ブロマガ活用の一環として、音楽理論的な話題を投入。
今回もまたコード・スケールの話。
まだまだコード・スケールの話になる予測。
使っている用語等については、学問的には誤っている可能性があります。
なお、状況に応じて、ここの文章を加筆・修正することがあり得ます。
(間違いとか直せるところは後でこっそり直す予感)
コード・スケール・4
前回までに、キーのスケールに基づく形で
よく使われるコードのコード・スケールを簡単に整理しました。
今回は、メジャー・キー特有の借用和音である
サブドミナントマイナー・コードのコード・スケールについて整理します。
サブドミナントマイナー・コード
メジャー・キーでは、同主調のマイナー・キーのサブドミナント・コードを取り入れる
サブドミナントマイナー・コードが活用される例もあります。
このサブドミナントマイナー・コードのコード・スケールは
同主調のマイナー・キーにおけるそれと同様に構成されることもありますが、
メジャー・キーに転用されることで
一部、コード・スケールの構成が変化することもあります。
サブドミナントマイナー・コードとして機能するコードには、
IVm[IVm6・IVm7・IVmM7]
が挙げられます。また、
IIm(-5)[IIm7(-5)]、bVI[bVI6・bVIM7]、bVII[bVII7]、bII[bIIM7]
これらのコードもサブドミナントマイナー・コードとして活用されます。
まず、IVm系統について整理します。
サブドミナントマイナー・コード:IVm
IVm7系:ドリアン・スケール
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | aug4th dim5th | P5th | m6th | M6th | m7th | M7th |
iv | #iv bv | v | bvi | vi | bvii | vii | i | bii | ii | biii | iii |
基準とするスケール(ナチュラルマイナー・スケール)との対応関係 |
同主短調におけるIVm系統のサブドミナント・コードをそのまま流用する場合、
そのコード・スケールはドリアン・スケールになります。
このコード上では長6度は準コードトーンにも相当し、シックス・コードの根拠になります。
また、このコード上では準コードトーンとアヴォイドノートが流動的で、
シックス・コード上では短7度はアヴォイドノートになり、
セブンス・コード上では長6度がアヴォイドノートとして扱われます。
ドリアン・スケールをサブドミナントマイナー・コードのコード・スケールとする場合、
IVm・IVm6・IVm7と関連付けられます。
IVmM7系:メロディックマイナー・スケール上行
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | aug4th dim5th | P5th | m6th | M6th | m7th | M7th |
iv | #iv bv | v | bvi | vi | bvii | vii | i | bii | ii | biii | iii |
基準とするスケール(ミクソリディアンb6th・スケール)との対応関係 |
一方、メジャー・キーに借用されたサブドミナントマイナー・コードでは
長7度をコードトーンに持つIVmM7も活用されます。
このとき、基準とするスケールについては、
ナチュラルマイナー・スケールの短3度がメジャー・キーに転用された影響を受け、
メジャー系スケールの根拠となる長3度に変化したものと見ることもできます。
(この変化を受けたあとのスケールは、ミクソリディアンb6th・スケールになります)
その結果として構成されるIVm系統のコード・スケールは、
メロディックマイナー・スケール上行になります。
シックス・コードでは長7度が、メジャーセブンス・コードでは長6度が
それぞれテンションノートになります。
メロディックマイナー・スケール上行を
サブドミナントマイナー・コードのコード・スケールとする場合、
IVm・IVm6・IVmM7と関連付けられます。
サブドミナントマイナー・コードの代理コード
サブドミナントマイナー・コードの代理コードのコード・スケールについても、
マイナー・キーの時と同じコード・スケールを流用することもありますが、
前項のようにメジャー・キーの影響としてキーのスケール上の短3度が
長3度に変化したものとするミクソリディアンb6th・スケールを
そのコード・スケールを構成する基盤として用いることがあります。
IIm(-5)系統・a:ロクリアン・スケール
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | dim5th | P5th | m6th | M6th | m7th | M7th |
ii | biii | iii | iv | #iv bv | v | bvi | vi | bvii | vii | i | bii |
基準とするスケール(ナチュラルマイナー・スケール)との対応関係 |
マイナー・キーにおけるIIm(-5)系統のコードをそのまま流用する場合、
そのコード・スケールはロクリアン・スケールになります。
IIm(-5)系統・b:ロクリアンナチュラル2nd・スケール
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | dim5th | P5th | m6th | M6th | m7th | M7th |
ii | biii | iii | iv | #iv bv | v | bvi | vi | bvii | vii | i | bii |
基準とするスケール(ミクソリディアンb6th・スケール)との対応関係 |
メジャー・キーに転用された結果として、基準とするスケールに変化を加えた場合、
IIm(-5)系統のコード・スケールはロクリアンナチュラル2nd・スケールになります。
この時、マイナー・キーではアヴォイドノートだった短2度が
メジャー・キーの影響を受けて長2度に変化し、テンションノートに変わります。
bVI系統:リディアン・スケール
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | aug4th | P5th | m6th | M6th | m7th | M7th |
bvi | vi | bvii | vii | i | bii | ii | biii | iii | iv | #iv bv | v |
基準とするスケール(ナチュラルマイナー・スケール)との対応関係 | |||||||||||
bvi | vi | bvii | vii | i | bii | ii | biii | iii | iv | #iv bv | v |
基準とするスケール(ミクソリディアンb6th・スケール)との対応関係 |
マイナー・キーにおけるbIV系統のコードをメジャー・キーに流用する場合は、
基準とするスケールをミクソリディアンb6th・スケールに変化させた場合でも、
変化を受けた音(長3度)はコードトーンの5度に相当する音と重なるため、
結果としてコード・スケールには反映されません。
(コード・スケールの構築の際、基準とするスケールの音は、
ノンコードトーンの補完にのみ使われるためです。
このケースでは、基準となるスケールの変化した長3度は
ノンコードトーンの補完には使われません)
そのため、このコードについては、サブドミナントマイナー・コードに流用されても
マイナー・キーの時と同じコード・スケールが構成されます。
bVII系統・a:ミクソリディアン・スケール
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | aug4th dim5th | P5th | m6th | M6th | m7th | M7th |
bvii | vii | i | bii | ii | biii | iii | iv | #iv bv | v | bvi | vi |
基準とするスケール(ナチュラルマイナー・スケール)との対応関係 |
マイナー・キーにおけるbVII系統のコードをそのまま流用する場合、
そのコード・スケールはミクソリディアン・スケールになります。
bVII系統・b:リディアンb7th・スケール
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | aug4th | P5th | m6th | M6th | m7th | M7th |
bvii | vii | i | bii | ii | biii | iii | iv | #iv bv | v | bvi | vi |
基準とするスケール(ミクソリディアンb6th・スケール)との対応関係 |
メジャー・キーに転用された結果として、基準とするスケールに変化を加えた場合、
bVIIm系統のコード・スケールはリディアンb7th・スケールになります。
この時、マイナー・キーでは完全4度で、アヴォイドノートになっていた音が
メジャー・キーの影響を受けて増4度に変化し、テンションノートに変わります。
bII系統・a:リディアン・スケール
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | aug4th | P5th | m6th | M6th | m7th | M7th |
bii | ii | biii | iii | iv | #iv bv | v | bvi | vi | bvii | vii | i |
基準とするスケール(ナチュラルマイナー・スケール)との対応関係 |
マイナー・キーにおいてもノンダイアトニック・コードに相当するbII系統ですが、
このコードをマイナー・キーからそのまま流用する場合、
そのコード・スケールはリディアン・スケールになります。
bII系統・b:無名[テンション:#11th 13th]
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | aug4th | P5th | m6th | M6th | m7th | M7th |
bii | ii | biii | iii | iv | #iv bv | v | bvi | vi | bvii | vii | i |
基準とするスケール(ミクソリディアンb6th・スケール)との対応関係 |
メジャー・キーに転用された結果として、基準とするスケールに変化を加えた場合、
bIIm系統のコード・スケールは広く使われる特定の名前を持たない、
ハーモニックマイナー・スケールを第6音から並べ直したスケールになります。
この時、マイナー・キーでは長2度で、テンションノートになっていた音が
メジャー・キーの影響を受けて増2度に変化し、アヴォイドノートに変わります。
コードの機能の代理関係を根拠とする考え方
ここで、次々回以降に扱う予定のコード・スケールの構成の仕方についての話に、
先行して触れていきます。
ここまでは、調性を根拠として、キーのスケールからノンコードトーンを拾い
キーに属する各コードのコード・スケールを構成するやり方を整理しました。
つまり、各コードのコード・スケールを構成する際に、
そのコードが属するキーが基盤としているスケールを基に、
コード・スケールを考慮しました。
キーとの関連でコード・スケールの構成を考える話の次は、
コードの機能の代理関係に基づくコード・スケールの構成について
整理して行く予定です。
ここまでは、コード・スケールを設定するコードとキーとの関係で
コード・スケールを構成してきましたが、
今度は、あるコードとその代理コードとの関係において、
主となるコードのコード・スケールや各音の機能を基に、
代理コードのコード・スケールの構成を検討します。
今回触れたサブドミナントマイナー・コードを例として、
その代理関係からコード・スケールを考える内容に、簡単に触れていきます。
サブドミナントマイナー・コードは、主要和音としてIVm系統があり
その代理コードとしてIIm(-5)系統、bVI系統、bVII系統、bII系統のコードが挙げられます。
それぞれのコード・スケールの構成については、前掲の通りです。
改めて、そのコード・スケールを見直してみると、IVm系統においては、
ナチュラルマイナー・スケールから構成したドリアン・スケールを根拠とするケースと
ミクソリディアンb6th・スケールから構成した
メロディックマイナー・スケール上行を根拠とするケースがあります。
また、bVI系統を除き、他の代理コードについても、
同様に二つのパターンに分けることができます。
以下、表にまとめます。
コード | コード・スケール 1 | コード・スケール 2 |
IVm系統 | ドリアン・スケール | メロディックマイナー・スケール上行 |
IIm(-5)系統 | ロクリアン・スケール | ロクリアンナチュラル2nd・スケール |
bVI系統 | リディアン・スケール | リディアン・スケール |
bVII | ミクソリディアン・スケール | リディアンb7th・スケール |
bII | リディアン・スケール | 無名 |
このとき、上の表のコード・スケール1に分類した各コードのコード・スケールは
IVm系統がドリアン・スケールをコード・スケールに持つ場合に
また、同様にコード・スケール2に分類した各コードのコード・スケールは
IVm系統がメロディックマイナー・スケール上行をコード・スケールに持つ場合に、
それぞれその代理コードについてもIVm系統と同じスケールを基盤として
コード・スケールを構成した結果ともいえます。
つまり、代理コードのコード・スケールについては、
その機能を代理する元のコードが持つコード・スケールを根拠として
コード・スケールを構成する関係も成り立ちます。
以下に、IVm系統のコード・スケールを根拠とした場合の
代理コードのコード・スケールとの関係性を対比した表を示していきます。
IVm系統でドリアン・スケールを根拠とした場合
IIm(-5)系統:ロクリアン・スケール
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | dim5th | P5th | m6th | M6th | m7th | M7th |
vi | bvii | vii | i | bii | ii | biii | iii | iv | #iv bv | v | bvi |
IVm(ドリアン・スケール)との対応関係 |
bVI系統:リディアン・スケール
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | aug4th | P5th | m6th | M6th | m7th | M7th |
biii | iii | iv | #iv bv | v | bvi | vi | bvii | vii | i | bii | ii |
IVm(ドリアン・スケール)との対応関係 |
bVII系統:ミクソリディアン・スケール
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | aug4th dim5th | P5th | m6th | M6th | m7th | M7th |
iv | #iv bv | v | bvi | vi | bvii | vii | i | bii | ii | biii | iii |
IVm(ドリアン・スケール)との対応関係 |
bII系統:リディアン・スケール
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | aug4th | P5th | m6th | M6th | m7th | M7th |
bvi | vi | bvii | vii | i | bii | ii | biii | iii | iv | #iv bv | v |
IVm(ドリアン・スケール)との対応関係 |
IVm系統でメロディックマイナー・スケール上行を根拠とした場合
IIm(-5)系統:ロクリアンナチュラル2nd・スケール
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | dim5th | P5th | m6th | M6th | m7th | M7th |
vi | bvii | vii | i | bii | ii | biii | iii | iv | #iv bv | v | bvi |
IVm(メロディックマイナー・スケール上行)との対応関係 |
bVI系統:リディアン・スケール
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | aug4th | P5th | m6th | M6th | m7th | M7th |
biii | iii | iv | #iv bv | v | bvi | vi | bvii | vii | i | bii | ii |
IVm(メロディックマイナー・スケール上行)との対応関係 |
bVII系統:リディアンb7th・スケール
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | aug4th | P5th | m6th | M6th | m7th | M7th |
iv | #iv bv | v | bvi | vi | bvii | vii | i | bii | ii | biii | iii |
IVm(メロディックマイナー・スケール上行)との対応関係 |
bII系統:無名[テンション:#11th 13th]
P1st | m2nd | M2nd | m3rd | M3rd | P4th | aug4th | P5th | m6th | M6th | m7th | M7th |
bvi | vi | bvii | vii | i | bii | ii | biii | iii | iv | #iv bv | v |
IVm(メロディックマイナー・スケール上行)との対応関係 |
このように、コード・スケールの構成については、
代理コードと主要和音との関連で検討することもできます。
なお、主要和音のコード・スケールがキーのスケールを基に構成されている場合、
そのコード・スケールを基にして構成した代理コードのコード・スケールも
キーのスケールを基に構成した場合と共通します。
また、代理コードのコード・スケールを代理関係から考える場合、
その主要和音と代理コードとの間で、アヴォイドノートに関して
関連性が見られることも注目するべきポイントになります。
サブドミナントマイナー・コードの場合、サブドミナント・コードと同様
主となる主要和音の構成に固定したアヴォイドノートがないことから、
代理コードとのアヴォイドノートの関連性は見えませんが、
IVmをドリアン・スケールを基盤として捉えた時に、
その代理コードとなるIIm(-5)系統とbVII系統では
キーのスケール上の短3度、IVm上の短7度の音が共通して
アヴォイドノートになる関連性が見られます。
以上、今回はサブドミナントマイナー・コードについて
キーのスケールを基にコード・スケールを構成する話と
代理コードのコード・スケールを
元の主要和音のコード・スケールを基にして構成する話について
触れてみました。
次回は、キーのスケールとの関わりからコード・スケールを構成する話に絡め、
そのキーのスケールから逸脱するケースについて、整理していきます。
参考になれば幸いです。