野手のドラフト指名はなぜ少ないのか
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野手のドラフト指名はなぜ少ないのか

2014-04-12 21:39
    前回のランキング編では、
    日本のドラフトでは野手よりも投手を指名する率が高いというデータを出した。
    この理由としてよく言われるのは
    日本は守りを中心に考えるため野手が疎かにされるというものである。
    特に一部の評論家からは、上位で野手(なぜか高卒に限る)を指名することが
    一種のステータスとみなされることもしばしばだ。
    また前回も書いたが、仮想(模擬)ドラフトでは実際の指名と比べて
    野手の比率がやや高いことが多く、ファンやドラフトマニアも野手の指名を
    もう少し増やしてほしいという願望があることがうかがえる。

    だがはっきり言おう。投手が野手より多く指名される理由は少なくとも
    野手が疎かにされているからではない。
    ではなぜなのか。あるデータからその理由の一端を探ってみるのが今回のテーマである。

    さて上記の野手指名論(?)者はたいていの場合、野手をもっと指名すべき理由として
    野手はものになれば投手以上に長い間起用できる
    ただし育成に時間がかかるから忍耐強く長い目で見なければならない
    ことを挙げ、なのに即効性がないために野手は投手より軽視されると主張している。
    ここで「あれ?」と思った方は正解。
    そう、プロ球団が野手を多く獲らない理由は
    すでに獲得した若手野手を忍耐強く育成している最中だからに他ならないのだ。
    何のことはない、彼らの主張に対する反論はすでに彼ら自身が説明しているのである。

    一例を示そう。野手に時間をかける必要があるということは裏を返せば
    投手は野手に比べて早くに見切ることができるということにもなる。
    そこでプロ入り後4年以内に解雇され現役を退いた選手の比率を出してみた。
    とはいえ2004年以降では範囲が狭すぎるので逆指名導入以降の1993~2003年を加え、
    2004年以降は昨年でプロ入り4年となった2009年までとした。
    なお解雇後に社会人や独立リーグでプレイしたのちNPBに復帰した選手も含まれている。

    左:1993~2003年、中:2004~09年(本指名)、右:同左(育成含)
    高校投手 24.8% 27.8% 32.0%
    高校野手 17.7%  8.8% 11.2%
    大学投手 21.8% 15.9% 20.2%
    大学野手 10.7% 11.4% 18.8%
    社会投手 26.9% 21.6% 30.4%
    社会野手 21.1& 14.0% 28.8%

    投手合計 24.8% 22.3% 28.1%
    野手合計 16.5% 10.9% 18.5%

    一目瞭然。投手は野手に比べて早い段階で解雇される率が圧倒的に高いことが見て取れる。
    それも近年になって野手をよりじっくり育成する方向にシフトしているのがわかるだろう。
    その一方で育成枠は契約の関係もあってか投打ともに見切られるのが非常に早い。
    また社会人出身の育成枠は独立リーグの選手が多く、
    自由契約後再び独立リーグに所属する選手も多いことを考えると、
    自由契約後のセカンドキャリアに見通しのつきやすい選手を優先している可能性もある。

    他にも特徴的なのは高校生投手の解雇が非常に早いことだ。
    指名された選手のうち約4人に1人
    2004年以降にいたっては育成指名された選手を含めると約3人に1人
    同世代の大学生がプロ入りする前に解雇されていることになる。
    これはプロの我慢が足りないというより、
    それだけ早くに将来性を見極めることができると考えた方が自然だろう。
    22歳以下の投手の年齢バランスを取っておく必要性は薄いのである。

    少し話がそれたが、ドラフトで投手より野手が優先される理由は
    これでおわかりいただけただろうか。
    ドラフトで選手を獲るということは代わりにだれかのクビを切るということでもある。
    もし野手指名論者の主張通りに選手を獲得していた場合、切られるのは
    普通は一軍のレギュラーでも控えでもなく、若手のホープである可能性が高くなってしまう
    (一軍レギュラーを切って二軍の若手を抜擢しろと言う人も少なくないが)。
    時間をかけてじっくり育成している以上、若手を簡単に解雇せず
    その結果として野手の指名数が少なくなるのは当然のことなのだ。

    最後にもう一つ。
    最初の方でも書いたが、「野手を上位で指名しろ」というのもよく見る主張である。
    が、これは愚問というものだろう。
    仮想ドラフトをやっているとわかるのだが、球団にとって選手の指名順位というのは
    その選手の単純評価ではなく、他球団の評価による部分が大きい。
    他球団の評価が高くない選手なら、たとえ最も欲しい選手であっても
    あえて下位で指名し上位では他球団が目をつけている選手を指名するのも立派な戦略である。
    つまり他球団が投手を優先したため中位以下でもいい野手を確実に獲れる状況であれば、
    その野手をわざわざ繰り上げて上位で獲る必要はないのである。
    選手自身にとってはもちろん下位で指名されるのは気分のいいものではないが、
    球団側の論理としては充分考えられることだ。
    ちなみに仮想ドラフトの場合、
    他球団(参加者)の評価はだいたいドラフトサイトや雑誌等によるため割と見極めやすい。
    実際の指名では水面下での情報収集や選手本人の意向など、
    はるかに複雑で高度な情報戦が繰り広げられていることだろう。
    ドラフトは生き物とはよく言ったものである。

    それにしても仮想(模擬)ドラフトをやっていれば素人にも見えてくる戦略を
    模擬ドラフトを世間に広めた本人が全くわかっていないというのも興味深いところだと思う。
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