争奪戦A卓に出場したのは、水城恵利(第11期野口賞)、手塚紗掬(初代女流雀王)、松岡千晶(初代東日本最強戦ガール東日本) 、大平亜季(現女流最高位)の4名。
まず先行したのは松岡である。

ノータイムで








続く東3局、松岡は目いっぱいに構えたことが功を奏す。
東3局6巡目 東家・松岡















こういう場合、ピンフ形になっていることから安全牌の





続く1本場でも先手を取った松岡がカン


水城が1300・2600をアガって迎えた東4局。手塚が




その次局、水城のリーチを受けながらカン


待ちは決して良いとはいえないが、この待ちが手塚から出る。
東4局1本場11巡目 西家・手塚















手塚も、もしこの巡目でテンパイせず無スジを引いていれば



だが、好事魔多し。さらにアガリを重ねて松岡のトップに迫りたい大平にとって最悪の一局が待っていた。


東4局2本場6巡目 東家・大平














この後、








だが、その直後、上家の松岡が捨てた


東4局2本場7巡目 東家・大平














だが、




だが、ここから大平の手はなかなか動かない。そうこうする間に、手塚にホンイツのテンパイ。














さらに水城がテンパイを入れる。
東4局2本場13巡目 南家・手塚















水城はここでドラを捨て、



この時点で大平の手牌は、














という形。テンパイすれば水城・手塚のいずれかに放銃濃厚の形になっていた。そして大平が引いたのが


当日夜、大平は自らのブログにこう記していた。
「東ラスの親番でペン


悔いの残る敗退となった大平(左)
南入し、トップの松岡を追いかける3人の争いは益々熾烈になる。
南1局1本場は、タンピンの






高目の


これで2着に浮上した手塚。続く親でも上手くドラを重ねてチャンス手になった。

だが、これがなかなかテンパらない。アガリを諦め、ノーテン罰符獲得に向けて動く水城が仕掛け、そして親番維持の形テンを入れるため手塚も動く。が、この両者の仕掛けが松岡に最高のプレゼントを贈ることになった。
松岡は安全第一の構えを取りつつ、役なしのカン


だが、



カンドラに

2着の大平に23300点差をつけて迎えたラス前。流局寸前に松岡の手が止まった。

上家の手塚の

解説の瀬戸熊プロは「動いてテンパイを入れて続行し、水城・手塚にチャンスを与えるよりは、親を洗ってオーラスの一騎打ち勝負に持ち込んだほうが良さそう」とコメント。私も概ね同意見である。上家から鳴きづらい状況で親との一騎打ちは決して楽ではない。親がリーチと言われれば飛び込みにくいし、かといってツモられて逆転ということも起こりうる。とはいえ、連荘した結果、水城や手塚に大物手をツモられて三つ巴になるよりは(一騎打ちのほうが)優勝の可能性は高そうに思える。
だが、松岡は連荘を選択した。そのことがダメ押しのアガリを導いた。

ラス親・大平との2軒リーチに競り勝ち、ダントツになる。オーラスは大平にやや粘られたが振り切ってトップとなった。
この対局では、リードして以降が「やや守りすぎ」という印象のあった松岡。手堅い打ち方はたしかに放銃を避けやすいが、前に出ないぶん局が停滞し点差を詰められやすくなる。女流プロ代表決定戦に出場するメンバーはその辺りの経験が豊富な打ち手ばかりなので、守るだけでは勝ちきれないことが多くなる。だが、一昨年、最強戦ガールとして全国を飛び回った松岡。そのときから比べて「強くなった」と評価する人は少なくない。これから女流プロ代表決定戦に挑むまでの数ヶ月の間、さらにレベルアップしてくることに期待したい。
