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        <title><![CDATA[LUNATIC PROPHET on n-ch]]></title>
        <link>https://ch.nicovideo.jp/lunaticprophet/blomaga</link>
        <description><![CDATA[有村悠のブログ『LUNATIC PROPHET』のニコニコチャンネル版。徒然草のごとくよしなしごとを書き綴ります。小説の連載もあるかもしれない、ないかもしれない。]]></description>
        <language>ja</language>
            <item>
                <title><![CDATA[「未成年はオトナの裏をかいて上手くエロに手を染めろ」というメタメッセージ]]></title>
                <description><![CDATA[<p>
これなー。ホントおかしいと思うんだけど、「空気読んで上手くやれよ」って大人社会からの隠れたサインなんかな。RT @ai_ytk: １８歳未満はセックスする画像や映像を見ちゃいけないのに、１８歳までに生身の異性とセックスしてないとおかしいという風潮
― 有村悠％ふたけっと：F04aさん (@y_arim) 10月 14, 2012

@y_arim 杓子定規の奴は社会で苦労するから今のうちに慣れとけという
― 紅井郵D（ﾃﾞｨｽﾞﾆｰ）さん (@aka1you) 10月 14, 2012
　青少年向けの、いわゆる「18禁」レーティングと、彼らの性生活の乖離についてはずっと不思議に思っていた。最近は未成年のセックス経験率が下がっていると以前どこかで読んだ覚えがあるが、それにしても少なからぬ人々が中高時代にセックスを経験しているのである。では、「18禁」は何のために存在するのか？　 　うすうす</p>]]></description>
                <link>https://ch.nicovideo.jp/lunaticprophet/blomaga/ar11196</link>
                <guid>https://ch.nicovideo.jp/lunaticprophet/blomaga/ar11196</guid>
                <pubDate>Mon, 15 Oct 2012 10:27:00 +0900</pubDate>
                <content:encoded>
                        <![CDATA[<p><blockquote>
<p>これなー。ホントおかしいと思うんだけど、「空気読んで上手くやれよ」って大人社会からの隠れたサインなんかな。RT @<a href="https://twitter.com/ai_ytk">ai_ytk</a>: １８歳未満はセックスする画像や映像を見ちゃいけないのに、１８歳までに生身の異性とセックスしてないとおかしいという風潮</p>
― 有村悠％ふたけっと：F04aさん (@y_arim) <a href="https://twitter.com/y_arim/status/257437959484235776">10月 14, 2012</a></blockquote>
<blockquote>
<p>@<a href="https://twitter.com/y_arim">y_arim</a> 杓子定規の奴は社会で苦労するから今のうちに慣れとけという</p>
― 紅井郵D（ﾃﾞｨｽﾞﾆｰ）さん (@aka1you) <a href="https://twitter.com/aka1you/status/257442091376996352">10月 14, 2012</a></blockquote>
　青少年向けの、いわゆる「18禁」レーティングと、彼らの性生活の乖離についてはずっと不思議に思っていた。最近は未成年のセックス経験率が下がっていると以前どこかで読んだ覚えがあるが、それにしても少なからぬ人々が中高時代にセックスを経験しているのである。では、「18禁」は何のために存在するのか？　 　うすうす気づいていたことではあるが、どうやらこれは<strong>「空気読んで上手いことやれよ」</strong>というオトナ社会からの隠れたメッセージなのではないかと思えてきた。決められたルールを杓子定規に守るだけでなく、適度に悪いことも覚えて上手く世渡りをする術を、オトナ社会に参入する前から身につけておけというわけだ。そこでオトナの裏をかけないような「いい子」は、早晩、社会に不適応を起こして脱落する（そういうタイプとある種の<strong>発達障害</strong>の相関関係をもぼくは疑っているのだが、如何？）。 　<br />　ぼくがかつて<strong>「<a href="http://blog.livedoor.jp/manamerit/archives/65579946.html" target="_blank">俺妹エロゲ問題</a>」</strong>と名づけた、中高生向けライトノベルやアニメで、エロマンガを読んだりエロゲをプレイする中高生が描かれる問題（？）も、結局<strong>「どうせ現実の中高生も隠れてやってることだから」</strong>という意識が作り手の側にあるのではないかと思われる。中高時代からエロマンガを読んだりエロゲをプレイしたりしているオタクというのは、本当に、びっくりするほどたくさんいる。ぼくが大学時代知り合ったオタク女子高生は堂々とエロゲの話をして、ファミレスでエロ同人誌を広げていたし、別の知人は高校時代「18歳になったら18禁アニメは見ない」と口にしていたらしい。そんな実態は作り手の側も先刻承知のうえで（というか、そういう人々こそが作り手に回るのではないか？　後者の知人はのちにマンガ家になった）、それでも建前としては18禁を謳うほかなく、せめて公言はするな、裏をかいてこっそりやれというのが本音なのではないだろうか。<br /> 　興味深いのは、未成年の飲酒・喫煙描写となると、メディアによって規制がかかることだ。『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズの「孤島症候群」において、ハルヒが大酒飲みであることが述べられるが、アニメ版でその描写は削除されている。『魁！クロマティ高校』に登場する不良たちは飲酒も喫煙もやりたい放題だが、「タバコ買ってこい」という台詞がアニメ版では一文字付け足されて「下駄箱買ってこい」となっている。まあ、こちらは明確に法律で禁止されているので、あくまで作り手側の自主規制であるエロ系メディアとは扱いが異なるのだろうが、何故アニメになるとNGなのか。おそらく、受け手が能動的に接しなければならないメディアと、不特定多数が受動的に接するものの違いなのだろう。 <br />　そして、殺人描写との違い。俺妹エロゲ問題において「未成年の殺人描写が規制されたことがあったか？（無い。故に、未成年のエロゲプレイ描写など規制する必要は無い）」という反論がしばしば見られたが、これは微妙に筋が悪い。あるフォロワーとのやり取りを引用しよう。
<blockquote>
<p>フィクションで子供がエロゲやってるときに感じる居心地の悪さって何なんだろう？ 子供が人を殺すこととの違いは何だ？</p>
― 有村悠％ふたけっと：F04aさん (@y_arim) <a href="https://twitter.com/y_arim/status/256390861049434113">10月 11, 2012</a></blockquote>
<blockquote>
<p>@<a href="https://twitter.com/y_arim">y_arim</a> 殺人は成人にとっても非日常だけど、エロは日常だから</p>
― 匿名希・望さん (@Ntokunaki) <a href="https://twitter.com/Ntokunaki/status/256391495270158337">10月 11, 2012</a></blockquote>
<blockquote>
<p>それと居心地の悪さはどう結びつく？ RT @<a href="https://twitter.com/ntokunaki">ntokunaki</a>: @<a href="https://twitter.com/y_arim">y_arim</a> 殺人は成人にとっても非日常だけど、エロは日常だから</p>
― 有村悠％ふたけっと：F04aさん (@y_arim) <a href="https://twitter.com/y_arim/status/256392438560731136">10月 11, 2012</a></blockquote>
<blockquote>
<p>@<a href="https://twitter.com/y_arim">y_arim</a> どうせ誰がやっても非日常なら子供だからといって特に違和感は感じないけど、リアルに経験した境界線の越境はリアルな違和感をもたらす</p>
― 匿名希・望さん (@Ntokunaki) <a href="https://twitter.com/Ntokunaki/status/256393905354989568">10月 11, 2012</a></blockquote>
　おそらくこれは正鵠を射ている。今のところ、殺人は未成年・成年を問わず誰がやっても悪いことであり、非日常である（故に、フィクションでは逆説的に扱いやすい）。ところがエロは日常であり、18禁なるレーティングが存在はするものの、少なからぬ人々がオトナの裏をかいて手を染めているのが実情。おそらく、「俺妹エロゲ問題」においてエロゲプレイ描写が問題視された、その感覚の正体は、後者の生々しさがもたらす「居心地の悪さ」だったのではないか。オトナの裏をかいて、隠れてやってきたことを作り手側に見せつけられてしまったことへの後ろめたさとでも言おうか。<br /> 　逆に言えば、ちょっと後ろめたい思いを（気になる人は）すれば済む程度のことであって、表現規制の呼び水になるだの、こんなもんにケチつけるんなら殺人描写も規制しろよだの、そんなレベルの話ではない。その点では、「俺妹エロゲ問題」なんて命名してヘンに論議を煽ったぼくにも責任がある。その点に関して、ここにお詫び申し上げる。 <br />　いや、それにしても、杓子定規にルールを守り、18歳になるまでエロマンガもエロ雑誌もエロゲーも購入しなかったぼくは実に「いい子」だった（『Alice Club』の立ち読み常習犯ではあったが）。そして、見事にオトナ社会に適応できず、ごらんの有様である。未成年のうちに、もっと「適度に悪いこと」に手を染めておくべきだった。「俺妹エロゲ問題」などと呼んだ裏には、そのことで逆恨みしている部分もあったのかもしれない。「俺妹」＝『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』のヒロインであり、エロゲをプレイする女子中学生・高坂桐乃に対するぼくの激しい嫌悪感も、きっとそうなのだ。 <br /><br /><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/404886887X/lunaticprophe-22/ref=nosim/">俺の妹がこんなに可愛いわけがない(11) (電撃文庫)</a> <a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/404886887X/lunaticprophe-22/ref=nosim/"><img src="http://ecx.images-amazon.com/images/I/51V28xFjqTL._SL240_.jpg" style="margin-right:10px;" alt="51V28xFjqTL._SL240_.jpg" /><br />伏見つかさ アスキー・メディアワークス 2012-09-07<br /></a>
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                </content:encoded>
                <dc:creator><![CDATA[有村悠]]></dc:creator>
                <nicoch:article_thumbnail></nicoch:article_thumbnail>
            </item>
            <item>
                <title><![CDATA[She said, I said. #8]]></title>
                <description><![CDATA[<p>前回、突発的に『魔法少女まどか☆マギカ』の話を挟んで（元々はドワンゴの中の人に頼まれて書いたものなのですが）このブロマガも多少注目を集めたと思うので、アップしたあとこれまでの全章を１時間限定で無料公開にしてみます。ちなみに次の章で最終回。　自動販売機に暴行を働かなかった代償なのだろうか。春香は僕の部屋にいる。
　僕と由紀の前を早足で歩く彼女、有原家と草薙家への分岐点となる十字路をまっすぐウチへ向かって突き進んでいったので、事後承諾的に家へ上げてしまったのだ。それも、マンションのオートロックの自動ドアを前に無言でたたずんでいるところへ鍵を開けて通してやり、エレベータのボタンを押してやり、さらに自宅のドアまで率先して開けてやったのだから情けない。そうでもしなければ、それこそ蹴破られていた気がする。
　共働きの両親はまだ帰っていないので、明らかにビビッている由紀を自室へ非難させ、向かいの僕の部屋へ春香を入れてキッチンから麦茶とコップを取ってくると、世にも恐ろしい光景が待っていた。ベッドの上で枕を抱え、無表情でどついている。ぼす、ぼす、ぼす、と時報のような一定間隔で。さほど強くないのが逆に怖い。僕はとりあえず机にコップを置き、麦茶を注いだ。
　ぼす、ぼす、ぼす、ぼす、ぼす、
「あ、あのな春香、ムロさんはだな」
「わかってる」
　手を止め、かすれ声で呟く。いいやわかっているはずがない。
「兄貴は電波女のゲロチューが好きな天井知らずの変態で、アンタはあたしに隠れてアイツの黒パンツで抜いてるエロ薙エロ助」
「ほら全然わかってねえッ」
　たまらずわめいたのがかえって刺激したらしく、
「アンタたちのことなんて全部お見通しよ！　兄貴はゲロ女かばってゲロ舐めた！　アンタもベタベタされてるんでしょ、アイツ言ってた！　電波研の部室かどっかに愛の巣があってそこでアレやコレややらかしてるんだわ、昼休みとか、探しても見つからないときはどうせそうなのよ！　電波スカートめくって電波パンツためつすがめつ眺めまわして、それで、ッ……」
　もはや日本語の体をなしていない。血管が切れそうなくらい紅潮した顔。
「電波スカート電波パンツって何だよ！　クスリでラリってる人の話を真に受けるなバカ！　落ちッぐッ、着いて俺の話を聞け！」
　顔面を枕で砲撃されながらも説得を続ける。あさま山荘を包囲する機動隊の気分だ。
　</p>]]></description>
                <link>https://ch.nicovideo.jp/lunaticprophet/blomaga/ar10945</link>
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                <pubDate>Fri, 12 Oct 2012 21:00:00 +0900</pubDate>
                <category><![CDATA[小説]]></category>
                <category><![CDATA[有村悠]]></category>
                <content:encoded>
                        <![CDATA[<p>前回、突発的に『魔法少女まどか☆マギカ』の話を挟んで（元々はドワンゴの中の人に頼まれて書いたものなのですが）このブロマガも多少注目を集めたと思うので、アップしたあとこれまでの全章を１時間限定で無料公開にしてみます。ちなみに次の章で最終回。<hr /><p>　自動販売機に暴行を働かなかった代償なのだろうか。春香は僕の部屋にいる。</p>
<p>　僕と由紀の前を早足で歩く彼女、有原家と草薙家への分岐点となる十字路をまっすぐウチへ向かって突き進んでいったので、事後承諾的に家へ上げてしまったのだ。それも、マンションのオートロックの自動ドアを前に無言でたたずんでいるところへ鍵を開けて通してやり、エレベータのボタンを押してやり、さらに自宅のドアまで率先して開けてやったのだから情けない。そうでもしなければ、それこそ蹴破られていた気がする。</p>
<p>　共働きの両親はまだ帰っていないので、明らかにビビッている由紀を自室へ非難させ、向かいの僕の部屋へ春香を入れてキッチンから麦茶とコップを取ってくると、世にも恐ろしい光景が待っていた。ベッドの上で枕を抱え、無表情でどついている。ぼす、ぼす、ぼす、と時報のような一定間隔で。さほど強くないのが逆に怖い。僕はとりあえず机にコップを置き、麦茶を注いだ。</p>
<p>　ぼす、ぼす、ぼす、ぼす、ぼす、</p>
<p>「あ、あのな春香、ムロさんはだな」</p>
<p>「わかってる」</p>
<p>　手を止め、かすれ声で呟く。いいやわかっているはずがない。</p>
<p>「兄貴は電波女のゲロチューが好きな天井知らずの変態で、アンタはあたしに隠れてアイツの黒パンツで抜いてるエロ薙エロ助」</p>
<p>「ほら全然わかってねえッ」</p>
<p>　たまらずわめいたのがかえって刺激したらしく、</p>
<p>「アンタたちのことなんて全部お見通しよ！　兄貴はゲロ女かばってゲロ舐めた！　アンタもベタベタされてるんでしょ、アイツ言ってた！　電波研の部室かどっかに愛の巣があってそこでアレやコレややらかしてるんだわ、昼休みとか、探しても見つからないときはどうせそうなのよ！　電波スカートめくって電波パンツためつすがめつ眺めまわして、それで、ッ……」</p>
<p>　もはや日本語の体をなしていない。血管が切れそうなくらい紅潮した顔。</p>
<p>「電波スカート電波パンツって何だよ！　クスリでラリってる人の話を真に受けるなバカ！　落ちッぐッ、着いて俺の話を聞け！」</p>
<p>　顔面を枕で砲撃されながらも説得を続ける。あさま山荘を包囲する機動隊の気分だ。</p>
　
                            <a href="https://ch.nicovideo.jp/lunaticprophet/blomaga/ar10945">続きを読む</a>
                        </p>]]>
                </content:encoded>
                <dc:creator><![CDATA[有村悠]]></dc:creator>
                <nicoch:article_thumbnail></nicoch:article_thumbnail>
            </item>
            <item>
                <title><![CDATA[劇場版まどか☆マギカ前編について一言言っとくか]]></title>
                <description><![CDATA[<p>「『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ』を見て泣いた子供がいた」というツイートにまつわる話 - Togetter
　今朝未明に作った上記まとめが、予想通り大繁盛でぼくのtwitterのmentionがすごいことになっている。こんな話より昨日ブログにアップしたTMリリックは中二なのか？ ～TM NETWORKにおける小室みつ子と小室哲哉の詞世界のほうをよっぽど読んでもらいたいのだけど、世の中侭ならんものである。だったらあんなまとめ作るなって？　はい、おっしゃるとおりデス。
　まあ、一応まとめ主として、何か言っておこうか。というか、まとめを作った約12時間後、今日の17時50分からの上映回を川崎チネチッタで観てきたので、その報告と感想も兼ねて。
　平日の夕方ということもあってか、第8スクリーン内は閑散としていて、観客数はせいぜい15％といったところだった。年齢層はおおよそ大学生が中心。中高生っぽい少女もチラホラいた。あと、10歳前後かそれ以下とおぼしき男児と女児、それに彼らの父親らしき若い男性（たぶんぼくより若い……）がいたので、上映終了後の言動を観察すべくチェック。　</p>]]></description>
                <link>https://ch.nicovideo.jp/lunaticprophet/blomaga/ar10381</link>
                <guid>https://ch.nicovideo.jp/lunaticprophet/blomaga/ar10381</guid>
                <pubDate>Wed, 10 Oct 2012 01:40:00 +0900</pubDate>
                <category><![CDATA[アニメ]]></category>
                <category><![CDATA[魔法少女まどか☆マギカ]]></category>
                <content:encoded>
                        <![CDATA[<p><h3><a href="http://lunaticprophet.org/archives/13279" target="_blank"><strong>「『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ』を見て泣いた子供がいた」というツイートにまつわる話 - Togetter</strong></a><a href="http://togetter.com/li/386912" target="_blank"></a></h3>
<div>　今朝未明に作った上記まとめが、予想通り大繁盛でぼくのtwitterのmentionがすごいことになっている。こんな話より昨日ブログにアップした<strong><a href="http://lunaticprophet.org/archives/13272" target="_blank">TMリリックは中二なのか？ ～TM NETWORKにおける小室みつ子と小室哲哉の詞世界</a><a href="http://lunaticprophet.org/archives/13272" target="_blank"></a></strong>のほうをよっぽど読んでもらいたいのだけど、世の中侭ならんものである。だったらあんなまとめ作るなって？　はい、おっしゃるとおりデス。</div>
<div>　まあ、一応まとめ主として、何か言っておこうか。というか、まとめを作った約12時間後、今日の17時50分からの上映回を川崎チネチッタで観てきたので、その報告と感想も兼ねて。</div>
<div>　平日の夕方ということもあってか、第8スクリーン内は閑散としていて、観客数はせいぜい15％といったところだった。年齢層はおおよそ大学生が中心。中高生っぽい少女もチラホラいた。あと、10歳前後かそれ以下とおぼしき男児と女児、それに彼らの父親らしき若い男性（たぶんぼくより若い……）がいたので、上映終了後の言動を観察すべくチェック。</div>
<div>　さて、映画本編の話。こうしてまとめられた形で再見すると、実に緻密に、登場人物たち全員がお互いを追いつめあっていくようにシナリオが練られていて、ホント虚淵氏（とキュゥべえ）の悪意パないと思った。劇中でほむらが指摘するように、気軽にまどかとさやかを魔女退治に誘った時点で、マミは相当にギルティだと改めて気づかされたし。まどかの優しさが、さやかやほむらのメンタルを悪意なく削っている点も見逃せない。</div>
<div>　あと、まどかの妙な自己肯定感の低さと過度の責任感、そして「こんな自分でも誰かの役に立てるなら」という思考が、カルトにハマりやすい人（あるいは、こう言ってよければ<strong>ブラック企業の社畜</strong>）そのもの。ネタバレになるが、この思考形態は魔法少女になるその瞬間まで変わらないままである。まったく、キュゥべえ（と虚淵氏）は上手くやったものだ。かたちはどうあれ、結果的に宇宙のエントロピー問題を解決したという点では、この話、キュゥべえの勝ち逃げに等しい。なんだか『勇者特急マイトガイン』の最終回を思い出す。アレになぞらえるなら、まどかたちは二次元人で、キュゥべえ＝虚淵玄は三次元人＝握乃手沙貴。なればこそ、劇場版まどか☆マギカの美しい結末は、虚淵氏が魔法少女のコスプレをした声優たちにフルボッコにされる実写パートだと、ぼくはかねてより主張しているのである。</div>
<div>　話を戻す。この作品、あらゆる人物が感情移入を阻んでいるのだが、中でもどうにも共感できなかったのがさやかの「もう死んでいる、ゾンビの体では恭介に会わせる顔がない」という思考。キュゥべえと同じく、いやソウルジェムにかたちを変えて生きてるだろ、魂の在り処に何故そんなにこだわるんだとしか思えないのである。アイデンティティが確立しきっていない思春期ゆえの考え方や、潔癖さなのか。ただそのあと、まどかと抱き合って泣いて「ありがとう」と言った数時間後に手のひら返して罵るあたりは実に人間くさくて、ゲスい（虚淵氏が）。なんだかファーストガンダムの、ピンチを助けにきたカムランに「あたしが一番つらかったときに知らん顔で今さら……！」とキレるミライ・ヤシマを思い出した。</div>
<div>　杏子は、なんだか野中藍が妙に気負いこんで演技していたためか、いい子が頑張って悪ぶっている感がTV版以上に前面に出ていて、結果として可愛さが4割増くらいになっていた。まあ、悪ぶったあげく未必の故意を含む本物の悪事をいくつも働いている（と推定される）わけで、後編がTV版から改変されなければ、彼女は（富野由悠季的な意味で）因果応報的に死ぬのだけど。</div>
<div>　そしてほむら。いくつかのカットが、TV版10話を知っていると実に意味深である（特に、まどかに名前をカッコいいと評されて、思わず歯噛みするとき。あそこは描き直されていたと思うが、実にシビれた）。ただ、これは劇場版で省かれたシーンだが、ソウルジェムの濁りまくったさやかに対して「まどかを悲しませるくらいならこの手で殺す」と言ったあたりの狂気は、ファンのほむら評で意外と見落とされている気がする。はっきり言って暁美ほむらも、十分頭おかしい。</div>
<div>　あとはまどかの母親か。朝出かけるとき、まどかの弟と父親にはキスをしてまどかとはハイタッチを交わすというのは、なかなか興味深い描写だった。おそらく、この二人は心理的同志なのである。夜中にまどかの相談に乗るあたりも。彼女に関して言えば最も重要な台詞は「誰かの嘘に踊らされてねえな？」という、ワルプルギスの夜のさなかにまどかをほむらのもとへ送り出すときに流れることになるだろうそれ。嘘には踊らされてないけど、結局キュゥべえ＝虚淵氏の手のひらの上で転がされた末に辿りついた答えがアレだったわけで、まどかは。ちなみにかつて「誰かの嘘に踊らされて」「この命、使うね」と散っていった人々は、いま東京は九段下の大きな神社に祀られている。畢竟、まどか☆マギカとは「君は何のためなら命をかけられるか？」という話なわけで、「大切な友達」およびすべての魔法少女のために命を捧げたまどかは実に『俺は、君のためにこそ死ににいく』（略称：俺死に）状態。石原慎太郎都知事がこの映画を絶賛するという悪夢の未来を幻想したのだけれども、それはさておきさんざ取り沙汰されている残虐描写の話だ。</div>
<div>　忘れている人も多いのかもしれないが、本作品の陰惨なイメージは「マミる」などの直接的な残虐描写ではなく、虚淵氏のストーリーテリングに由来している。そもそも、マミが首を食いちぎられる描写はコミック版以外ではなされておらず、アニメのそれは直接描写でさえない。本作品から、直接的な流血・残虐シーンは注意深く排除され、いくつかは抽象度を高めたアーティスティックな表現に昇華されている（例：身体じゅうに傷を負って魔女と戦い続けるさやかの影絵描写や、コミック版では魔女化したさやかに胸を貫かれている杏子の象徴的な流血シーン）。血も出ない「マミる」程度の描写ならば、およそレーティングなど必要がない。そして、「話がひどい」などというのは、レーティングの理由にはまったくならない。</div>
<div>　「子供が泣いた」というツイート（ぼくは、ついにそれを見つけることができず、似たようなニュアンスのものしか収集できなかった）をもとに仮想の子供を作りあげ、やれ子供が怖がるの、子供は理解できないの、子供にはつまらないのと議論を続けるのも不毛である。おのおのが実際に映画館で目撃したリアル子供をこそ根拠にすべきなのだ。ぼくが見かけたリアル子供であるところの、先述した女児は上映終了後、父親とおぼしき男性に「どうだった？」と訊かれ、こうのたまった。<strong>「……終わった感じがしない……」</strong>まあ、そりゃそうだ、前編なんだから。そう考えると、ヱヴァのごとくED（作画的な一番の見所は、鈴木博文によるフルレングス版EDアニメーションだったと思う）終了後に「次回予告」を出すべきだったかもしれないとは言える。雰囲気が壊れるかもしれないが。</div>
<div>　子供のものだった「魔法少女」をオタクが越境・簒奪し、深夜にこっそり弄んでいたのが、劇場版によって衆目に晒されてしまった、もっと自重しろという論調も、検索除けや「公式バレ」除けに必死な女性系同人界隈のそれに重なって見えて、受け入れがたい。そもそも、○○は××向けで△△は□□向けという欧米流の分断は、世界をつまらなくする。ジャンルの越境や簒奪、あいまいな区分こそが、この国のコンテンツの多様さと豊穣さをもたらしたのである。魔法少女という看板を掲げた悪趣味ダークファンタジー、大いに結構。子供が見てビビるのもまたよし。</div>
<div>　結論として、冒頭で紹介したTogetterまとめで延々と議論されているようなレーティング・ゾーニングなど、本作品には一切必要ないと断言する。</div>
<div>　ただ一考すべきは、まどか☆マギカの悪趣味芸は深夜アニメだからこそ成立しえたという点だろう。そもそも本作品は、<strong>新房昭之・蒼樹うめ・虚淵玄</strong>というメインスタッフ陣の名前に釣られたオタク層が主な対象であり、そのうち少なからぬ人々が「虚淵玄」という名前に強く反応し、絶対に何か陰惨な展開をやらかすはずという期待を放映前から抱くという、非常にハイコンテクストな作品だった（その後、ライト層も多く取り込むことに成功したのは、作品そのものの強度ゆえだろうが）。劇場版の上映館が少ないのも、コア層に向けた映画化で収益を上げるという、最近流行りのオタク向けアニメのビジネスモデルであることの証明である。</div>
<div>　ところが、少なくとも絵面は『ひだまりスケッチ』と同じく、蒼樹うめ（と岸田隆宏）の可愛らしいデザインだったわけである。冒頭のTogetterまとめ記事で、自身の子供が「初めてはまった魔法もの」がまどか☆マギカであるという、おそらく女性のユーザは「あれではちょっと予備知識なきゃ普通の親子連れは入っていっちゃいますよ～」と呟いている。まとめには掲載しなかった部分も含め、複数ユーザとmentionでこの話をしていることから、ネタや釣りではない蓋然性が高いと判断する。まあ、そういう理由で観にきた親子連れはいたかもしれないし、いなかったかもしれない。</div>
<div>　フィクション体験とは、本質的にネタバラシのないドッキリであるというのがぼくの持論なので、彼らは（いたとして、だが）ぼくらのようなすれっからしとは違う、理想的な出会いをしたといえる。そういう意味では羨ましくすらある。ただ、受忍限度は人それぞれなので、衝撃や不快さがそれを超えてダメージを受けてしまった場合のケアというのも、考慮の余地はある。この点でかなり参考になるのが、<strong><a href="http://rakusyasa.blog41.fc2.com/blog-entry-2832.html" target="_blank">うるるんロギー 【読売】中3女子「好きなマンガキャラが死んで悲しい　立ち直れない」</a><a href="http://rakusyasa.blog41.fc2.com/blog-entry-2832.html" target="_blank"></a></strong>に転載されている、『NARUTO』の好きキャラが死んで嘆き悲しむ女の子と、それに対する精神科医の回答だ。一読をオススメしたい。</div></p>]]>
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                <dc:creator><![CDATA[有村悠]]></dc:creator>
                <nicoch:article_thumbnail></nicoch:article_thumbnail>
            </item>
            <item>
                <title><![CDATA[She said, I said. #7]]></title>
                <description><![CDATA[<p>
　春香の兄・祐介も登場していよいよ佳境、なんですが、どうも筋書きがよくわからないことになってます。ストーリーそのものを書きながら/描きながら考える、という、昔からの悪い癖です。さすがに最近はプロットらしきものも組むようになりましたが……。しかしなんだ、「手の早い女の子」ってライトノベルじゃよく見かけますけど、こんなのが身近にいたら命がいくつあっても足りませんね。　有原祐介という人物の大きさは、身長一八五センチという物理的なものにとどまらず、彼に一定以上の期間接してきた人物は皆少なからず――春香、僕、黒木、それにロリコンの伊瀬でさえ読書好きになり、彼と同じ高校に進学したという精神面の影響力からも推し量ることができよう。そして伝説の数々。いわく、幼稚園では保母さんの膝に座って新聞を読んでいた。いわく、小学校入学時には常用漢字をすべて読み書きできるようになっていた。いわく、中学校を卒業するころには自前の蔵書数が一〇〇〇冊を超えていた。いわく、小規模ながら俊英ぞろいで知られた風野高校第三文藝研究会から、その恐るべき文才で部員を一掃してしまった。いわく、センター試験の数学・地学の合計点は二〇〇点で、二次試験の数学はまったくの白紙だったにもかかわらず東大文三に現役合格。云々、云々。
　春香がそのバカっぷりにもかかわらず現在下にも置かれぬ扱いを受けているのは、高村の指摘するような一面の人間的魅力もさることながら、ひとえにこの偉大な兄のおかげなのではないか、と思う。
　――しかし、それだけの才能に恵まれた彼が、幾度となく新人賞に蹴られて小説家になれず、大学もやめて半ばひきこもりニートと化し、果ては妹の下着で抜いているというから、現実はどこまでも厳しい。かつては現代に生きる文学青年と思わしめた秀麗な眉目は愁いを帯びはじめていつしかどんよりと曇り、有原家にお邪魔したときの、こんにちは哲哉君、という挨拶は弱々しく湿り、春香の部屋でテレビを見たりマンガを読んだりしていると、時折隣の彼の部屋からうめき声やらドスンという物音やらが聞こえてくる。そのたびに春香は梅雨空のような顔をする。バカ兄貴が、と呟いたりする。
　そして今、彼女はヒマラヤの雪男を見る目で、バカ兄貴とヘンなＯＢの二人連れを追跡中。何故か僕と由紀も巻きこまれた。
　</p>]]></description>
                <link>https://ch.nicovideo.jp/lunaticprophet/blomaga/ar9567</link>
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                <pubDate>Thu, 04 Oct 2012 00:05:00 +0900</pubDate>
                <category><![CDATA[小説]]></category>
                <category><![CDATA[有村悠]]></category>
                <content:encoded>
                        <![CDATA[<p><br />
　春香の兄・祐介も登場していよいよ佳境、なんですが、どうも筋書きがよくわからないことになってます。ストーリーそのものを書きながら/描きながら考える、という、昔からの悪い癖です。さすがに最近はプロットらしきものも組むようになりましたが……。しかしなんだ、「手の早い女の子」ってライトノベルじゃよく見かけますけど、こんなのが身近にいたら命がいくつあっても足りませんね。<br /><hr /><p>　有原祐介という人物の大きさは、身長一八五センチという物理的なものにとどまらず、彼に一定以上の期間接してきた人物は皆少なからず――春香、僕、黒木、それにロリコンの伊瀬でさえ読書好きになり、彼と同じ高校に進学したという精神面の影響力からも推し量ることができよう。そして伝説の数々。いわく、幼稚園では保母さんの膝に座って新聞を読んでいた。いわく、小学校入学時には常用漢字をすべて読み書きできるようになっていた。いわく、中学校を卒業するころには自前の蔵書数が一〇〇〇冊を超えていた。いわく、小規模ながら俊英ぞろいで知られた風野高校第三文藝研究会から、その恐るべき文才で部員を一掃してしまった。いわく、センター試験の数学・地学の合計点は二〇〇点で、二次試験の数学はまったくの白紙だったにもかかわらず東大文三に現役合格。云々、云々。</p>
<p>　春香がそのバカっぷりにもかかわらず現在下にも置かれぬ扱いを受けているのは、高村の指摘するような一面の人間的魅力もさることながら、ひとえにこの偉大な兄のおかげなのではないか、と思う。</p>
<p>　――しかし、それだけの才能に恵まれた彼が、幾度となく新人賞に蹴られて小説家になれず、大学もやめて半ばひきこもりニートと化し、果ては妹の下着で抜いているというから、現実はどこまでも厳しい。かつては現代に生きる文学青年と思わしめた秀麗な眉目は愁いを帯びはじめていつしかどんよりと曇り、有原家にお邪魔したときの、こんにちは哲哉君、という挨拶は弱々しく湿り、春香の部屋でテレビを見たりマンガを読んだりしていると、時折隣の彼の部屋からうめき声やらドスンという物音やらが聞こえてくる。そのたびに春香は梅雨空のような顔をする。バカ兄貴が、と呟いたりする。</p>
<br /><p>　そして今、彼女はヒマラヤの雪男を見る目で、バカ兄貴とヘンなＯＢの二人連れを追跡中。何故か僕と由紀も巻きこまれた。</p>
　
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                        </p>]]>
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                <dc:creator><![CDATA[有村悠]]></dc:creator>
                <nicoch:article_thumbnail></nicoch:article_thumbnail>
            </item>
            <item>
                <title><![CDATA[She said, I said. #6]]></title>
                <description><![CDATA[<p>更新が遅くなりました。今回は哲哉の妹・由紀が登場します。自分ではけっこう気に入っているキャラ造形。　窓際の柱の真後ろという、学生なら誰もがあこがれる特等席に座る春香が授業中に何をしているかといえば、ノートをとるでもなく寝るでもなく、ひたすら図書室から借りた本を読むのだ。堂々と机の端に三冊くらい積み上げたりして、片っ端から読む。日がな一日読む。読んだそばから返してはまた借りているので、常時五冊くらいは図書室の本をキープしている。そんなことになっているのはもちろん祐介さんの英才教育の賜物なのだが、この女、読んだものが頭の中身にろくに反映されないという特異な性格をしている。だから偏差値は五九だし、『檸檬』は読めるのに『包茎』が読めないし、ツルゲーネフとドストエフスキーとトルストイを登場人物の名前まで含めてごちゃごちゃに覚えている。これが本当の活字バカだ。
　そして五限目の古文を、春香は村上春樹の『パン屋再襲撃』を読んで過ごしている。よりによってその本か、と左斜め二つ前の彼女を見ながら思う。以前読んだことがあるが、「ファミリー・アフェア」という仲の良い兄妹の話が収録されているのだ。そして村上春樹だから当然のごとく性的な内容になるわけで、ほらケータイにメールが届いた。
『アンタ去年コンドーム買ったの？』
　額を机に打ち付けそうになった。春香の様子をうかがうと、口を尖らせ、不機嫌そうに僕を横目でじろり。説明しておくと「ファミリー・アフェア」には、兄が一七歳のときにコンドームを買ったことを妹が知っており、妹が一九歳のときにレースの下着を買ったのを兄も知っているという記述がある。それが春香の手にかかればこういうメールが生まれるわけ。
　となれば返信は決まっている。
『お前は来年レースの下着買うのか？』
「買うか変態ッ！」
　春香が真っ赤になって叫び、教室中の目が集まった。
「有原ぁ、本は好きなだけ読んで構わんが声に出さなくてもいいぞぉ」
　古文の教師がのんびりと言って皆が笑う。僕を睨み据えながら縮こまる春香。言動は常に意味不明な女だがこういう反応は極めて読みやすい。なにしろバカだから。
　</p>]]></description>
                <link>https://ch.nicovideo.jp/lunaticprophet/blomaga/ar8542</link>
                <guid>https://ch.nicovideo.jp/lunaticprophet/blomaga/ar8542</guid>
                <pubDate>Fri, 28 Sep 2012 03:47:00 +0900</pubDate>
                <category><![CDATA[小説]]></category>
                <category><![CDATA[有村悠]]></category>
                <content:encoded>
                        <![CDATA[<p>更新が遅くなりました。今回は哲哉の妹・由紀が登場します。自分ではけっこう気に入っているキャラ造形。<br /><hr /><p>　窓際の柱の真後ろという、学生なら誰もがあこがれる特等席に座る春香が授業中に何をしているかといえば、ノートをとるでもなく寝るでもなく、ひたすら図書室から借りた本を読むのだ。堂々と机の端に三冊くらい積み上げたりして、片っ端から読む。日がな一日読む。読んだそばから返してはまた借りているので、常時五冊くらいは図書室の本をキープしている。そんなことになっているのはもちろん祐介さんの英才教育の賜物なのだが、この女、読んだものが頭の中身にろくに反映されないという特異な性格をしている。だから偏差値は五九だし、『檸檬』は読めるのに『包茎』が読めないし、ツルゲーネフとドストエフスキーとトルストイを登場人物の名前まで含めてごちゃごちゃに覚えている。これが本当の活字バカだ。</p>
<p>　そして五限目の古文を、春香は村上春樹の『パン屋再襲撃』を読んで過ごしている。よりによってその本か、と左斜め二つ前の彼女を見ながら思う。以前読んだことがあるが、「ファミリー・アフェア」という仲の良い兄妹の話が収録されているのだ。そして村上春樹だから当然のごとく性的な内容になるわけで、ほらケータイにメールが届いた。</p>
<p>『アンタ去年コンドーム買ったの？』</p>
<p>　額を机に打ち付けそうになった。春香の様子をうかがうと、口を尖らせ、不機嫌そうに僕を横目でじろり。説明しておくと「ファミリー・アフェア」には、兄が一七歳のときにコンドームを買ったことを妹が知っており、妹が一九歳のときにレースの下着を買ったのを兄も知っているという記述がある。それが春香の手にかかればこういうメールが生まれるわけ。</p>
<p>　となれば返信は決まっている。</p>
<p>『お前は来年レースの下着買うのか？』</p>
<p>「買うか変態ッ！」</p>
<p>　春香が真っ赤になって叫び、教室中の目が集まった。</p>
<p>「有原ぁ、本は好きなだけ読んで構わんが声に出さなくてもいいぞぉ」</p>
<p>　古文の教師がのんびりと言って皆が笑う。僕を睨み据えながら縮こまる春香。言動は常に意味不明な女だがこういう反応は極めて読みやすい。なにしろバカだから。</p>
　
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                        </p>]]>
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                <dc:creator><![CDATA[有村悠]]></dc:creator>
                <nicoch:article_thumbnail></nicoch:article_thumbnail>
            </item>
            <item>
                <title><![CDATA[She said, I said. #5]]></title>
                <description><![CDATA[<p>　今回は短い章なので、「ココマデ」はナシにして無料公開にしてみます。もう少し草薙君がモテる理由を「描写」すべきだった、というのが、ありがちな反省点。
　高村と二人で中庭を横切る。
「……あのさ、あの地下室のことは」
「言わないわよ。生徒会には筒抜けだけど、一応機密事項扱いですから」
「ＦＳＢかＧＰＵか、ウチの生徒会……」
「それにね、」
　高村は僕より半歩前に出て、
「室見先輩の言うこともわかるの。三つくらい隠れ家が残っていたほうが精神衛生上いいわ」
「ムロさんがいても？」
「あんな人だけど、たぶん一線はわきまえていると思う。猫と遊んでいる感じなんじゃないかしら、室見先輩にしてみたら」
「だからあんなに無防備というか、アレなのか」
「猫にパンツ見られても害はないものね」
　僕は仏頂面でペプシの残りを飲み干す。
「いったいどこまでヘタレスケベだと思われているんだ俺は」
「じゃあ女殺しと思われ</p>]]></description>
                <link>https://ch.nicovideo.jp/lunaticprophet/blomaga/ar7268</link>
                <guid>https://ch.nicovideo.jp/lunaticprophet/blomaga/ar7268</guid>
                <pubDate>Thu, 20 Sep 2012 09:52:00 +0900</pubDate>
                <category><![CDATA[小説]]></category>
                <category><![CDATA[有村悠]]></category>
                <content:encoded>
                        <![CDATA[<p><p>　今回は短い章なので、「ココマデ」はナシにして無料公開にしてみます。もう少し草薙君がモテる理由を「描写」すべきだった、というのが、ありがちな反省点。</p>
<hr /><p>　高村と二人で中庭を横切る。</p>
<p>「……あのさ、あの地下室のことは」</p>
<p>「言わないわよ。生徒会には筒抜けだけど、一応機密事項扱いですから」</p>
<p>「ＦＳＢかＧＰＵか、ウチの生徒会……」</p>
<p>「それにね、」</p>
<p>　高村は僕より半歩前に出て、</p>
<p>「室見先輩の言うこともわかるの。三つくらい隠れ家が残っていたほうが精神衛生上いいわ」</p>
<p>「ムロさんがいても？」</p>
<p>「あんな人だけど、たぶん一線はわきまえていると思う。猫と遊んでいる感じなんじゃないかしら、室見先輩にしてみたら」</p>
<p>「だからあんなに無防備というか、アレなのか」</p>
<p>「猫にパンツ見られても害はないものね」</p>
<p>　僕は仏頂面でペプシの残りを飲み干す。</p>
<p>「いったいどこまでヘタレスケベだと思われているんだ俺は」</p>
<p>「じゃあ女殺しと思われたほうがいい？」</p>
<p>　高村が何やら楽しげに言う。</p>
<p>「思わないでくれ、是非とも。事実無根だし」</p>
<p>「事実その一。去年生徒会の書記だった水木先輩、白ちゃんがいなければあたし告るのになーって三回くらいこぼしてた」</p>
<p>「……マジ？」</p>
<p>　衝撃の事実だ。あの二年連続で学園祭にメイド喫茶を出店した水木さんが。</p>
<p>「その二。今年のヴァレンタインの日、春香にチョコあげた西山さん、本当は草薙君にあげるつもりだった」</p>
<p>「はァ？」</p>
<p>「でもあなたたちの痴話喧嘩を見て無理だと悟り、代わりに憧れの先輩ではあった春香に渡した。先月の生徒会連絡会議で聞いた話よ」</p>
<p>　あのときの、気弱そうで小柄な女生徒の顔を思い出す。</p>
<p>「俺の与り知らんところで巨大な陰謀が動いている……」</p>
<p>「その三」</p>
<p>「まだあるのか！」</p>
<p>「この二人と同じ理由で諦めた同級生が一人」</p>
<p>「それも超初耳」</p>
<p>　げんなりとうめくと、</p>
<p>「ごく親しい友達にしか打ち明けてないらしいから。それに、むしろあなたたちの夫婦漫才を眺めているほうが好きだって言ってた」</p>
<p>「そこまでモテる理由がまるでわからん」</p>
<p>「一緒にいて楽しそう、とかそんなこと思ったんじゃない？　あなたと春香を見ていて」</p>
<p>「……なんかヤな罪悪感覚え始めたよ」</p>
<p>　足取りが重くなってきた。高村、立ち止まって僕を振り返る。</p>
<p>「別にあなたが気に病む必要はないわよ。彼女たち自身の問題だもの。それに皆、春香のことも好きだし」</p>
<p>「バカのくせにカリスマ性があるのが気に食わん」</p>
<p>「文字通り春の陽気みたいな子だものね。まあ、時々真夏日になるけど」</p>
<p>　高村は再び歩き出す。</p>
<p>「ねえ」</p>
<p>「何だよ」</p>
<p>「ロリコン写真集見なかったの？」</p>
<p>　ずっこけそうになった。</p>
<p>「そんなところから聞いてたのか！　天地神明に誓って見てねえ！　家族に見つかったら俺は社会的に死ぬ」</p>
<p>「家に一人だったとしても見ない？」</p>
<p>「見るか！　伊瀬と一緒にするな！」</p>
<p>「本当に見ない？」</p>
<p>「……」</p>
<p>「…………」</p>
<p>「………………自分がロリコンではないことを確認する」</p>
<p>　高村がくすりと笑う。</p>
<p>「そういう正直なところが好感持たれるんじゃない？　……それじゃあ」</p>
<p>「今度は何だよ！」</p>
<p>「胸の小さい女の子が好きなの？」</p>
<p>「だからムロさんの言葉を真に受けるなよ！　……たまたま、俺の周りに貧乳女ばかりいるだけだな。春香といい、由紀といいムロさんといい」</p>
<p>「ふうん」</p>
<p>　高村は腕組みした。そしてもう一回、</p>
<p>「ふうん」</p></p>]]>
                </content:encoded>
                <dc:creator><![CDATA[有村悠]]></dc:creator>
                <nicoch:article_thumbnail></nicoch:article_thumbnail>
            </item>
            <item>
                <title><![CDATA[She said, I said. #4]]></title>
                <description><![CDATA[<p>　メンヘルは遠きに在りて思ふもの　詠み人知らず
　学校中に設けた隠れ家はこの二年ちょっとでことごとく春香に発見されているが、数少ない未探知スポットのひとつが部室棟の端、電波研の地下室だ。
　そろりと部室に入り、テーブルの下に潜りこんで床板を外し、梯子を降り、
「来るころだと思ってた」
　後ろから声をかけられて転げ落ちた。
「来てたんですか、ムロさん」
　身を起こしながら、声の主――電波研先々々代部長・室見夕子さんを見遣る。裸電球に照らされたムロさんのほっそりした顔が微笑み、
「校庭のスピーカーからここまで赤ちゃんの声が聞こえてきたもの」
　と天井を顎で指す。そこには巧妙に偽装された通気口がある。「赤ちゃん」とは無論ベイビーではなく「白ちゃん」に代わる春香の渾名だ。僕としては前者の意味も込めたいところだが。
「今日はバイトはないんですか？」
　パイプ椅子に腰を下ろしつつ問うと、
「行く途中でメンヘってきたから欠勤連絡入れてここで休んでた」
　向かいのパイプ椅子に座るムロさん、だらりと力を抜いたまま答えた。再度用語解説、「メンヘる」とは彼女の数多い造語のひとつで、つまり出勤中に鬱に襲われたというわけだ。たぶん、家を出て一〇〇メートルくらいで。
「こんな暗いところにこもってたら余計メンヘりますよ」
「これくらいがちょうどいいの。わたしは闇に隠れて生きる妖怪人間だから」
　ムロさんはパイプ椅子の上で体育座りになり、顔を膝にうずめる。僕は目をそらす。
「行儀悪いです。春香や由紀じゃないんだから、」
「パンツが見えるような格好するなって？」
「……しないでください」
「ふふ」
　くぐもった笑い声。脳内から黒いショーツの映像を削除しつつ思う。どうして俺の周りには奇矯な女ばかりいるかなァ。

　</p>]]></description>
                <link>https://ch.nicovideo.jp/lunaticprophet/blomaga/ar6118</link>
                <guid>https://ch.nicovideo.jp/lunaticprophet/blomaga/ar6118</guid>
                <pubDate>Wed, 12 Sep 2012 22:52:00 +0900</pubDate>
                <content:encoded>
                        <![CDATA[<p><p>　メンヘルは遠きに在りて思ふもの　詠み人知らず</p>
<hr /><p><br />　学校中に設けた隠れ家はこの二年ちょっとでことごとく春香に発見されているが、数少ない未探知スポットのひとつが部室棟の端、電波研の地下室だ。</p>
<p>　そろりと部室に入り、テーブルの下に潜りこんで床板を外し、梯子を降り、</p>
<p>「来るころだと思ってた」</p>
<p>　後ろから声をかけられて転げ落ちた。</p>
<p>「来てたんですか、ムロさん」</p>
<p>　身を起こしながら、声の主――電波研先々々代部長・室見夕子さんを見遣る。裸電球に照らされたムロさんのほっそりした顔が微笑み、</p>
<p>「校庭のスピーカーからここまで赤ちゃんの声が聞こえてきたもの」</p>
<p>　と天井を顎で指す。そこには巧妙に偽装された通気口がある。「赤ちゃん」とは無論ベイビーではなく「白ちゃん」に代わる春香の渾名だ。僕としては前者の意味も込めたいところだが。</p>
<p>「今日はバイトはないんですか？」</p>
<p>　パイプ椅子に腰を下ろしつつ問うと、</p>
<p>「行く途中でメンヘってきたから欠勤連絡入れてここで休んでた」</p>
<p>　向かいのパイプ椅子に座るムロさん、だらりと力を抜いたまま答えた。再度用語解説、「メンヘる」とは彼女の数多い造語のひとつで、つまり出勤中に鬱に襲われたというわけだ。たぶん、家を出て一〇〇メートルくらいで。</p>
<p>「こんな暗いところにこもってたら余計メンヘりますよ」</p>
<p>「これくらいがちょうどいいの。わたしは闇に隠れて生きる妖怪人間だから」</p>
<p>　ムロさんはパイプ椅子の上で体育座りになり、顔を膝にうずめる。僕は目をそらす。</p>
<p>「行儀悪いです。春香や由紀じゃないんだから、」</p>
<p>「パンツが見えるような格好するなって？」</p>
<p>「……しないでください」</p>
<p>「ふふ」</p>
<p>　くぐもった笑い声。脳内から黒いショーツの映像を削除しつつ思う。どうして俺の周りには奇矯な女ばかりいるかなァ。</p>
<p><img src="http://ch.nicovideo.jp/image/ch1035/2747/01a98ddad61b0c86e5ca4249baa97f5114bf5c43.jpg" data-image_id="2747" alt="01a98ddad61b0c86e5ca4249baa97f5114bf5c43" /></p>
　
                            <a href="https://ch.nicovideo.jp/lunaticprophet/blomaga/ar6118">続きを読む</a>
                        </p>]]>
                </content:encoded>
                <dc:creator><![CDATA[有村悠]]></dc:creator>
                <nicoch:article_thumbnail></nicoch:article_thumbnail>
            </item>
            <item>
                <title><![CDATA[She said, I said. #3]]></title>
                <description><![CDATA[<p>この章以降いろんな固有名詞が登場しますが、それにしても書き手の趣味があまりにもダシマルですね。　ところで今日は月末の金曜日であり、一般的な高校生ならば、五日間の苦行の終わりだァ早く授業終われ早く授業終われ早く授業終われだらだら喋ってんじゃねえこのクソ教師、などと朝から教壇に向かって念じ続けたりもしようが、僕は現在一刻も早く昼休みが終わってほしい。
「そろそろか」「そろそろね」「そろそろ」「そろそろ」「そろそろ」「そろそろだな」
　クラス中のさざめき――実のところ全校規模なのだが――の中、隣で黒木が言う。
「……ああ、そろそろだよ」
　プチトマトを噛み潰しつつ苦い顔になる。トマト自体あまり好きではないが約一分後に始まるアレを考えると余計にまずい。
「そんな顔するなよ、アレのおかげで月の最後が潤うんだぞ」
「俺は枯れ果てる」
　肉じゃがをつつきつつ黒木に答え、
「おいおいその歳で腎虚かよってッ」
　食事時に下品な冗談を飛ばした者に女子から発射されるスカッド消しゴムミサイルを後ろの伊瀬が喰らい、
「水墨画でも描こうかなァ」
　母親が執拗に投入する梅干し爆弾を撤去しながらぼやいて、
『ぴんぽんぴんぽんぴんぽんぱーん！　赤い彗星ハルカのォ！　ジェット・ストリーム・アフタヌーン！』
　浅倉大介のインスト曲をバックに従えた大音声がスピーカーから轟き、僕は梅干しを取り落とす。
『月の終わりに溜まった疲れをぶっ飛ばす！　名誉放送委員長・有原『赤い彗星』春香がお送りする三十分のウルトラリラクゼーションタイム！　六月水無月ジューンも終わりですね、ろくに雨も降らないうちにもう真夏みたいな暑さでイヤんなります！　校長先生は至急校門から校舎までの無駄な上り坂に動く歩道を設置してくださいッ！　時速三十キロの！』
　ドッ、と湧き上がる教室。同時多発的に校舎中から笑い声が起こって共鳴している。
『一年生のみんなにはこの放送は三回目ですね、もう慣れたかしら？　月末の金曜日はあたしが昼休み中ＤＪやります！　そこ、受験生がそんなことやってていいのかとか言わない！　最近はがんばって勉強時間延ばしてるんだからね！　前年度比五〇％増の一時間半！　ちなみに一年生のころは五分で飽きて本読んでましたッ、くたばれ数学！』
　異議なーし、と一部生徒から妙な気勢。全共闘かよ。
『二年生のみんな、そろそろ学生生活ドロップアウトしかけてる人もいるんじゃないかな？　ダメよォそんなんじゃ、部屋にこもって２ちゃんねるで顔も名前も知らない相手と馴れ合ってても何も生まれないわ！　やっぱりナマのお付き合いをしないとね、ってそこニヤけない！　ヘンな意味じゃないわよ！』
「てめえで言ってりゃ世話ねえよ」
　なんとなくご飯をザクザク突き刺しながらうめく。伊瀬に対する先制攻撃のトマホーク消しゴムミサイルが飛来するのが見えた。
『そして三年生のみぃんなァ、来月の期末を終えればいよいよ受験の夏日本の夏天王山デザートストームですッ！　あたしも勉強時間を一時間四十五分に大出血延長してクーラー当たりながら乗り切ります！　敵は強大ですが正義は我らにありッ！　ジーク・ジオン！』
「ジーク・ジオン！」
　黒木を筆頭とする三年四組のガンダムオタク『黒い三連星』が唱和して女子の冷たい視線を浴びる。女子のガンダムオタク筆頭はほかならぬ春香なのだが。
『いつも通り、ケータイメールでお便り受け付けます！　アドレスは、えいちえるけー・あんだーばー・あかいすいせい・あっとまーく・いーじーうぇぶ・どっと・えぬいー・どっと・じぇーぴー！　じゃんじゃん送ってきてね！　それでは今日はこの曲から、Ｉｃｅｍａｎ『ＧＡＬＡＸＹ　ＧＡＮＧ』！』
　春香のおかげでこの学校に知らぬ者はいなくなってしまったＩｃｅｍａｎを聴きつつ、しばし回想する。哲学的頭痛とともに。
　外装と裏腹に内部設備があちこちボロいこの高校には二つの自動販売機が存在する。ひとつは一本一二〇円でドクターペッパーが三つも並んでいる悪趣味な代物、通称「アメリカ」。もうひとつは一本一〇〇円でペプシのロング缶が二本並んでいるため前者より圧倒的に人気があるが、時々飲み物が出てこないことがあるこれまた困った代物、通称「ロシア」。元々ロシアン・ルーレットと呼ばれていたらしいが僕たちが入学した頃にはすでにこの名前だった。
　ロシアに金を喰われたときは、一定の衝撃を加えると運がよければジュースが転げ落ちてくる。衝撃を加える方法には殴る蹴るバンバン叩くなど各種あるが、成功したあかつきにはすべて「ロシアバスター」と呼ばれ、高確率でこれをこなす者は「ロシアマスター」と称される。
　そして春香こそは、一年の四月半ばからロシアマスターに君臨し続ける猛者であった。入学して一週間と経たないある日の昼休み、三年生がロシアの前で困っているのを目にした彼女は渾身の廻し蹴りを敢行、初対決にして見事にウーロン茶をゲットしたのである。それはいいものの、高校デビューといきまいて校則違反ギリギリの短いスカートをはいていた春香は純白のショーツをギャラリー全員に披露することになり、呆れかえる僕の隣で黒木がぼそっと呟いた「連邦の白いヤツ」が人口に膾炙、ロシアマスターよりはむしろ「連邦の白いヤツ」「白い人」「白い子」「白先輩」という、次第に原形をとどめなくなっていく通り名で呼ばれていた。それだけ出撃回数が多かったわけで、
「白ちゃん白ちゃん、今すぐロシアまで来てください」
　などと奇ッ怪な放送が休み時間に流れ、肩を鳴らしながら颯爽と出て行く春香のあとをなんとなくついていく僕と伊瀬と黒木、というのもよくある光景だった。
　</p>]]></description>
                <link>https://ch.nicovideo.jp/lunaticprophet/blomaga/ar4724</link>
                <guid>https://ch.nicovideo.jp/lunaticprophet/blomaga/ar4724</guid>
                <pubDate>Tue, 04 Sep 2012 17:14:00 +0900</pubDate>
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                        <![CDATA[<p>この章以降いろんな固有名詞が登場しますが、それにしても書き手の趣味があまりにもダシマルですね。<br /><hr /><p>　ところで今日は月末の金曜日であり、一般的な高校生ならば、五日間の苦行の終わりだァ早く授業終われ早く授業終われ早く授業終われだらだら喋ってんじゃねえこのクソ教師、などと朝から教壇に向かって念じ続けたりもしようが、僕は現在一刻も早く昼休みが終わってほしい。</p>
<p>「そろそろか」「そろそろね」「そろそろ」「そろそろ」「そろそろ」「そろそろだな」</p>
<p>　クラス中のさざめき――実のところ全校規模なのだが――の中、隣で黒木が言う。</p>
<p>「……ああ、そろそろだよ」</p>
<p>　プチトマトを噛み潰しつつ苦い顔になる。トマト自体あまり好きではないが約一分後に始まるアレを考えると余計にまずい。</p>
<p>「そんな顔するなよ、アレのおかげで月の最後が潤うんだぞ」</p>
<p>「俺は枯れ果てる」</p>
<p>　肉じゃがをつつきつつ黒木に答え、</p>
<p>「おいおいその歳で腎虚かよってッ」</p>
<p>　食事時に下品な冗談を飛ばした者に女子から発射されるスカッド消しゴムミサイルを後ろの伊瀬が喰らい、</p>
<p>「水墨画でも描こうかなァ」</p>
<p>　母親が執拗に投入する梅干し爆弾を撤去しながらぼやいて、</p>
<p>『ぴんぽんぴんぽんぴんぽんぱーん！　赤い彗星ハルカのォ！　ジェット・ストリーム・アフタヌーン！』</p>
<p>　浅倉大介のインスト曲をバックに従えた大音声がスピーカーから轟き、僕は梅干しを取り落とす。</p>
<p>『月の終わりに溜まった疲れをぶっ飛ばす！　名誉放送委員長・有原『赤い彗星』春香がお送りする三十分のウルトラリラクゼーションタイム！　六月水無月ジューンも終わりですね、ろくに雨も降らないうちにもう真夏みたいな暑さでイヤんなります！　校長先生は至急校門から校舎までの無駄な上り坂に動く歩道を設置してくださいッ！　時速三十キロの！』</p>
<p>　ドッ、と湧き上がる教室。同時多発的に校舎中から笑い声が起こって共鳴している。</p>
<p>『一年生のみんなにはこの放送は三回目ですね、もう慣れたかしら？　月末の金曜日はあたしが昼休み中ＤＪやります！　そこ、受験生がそんなことやってていいのかとか言わない！　最近はがんばって勉強時間延ばしてるんだからね！　前年度比五〇％増の一時間半！　ちなみに一年生のころは五分で飽きて本読んでましたッ、くたばれ数学！』</p>
<p>　異議なーし、と一部生徒から妙な気勢。全共闘かよ。</p>
<p>『二年生のみんな、そろそろ学生生活ドロップアウトしかけてる人もいるんじゃないかな？　ダメよォそんなんじゃ、部屋にこもって２ちゃんねるで顔も名前も知らない相手と馴れ合ってても何も生まれないわ！　やっぱりナマのお付き合いをしないとね、ってそこニヤけない！　ヘンな意味じゃないわよ！』</p>
<p>「てめえで言ってりゃ世話ねえよ」</p>
<p>　なんとなくご飯をザクザク突き刺しながらうめく。伊瀬に対する先制攻撃のトマホーク消しゴムミサイルが飛来するのが見えた。</p>
<p>『そして三年生のみぃんなァ、来月の期末を終えればいよいよ受験の夏日本の夏天王山デザートストームですッ！　あたしも勉強時間を一時間四十五分に大出血延長してクーラー当たりながら乗り切ります！　敵は強大ですが正義は我らにありッ！　ジーク・ジオン！』</p>
<p>「ジーク・ジオン！」</p>
<p>　黒木を筆頭とする三年四組のガンダムオタク『黒い三連星』が唱和して女子の冷たい視線を浴びる。女子のガンダムオタク筆頭はほかならぬ春香なのだが。</p>
<p>『いつも通り、ケータイメールでお便り受け付けます！　アドレスは、えいちえるけー・あんだーばー・あかいすいせい・あっとまーく・いーじーうぇぶ・どっと・えぬいー・どっと・じぇーぴー！　じゃんじゃん送ってきてね！　それでは今日はこの曲から、Ｉｃｅｍａｎ『ＧＡＬＡＸＹ　ＧＡＮＧ』！』</p>
<p>　春香のおかげでこの学校に知らぬ者はいなくなってしまったＩｃｅｍａｎを聴きつつ、しばし回想する。哲学的頭痛とともに。<br /><br /><br /></p>
<p>　外装と裏腹に内部設備があちこちボロいこの高校には二つの自動販売機が存在する。ひとつは一本一二〇円でドクターペッパーが三つも並んでいる悪趣味な代物、通称「アメリカ」。もうひとつは一本一〇〇円でペプシのロング缶が二本並んでいるため前者より圧倒的に人気があるが、時々飲み物が出てこないことがあるこれまた困った代物、通称「ロシア」。元々ロシアン・ルーレットと呼ばれていたらしいが僕たちが入学した頃にはすでにこの名前だった。</p>
<p>　ロシアに金を喰われたときは、一定の衝撃を加えると運がよければジュースが転げ落ちてくる。衝撃を加える方法には殴る蹴るバンバン叩くなど各種あるが、成功したあかつきにはすべて「ロシアバスター」と呼ばれ、高確率でこれをこなす者は「ロシアマスター」と称される。</p>
<p>　そして春香こそは、一年の四月半ばからロシアマスターに君臨し続ける猛者であった。入学して一週間と経たないある日の昼休み、三年生がロシアの前で困っているのを目にした彼女は渾身の廻し蹴りを敢行、初対決にして見事にウーロン茶をゲットしたのである。それはいいものの、高校デビューといきまいて校則違反ギリギリの短いスカートをはいていた春香は純白のショーツをギャラリー全員に披露することになり、呆れかえる僕の隣で黒木がぼそっと呟いた「連邦の白いヤツ」が人口に膾炙、ロシアマスターよりはむしろ「連邦の白いヤツ」「白い人」「白い子」「白先輩」という、次第に原形をとどめなくなっていく通り名で呼ばれていた。それだけ出撃回数が多かったわけで、</p>
<p>「白ちゃん白ちゃん、今すぐロシアまで来てください」</p>
<p>　などと奇ッ怪な放送が休み時間に流れ、肩を鳴らしながら颯爽と出て行く春香のあとをなんとなくついていく僕と伊瀬と黒木、というのもよくある光景だった。</p>
　
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                </content:encoded>
                <dc:creator><![CDATA[有村悠]]></dc:creator>
                <nicoch:article_thumbnail></nicoch:article_thumbnail>
            </item>
            <item>
                <title><![CDATA[She said，I said. #2]]></title>
                <description><![CDATA[<p>　　『She said, I said.』は今回から有料化します。お値段１記事１０５円ポッキリ。ちなみに現在のぼくの全財産は５７円です。
「あんまり仕事増やさないでもらいたいんだけど」
　保健室で、ベッドに寝かされた僕の額にオキシドールを塗りながら高村が言う。情けなくもノビてしまった僕を一人で担いで連れてきたのは、身長一七五センチの堂々たる体躯でバレーボール部キャプテンも務める彼女だ。ちなみに僕は一六三センチで春香は一五五センチ。
「俺にいてッ、言うなよ。どう考えてッ、ても悪いのはあいつだろ」
　抗議しつつ、視界を横切る脱脂綿が赤く染まっているのを見て取って渋面を作る。こりゃ重傷だ。
「わたしはフェミニストなので痴話喧嘩のときは女の子の味方です」
　イソジンを摘みつつ高村。そういえば上野千鶴子なんか読んでたっけ。
「アレが痴話喧嘩に見えたのか、高村には」
「二人でアレだけ仲良くバカバカ言い合ってれば誰だってそう思うわよ。おまけにパンツ覗いて」「いててててて」「カバンで殴られて失神なんて、犬どころか金魚も食べないわね」
　パンツ覗いて、のくだりでぐりぐりとイソジンを押し付けられ、悲鳴を上げる僕。
「不可抗力だッ！　ていうか、常識的に考えて校則違反スレスレのスカートで廻し蹴り喰らわす女なんかいるかよ」
「そういえば、パンツ見えたら困るから何とかしろっていつか説教してたわね、草薙君」
「そんでモップの柄で殴られたよ高村さん」
「どうして困るのかしら？」
　女教師のような口調で訊いてくる。
「どうしてって……目の毒だろ。何かの拍子でそんなモノが視界に入ったら」
「そうねえ、他の男子に見られるのはイヤよね」
「おい人の話聞いてるか？」
「はい終わり」
　僕の言葉を軽やかにスルーして、高村は額に絆創膏を貼った。そして立ち上がりつつ、
「まさか気絶するとは思わなかったから、少しくらいここで寝ててもいいわよ。先生にはわたしから言っておくから、草薙哲哉は有原春香のパンツ覗いて保健室送りになりましたって」
「その前の過程をはしょりすぎだ！」
「あんな話を細大漏らさず報告しろなんて言ったら、わたしも怒るわよ」
　声のトーンが女教師から生真面目な女子高生になった。
「……言わねえよ」
「わかってるわよ。それじゃ、あとは付き添いに任せるから」
　ドアを開け閉めする音。……付き添い？
「出てきていいぞ、そこのバカ」
　返事の代わりに、かさりと物音。
　</p>]]></description>
                <link>https://ch.nicovideo.jp/lunaticprophet/blomaga/ar3702</link>
                <guid>https://ch.nicovideo.jp/lunaticprophet/blomaga/ar3702</guid>
                <pubDate>Tue, 28 Aug 2012 17:27:00 +0900</pubDate>
                <category><![CDATA[小説]]></category>
                <category><![CDATA[有村悠]]></category>
                <content:encoded>
                        <![CDATA[<p><p>　　『She said, I said.』は今回から有料化します。お値段１記事１０５円ポッキリ。ちなみに現在のぼくの全財産は５７円です。</p>
<hr /><p>「あんまり仕事増やさないでもらいたいんだけど」</p>
<p>　保健室で、ベッドに寝かされた僕の額にオキシドールを塗りながら高村が言う。情けなくもノビてしまった僕を一人で担いで連れてきたのは、身長一七五センチの堂々たる体躯でバレーボール部キャプテンも務める彼女だ。ちなみに僕は一六三センチで春香は一五五センチ。</p>
<p>「俺にいてッ、言うなよ。どう考えてッ、ても悪いのはあいつだろ」</p>
<p>　抗議しつつ、視界を横切る脱脂綿が赤く染まっているのを見て取って渋面を作る。こりゃ重傷だ。</p>
<p>「わたしはフェミニストなので痴話喧嘩のときは女の子の味方です」</p>
<p>　イソジンを摘みつつ高村。そういえば上野千鶴子なんか読んでたっけ。</p>
<p>「アレが痴話喧嘩に見えたのか、高村には」</p>
<p>「二人でアレだけ仲良くバカバカ言い合ってれば誰だってそう思うわよ。おまけにパンツ覗いて」「いててててて」「カバンで殴られて失神なんて、犬どころか金魚も食べないわね」</p>
<p>　パンツ覗いて、のくだりでぐりぐりとイソジンを押し付けられ、悲鳴を上げる僕。</p>
<p>「不可抗力だッ！　ていうか、常識的に考えて校則違反スレスレのスカートで廻し蹴り喰らわす女なんかいるかよ」</p>
<p>「そういえば、パンツ見えたら困るから何とかしろっていつか説教してたわね、草薙君」</p>
<p>「そんでモップの柄で殴られたよ高村さん」</p>
<p>「どうして困るのかしら？」</p>
<p>　女教師のような口調で訊いてくる。</p>
<p>「どうしてって……目の毒だろ。何かの拍子でそんなモノが視界に入ったら」</p>
<p>「そうねえ、他の男子に見られるのはイヤよね」</p>
<p>「おい人の話聞いてるか？」</p>
<p>「はい終わり」</p>
<p>　僕の言葉を軽やかにスルーして、高村は額に絆創膏を貼った。そして立ち上がりつつ、</p>
<p>「まさか気絶するとは思わなかったから、少しくらいここで寝ててもいいわよ。先生にはわたしから言っておくから、草薙哲哉は有原春香のパンツ覗いて保健室送りになりましたって」</p>
<p>「その前の過程をはしょりすぎだ！」</p>
<p>「あんな話を細大漏らさず報告しろなんて言ったら、わたしも怒るわよ」</p>
<p>　声のトーンが女教師から生真面目な女子高生になった。</p>
<p>「……言わねえよ」</p>
<p>「わかってるわよ。それじゃ、あとは付き添いに任せるから」</p>
<p>　ドアを開け閉めする音。……付き添い？</p>
<p>「出てきていいぞ、そこのバカ」</p>
<p>　返事の代わりに、かさりと物音。</p>
　
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                </content:encoded>
                <dc:creator><![CDATA[有村悠]]></dc:creator>
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            </item>
            <item>
                <title><![CDATA[She said, I said. #1]]></title>
                <description><![CDATA[<p>はじめまして、あるいは、こんにちは。有村悠です。　　何から配信したらいいものやら思いつかないので、とりあえず6年前に書いた小説でも載せてみようと思います。　　初出は東京大学新月お茶の会の会誌『月猫通り』。何号だったっけ？　「バカップル」というテーマに寄せたものです。</p>]]></description>
                <link>https://ch.nicovideo.jp/lunaticprophet/blomaga/ar2784</link>
                <guid>https://ch.nicovideo.jp/lunaticprophet/blomaga/ar2784</guid>
                <pubDate>Wed, 22 Aug 2012 10:26:00 +0900</pubDate>
                <content:encoded>
                        <![CDATA[<p>はじめまして、あるいは、こんにちは。有村悠です。<br />　　何から配信したらいいものやら思いつかないので、とりあえず6年前に書いた小説でも載せてみようと思います。<br />　　初出は東京大学新月お茶の会の会誌『月猫通り』。何号だったっけ？　「バカップル」というテーマに寄せたものです。<br /><br />　＊　＊　＊　 ＊　＊　＊　 ＊　＊　＊　 ＊　＊　＊　 ＊　＊　＊　 ＊　＊　＊　 ＊　＊　＊　 ＊　＊　＊　 ＊<br /><p>　朝のショートホームルーム前、教室でクラスメイトとだべっているところへ、入ってくるなりずかずかずかと歩み寄ってきた女生徒に、<br /><br />「この変態ッ」</p>
<p>　という怒声とともに側頭部に廻し蹴りを喰らい、水色のショーツの残像を目に焼きつけつつ薙ぎ倒される、などというのはまあ日本の平均的な男子高校生の生活とはかけ離れているだろう。</p>
<p>「何しやがる！」</p>
<p>　巻き込まれた友人二人を下敷きにしつつ身を起こし、加害者を睨みつけると、彼女――有原春香は蹴り終えた姿勢から腰に手を当てた仁王立ちになって傲然と僕を見下ろし、</p>
<p>「妹のいる兄はすべからく死ぬべきよ！」</p>
<p>　と、意味不明極まりない文句を吐いた。春香の言語明瞭・意味不明瞭発言には不本意ながら慣れているが、これはかなりハイレヴェルだ。</p>
<p>「えーと……十秒やるから落ち着け。それから言いたいことをもう一度整理しろ」</p>
<p>　頭をさすりつつ、友人たちを助け起こし、ついでに椅子も助け起こして座りなおす。春香はなおも肩で息をしつつ僕を見据えていたが、律儀に十秒後、</p>
<p>「妹は兄によって有形無形の苦痛を受けているのよッ」</p>
<p>　十秒では足りなかったらしい。だが僕は対話を試みる。</p>
<p>「その妹というのは俺の妹か、それともお前のことか？」</p>
<p>　僕には四つ下の妹がいて、春香には五つ上の兄がいる。</p>
<p>「両方」</p>
<p>　少し落ち着いてきた春香、</p>
<p>「ウチの兄貴がああってことは、同類項のアンタもそうに違いないんだわ」</p>
<p>　落ち着いてこのレベルなのだ。もうクラス中がこちらを見ている。</p>
<p>「だから何がどうなんだよ」</p>
<p>「……由紀ちゃんって、お風呂上がりにその……し、下着姿で歩き回ったりする？」</p>
<p>「……昨夜はパンツ一枚で肩にタオル巻いて腰に手当てて牛乳飲んでたな」</p>
<p>　妹――由紀の、あられもないというよりは目も当てられない姿を思い出しつつ答えると、春香の表情がまた少し険しくなり、</p>
<p>「それを見てアンタはどう思ったり何をしたりしたのかしら」</p>
<p>「育たねえなあ、と言ってや」</p>
<p>　言いかけて、三種類くらいの視線を浴びて沈黙する。先ほど僕と一緒に倒されたロリコンの伊瀬の嫉ましそうなそれと、春香の殺気をはらんだそれ、そして春香の傍に寄ってきた学級委員兼保健委員・高村麻美の眼鏡越しの冷え冷えとしたそれ。</p>
<p>「つまりアンタは由紀ちゃんの……胸とパンツを眺め回して、あまつさえドセクハラ発言に及んだと。ほほう」</p>
<p>　春香の声が三音くらい低くなり、</p>
<p>「そして部屋に戻ってアレやコレやッ」</p>
<p>　一気に一オクターヴ跳ね上がって咆哮した。</p>
<p>「アレやコレやって何だよ！」</p>
<p>　負けじと怒鳴り返すと、春香はやにわに頬を紅潮させ、</p>
<p>「だっ……だからその、胸とかパンツとかを……思い浮かべて……あ、う、」</p>
<p>　湿り気を帯びた声で言いよどみ、ついには黙りこくって俯く。ここに至ってようやく事態を把握した。つまり、</p>
<p>「お前の兄ちゃんがお前のパンツ姿で抜いてたのか。さすがひきこもりニート」</p>
<p>　先刻の被害者のもう一人、黒木が重々しく告げる。直後、壮絶な平手打ちが飛んだ。</p>
<p>「マジ最低ッ」</p>
<p>　春香が半泣き顔でわめく。僕は彼女の兄――祐介さんのよどんだ目を思い出し、</p>
<p>「だからって俺に八つ当たりするな！　ていうか俺は断じてそんな変態じゃねえッ」</p>
<p>　憤然と抗議した。後半は高村とともに非難がましいまなざしを僕に向けつつあったクラスの女子たちへの宣言でもある。</p>
<p>「どういう頭の構造してたら兄貴にオカズにされた次の日にクラスメイトを蹴り倒すことになるんだよ！　どこまでバカなんだお前は！」</p>
<p>「うるさい！　アンタの頭の中なんて大体お見通しよ！」</p>
<p>「見通せてねえだろ！　俺にもお前の頭の中が見通せん、むしろカラッポで向こう側が見通せそうだ！」</p>
<p>「なんですってこのバカッ」</p>
<p>「バカはお前だッ」</p>
<p>　直後、春香の右足が一閃。再び水色のショーツを拝みつつかろうじてかわす。</p>
<p>「避けるなバカ！」</p>
<p>「避けなきゃ当たるだろうが短気バカ！」</p>
<p>「当たり死ねバカ！」</p>
<p>「ヘンな日本語作るな水色バカ！」</p>
<p>「みず……？」</p>
<p>　　一瞬呆けた表情になった春香、直ちに真っ赤になり、</p>
<p>「見るなッ、バカ哲哉ーッ！」</p>
<p>　脇の机に置いていたカバンを僕の顔面にぶちこんだ。置き勉はしない彼女の、教科書とノートとペンケースと、一日三冊は図書室で借りる本の重みがひとかたまりの凶器になってクリーンヒット。</p>
<p>　昏倒する直前、</p>
<p>「まさにバカップルだな」「うむ」</p>
<p>　という、伊瀬と黒木の声が耳に届いた――。<br /><br />（#2に続く）<br /><img src="https://bmimg.nicovideo.jp/image/ch1035/318/20f7c53f07f7d1bc00ec74a978cb4b90f1958acb.jpg" data-image_id="318" alt="20f7c53f07f7d1bc00ec74a978cb4b90f1958acb" /></p></p>]]>
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                <dc:creator><![CDATA[有村悠]]></dc:creator>
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                <title><![CDATA[She said, I said. #1]]></title>
                <description><![CDATA[<p>はじめまして、あるいは、こんにちは。有村悠です。　何から配信したらいいものやら思いつかないので、とりあえず6年前に書いた小説でも載せてみようと思います。　初出は東京大学新月お茶の会の会誌『月猫通り』。何号だったっけ？</p>]]></description>
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                <pubDate>Tue, 07 Aug 2012 17:54:00 +0900</pubDate>
                <category><![CDATA[小説]]></category>
                <category><![CDATA[ライトノベル]]></category>
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                        <![CDATA[<p>はじめまして、あるいは、こんにちは。有村悠です。<br />　　何から配信したらいいものやら思いつかないので、とりあえず6年前に書いた小説でも載せてみようと思います。<br />　　初出は東京大学新月お茶の会の会誌『月猫通り』。何号だったっけ？<br /><br />　＊　＊　＊　 ＊　＊　＊　 ＊　＊　＊　 ＊　＊　＊　 ＊　＊　＊　 ＊　＊　＊　 ＊　＊　＊　 ＊　＊　＊　 ＊<br /><p>　朝のショートホームルーム前、教室でクラスメイトとだべっているところへ、入ってくるなりずかずかずかと歩み寄ってきた女生徒に、<br /><br />「この変態ッ」</p>
<p>　という怒声とともに側頭部に廻し蹴りを喰らい、水色のショーツの残像を目に焼きつけつつ薙ぎ倒される、などというのはまあ日本の平均的な男子高校生の生活とはかけ離れているだろう。</p>
<p>「何しやがる！」</p>
<p>　巻き込まれた友人二人を下敷きにしつつ身を起こし、加害者を睨みつけると、彼女――有原春香は蹴り終えた姿勢から腰に手を当てた仁王立ちになって傲然と僕を見下ろし、</p>
<p>「妹のいる兄はすべからく死ぬべきよ！」</p>
<p>　と、意味不明極まりない文句を吐いた。春香の言語明瞭・意味不明瞭発言には不本意ながら慣れているが、これはかなりハイレヴェルだ。</p>
<p>「えーと……十秒やるから落ち着け。それから言いたいことをもう一度整理しろ」</p>
<p>　頭をさすりつつ、友人たちを助け起こし、ついでに椅子も助け起こして座りなおす。春香はなおも肩で息をしつつ僕を見据えていたが、律儀に十秒後、</p>
<p>「妹は兄によって有形無形の苦痛を受けているのよッ」</p>
<p>　十秒では足りなかったらしい。だが僕は対話を試みる。</p>
<p>「その妹というのは俺の妹か、それともお前のことか？」</p>
<p>　僕には四つ下の妹がいて、春香には五つ上の兄がいる。</p>
<p>「両方」</p>
<p>　少し落ち着いてきた春香、</p>
<p>「ウチの兄貴がああってことは、同類項のアンタもそうに違いないんだわ」</p>
<p>　落ち着いてこのレベルなのだ。もうクラス中がこちらを見ている。</p>
<p>「だから何がどうなんだよ」</p>
<p>「……由紀ちゃんって、お風呂上がりにその……し、下着姿で歩き回ったりする？」</p>
<p>「……昨夜はパンツ一枚で肩にタオル巻いて腰に手当てて牛乳飲んでたな」</p>
<p>　妹――由紀の、あられもないというよりは目も当てられない姿を思い出しつつ答えると、春香の表情がまた少し険しくなり、</p>
<p>「それを見てアンタはどう思ったり何をしたりしたのかしら」</p>
<p>「育たねえなあ、と言ってや」</p>
<p>　言いかけて、三種類くらいの視線を浴びて沈黙する。先ほど僕と一緒に倒されたロリコンの伊瀬の嫉ましそうなそれと、春香の殺気をはらんだそれ、そして春香の傍に寄ってきた学級委員兼保健委員・高村麻美の眼鏡越しの冷え冷えとしたそれ。</p>
<p>「つまりアンタは由紀ちゃんの……胸とパンツを眺め回して、あまつさえドセクハラ発言に及んだと。ほほう」</p>
<p>　春香の声が三音くらい低くなり、</p>
<p>「そして部屋に戻ってアレやコレやッ」</p>
<p>　一気に一オクターヴ跳ね上がって咆哮した。</p>
<p>「アレやコレやって何だよ！」</p>
<p>　負けじと怒鳴り返すと、春香はやにわに頬を紅潮させ、</p>
<p>「だっ……だからその、胸とかパンツとかを……思い浮かべて……あ、う、」</p>
<p>　湿り気を帯びた声で言いよどみ、ついには黙りこくって俯く。ここに至ってようやく事態を把握した。つまり、</p>
<p>「お前の兄ちゃんがお前のパンツ姿で抜いてたのか。さすがひきこもりニート」</p>
<p>　先刻の被害者のもう一人、黒木が重々しく告げる。直後、壮絶な平手打ちが飛んだ。</p>
<p>「マジ最低ッ」</p>
<p>　春香が半泣き顔でわめく。僕は彼女の兄――祐介さんのよどんだ目を思い出し、</p>
<p>「だからって俺に八つ当たりするな！　ていうか俺は断じてそんな変態じゃねえッ」</p>
<p>　憤然と抗議した。後半は高村とともに非難がましいまなざしを僕に向けつつあったクラスの女子たちへの宣言でもある。</p>
<p>「どういう頭の構造してたら兄貴にオカズにされた次の日にクラスメイトを蹴り倒すことになるんだよ！　どこまでバカなんだお前は！」</p>
<p>「うるさい！　アンタの頭の中なんて大体お見通しよ！」</p>
<p>「見通せてねえだろ！　俺にもお前の頭の中が見通せん、むしろカラッポで向こう側が見通せそうだ！」</p>
<p>「なんですってこのバカッ」</p>
<p>「バカはお前だッ」</p>
<p>　直後、春香の右足が一閃。再び水色のショーツを拝みつつかろうじてかわす。</p>
<p>「避けるなバカ！」</p>
<p>「避けなきゃ当たるだろうが短気バカ！」</p>
<p>「当たり死ねバカ！」</p>
<p>「ヘンな日本語作るな水色バカ！」</p>
<p>「みず……？」</p>
<p>　　一瞬呆けた表情になった春香、直ちに真っ赤になり、</p>
<p>「見るなッ、バカ哲哉ーッ！」</p>
<p>　脇の机に置いていたカバンを僕の顔面にぶちこんだ。置き勉はしない彼女の、教科書とノートとペンケースと、一日三冊は図書室で借りる本の重みがひとかたまりの凶器になってクリーンヒット。</p>
<p>　昏倒する直前、</p>
<p>「まさにバカップルだな」「うむ」</p>
<p>　という、伊瀬と黒木の声が耳に届いた――。<br /><br />（#2に続く）<br /><img src="https://bmimg.nicovideo.jp/image/ch1035/318/20f7c53f07f7d1bc00ec74a978cb4b90f1958acb.jpg" alt="" data-image_id="318" /></p></p>]]>
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                <dc:creator><![CDATA[有村悠]]></dc:creator>
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