高卒主体指名の結末(後編)
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高卒主体指名の結末(後編)

2014-10-05 12:41
    前回の続き。

    3.高校生野手主体路線
    このパターンは思いのほか少ない。
    というのも投手は野手に比べて多く指名されることが多いため、
    指名数全体としては高校生野手の比率が下がるからである。
    言うまでもなくこれは「各チームが投手を重視しているから」とか
    「高校生野手をじっくり育成する気がないから」といった安易な理由ではなく
    高卒をとればとるほど逆に時間をかけて育成することになり、
    結果として1、2軍ともに空きがなくなってくるからだ。
    昔と違って「使える」投手の頭数がとにかく必要な現代ではなおさらである(注1)。

    ちなみに逆指名導入以降の1993~2003年までと楽天参入後の2004~2013年を見ても、
    高校・大学・社会人の野手のうち高校生指名が最多ではないチームは
    前者がオリックス、
    後者は中日、ヤクルト(注2)、ロッテの3チームだけとなっている。


    ①横浜(1993~1996)
    高投4、高野8、大投4、大野0、社投3、社野3。計22

    この直後の97年からは高校生(投手)中心路線を敷いた横浜だが、
    逆指名導入以降はしばらく高卒野手主体の戦略をとっていた。

    この時期の指名を具体的に見ると上位は大学社会人で固める一方
    3位以下での高校生野手指名が目立つ。
    投手は川村丈夫以外の即戦力組はそこそこ程度のリリーフ投手が多く、
    高卒は福盛和男と横山道哉が成功組か。
    一方野手は社会人が波留敏夫、高校生が多村仁、相川亮二、石井義人となかなかの結果。
    惜しむらくは4年間のうち唯一上位で指名した紀田彰一がものにならなかったことだろう。

    また投手の方ではもう一人非常に評価の難しい選手として
    自由契約後アメリカに渡ってから才能が開花した大家友和がいる。

    しかし改めて見るとこの時期も投手がやや伸び悩み気味かつリリーフ投手が多い。
    ただでさえ成功選手が少ない中でさらに成功率を下げる高卒投手路線に移行したのでは、
    このあとの結果は後世から見れば自明としか言いようがなかった。


    ②ロッテ(1993~1995、2001~2003)
    1993~95年 高投2、高野10、大投0、大野0、社投6、社野3。計21
    2001~03年 高投6、高野5、大投0、大野4、社投4、社野0。計19

    最近は極端な大学・社会人路線を敷いているためにドラフト評論家からは
    「球団経営をする気がない」だの「身売りしろ」だのと書かれるチームだが、
    そのロッテが徹底した高校生野手路線を敷いたのがこの2つの時期だ。

    まず前者は上位指名が高校生野手と社会人投手の組み合わせで3年間通し、
    下位でも高校生野手を中心に指名するというもの。
    投手は指名数自体が少ないが、高校生路線の割に高卒投手が少ないのが特徴と言える。
    次いで後者だが、こちらは前者と違い高校生投手が多いように見えるものの
    6人中5人が2003年に集中しており、自由枠を全く行使せずに
    上位指名で高校生野手を獲る傾向が再び強くなっているのでこちらに入れた。

    その成果だが、これはかなりのものと言っていいだろう。
    93~95年には福浦和也、大村三郎の大当たりに
    立川隆史、大塚明、橋本将とバイプレーヤーも輩出。
    投手は大成に時間がかかったが息の長い活躍をした小野晋吾がいる。
    社会人の方も諸積兼司、黒木智宏、薮田安彦と投打に主力が出た。
    一方01~03年は高校生の成功組に今江敏晃、西岡剛、成瀬善久と大物がいるが、
    それ以外は内竜也が多少という程度で大社組は全員失敗。
    こちらは質はいいが数の面でいまいちという結果になっている。

    ちなみに96~00年は社会人投手が多めのやや平凡なドラフトになり
    評論家からも批判される時代だったが、
    95年までに獲った高卒野手の育成を考えればむしろ当然の結果と言える。
    そして2001年というのはちょうど彼らの育成結果がほぼ確定した時期でもある。
    何よりもその時期の成功者がまた非常に多く、
    小林宏之、小坂誠、藤田宗一、小林雅英、里崎智也、
    清水直行、渡辺俊介など錚々たる面子が並ぶ。
    これらの指名が融合した結果が2005年の日本一につながっているのだ。
    どちらか一方だけではうまくいかなかったであろうことは肝に銘じなくてはなるまい。


    ③日本ハム(2010~2013)
    高投2、高野10、大投6、大野2、社投7、社野0。計27

    高校生そのものの指名自体はそこまで多くないのだが、あえてここで紹介する。
    その理由は上を見てもわかるとおりの極端なまでの野手指名の偏り。
    12人中10人が高校生、残る大卒2人もソフトボール出身の大嶋匠に
    大学時代は投手との二刀流だった岡大海と
    徹底して素材重視の指名を繰り返していることがわかる。
    二刀流ではないが自由枠で投手として入団した数年後に野手へ転向し
    大成功を収めた糸井嘉男で自信を持ったのだろうか。

    ここ数年の話なので結果を論じるのはまだまだ先になるが、
    すでに西川遥輝が主力に成長し、谷口雄也、石川慎吾、近藤健介も
    一軍でそれなりの働きをしている。
    あとは11年から上位指名し続けた高卒ショートで誰が大成するか。
    ただ以前よりかなり早くなった輩出スピードが主力放出のスピードに
    追いつけていないのがここ2年間は響いている。

    逆に少ないのが高卒投手で投手15人中たったの2人(大谷翔平、上沢直之)。
    その2人が早くも一軍の主力になっているので
    もっと高校生を獲れと言われそうではあるが、
    その前の2004~09の間にとった高校生投手12人はダルビッシュ有を除くと
    そこそこ投げている選手自体が吉川光夫と中村勝しかおらず、
    超大物ダルビッシュもすでにチームを離れて久しい。


    4.まとめ
    ここまで高校生中心指名を3つのパターンに分けて見てみた。

    まず一つ確かなのは高卒主体の指名、特に高卒投手主体の指名は
    数年間続けるとチームに致命的なダメージをもたらすということである。
    1年限定ならドラフト候補と他チームの動向との兼ね合いで
    こうした指名になることはありうる。
    しかし、意図的に3年以上続けるのはよほど戦力に余裕があり、
    なおかつFAを駆使して投手不足を補えるチーム以外は控えるべきだろう。

    このような指名をしたチームに共通するもう一つのポイントは、
    そのあと戦略を変えて即戦力投手主体に移行してもなぜかうまくいかない点である。
    2002年以降の広島は永川勝浩、梅津智弘、前田健太といった具合で
    2年に1人ずつしか戦力を輩出できず、
    横浜は加藤武治、山口俊、高崎健太郎などこちらも成功率は非常に低い。
    オリックスは2003~04の惨状でお察しとしか言いようがない。
    例外のように見えるのがヤクルトだが、藤井秀悟、石川雅規、館山昌平と
    大物が多いものの結局ここも数が少ない(注3)。

    こう書くと「即戦力ばかり獲っては駄目、高校生とのバランスを」
    などと言う人が必ず出てくるのだが、実際の原因はそんなところではない。
    ヤクルトやオリックスの項で示したが、どういうわけかこれらのチームは
    高校生路線の時も即戦力路線の時も完成度より素材重視の指名をしたがるのだ。
    特に横浜と広島は10年以上経った現在もその傾向が強く、
    投手の頭数が揃わない要因にもなっている
    (最近の広島は前田健太、今村猛、野村祐輔など1位では完成度の高い選手が増えてきたが
    本指名を全員投手で固めた2004年や2010年は素材重視の傾向が顕著に見られた)。

    一方、高卒野手主体路線はまずまずの結果を残している。
    とはいえ3、4年も続ければ二軍の野手枠が満杯になってしまうので
    その3、4年で伸びの悪かった選手を早々に解雇してしまうか、
    一軍の主力を次々と放出して強制的に一軍に抜擢する状況を作らないと
    それ以上この方針を続けるのは難しい。
    また使える投手もしっかりと確保していかなければいけない。
    その意味では現在の日本ハムはバランス面ではこの路線の理想に近い形になっているが、
    肝心の即戦力投手たちがいまいち機能していないことと
    野手の流出が早すぎるのが痛いところ。
    横浜の場合はさらに高卒路線を加速させて墓穴を掘ってしまったパターンと言える。

    ところでこんなことを書いていたら、1年限定だが9人中8人が高校生だった
    2011年横浜の指名選手のうち投手が全員自由契約になっていた。
    野手は一軍抜擢もされた有望株が多い中でのこの結果、
    暗示的ではあるが3年で解雇というのもなんだか物悲しい。


    注1 全チームの完投数は1992~97年の間に400強から200前後まで激減、逆に一軍で登板する投手の数は平均17.75から22.67まで激増した。
    注2 育成指名を含めるとヤクルトは高校・大学・社会人野手が同数になる。
    注3 坂元弥太郎は登板数のわりに防御率等が悪く残念ながら除外した。横浜の吉見祐治らも同様。
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