日本ハムドラフトの「不都合な」現実 前編
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日本ハムドラフトの「不都合な」現実 前編

2016-04-18 23:52
    今回は日本ハムドラフトの野手獲得に関する内容である。
    前から温めていたネタではあったのだが、
    先日DELTAで「日本ハムの野手育成の投資と見切り」というタイトルのコラムが発表された。
    筆者はここの有料会員になっていないのでこのコラムの全文を読んでいないのだが、
    もしかしたらほぼ今回のこのコラムと同じ内容が書かれているかもしれない。
    あらかじめご了承願いたい。
    なお今回の内容についてのいくらかは昨年7月の生放送で既にしゃべったものなので、
    その時来場してくれた9名のかたは
    今回の内容が決してパクリではないことをご理解いただけるかと思う。

    さてDELTAの岡田友輔氏も書かれているが、
    日本ハムのドラフト、育成戦略は各メディアで取り上げられることが多い。
    これは実際に優勝、Aクラスを続けている実績は言うまでもないが、
    ドラフトで高校生を多く獲りスタメンに名を連ねていることも大きいと思われる。
    もし大学生や社会人出身が多ければ成績が同じでもこうはいかないだろう。

    実際日本ハムの戦略は非常に面白いものだと思うのだが、
    一方で取り上げられることのない部分が多くあるようにも思うのだ。
    そんなわけで今回はその今まで取り上げられることが少なかった
    「不都合な部分」について述べていこう。
    しかし先に書いておくが、今回述べる日本ハムの戦略が事実だったとしても
    今回の内容は書かれたところで「日本ハムにとっては何一つ不都合なことなどない」だろう。
    他球団がすでに気づいている可能性は高いだろうし、
    その同じ戦略をとるための具体的な手段(BOSシステムによる評価方法や
    具体的な育成手法など)を解明できているわけではなく
    この点において日本ハムの優位性が崩れるわけでもないからだ。
    なら誰にとって不都合なのか?
    これはおいおい説明することにして本題に入ろう。

    ① 指名される野手の出自と起用

    日本ハムのドラフトはとにかく高校生野手が多い。
    その傾向は2010年以降顕著にみられるようになったが、
    まずはその数を確認してみよう。



    6年間で44人という指名人数自体も多いが、
    野手20人中高校生が17人ととんでもない比率になっている。
    昨年大学生の横尾が指名されたことで
    「高校生と大社のバランスを取りに行った」という評価が一部で下されていたが、
    高校生:大社が15:2から17:3になって「バランスが取れた」とは
    大したバランス感覚である。
    それはともかく高校生の野手が非常に多いことは改めてよくわかる。
    またその一軍起用も比較的早く、
    昨年は高卒1年目の淺間が46試合で140打席、
    2年目の石川亮も大野、市川、近藤に続く四人目の捕手として27試合に出場しており、
    現在のレギュラーでは西川や近藤がそれぞれ2年目、3年目と
    早い段階で一軍に定着している。

    さてここまでを見て
    「他のチームも見習ってとにかく高校生を獲れ、優先的に一軍で抜擢しろ」
    というのが日本ハムを取り上げる際の定番の主張である。
    しかし日本ハムの戦略はそんな単純かつ観念的なものではない。

    ② 指名される野手のポジション

    2014年に日本ハムの野手指名について取り上げた際には、
    筆者もこのチームの戦略の意味はよくわかっていなかった。
    ただ単にショートが多すぎると思っていたのだ。
    しかしこの年のドラフトとその後の起用法を見てようやく少しは理解できた気がする。



    全25人中キャッチャー、ショート、センターが19人。全体の76%を占めている。
    キャッチャーの指名数はこの8年間の中では広島と並んで最多タイ、
    ショートは最も多い数字だ。
    この3つはいずれも他ポジションからのコンバートが難しい反面、
    打撃が伸びた際には他ポジションへのコンバートを行いやすい守備位置である。
    実際、陽岱鋼のような外野にコンバートされるケースもあれば、
    近藤のようにキャッチャーからサード、ライトといくつものポジションにつくこともある。

    しかしこれらのポジションを優先的に指名すること自体は
    日本ハム以外にもいくつかのチームが行っており目新しいものではない。
    もっと重要なのはこの3つ以外のポジションの選手たちである。
    ファーストの岡は元々投手との二刀流だった選手だが
    プロ入り後は身体能力を生かしてのセンターやライトが多く、
    レフトの岸里も同じく高校時代は投手兼任、
    昨年入団の平沼は現在二軍でショートを守っている。
    サードの宇佐美はやや例外で一、三塁が主だったが昨年から外野に回ることが増えた。
    何と言っても異色なのがライトの西川で、一軍ではしばらくセカンドだった
    (高校時代に内野から外野へ回った選手ではあるが)。
    ちなみにこのような外野手のプロ入り後の内野コンバートはドラフト評論家から
    常に酷評される対象(川上竜平や上林誠知など)なのだが、
    なぜか西川に限っては全く批判されることがない。どういうことだろう。

    このように日本ハムは徹底的にユーティリティにこだわっていることがわかる。
    早く一軍で抜擢できるのも一軍のベテラン・中堅をただ排除するのではなく、
    空いたところを埋められるユーティリティを獲得・育成しているからなのである。

    では日本ハムと近年似たような手法をとっていたチームはどこか。
    本指名の野手人数で見れば2008年以降なら中日が日本ハムと並んで最多タイ。
    10年以降ではオリックスが日本ハムより多い23人で、
    日本ハムの20人は楽天と同じ2位タイとなっている。
    一方のポジション別。
    日本ハム以上にキャッチャー、ショート、センターに本指名が集中しているチームは
    4チーム(70%以上なら8チーム)あるのだが、
    この4チームにはセンターがやけに多い阪神や
    育成枠で他にも大量指名しているソフトバンクもあるため単純には比べられない。
    そして上述の点を考慮しサードの宇佐美、横尾以外もすべて同じ枠内に分類した場合、
    このユーティリティ要員に日本ハム並にこだわっているチームは
    ヤクルトということになる(全20人中実に19人)。
    他にも数年にわたってこれに近いバランスでの指名をしていたチームとしては
    2009~12年頃のロッテ、2010~12年頃のオリックスなどもあげられる。
    もうお気づきだろう。こうして見ると似ているチームの大半が
    大学・社会人野手を中心に指名し酷評されていたチームなのである。

    つまり日本ハムの手法は
    ユーティリティになりうる即戦力を大量に獲得するという
    旧来なら大学・社会人主体で行なわれていた戦略を
    高校生中心にしたものであることがわかる。
    要はBOSシステムなどを用いた即戦力になりうる高校生野手の発掘方法と
    彼らの育成手法を作り出した結果が現在の日本ハムと言えるわけだ。
    当然ながらその根底には「チームの主力は高卒、大社はあくまで脇役」などという
    ドラフト評論に根強く残る固定観念は存在していない。
    出自は関係なく主力級に成長すれば主力として起用し、
    準主力級ならチーム事情に合わせて併用するということだろう。
    タイトルの「不都合な」部分、それは日本ハムの指名をほめる際に用いられる
    「他のチームも見習ってとにかく高校生を獲れ、優先的に一軍で抜擢しろ」ではなく
    「最初から一軍で起用しやすい選手を獲得、育成している」という点である。

    さてここまででもう十分なようにも見えるが、他にもこのチームには変わった特徴がある。
    かなり長くなってしまったので後編に続く!

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