楽天野手ドラフトに潜む真の危機とは
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楽天野手ドラフトに潜む真の危機とは

2016-05-02 22:03
    昨年のドラフト寸評で楽天の野手偏重指名は
    手放しで褒め称える評論家が出るだろうと匂わせておいたが、
    一部では「さすがに投手指名が少なすぎるのでは」との評価もあったものの
    予想していた通り高評価を下す識者が多かったようだ。
    オコエ、茂木、堀内といった有名どころの指名が多かったのも
    評価をさらに押し上げる材料になったかもしれない。

    こうした野手中心の指名を賛美する風潮についてはもはや宗教の域に達している感があるが、
    宗教ゆえなのか実際の指名を無視したイメージによる印象論が語られることが
    ドラフトの世界でもしばしば見られる。
    その一つが「楽天はずっと投手偏重の指名をしてきた」というものだ。
    ただこれが普通の宗教家評論家ならともかく、
    今年3月の『別冊野球太郎』にあった京都純典氏のような
    セイバーメトリクスなどを用いたデータ主体の評論家までもが
    こうしたことを書くとなると問題である。
    今回は楽天のこれまでの指名がどういうものだったのかを見ていこう。

    楽天の指名を一年ずつ簡単に追っていくことにしよう。
    まず参入直後の2004~2007年まで。
    自由枠、高校1巡高校生外れ1巡2巡、大社1巡投手計野手計
    2004一場靖弘渡邉恒樹自由枠は一場。2巡渡邉のあとは4巡以降全て野手24
    2005片山博覗松崎伸吾高校生が片山を抽選で獲得したあと野手2人。大社も3巡で青山を獲得後は野手で固める47
    2006田中将大永井怜1巡は高校生が4球団競合の田中、大社が永井とこの年も投手2人。3巡以下はオール野手24
    2007佐藤由規寺田龍平長谷部康平高校生の抽選を初めて外し1巡以外の高校生投手もチーム初。しかし大社でまた抽選獲得した後に野手2人42
    ここまでですでに何が言いたいか分かった方もいるかもしれないが、
    続いて2008年以降も見ておこう。
    1位外れ1位2位投手計野手計
    2008野本圭藤原紘通中川大志この年1位で野手に入札したことはおそらく誰も覚えていないだろう。3位以下は投手多め42
    2009菊池雄星戸村健次西田哲朗2年連続2位は高校生野手。3位からはすべてバッテリー指名32
    2010大石達也塩見貴洋美馬学ここから再び上位は投手で固める路線に23
    2011藤岡貴裕武藤好貴釜田佳直2007年に続く外れ1位無名の北海道選手24
    2012森雄大則本昂大1位が広島公言の森。2位は現エース則本だが日本生命との関係はどうか33
    2013松井裕樹内田靖人5球団競合の松井を獲得するも、内田以外オール投手指名で巷は低評価81
    2014安樂智大小野郁立花社長、3年連続で抽選当たり43
    2015平沢大河オコエ瑠偉吉持亮汰地元平沢を外すも徹底的に野手指名。概ね2013年とは正反対の高評価に16

    では数字をまとめてみよう。
    あと上では書かなかったが育成指名の数字も加えておく。
    上位投手上位野手本指名投手本指名野手投手計野手計
    2004-20078012171319
    2008-201511527243032
    同2013、15以外10218172123
    2004-201519539414351
    どこをどう見たら投手偏重に見えるのだろうかというぐらい野手指名が多い。
    これでも楽天が投手偏重だったと言う人にとっては
    上位指名じゃない野手は選手にあらずということだろうか。
    楽天の指名は参入当初から
    2位までは投手、その後徹底的に野手を獲りに行くのが基本的なパターンである。
    例外が2007(高校生)~09年と2013、15年。
    むしろ2013年の投手偏重がなければ昨年の野手偏重を除いても野手偏重に近い
    指名を続けていたことがよくわかると思う。

    しかし昨年の楽天が野手偏重のドラフトをしなければならないほどの
    チーム状態だったことはある程度事実である。
    ここが楽天に潜んでいた本当の危機的要素と言えるだろう。
    つまりこれだけ大量指名し続けてきた野手が育っていないのだ。

    特に生え抜きの2桁HR不在が最近よく引き合いに出されるが、
    スラッガータイプを全く獲っていないわけではない。
    上位では中川や内田、
    3位以下でもフェルナンドにマニア受けの非常に高かった勧野など、
    既にほぼレギュラーをつかんだ選手では3年春に5HRを打った岡島もいる。
    しかし伸びない、特に長打力が伸びきらない。
    中川は今年二軍で絶好調のようだが、
    怪我もあったとはいえ7年8年かかるのはやはり遅いと言わざるを得ないだろう。
    レギュラーを固定しない併用しながらの全体野球で補えていれば
    いいのだがそのあたりもうまくはいっていないようだ。

    そしてもう一つ厄介なのが、
    これまで(本当は)野手重視ドラフトを続けてきた反動として
    慢性的な投手力不足に陥っていることだ。
    特に数が足りていないのがチームの調子がいいCSでも顕著に見られ、
    2009年第2ステージでの岩隈の中1日リリーフ起用や
    2013年の田中、則本のスクランブル起用といった事態を招いている。
    それを補うべく行ったのが2013年の投手偏重指名だったのだろうが、
    立花社長が重視すると公言している奪三振率が高い反面制球の悪い選手が多かったり
    逆に極端に三振率の低い相沢(2013年1.99)のような選手がいたりと、
    現状松井以外機能していない状況である
    (もっともチームが持つ指標をすべて一般に公言するはずもなく、
    何かしら別な判断材料に基いた指名だったのだろう)。
    今後も抽選で引き当てた松井や安樂などエース格(候補)はいるが
    現代野球に不可欠なそれ以外の先発リリーフがいない展開が
    続く可能性は極めて高いと思われる。
    個人的には他にも高卒エース候補重視の指名が多いことも気がかりだが、
    社長はじめ楽天首脳陣はただ夢を見たいだけの若手マニアとは当然違う。
    この点はむしろセイバーメトリクス、特にWARに潜む罠に
    はまっているのではないかと疑っているのだが・・・まあこのへんは触れないでおこう。

    最後にもう一度。
    上位2位までの指名しか見ずに語られてきたことが影響しているのだろうが、
    楽天のこれまでのドラフトは投手重視どころか野手重視といえる指名だ。
    しかしこの野手たちの発掘、育成が特に長打力の部分で機能しなかった。
    昨年の野手重視ドラフトは決して
    「野手を上位から指名した。意欲的で素晴らしい」で片づけてはいけない。
    むしろこれだけ野手を獲ってきて、投手の将来性も非常に苦しい中で
    さらに野手偏重をしなければならなかったという点にもっと目を向ける必要があるだろう。
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