全日本プロ代表決定戦では182名参加の予選を勝ち抜き、さらに翌日の代表決定戦では8分の1の難関を見事クリアし最強戦ファイナルに駒を進めた日本プロ麻雀協会のルーキー・江崎文郎。江崎は、魚谷侑未・近藤誠一・片山まさゆきを相手にC卓の戦いに挑む。
「対局が始まって相手3人の雰囲気をどう感じましたか?」
江崎「落ち着いていて、それでいて静かな闘志を燃やしているような、いい緊張感の中始まりました 」
東1局から2局続けての流局。出だしは皆慎重で、重たい場となった。東2局2本場、江崎の手は決して良いとはいえない。江崎は下の手から打でマンズのカンチャンを払っていく。
「このときの構想を教えてください」
江崎「 ストレートに打つならか字牌ですが、現状0メンツかつ愚形がありメンゼンでは遅い手でした。を鳴いてそのまま進めると守備も効かないノミ手で中盤以降ぶつかりそうだったのでは出てもまだ鳴きません。などが来ればピンズの染めが現実的に見えて鳴いていけるので、そこはギリギリまで逃したくありませんでした。そうなると切る候補がかで、一応3トイツあってかつ、手をブクブクにしたくなかったのでマンズのカンチャンを払いました」
この後、下家の片山が・とポンしてソーズの染めに走った。それに対応しながら、江崎にもテンパイが入って即リーチをかける。
「このテンパイは感触が良かったんじゃないですか?」
江崎「はい、かなりアガれるだろうと思っていました。自分の目からが4枚見えてが相当よくて、かつ、対面はカンが入ったからのツモ切りリーチで愚形っぽいので」
結果、魚谷がを掴んで江崎のアガリ。ただ裏ドラは乗らず…。
江崎「これが2600で終わったのが切なかったです」
続く東3局の親番。この局も魚谷がを暗槓し、槓ドラのついた局となる。ここで江崎はタンヤオドラ2高めイーペーコーのテンパイを入れ、即リーチをかけた。
「タンヤオドラ2高めイーペーコー。最低7700あるのでヤミに構える人もいそうですが、江崎さんは普段からリーチをかけることが多いですか? それともいつもはヤミテンだが、最強戦の頭取りを意識してリーチをかけたのでしょうか?」
江崎「決めにいきました。最強戦ルールだとラス親との一騎打ちになりやすく、その一騎打ちの時にどれだけ点棒を持って戦えるかを意識していました。この手を7700でアガッてそのオーラスで耐えられるのかというのが頭によぎってリーチに行きました。 普段はおそらくダマテンにしていると思います」
この手をアガることはできず流局したが、続く1本場でも江崎にチャンス手が入っていた。ツモり四暗刻のイーシャンテン。しかし、このとき近藤のリーチがかかっていた。江崎はこの手牌からリーチのスジを捨てて放銃となる。
「近藤さんのアガリ形を見て何か思うことはありましたか?」
江崎「形だけ見て、2枚見えのカンチャン曲げるのかぁと思いましたが、三枚ずつ見えてたからかなぁ、上手く捉えられたなぁと思いました。親番で2回手が入って、モノにできなかっただけにキッツイなぁと思いました」
南3局。北家・近藤が・をポン、さらにを明槓、を暗槓と激しく攻めた。
これを受けた江崎の手牌が次の形。
テンパイまではまだ遠く、かつ近藤への危険牌もある(実際にはロン牌)。が、ここで江崎はション牌のを切り出した。
「ション牌は打ちづらいところでしたが、ここからを捨てた理由を教えてください」
江崎「近藤さんの1,2巡目が手出しだったので流石にはないだろうと思って、ギリギリまで親番を粘りに行きました」
が、実際に近藤の待ちは手順からは読みづらい待ち。魚谷がこれに捕まった。
「この最終形をみたときどう思いましたか?」
江崎「アガリ形を見て、近藤さんの→の手出しを覚えていたので驚きました。 私も自分の手がもう少し粘れる手で掴んでいたら放銃していたかもしれません」
僅差で迎えたオーラス。江崎もひとアガリでトップになれる位置だったが、手牌がとにかく苦しい。ラス親の片山がリーチをかけたことで、江崎もツモか近藤直撃なら何でもOKという状況となり、食いタンに走った江崎もカン待ちのテンパイを入れる。
この局は序盤に魚谷が早々にチートイツドラ2のテンパイを入れていたが、なかなか絵が合わず長引いていた。そしてこの局面。
魚谷がを掴んだ。はリーチの片山の現物で、他家も不要にみえる絶好の待ちだったが、がリーチの片山に切りづらい。そこでを捨てたのだ。
「実況席では、『魚谷プロがをツモ切りしていれば江崎プロはポンしていたか?』ということが話題に挙がっていました。が出たら江崎さんはポンしてに待ち変えしていましたか?」
江崎「鳴きます。対局後に質問された時はテンパっていないところからのかなにかと勘違いしていたと思います。すいません。なら鳴かないと思います。も悪くないなと自分では思っていたのでポンの待ちとそれ程差があるとは思えませんでした」
なぜこれを聞いたかというと、次の魚谷のツモがだったからである。
魚谷の一打が変わっていれば、おそらく江崎が勝ち上がっていただろう。結果、この局は近藤の1人ノーテンで流局したが、その1本場で近藤がキッチリ差し返して勝ち上がりを決めた。
「半荘1回という短い勝負でしたが、終わってみての感想はいかがでしょうか?」
江崎「東場の親番のことや、オーラス条件満たしたテンパイを2回入れていてトップが見えていただけに悔しいです。やはり最高位は強いなと改めて思いました」
「周囲の人からはどのような感想をいただきましたか?」
江崎「周囲の人からは惜しかったねと慰めの言葉を多数頂きました。今回の対局を糧にしてより強くなりたいと思います」