2016ドラフト評価 総評(後編)
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2016ドラフト評価 総評(後編)

2016-10-28 22:19
    ドラフト会議から一週間たったが、
    まずはこの間に見た各ドラフト評価などから気になった点を少し書いておこう。

    ソフトバンクの評価について

    ソフトバンクの指名は、田中正義の獲得成功だけで大半の人が高評価を与えるだろう
    とは思っていたが、それに加えて以降を高校生でまとめたことが
    むしろかなりのプラス面として高い評価を与えている人がかなり多いようだ。
    「田中以外の指名があまりに物足りないのでは」と指摘する人も中にはいたが、
    その場合も代わりに獲っておけば、とされたのは高校生ばかりだったので
    言っている内容の根本部分はあまり変わっていない。
    共通しているのは「今のソフトバンクは即戦力を獲る必要が一切なく、
    高校生を長期間かけて育てる余裕もあり、かつ育てるのがうまい」という認識だ。

    かく言う私もチーム別編ではソフトバンクの投手指名についてかなり批判した反面、
    野手はわりと手放しでほめた。
    しかし野手の部分もよく見ると余裕を持ちすぎではないかという気がしてきている。
    金満球団だけに「チームから出ていく野手がいないはず」という前提もあるのだろうが
    主力・準主力には30代に入った選手も多く、
    二軍の外野は今年は伸び悩んだ上林、釜元、真砂などを挙げることができるが、
    内野は伸びている選手が塚田と牧原(+猪本)ぐらいしか見当たらず、
    若いが既に一軍で5年出続けている今宮の控えなども急務になっているように見える。
    一方で現在の準主力以上の高卒野手たちはポジションに空きがなかった明石を除けば
    4~6年目までには何らかの形で一軍定着していた選手ばかり、
    それも二軍で1、2年目から好成績を続けていた選手がほとんどなので
    彼らと比べると今の若手は伸びが悪いと言わざるを得ない。
    そんな状態で今年は野手をすべて高卒で固めたが果して世代交代に間に合うのだろうか。

    大山指名はなぜここまで叩かれるか

    今年はいくら投手の年だといっても、
    外れ1位で佐々木に指名が集中したことでわかるように1位候補そのものは多くなかった。
    この場合、1位抽選のリスクを回避して2位の自分の番までには残らないであろう、
    何としても欲しい選手の一本釣りを狙うのは戦略の一つである。
    その意味では阪神の大山悠輔1位入札は間違いではない。
    ただこのタイプのサードを現在の構成上獲りに行けるチームは多くなく、
    相対評価の視点から見るとたしかに阪神の読み違いが批判されるのはわかる。
    ただ見ていると大半の批判はどうも相対的視点よりは
    むしろ絶対評価視点のニュアンスが強い
    ように感じる。
    こうした雰囲気は大山だけでなく、神宮大会の際にはあれほど注目されていた吉川尚輝や
    日本ハム2位の石井一成にも感じられた要素でもある。

    以前、昨年指名された主な大学生野手のスタッツを載せたことがあるが、
    今回は2位までに指名された4人の3、4年でのスタッツを載せてみよう。

    リーグの違いなどがあり単純に比較するわけにはいかないが、
    茂木、高山、吉田正が既に活躍し始めている昨年の選手と比べると
    吉川と京田は特に長打力の面で見劣りするだろうか。
    一方大山と石井は今年打撃面での進歩が大きかった。
    おそらく全員、足もそれなりに使えるのもプラス材料だろうが、
    この中で一番批判されないのが京田というのもこうして見るとかなり謎と言える。
    ちなみに京田の内容がチーム評価時での記述と明らかに違うのは
    指名後の3連戦で9打数6安打4四死球6盗塁と大爆発したためだ。
    大山は載せていない秋はさほど長打を打てなかった(二塁打3、HR1)ようだが、
    ここまで酷評される内容には見えない。これは吉川や石井も同様だ。

    今年はどうも、いわゆる「スラッガータイプ」が
    実は評論家から全く評価されていなかった年なのかもしれない。
    高校生でも細川成也や今井順之助を指名した横浜、日本ハムの低評価
    (ハムは山口の件を考慮しても低く、
    横浜は濱口を即戦力扱いしている評論家ですら最低評価)も、
    ドラフト前にはそれなりに取り上げられた松本らの指名漏れも
    昨年指名漏れで騒がれた谷田や藤岡などと比べると違いがあまりに極端
    (そもそも指名順位の評価を相対評価視点で行う評論家やファンを
    これまで一度も見たことがない)なのもそれで納得がいく。
    またここで挙げた選手は全員私がこれまで何度か書いてきた
    「ポジションに若干難のある選手」だが、この点はおそらく誰も考慮してないだろう。
    絶対評価が低いのでこういう評価になったと見るほうが自然に思われる。

    来年は野手豊作なのか?

    「今年は投手をひたすら指名していい」という主張の根拠の一つにされるのが
    「来年は野手が豊作」の言説である。
    はっきり言って「来年は〇〇が豊作」は翌年「やっぱり不作だからいらない」に
    なることがほとんどなので気にする意味もないが、
    実際のところ来年の野手は豊作になる可能性はあるのだろうか。

    現段階だと厳しいのでは、というのが私の感想である。
    来年厄介なのは大学生が不作と見られていることで、
    地方リーグに有望な選手が何人かいるが、東京六大学・東都あたりがかなり危ないようだ。
    本当の豊作にするにはこの大学生の、準即戦力以上の存在が不可欠で、
    残る高校生と社会人だけではチーム編成がつらくなる。
    去年豊作も結果的にプロ入りしなかった大卒2年目が来年解禁のため
    今年指名されなかった高卒3年目あたりとともに逸材がそろう可能性はあるが、
    社会人チームが実際にプロに送り出すかどうか
    大卒社会人候補に対しての一部ファンの過剰な拒否反応が問題になりそうだ。
    そうなると残るは高校生だが、高校生野手は豊作の年でも
    そう簡単に大成するものではない。
    なんだかんだで使われ続けても一軍完全定着までに5、6年はかかったり、
    二軍で抜群の成績を残し続けても一軍のポジションに空きがなかったり、
    早く出てきたはいいがその後故障や不調に泣いてしまったりと、
    スタメン定着は実力もさることながら運がかなり絡むのでどうしてもこうなりがちだ。
    ただそのわりにせっぱつまったチームが多いのが難点で
    ある程度早くに出てくる大学生や社会人が必須の状況なのである。
    また有名選手を何人か見ても、世代トップ人気の清宮をはじめ
    ポジション限定の選手が多く、この点も「豊作」をもう一つ感じ取れない理由になっている。
    来年になればまた候補の名前は次々と出てくると思うが、
    少なくとも「プロでの実績」という面で豊作を実感できるのはかなり先の話になりそうだ。

    今年のドラフトは何か変わったか?

    今年はNPBの熊崎コミッショナーがMLBのドラフトを視察していたが、
    ざっと見るかぎりではNPBのドラフトには演出等でこれといった変化はなかったようだ。
    まあ会場等の関係もあるだろうからどのみち今年すぐに変えられるものでもないと思うが。

    というようなことを簡単に書こうと思っていたら、
    スポーツ紙で某評論家が「MLBは静かで機械的に淡々と指名する」などと
    どこの空想世界を見たのかと思うようなことを書いていた。
    大まかな部分は以前書いたので触れないが、
    その時書かなかった指名方法について、1、2巡目に限定して書いておく。

    向こうのドラフトは1つの指名に5分の制限時間が設けられており、
    おおむねギリギリまでウォールームで検討、議論したうえで指名を行う。
    むしろ早いときは1分かからず次の指名が読み上げられる日本の方が
    機械的な指名に見えるのではないかと思えるほどだ
    実際には観客の目の前で最終確認をする様子も見え、決して機械的ではないが)。
    指名会場には各チームの代表者2人がおり、彼らがウォールームからの
    電話による指名を書き取ってその紙に提出するという流れになっている。
    MLBにしてはずいぶんアナログなやりかただが、
    時折PCトラブルが発生するNPBを見ているとこれはこれで良さそうな気もしてくる。

    演出面については、MLBの場合観客の歓声はほとんど聞かれないので
    一部の招待客以外観客を入れてない可能性はある。
    一方で実況と解説が各代表者のすぐ横にいて
    会場全体にも声が聞こえるようになっている
    ことを考えると、
    むしろ公式での中継配信を主目的にしている節が見られる。
    イベントビジネスとしてはNBAやNFLとは歴史も指名環境もまったく違うため
    こうした手法をとっているのかもしれない。
    少なくとも厳粛さを求めてやや静かな雰囲気になっているということはありえない。
    そもそも何組かの候補選手と家族を会場に呼んで
    指名されるとコミッショナー自らが祝福して帽子とユニフォームを着せたり、
    カメラを候補選手の家に入れて指名に喜ぶ姿を中継したり、
    2巡目指名を球団OBの名選手が読み上げる
    (毎年トミー・ラソーダが読むドジャースのような例もある)といった演出をする
    MLBのどこがただ静かで厳粛なのか。
    おそらく前述のスポーツ紙と評論家はせいぜい『マネー・ボール』のあたりで
    記憶が止まってしまっているのだろう。
    ましてやこういう人たちがNBAやNFLの、文字通りお祭り状態で行われるドラフト
    (2015年はシカゴで開催されたNFLは会場に設けられた
    「ドラフト・タウン」に3日間で約20万人が訪れたという)を
    見たらどのような反応をするだろうか。
    まあアメリカ人を小馬鹿にして終わるだけのような気がしないでもないが。

    私なんかはNBA、NFLほどではないにせよ、
    ドラフト会場でもう少し演出面を強化してもいいんじゃないかとも思うのだが、
    そうするとこういう古参のOBやスポーツ紙、ファンから猛反対以上の何かを
    されるのだろうなというのも改めて感じられたように思う。

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