとめた記事を投下。
    季節代わり、木材の反応がデリケートになるこの時期でもあり、
    メンテナンスにも気を遣う時期ですね、というような話題。


    ネック反りの補正

    ここでは一般的なエレキギターのネック反りの調整について触れていきます。
    エレキギターのネックには大抵、強い弦の張りに対抗できるように
    トラスロッドという補強用の芯が入っています。
    また、ネックの反りが変化した時、その反りの具合を補正できるように
    トラスロッドがネックに加える力を調整できる、
    アジャスタブル・トラスロッドを採用しているのが一般的です。

    アジャスタブル・トラスロッドにはいくつか種類があり、
    そのメカニズムによって挙動が異なります。
    ネック反りの調整の際には、手元のギターに採用されている
    アジャスタブル・トラスロッドの種類について確認した上で、
    その調整を行うのが良いでしょう。


    反りの種類

    ネックの反りの状態には、いくつか種類があります。

    順反り弦がある側にヘッドが傾く反り。
    逆反り弦がある側とは逆方向に向かう反り。
    波打ち:局所的に反りの状況が入れ替わっている状態。
    ねじれ:1弦側と6弦側とで反りの状況が異なっている状態。
    元起き:ネックジョイントの部分でネックが起き上がっている状態。

    このうち、トラスロッド調整で補正が効くのは、順反り逆反りです。
    ただし、順反りや逆反りでも、程度や状況、反りが起きている場所によっては
    トラスロッド調整が効かないケースもあります。
    それ以外の反りについては、ネックに出る症状としては重症で、
    大掛かりな修理が必要になることも多くありますし、
    場合によっては修正しきれないこともあり得ます。

    ネック反りの判断

    ネックの反りの状態の判断方法ですが、タッピング法がわかりやすいでしょう。

    タッピング法のやり方ですが、まずはチューニングをあわせます
    レギュラー以外のチューニングを採用する予定のギターであれば、
    その使用するチューニングに合わせた状態にしてください。
    チューニングを確保した上で、ギターを抱え
    左手で1フレット、右手小指で最終フレットを押さえ
    中間の9フレットあたりのフレットトップと弦の隙間を見ます。
    その隙間がハガキ一枚の厚み程度までであれば適正範囲
    隙間が見えず、右手人差し指で間の弦を叩いても
    フレットと弦があたるカチカチという音がしない(密着している)
    場合は逆反り
    広く隙間が開いている状態の場合は順反りと判断します。

    ネック反りの状況は、弦を張り、必要な張力を掛けた状態で測る必要があります。
    演奏に使う状況で正常な状態を確保することが必要で、
    またギターの弦はチューニングを整えると合計でおおよそ40kgf以上の張力で張られるため
    その状態にするとネックも弦に引っ張られて動きます
    結果、弦を張っていない状態でネックがまっすぐであっても、
    弦を張ると順反り方向に動くことになります。これはごく当然の現象です。
    そのため、ネック反りの判断をするときは、
    そのギターで使うチューニングに合わせた上でチェックする必要があります

    なお、ネックが完全にまっすぐな状態を理想とする意見もありますが、
    弦の振動のための空間を確保する意味(バズ防止)などを含めて、
    若干の順反りを適正とするセッティングが多くみられます。

    上記のように1フレットと最終フレットを押さえて計る場合は
    ネック全体の状態を確認できますが、
    押さえる弦を変えたり、押さえるポジションを変えることで
    細かにネックの反りの状況を見ることも可能です。

    トラスロッド調整

    ネックに順反りか逆反りが見られる場合、トラスロッド調整で補正します。
    アジャスタブル・トラスロッドを採用しているギターには、
    ヘッドやネックの根元にレンチやドライバーで回せるネジがあり
    それを回すことでトラスロッドがネックに加える力を調整できます。
    大抵の場合は、締める方向(時計回り)に回す逆反り方向に、
    緩める方向(反時計回り)に回す順反り方向にネックが動きます。
    ただし、トラスロッド調整時の挙動は機構によっても異なるので、
    調整に当たってはそのギターのマニュアルなどを参照して、
    機構を理解しておくのがよいでしょう。
    (一部メーカーで、トラスロッドのネジの回転方向が逆のものがあります)
    また、どの種類のトラスロッドでも、一度に大幅に状態を変える
    ネックや指板の木材がその変化に追従できず、割れなどの不具合を招くことがあります
    トラスロッドの調整の際は、一回に調整ネジを回すのは多くても45度程度に抑え
    ネックの木材の状態をよく観察し、状態の変化に注意しながら
    じっくりと時間を掛けて調整するのがよいでしょう。
    なお、どうしても調整をやる自信がない、調整に踏み出す勇気がない時は、
    無理をせずにリペアに出してください
    無理な操作を行うと、ネックを破損する恐れがあります。

    多くのギターで採用されているのは、
    構造が単純なシングルアクションのトラスロッドだと思います。
    こちらのトラスロッドは、逆反り方向にのみ力を加えることができる機構です。
    機構は単純で、ネック裏の方向に出っ張るような形に湾曲した溝にロッドを埋め込み、
    ネックの根元とヘッドでそれを固定してあります。
    ロッドの一端にはネジがあり、それを締めこむ方向に回して行くと、
    ロッドをネックの縦方向に延ばす力が加わります。
    湾曲したロッドを延ばそうとすると、ロッドはまっすぐになる方向に変形するため、
    ネック裏側に出っ張るように湾曲しているロッドは、
    ネック中央付近を指板の表面側に向かって押し出すように力を加えます。
    このロッドの対抗力の加減で、ネックの状態を適正にするという仕組みです。

    トラスロッドには他に、ダブルアクションのトラスロッドもあります。
    2Wayトラスロッドなどともいわれるものですが、
    こちらは2本のロッドで構成されていて、
    順反り・逆反りの両方向に力を加えることができる機構です。
    そのため、より積極的にネックの反りの補正ができる利点があります。
    反面、ロッドを埋め込む空間を大きく取ることから
    ネックの振動特性に影響するといわれています。

    タイプによって、特に逆反りを補正する時のトラスロッドの反応が違うため、
    その特性に見合った対処をすることが求められます。
    ネック反りの補正を行う際には、
    手元のギターがどのタイプのトラスロッドを採用しているのか、
    正確に把握しておく
    のがよいでしょう。

    ネック調整が必要な場面

    ネックの状態は演奏性に直結しています。
    特に何もセッティングを変えていないのにバズが増えたり、
    弦高など演奏する時の弦の手応えに違和感を感じた場合などは、
    ネックの反りを見直しておくのが良いでしょう。

    木材でできているネックは、季節代わりなどで温度・湿度が変化した時に
    環境に影響されて状態が変化することがあります。
    季節ごとの温度・湿度の変化の大きい日本のような環境では、
    気候の変化の節目などには注意深く状態を見直しておくとより良いと思います。

    また、ネックの反りは弦から受ける張力に大きく左右されます
    弦のゲージを変更した場合弦のメーカーを変更した場合
    常時使うチューニングを変えた場合などは、
    ネックが弦から受ける張力も変化するため、反りの状態も変わる可能性があります


    エレキギターの場合、ネック反り・トラスロッド調整は、
    特にギター本体にそれ用の工具を付属して売られていることも多く、
    ユーザー自身が対応することを想定されている調整という見方もできます。
    古いフェンダータイプなどネックを外さなければ調整できないケースなどは、
    簡単に手を出せる作業とは言い難くなりますが、
    そうではない場合にはユーザーが自分で面倒を見るのも比較的容易です。
    結果を焦らずに十分に時間を掛けて慎重に対応すれば、問題も起きにくいでしょう。
    可能であれば、こうした調整も自身で対応できるようにしておくと
    いろいろと便利だと思います。
    参考になれば。


    以下蛇足。

    保管時の扱い方

    ネック反りに関連する話題として、
    ギターを保管する時、弦を緩めるべきかという疑問は、
    様々な議論を呼ぶテーマです。
    様々な議論を呼ぶテーマになっているだけに多様な見解があると思いますが、
    敢えてここで言及すると、私見になりますが、
    それぞれのギターのセッティングや特性に合わせて
    個体ごとに適切な対処を施す
    のが妥当な解決策だと考えます。
    すべてのケースで緩めておくのが正解ともいえませんし、
    すべてのケースで張りっ放しで問題なしとも言い切れません。
    それぞれのギター個体の置かれた環境・設定・個性に合わせて、
    それぞれのギターが問題を起こさない状態を整えてやる
    のが良いでしょう。

    エレキギターでスーパーライトゲージ(.09-.42)位であれば、
    チューニングをレギュラーに合わせた状態で保管しても、
    ネックに異常をきたしたことは経験上ありません。
    より太い弦では弦がギターに加える負荷も大きくなるので、
    ネックの置かれる状況はより厳しくなることが想像できます。
    ただし、ネックがそうした力に対してどのように反応するかは、
    それぞれのギターによって個体差が出てくるでしょう。
    長期間ビクともしないネックもあれば、反応しやすいネックもあります。
    保管時にどのように対処するかは、
    それぞれのギターの状態に丁寧に気を配り、試行錯誤も含めて
    ギターごとに良い状況を用意してやるのが適切
    だと考えます。

    アコースティックギターの場合は、ネック反りだけでなく、
    ブリッジ側の状況も考慮する必要があります。
    エレキギターよりも太い弦を使うことが多いので、
    より繊細に状態を見極める必要があるでしょう。
    張力の強い弦を張りっぱなしにすると、
    ブリッジのはがれトップ板の盛り上がりブレイシングのはがれなど
    大きな問題を起こすこともあり得ます。

    弦を緩めるケースでも、ある程度バランスを考えて緩めるのが一般的です。
    闇雲に緩めてしまうと、かえってギターにアンバランスな負荷を掛け
    思わぬ反応を招く恐れもあります。
    半音下げや1音下げに合わせる、すべてペグ2回転分だけ緩めるなど
    ある程度バランスを確保しながら緩める方が問題は起きにくいでしょう。
    (蛇足ながら、チューニングを大きく上げ下げすることを繰り返すと、
    弦の寿命が短くなることがあります)

    長期間に渡りしまいこむような場合に、弦をどのようにするかについても、
    置かれている状況により、より良い対策は変わってくるでしょう。
    しまいこむ前に、そのギターを扱う中で経験的にわかっているギターの性格から
    どのようにするのが最適かを考えて、対策を取る
    ことをお勧めします。
    大切にするのであれば、長期間弾かない場合でも
    定期的にギターの状態を確認する機会を取って、
    その都度状態に合わせた整備・対策を施す
    のが最もお勧めの対処です。

    なお、ギターを保管する上で、弦を外して保管するなど
    弦の張力をまったくかけないでおくのは、あまりお勧めできません
    ネックにある程度弦からの張力が加わった状態を保つ方が、
    ネックの木材に一定の力が加わり続けることから、
    楽器として異常な方向にネックが動くのを抑制することが期待できます。
    弦を外した状態で放置し、ネックが逆反り方向に大きく動いたりすると
    トラスロッドでは補正できないような反りにつながる可能性も考えられます。
    このあたりも個体によって状況は異なりますが、
    弦を張った状態で保管する方が無難だと思います。


    さらに蛇足の豆知識

    スカンクストライプ

    トラスロッドは通常、指板を貼る前に指板側からネックに溝を掘り
    そこに埋設されます。
    しかし、メイプルワンピースネックの場合、
    指板側からトラスロッドを埋設できないため、
    トラスロッドをネック裏から設置する工法をとります。
    フェンダーでは、その工法でトラスロッドを埋め込んだ溝を
    ウォルナットなどの茶色い材で埋めてあり、
    そのネック裏のラインのことを、スカンクの背中の模様の連想から
    スカンクストライプ、ないしスカンクラインなどと呼びます。
    なお、工程の共用化などの理由で、ローズ指板でも
    スカンクストライプが入っているモデルもあります。
    (個人的には、このスカンクストライプの入ったギターを見ると
    フェンダーっぽいギターというイメージがあります)

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