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  • マクガイヤーチャンネル 第63号 【『青春100キロ』とおれの童貞時代その1】

    2016-04-18 07:00  
    220pt
    こんにちは。映画を観ている途中に椅子が揺れて、アワアワしていたマクガイヤーです。
    数年前に閉館した銀座シネパトスという映画館は地下にあり、横を地下鉄銀座線が通ると場内に唸り声のような音が鳴り響いていました。それと同じように、劇場の前をダンプでも通っているのだろうか――などと思いながら映画を観ていたのですが、まさか1000キロも離れている熊本で大地震が起きていたとは……
    このブロマガをお読みの方の中にも、もしかすると被災された方もおられるかもしれません。心よりお見舞い申し上げます。一日も早く平穏な生活が戻りますよう、みなさんの御無事をお祈りしております。
    さて、今回のブロマガです。
    地震が起こった時、なにを観ていたかというと、『青春100キロ』という映画を観ていたのですよ。
    渋谷に映画製作・配給会社であるアップリンクが運営している、小さな映画館があります。
    どれくらい小さいかというと、普通の雑居ビルの一室に市販の椅子を40個くらい並べた、試写室のような映画館です。http://www.uplink.co.jp/info/floorguide/
    シネコンに比べたら実に小ぢんまりした映画館なのですが、音響や画質が悪いわけではりません。そして、シネコンでは上映されそうにない映画や、シネコンではすぐに公開終了になってしまった名作を上映しているのですよ(特に例年年末年始に開催されている「見逃した映画特集」にはお世話になりました)。
    ちょっと前も、すっかり見逃していた『孤高の遠吠』という静岡県のヤンキー映画を堪能しました。いや、面白かった。
    で、『孤高の遠吠』の上映前に色々な映画の予告編がかかり、どれもこれも面白そうという夢のような状態だったのですが、その中で最も興味を惹かれたのが平野勝之監督の『青春100キロ』です。
    平野勝之といえば、『わくわく不倫旅行』や『由美香』といった、AVの流れを汲むドキュメンタリーで有名な映画監督です。特に、5年前に庵野秀明が初の実写映画プロデューサーを務めた『監督失格』は話題になりました。自分も何かで殴られたような衝撃を受けたことを覚えています。
    その平野勝之監督5年ぶりの新作映画です。しかも、主演というかフィーチャーされるのは、恵比寿マスカッツのメンバーであり『キス我慢選手権 THE MOVIE2』での好演も印象的だった(http://d.hatena.ne.jp/macgyer/20150328)上原亜衣というではありませんか。
    これは観にいかなければ!
    ということで仕事が終わるや否や、劇場に向かいました。や、初日はチケットが売り切れてしまい、ネット予約して出直したので、二回向かったことになるのですが。
    『青春100キロ』は、一言でいうと、上原亜衣に生中出しするために素人男性が100キロ走るという映画でした。
    https://www.youtube.com/watch?v=y3POEpxXlyo
    この春、上原亜衣はAV女優を引退するそうです。引退に合わせて、100人の素人男性が「孕ませ隊」と「守り隊」に分かれて鬼ごっこをし、「孕ませ隊」に捕まえられると生中出しされるという狂った企画が山梨の廃墟っぽいところで行われます(驚くべきことに、これは2回目だそうです)。募集した素人男性の中に、相手の目をみてきちんと話す(そういう人は珍しかったそうです)ケイくんという若者がいました。そして、ケイくんはマラソンを趣味としています。東京から山梨の山中湖そばにある撮影現場まで約100キロ……そんなわけで、「東京から山梨まで、二日間かけて100キロを完走できたら上原亜衣に生中出しできる!」という企画が急遽立ち上がったそうです。
    平野監督含めたスタッフ3名にこの企画の話が伝わったのは撮影のわずか4日前だそうです。長年AV業界で働いてきて、40歳オーバーの彼らには、「100キロ走ってでも、一回も合ったことの無い女(上原亜衣)に生中出ししたい!」という思いに感情移入できるわけがありません。頭の中にあるのは「どうすればこの作品が面白くなるのか?」という思いだけで、それらは、きちんと口から、時には字幕スーパーとして出てきます。
    だからといって、ケイくんのことを馬鹿にするわけでもありません。ケイくんはあまり口数の多くない大人しい若者なのですが、とあるトラブルが起きても山梨に辿りつくことを諦めないケイくんの意志の強さ――性欲と言葉にできない何かが入り混じったようなもの――に自分たちと同じものをみたのか、はたまた断絶の果てにある感情移入か、 だんだんと作り手と対象との間の距離感の変化がしていくさまが、本作の見所の一つとなっています。
    また、ケイくんはマラソンを趣味としていて、以前にフルマラソン(42.195キロ)を完走したこともあり、初日の走り出しは安定感たっぷりです。しかし、二日目は初日のダメージが残り、また峠を越えなければならないこともあり、とても辛そうです。苦痛に喘ぎながら走るケイくんの横を、笑顔で「下りを楽しみます!」とチャリンコで駆け抜ける平野監督の笑顔も本作の魅力です。どんな状況でも楽しむことを忘れない、AV業界人の逞しさにはっとなりました。