先日、大手生主の男性（りなりな）と、同じく大手生主である女性（あっきーなしゃま）の元恋人同士による論争がニコ生にて配信された。 その三時間以上に渡った配信の一部始終全てを私は見てしまった。 途中に今、話題で毎回欠かさず見ているTBSドラマ「半沢直樹」に視線をPCからテレビに頻繁に行ったり来たり忙しく移しながら iPhoneに映し出された、キャバ嬢からの 「今日は店に来ないのぉ～」 と、別の店のキャバ嬢からの   「今日は制服コスプレイベントやってまーす」 と、また違う店のキャバ嬢からの   「髪切ったらまた可愛くなっちった見たかったらお店に来て（笑）」 という三件の営業lineの通知を無視してまで見ていた。   配信の終了と同時に私には妙な感覚があった。   それは、 「お盆休み真っ只中の夜に終わるまで見てるなんて何やってんだ俺」 的な自己嫌悪の感覚ではなくて、 ドラマの進行状況に追いついて内容を見失わないように気を向けつつ、そして、 いつもなら光の速さでキャバ嬢の営業メールに、   「えっ？コスプレのイベント？なにの制服よ？ナース？分かった三秒で行くわ!」 と返信するの私なのに、普段の優先順位を崩壊させても 今、見逃したら次のチャンスはないと削除必須の無修正エロ動画ばりに必死にかじりついて見ていた自分に恥ずかしい後味のする、忘れていたが確かに覚えがある感覚だった。   私は一度、親しくしている先輩から 「女子高生のぞき部屋」 と称される所に連れて行ってもらったことがある。   そう、女子高生のぞき部屋に行った時に感じたあの感覚だった。   ニコ生関連の掲示板やリスナーのコメントで生主に対して 「ニコ生動物園」 と揶揄されているのを目にしたことがあるが 私は猫より大きな動物が苦手というか怖いので   「ニコ生は会員制のぞき部屋」 と言っても言い過ぎではないだろう。   ニコ生見てるって友達に言ったら引かれた   ニコ生の脱ぎ配信見てるの彼女にバレた   ニコ生の生主やってるっこと彼氏にバレたら怒られた   等の視聴してコメントしてる恥ずかしさだったり配信してる恥ずかしさだったりは 私が一度行ったことのある、のぞき部屋の感覚そのもので その社会の、生活しているプライベートの、未成年の男女の、いい歳した成人の男女の 恋人同士の、元恋人同士の、様々な 「恥部」 が見られるのが   ニコ生の魅力に他ならない。   もちろん、恥部を晒すことなく純粋に配信で歌ったり、雑談したりでリスナーを楽しまさせてる生主が多くいるのも事実で 私自身も、ぼーっと何も考えず車載配信で地方の行ったことのある行ったことのない風景を見たり釣り配信で川のせせらぎと季節柄セミの鳴き声を聞いて気づいたらなんか癒やされちゃったりしていることもある。   見ていて 「待ってました!　やっぱニコ生はこうでなくちゃ」 と盛り上がるのは 炎上と比喩されたり神回と呼ばれる類いの 先日見たような、大手生主同士で元恋人同士の別れた後なら何を言われようがお互い干渉しなければ済む話なのに、裏切られた顛末をご丁寧にリスナーに説明して 「暴露されたら、暴露し返す、倍返しだ !!」 と流行に乗った感じで見せてくれた生主の恥部が晒された配信だ。 その一方で、狂気を孕んだように程度を逸脱した違反行為をして反響を呼ぶ配信を美味しいと感じるている生主と、そうなるようにコメントで扇動するリスナーが存在しているのも厳然たる事実だ。 ギリギリセーフとギリギリアウトではポケモンカレーと人気店のカレーぐらい違う。 だが、後先考えなしの突発的に奇を衒っただけの オーバードーズ実況配信や 幼気な女子中学生の自傷行為実況配信や 警察沙汰になる外配信や 未成年のストリップまがいの脱ぎ配信等の 衝撃配信を期待して見てしまうのを分からない訳ではない。   斯く言う私もそんな衝撃配信をリアルタイムで見ていたらきっと、白色、下文字、BIGで   「もっとやれ、今すぐにだ ! !」   「君の本気とはそんなものかね」   「はぁ？お前なに警察にビビってんの？まーた、口だけか」   「BANなんて気にするな、さぁ、どんどん脱いでいこう、むしろ裸になればいいと思うよ」   と危険球だけ投げたようなコメントしていることだろう。   しかし、そういった配信を見終えたら、筆舌に尽くし難い最悪に不味い後味を感じることになる。 私が欲しいのは、一線を画する甘くて美味しい 「生主の不幸は蜜の味」 だと裏笑いの出来る配信だ。   「愛すべき馬鹿 」とは実に言い得て妙で 不品行で露悪趣味なのに人間味溢れる愛すべき馬鹿な生主たちの身から出た不幸に 心躍らせ私はこれからも呑気にタバコを吸いし酒を飲み 「生主の不幸は蜜の味」 だとニコ生を見るに違いない。   おまけの話 私はバツイチなのだけど。 澱む空気と融合した止めを刺す勢いのピリピリ感がしたリビングで 元奥さんと元義父（元奥さんの父）と私で行われた離婚へ向けての話し合い そして 元奥さんと私だけになり 忘れることはないであろう記憶に鮮明に残っている、あの忌々しい緑色の離婚届にサイン＆捺印 甘い結婚生活の終焉。 私は生主ではないがもし、その流れ一部始終をニコ生で配信していたらランキング一位にはなれないとしても十位以内には入れたかなぁと、この記事を書いている時にふと思った。   筆者　月白タクミ 編集　りなりな