A-1 日本のGDP中、国内消費の占める割合は53%位。消費伸びずGDP拡大は無理。今実質賃金は低下。労働分配率は64%で国際的にも低い。他方企業は「ためた現預金260兆円、大企業の労働分配率の低下が目立つ。企業はまだ賃上げ余力がある](日経)。
日本のGDPにおける国内消費(主に家計最終消費支出、すなわち私的消費)の割合は、最新のデータ(2024年第4四半期)で約53.0%
最近の推移:2021: 53.54%2024年第3四半期: 55.2%、平均(1980-2024年): 54.5%
 日本がGDPを伸ばすためには消費の伸びが不可欠である。しかし現状においては実質賃金の低下、格差の拡大で消費が後退している。
B-1[企業なお賃上げ余力 低下する労働分配率、ためた現預金260兆円](日経)
日本企業が稼いだ経常利益は2023年度に100兆円の大台に達し、24年度も110兆円を上回る過去最高益を記録した。その半面、インフレ率を考慮した実質賃金は0.5%低下し、3年連続で前年を割り込んだ。企業はまだ賃上げ余力がある。
 財務省の法人企業統計調査(年次別)によると、10年間で経常利益は1.8倍に膨らんでいる。稼ぐ力は伸びている。他方、人件費は1.2倍にとどまる。企業が生み出した付加価値がどれだけ働く人に向かっているかを示す労働分配率は64%で、この比率は2000年度以降、全体として低下傾向がみられる。
 特に大企業の労働分配率の低下が目立つ。法政大学の山田久教授は「国際比較の観点からも価格転嫁は進んでいない。大手から中小に賃上げ原資の移転を進め、労働分配率の企業規模別の格差を縮小すべきだ」と指摘する。
 「経済を持続的に成長させ国民生活を豊かにしていくには、中小企業や地方企業も付加価値を高めて適切な価格をつけ、生産性向上と賃上げの好循環を確実にすることが大切だ」と日本生産性本部の茂木友三郎名誉会長(キッコーマン取締役名誉会長)は語る。経営側も賃上げの継続に一定の理解を示す。
 経済同友会の調査では26年も6割の企業が賃上げを実施すると答える。ただ、賃上げ予定の企業のうち2割が25年を下回る賃上げ率になりそうだと答える。トランプ米政権の関税政策など不安要素は増えており、景気動向も不透明感が強い。
 武蔵大学の神林龍教授は「インフレのなかで実質賃金を上げていくには、将来のインフレ率予想を踏まえた目標値を掲げて労使が交渉すべきだ」と指摘する。連合が919日に公表した有識者による「未来づくり春闘」評価委員会の報告書で、生産性向上1%、日銀の物価安定目標2%、定期昇給2%との前提で「賃上げ要求は5%がひとつの目安」とした。
2010年代以降、歴代政権は政労使の会議を通じ、賃上げの機運作りに腐心した。実質賃金を引き上げていく上で、政府の役割はなお大きい。
 資本金1000万円以上の企業が持つ現金・預金は日本全体で260兆円を超す。うち130兆円弱は資本金が1億円以上の大・中堅企業が、130兆円超は資本金1000万〜1億円の中小企業が抱える。
 低い労働分配率も、ため込んだ現預金も、リーマン・ショックや新型コロナウイルス禍のような、万が一の事態に備えた保守的な企業行動の結果とみることもできる。成長に向けた攻めの姿勢を日本企業に取り戻すことも一国のリーダーに課される使命になる。