ドラフト1位競合を外し続ける価値
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ドラフト1位競合を外し続ける価値

2017-10-22 22:21

    一番人気(または全体1位)を狙う意味とは

    まずはこちらのサイトの表をご覧いただきたい。
    NFLに詳しい人ならご存じかと思うが、
    これはNFLのドラフトで用いられるバリュー・チャートと呼ばれる表だ。
    この表の原型は、1991年にダラス・カウボーイズの小口オーナーだったマイク・マッコイが
    それ以前数年間の指名権トレードをもとに作成したものである。
    全体1位から始まってすべての指名権の価値がこのような一覧になっており、
    ドラフトの指名権トレードが頻繁に行われるNFLではこの表の存在が知られて以降、
    たいていのチームがこの表に基いてトレードを行っているとされる。
    たとえば今年は全体3位のシカゴ・ベアーズがサンフランシスコ・49ersの全体2位を得るため
    3位指名権に加えて3巡(67位)と4巡(111位)、さらに来年の3巡指名権を譲り渡したが、
    ベアーズが不利すぎるように見えるこのトレードも、
    実際にはこのバリュー・チャートどおりの計算で行われているのがわかる。

    一方でこの表の価値に疑問を呈したのが
    行動経済学者のリチャード・セイラーとケイド・マッセイである。
    彼らの研究によれば、
    ドラフトで先に指名された選手は後で指名された選手より成功率・価値は高くなるが
    その差はわずかで、少なくともこの表が示すほどの大きなものではないという。
    これからすると、先ほどのベアーズは指名権を1つ繰り上げるために
    やはり対価を払いすぎたと思われる。

    これをNPBのルールに当てはめて考えると、
    「一番人気の選手は大きなリスクを負ってでも特攻すべきか」となるだろうか。
    また、「一番人気に特攻しろ」という人の主張は、
    「一番人気の価値は非常に高いが、回避しての単独指名と全体12番目の価値はほぼ同じ」
    ととることもできる。
    なにせこの人たちは、一番人気がどのような選手であっても
    その一番人気を指名したチームを称賛し、
    他のチームを「敢闘精神が足らん(意訳)」と叩くのだ。

    ところで、その選手の価値の是非とともにもう一つ見なければならないことがある。
    それは1位指名が当たる確率は本当に確率通りなのか、という点だ。
    バカか、あくまで確率の範囲内に決まっているだろう、と普通は思うだろう。
    しかし残念なことに神とやらは平等ではないし、誤差というやつは想像以上に広い。
    どこかが100%の確率で当たっても(または外しても)すべては確率の範囲内なのだ。
    そして現在、これが顕著に出るのが1位指名のセリーグvs.パリーグの場合である。
    今回はこちらのほうに注目して、
    3位以下の抽選がなくなった1993年以降のセvs.パを見ていこう。

    1-1の場合
    ここはセリーグ9勝に対しパリーグ10勝で、ほとんど差はない。
    ただし妙な点としては、
    最初の1位指名では現在パリーグが4連勝中なのに対し、
    外れ1位ではセリーグが3連勝中であることが挙げられる。
    セリーグが1位指名の1-1で勝ったのは2008年の野本圭と大田泰示、
    パリーグが外れ1位の1-1で勝ったのは2012年の増田達至が最後だ。
    抽選運という点ではつじつまが合っていると思えなくもないが、
    セリーグの各チームからすればたまったものじゃないだろう。

    2-1、2-2の場合
    確率通りすぎて逆に怖い結果になっている。
    2-1の場合はセパ問わず多い方のリーグが全て勝利(5勝ずつ)しているのだ。
    2-2は事例自体がやけに少なく、川口知哉と藤浪晋太郎だけで結果は1勝1敗。
    ちなみに以前も書いたが藤浪を最後にセリーグは1位指名でパリーグに連敗中である。

    どちらかが3以上の場合
    まずはパリーグが多いケースから書くと、
    パリーグが3-1、3-2と多い場合は6回あり、全てパリーグが勝っている。
    それもこのケースは2006年の田中将大以降に集中しているので、
    「パリーグは一番人気に行くからくじも強い」論の根拠にされている節がある。
    異常なのはセリーグが3チーム以上競合した場合。
    パリーグ込みでセリーグが3チーム以上入札したのは8回あり、
    3-1が2回、3-2が1回、3-3が3回、3-4が1回、4-1が1回になる。
    そしてこのケースでは、セリーグが勝ったのは4-1の佐藤由規だけ。
    3-4だった福留孝介はともかくとしても、
    それ以外のセリーグ優位、または同数でも全てパリーグが勝っているのだ。

    セリーグにくじを外させたがる人たち

    こうしてみると、一番人気であればあるほど、
    セリーグが向かえば向かうほどセパのくじ運には大きな差が生じている
    のがわかる。
    当然のことだが、理由は全く分からない。
    抽選方式になった直後は
    江川卓(1-3)や岡田彰布(2-4)もセリーグ(というか阪神)が当てていたのだが、
    野茂英雄(3-5)あたりからは小池秀郎(4-4)、若田部健一(2-2)がパリーグで、
    セリーグは松井秀喜(3-1)の後は4チーム以上の競合で佐藤と藤浪しか当たらなくなった。
    もはや呪いに近い領域に達してきている。

    現在のセリーグがパリーグに比べて異常なほどくじ運がないのはたしかだ。
    特に2008年以降の全チームの抽選勝率を見てみると運の異常さがさらに際立つ。

    左が1位入札のみの勝敗、右が外れ指名を含めた抽選の勝敗である。
    パリーグはセリーグ以上にくじ運のないオリックスを除くと、
    1位入札の勝率が.500に達してしまう。セリーグは.200弱なのに。

    そんなセリーグに対しては、競合を回避するから弱くなるという批判は根強い。
    セリーグは別に競合を回避しているわけではないのだが、
    この勝率を見るとセリーグ、オリックス、外れ1位の日本ハムに対しては、
    むしろもっとパリーグとの競合を回避したほうがいいのではないかと思えてくる。
    セリーグがいつこの呪縛から脱するかは定かではないが、
    セリーグの各チームに対して一番人気に向かわせようとする人たちは、
    その呪縛が解ける日までひたすら抽選を外し続けさせるつもりなのだろうか。
    もしくは、ただセリーグがくじを外す姿を見たいだけのアンチセリーグなんじゃなかろうか。
    もしアンチではないのだとすれば、一番人気に全てを賭ける価値、
    一番人気を確実に外して外れ1位に向かう価値、そして単独1位指名を狙う価値。
    これらについてもう一度見つめなおしてみるべきだろう。
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