チルノが主役の東方紺珠伝【東方二次創作小説】
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チルノが主役の東方紺珠伝【東方二次創作小説】

2015-09-09 01:09
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「そういえばここの湖ってどこと繋がっているんだろう?」
霧の湖は川と繋がっている。チルノは上流に何があるのか確かめるために一人で探検する事にした。
「山の方に続いているよね」
川の上を飛びながら登っていくと妖怪の山に辿り着く。ここでチルノは思い出す。妖怪の山にも湖があるということを。
「そうだ、この山の湖へ行ってみよう!」
最初の目的をそこらに捨てて空へと飛び上がる。空中から湖と思しき場所へ当たりをつけてその場所へ降下する。
「うーん、やっぱり普通の湖って霧は出ていないのかな?」
霧の湖は日中霧に包まれている。霧の湖に拠点を構えているチルノにはこの霧がかかっていない昼の湖が珍しく思えた。
湖の水の温度を確かめてみたり、水上を飛んでみたりして違いを調べようと試みていた。
それに集中していたからこそ見逃していたのであろう。この湖を陣取る異物に。
「水温は向こうの方が低い。やっぱり霧の湖の方が一番だねー」
そう言って日影を探すチルノ。一面湖なのでそうそう日陰はないはずだがチルノは大きな日影を見つけてしまった。
「あったあった。こういうのを渡りに…レイク! いや、リバーか。でも、リバーだけだったらちょっと弱い。じゃあ渡りにプリズムリバーだ」
チルノは渡りにプリズムリバーとばかりに日陰へ入る。そこで始めて気付く。この日影が何の影なのかを。
「これは…何だろう?」
影を作っていたのは湖上に浮かぶ建造物。明らかに場違いな物ではあるがその建物が何なのかチルノには知る由もない。故に、彼女がとる行動は一つしかない。
もし、別の行動を取っていなかったら未来は変わったのかもしれない。あるいは、それでも尚変わらなかったかもしれない。
湖上の建物に扉があるのを見つけ迷わず扉を開ける。この行動が幻想郷の運命を変えることになるとは露とも知らずに。
チルノは扉を開けた。その扉の奥で何が行われているかチルノは分からなかった。いや、正確には開けてすぐには分からなかったというべきか。
ぺったんぺったん
杵と臼でぺったんぺったん
うさ耳を生やした少女が延々と同じ動作をしている。
「モチつきだ」
そう、モチをついている。しかも湖上の建物で。状況が良く分からないのでとりあえず尋ねてみる事にした。
「こんにちは! 何してるの?」
突然の来訪者に驚き動きを止めるウサギ少女。
「え? し、侵入者!?」
さっと後ろに後ずさる。
「た、ためらいなくつくぞ!」
そう言って杵を構える。
「つくって、おモチのこと?」
「ち、違う! 今のは間違ったやり直す」
こほん、とせきをして仕切りを直す。
「躊躇いなく撃つぞ!」
『こちら、せーらん! 好奇心旺盛な妖精に遭遇した。これから浄化活動に入る!』
「何だかよく分からないけど表へ出ろ! あたいが勝ったらそのモチ頂くよ!」
室内で戦うわけにはいかないのでチルノの言う通り表へ出る清蘭。外に出たのを確認してチルノは室内を見回す。一つ、何故か無性に気になる扉があった。何かに誘われるようにその扉を開ける。その扉の先を確認する前にチルノの意識は薄れていった。

「ここはどこだろう? さしものあたいも分からないや」
チルノは決して多くの場所を知っているわけではない。が、たとえチルノでなくてもこの場所がどこか即座に判断出来ないだろう。
「何か目印になるものは……?」
知っている湖や山。あるいは建物など見知ったものを探してみるものの全く見つからない。
「不思議な空間だ。山も木も水もない」
太陽や月はあるのではないかと思い周りを探す。
「あ、月だ」
そこに月があった。いつもと同じ月。けれど何かが違う。
「あの月、なんかすっごく大きい」
そう、違うのは月の大きさだ。
「月が近いという事はそれだけ月に近づいているってことだよね。するってぇと霧の湖からは随分遠く離れたということだ」
緑色の巫女が使っていた方言を真似しながら今の状況を推察する。
「多分使い方はこれであってるよね。あとは『よしんば』。よしんばってどう使うんだろう?」
「そうですねー。よしんば霊夢が2位だったとしたら? とかでしょうか」
ナイトキャップを頭に被り手にピンク色の何かを持った少女が現れた。
「随分と難解な悪夢にさいなまれているようね。
ってもしかして生身?」
そう言われてチルノは肩をすくめる。
「刺身にでも見える?」
「いいえ、見えませんね。生身でここにいると危険だわ。
今すぐ現し世(うつしよ)に戻さないと」
「よく分からないけどこの先を進んだらどうなるの?」
「それを貴方が知る必要はありません」
「もしかして、弾幕勝負? 受けてたつよ!」
ナイトキャップの彼女、ドレミー・スイートの弾幕を避ける。
「やりますね、ならこれは避けられますか!」
特に理由のない初見殺しの弾幕がチルノを襲う!
「こんなの避けられないよ!」
避けられないのなら凍らせればいいとばかりに弾幕を凍らせる。
「弾幕が効かない、か。ですが、これなら!」
チルノの周りをレーザーが廻り回る。夢符「ドリームキャッチャー」だ。
「レーザー!? これは凍らせられない!」
レーザーはチルノの周りを回っているだけ、と思いきや複数のレーザーがチルノから離れていく。不思議に思って見ていると何かに跳ね返って戻ってきた。
「こんなレーザーの隙間を通るとかめんどくさい! パーフェクトフリーズ!」
チルノの奥の手パーフェクトフリーズ。レーザーさえも凍らせる。
「いやいやこれも封じるとは。なんともはや。
ですが、その隙にあなたの悪夢は私が頂きました」
「夢を食べる? あんたは何者?」
そう問われて始めて名を名乗る。
「私は獏(バク)。名はドレミー・スイート。夢の世界の住人です」
「ふむふむ、夢の世界」
よく分からないがとりあえず頷くチルノ。
「……ふむ。このまま進むと月の都という場所に着きます。
月の都はとても危ないですよ。戻る事も出来ますが進みますか?」
戻る事も出来ると聞いて少し悩むチルノ。だが、すぐに思い直す。
「ここまで来て帰る手はないと思わない?」
「それも一つの選択です。時には退く事も必要ですよ。
この先を行けば今までとは比較にならない悪夢が待ち受けているでしょう。
それは狂夢(きょうむ)、ルナティックドリーム。あなたにそれが耐えられますか?」
「何を言われてもあたいは行くよ。言葉や夢なんかに惑わされない。あたいはあたいの道を往く」

しばらく夢の世界とやらを進んでいるといつの間にか月の都とおぼしき場所に着いていた。
「ここが、月の都? 誰もいなそうだけど…」
都というからには兎がたくさんいるとチルノは思っていた。だが、生き物の気配はほとんどしない。ほとんど、という事は少しはいるはずだ。チルノは自分の感覚を信じて進む。
「妖精? 何故ここに?」
出合ったのは片翼の少女。
「兎じゃない…?」
月にいるのは兎だけではないという話は妖精仲間から聞いていた。兎ではないこの少女はなにかしら知っているのではないか、とチルノは考えた。
「妖精がここにいるということは…。いや、しかし…」
何も話そうとしない少女に痺れを切らしてチルノから話しかける。
「こんにちは! あたい、チルノだよ!」
「あ、はいこんにちは。私は稀神サグメ(きしんさぐめ)です」
ちゃんと挨拶を返してきたので何かしらの話は聞けるだろうと思い、尋ねてみる。
「ねぇ、ここは月の都であってる?」
チルノの問いに少し目を丸くして驚くサグメ。
「えぇ、そうですね。合っていますよ。しかし、それを聞くという事はあなたは何者ですか?」
「あたい? あたいは泣く子も笑う氷の妖精! 最強の妖精だよ!」
その発言にふむ、としばし思案するサグメ。
「もしかして、あなたは月の都を攻撃しようとしている妖精ではない?」
その問いに頷くチルノ。
「ということは獏がこちらへ通したのか。
なら試してみる価値はあるか」
「何? また弾幕勝負?」
「こんな形で妖精と戦う事になるとはね。
試してみるわ、妖精の力を!」
弾幕をアイスバリアで凍らせてサグメが繰り出す陰陽玉もろともパーフェクトフリーズで撃破する。単純でけれど強力なチルノの戦法はサグメの弾幕を打ち破る。チルノを倒すために戦っていたわけでもないので先程のドレミーより速く決着が付いていた。
「分かりました、私の負けです」
「やった。まぁ、あたいってば最強だし? 当然の事だけどね」
「貴方の力を見込んで真実を話しましょう。月の民は今現在避難しています」
「避難? ここにいると何か危ない事があるの?」
見た感じ自然災害にあったとは思えない。
「敵の侵略に備えての避難です。敵は生命の源を牛耳る事ができる存在。
簡単に言ってしまえば我々では手も足も出ないのですよ」
「生命の源?」
「例に挙げるとなると妖精などでしょうか。妖精は自然、自然は命そのものなので生死を拒絶する我々月の民の天敵なのですよ」
「あたいも妖精だけどそれはいいの?」
「敵によって強化されていませんし。それに、敵対しなければ特に問題はありません。
普段なら接触を試みたりはしないでしょうが事は急を要します」
そこまで聞いてチルノは考える。なにかしら大事に巻き込まれてしまったのではないかと。
「この流れはあたいにそいつを倒して来いっていう流れだよね?」
「そうですね。今、月の民は幻想郷へと遷都する計画を実行中です」
遷都、という言葉に首をかしげる。だがひとまずは分かったようなフリをして誤魔化そうとする。
「はあはあ」
「遷都、とは平たく言えば引越しですね。実際にやろうとしている事は幻想郷の住民を全員殺して移り住むという事ですが」
そんなことをされてはたまらない。だが、口を開く前に少し考える。
「んー、それって月の民が攻撃されてるから月から逃げようって事だよね?」
「まぁ、ぶっちゃけた話そうですね」
「じゃあ、今の敵が幻想郷に攻めてきたらどうするの?」
その問いには黙ってしまう。
「なんていうか月の民ってバカじゃない?」
「返す言葉もない……」
そう言って申し訳なさそうに俯いてしまう。
「ですがどの道遷都は実現しないでしょう」
「それはあたいがその敵を倒してしまうから?」
チルノの言葉に首を振るサグメ。
「実現しないのは私が喋ってしまったから。
私はサグメ。言の葉で世界の行く末を変える存在です。
私が喋ってしまったから運命は変わる。
月の都の運命は貴方一人に賭けるしかない。
ついに運命は逆さに動き始めた
いざ敵の本拠地、静かの海に向かえ!」
びしっと指を指してポーズを決めるサグメ。
「静かの海ってそっちなの?」
そう指摘されて顔を赤くし恥ずかしそうに
「あっちです……」
そう訂正した。

静かの海を進んでいると松明を持った妖精が現れた。星条旗をモチーフとした服が特徴的だ。
「あれ? あなたも妖精だよね?」
その妖精がチルノに問いかける。
「そうだよー」
「んー、あなたは知らない子だ。あなたはだぁれ?」
「あたいはチルノ! 名前を尋ねる時は自分から名乗るものだってけーねが言ってたよ」
「…けーねって誰? まぁ、いいわ。あたいはクラウンピース。地獄の妖精クラウンピースよ!」
その時チルノに電流走る!
「(キャラが被ってる!)」
妖精である事、一人称があたいである事。確かに被っている。
「クラウンピースは長いからクラピでいいよね」
そういうと少し嫌な顔をするクラウンピース。
「えー、その呼び名はあまり気に入ってないんだけど」
「そう? じゃああまり呼びたくないけどウンピで」
「クラピでお願いします」
あっさりと折れるクラウンピース。
「ウンピもウンディーネみたいで可愛く……はないか。忘れよう」
昔どこかのウンディーネがそんな名前だった気がしたのだがどうでもいい事なので忘れる事にした。
「じゃあ、改めてクラピ! 勝負よ!」
「え? なんで、妖精同士戦うの?」
「月の都だっけ? あそこを攻撃しているのに妖精が関っているって聞いたよ!
細かい事は分からないけど面白くないことになるからって退治しに来たんだ!」
「例え同じ妖精でも容赦はしないよ。月の都から出てくるやつは倒してもいいって友人様も言ってたもん」
手に持っている松明を掲げるクラウンピース。
「この松明の光を浴びると本来の力を全て出し切る事が出来る。
ものすごいパワーでチルノをやっつけてやる!」
松明がクラウンピースを照らす。彼女は気付いているのだろうか。その松明の灯火はとても明るい。
「どんな弾幕でも凍らせてやる! 妖精最強のあたいに凍らせぬものなど、ほとんど無い!」
弾幕は凍らせる事が出来る。レーザーはスペルカードで凍らせる。この戦術に隙は無い。と、チルノは思っていた。
そう、この時までは。
クラウンピースが携えるは月。弾幕でもレーザーでもない。小型の月。しかも、それが3つ。
「月!? 月は流石に凍らせれないかなぁ」
弾幕部分を凍らせて月を避けながら攻撃する。さしものパーフェクトフリーズも月を凍らせる事は出来なかった。
しかし、しかしだ。凍らせずとも避けられる弾幕。月の軌道は固定であり、月が通った後には弾幕は残らない。
弾幕を凍らせる事が出来なければ避ける事すら難しいのだろう。
「っていうかこれって耐久じゃない!」
攻撃の手をやめて避けに徹する。ぐるぐるぐると円を描くように回避する。
「おっと、危ない」
月の軌道に気を取られて弾幕に当たりそうになる。
「99,100パーセント。間に合った! アイスバーリア、へいきだもーん」
弾幕をアイスバリアで凍らせてクラウンピースのスペルカードを凌ぎきる。
「はあはあはあ。
な、なんで……。ご主人様の友人様の力で強化されたこのあたいが……」
「さっき松明の光で強化されるって言ってたじゃん」
そう言われてチルノと松明を交互に見る。
「あ、しまった! いや、でも友人様の力で純化されているからこっちの方が強いはず…」
うーん、と首を捻るクラウンピース。それを見かねてチルノが問いかける。
「その、友人様? に聞いてみればいいんじゃないの?」
「それもそうよね。友人様の、純狐様の元に案内するわ。着いて来て」

「友人様! 妖精を連れてきたよ!」
チルノはクラウンピースと共に純狐の元へと訪れた。
「はぁ、妖精ですか」
「こんにちは!」
純狐はチルノを一瞥すると目を丸くして驚く。
「この妖精は月にいる妖精とは違うようですね。もしかして幻想郷から来たのですか?」
「もしかしなくても幻想郷から来たよ!」
「そうですか。月へはどのような用事で?」
そう問われてチルノは考える。何故月へ来たのか。その理由を。
「うーん、別に用事はない。かな?」
それもそのはず。月へ来たのは成り行きだ。誰かに頼まれたのでも自らの意思で行こうとしたわけでもない。
「あ、でもここへ来た理由はあるよ! クラピがえっと純化? されているのに強くなってないっぽいから確認しようと思って」
そう言われて視線をクラウンピースに向ける純狐。
「そういえば他の妖精は純化したけどあなたはまだだったわ」
その言葉にこけるクラウンピース。
「友人様~。しっかりして下さいよ~」
「ごめんなさいね。ところであなたの用件はそれだけかしら?」
再び問われて考えるチルノ。ここに来た理由は何か他にあっただろうか?
「んー、あたい自身は特に用は無いのだけど確か何かを頼まれた気がする」
首を捻って考える。
「あ、そうだ。なんか、月の都を救えって頼まれてたんだった。
純狐だっけ? あなたを倒せば解決って事でいいよね?」
「なんと! 妖精に月の都を追いやられたというのにそれを救うのにも妖精を遣わすとは…。
しかも、僅かな穢れを嫌う月の民が妖精に要請するなんて……」
最後のはダジャレなのかどうか、それを指摘してもいいのか。チルノとクラウンピース、二人顔を交わせて迷った末スルーする事にした。
「ともかく私の道を阻むというのなら倒すのみ」
「あ、弾幕勝負ですか? じゃあ私は離れた場所にいますね」
戦うとなるや否や邪魔にならないよう退避するクラウンピース。
「どんな弾幕を撃ってくるんだろう? 楽しみかも」
そう思ったのも束の間、純狐が放ってきた弾幕は一言で言うならば壁。拡散する壁だ。
離れれば離れるほど隙間が大きくなるので避ける事は出来るのだろう。面倒だから逐次アイスバリアで凍らせてはいたが。
その壁の弾幕が終わると次はスペルカード「拳の純光」。このスペルカードは一言で言うなら壁だ。壁。
「……パーフェクト、フリーーズ!」
こちらもスペルカードを使って弾幕を凍らせる。そして、その隙に純狐へと近づく。
「アルティメットチルノパーンチ!」
純狐へキックをお見舞いする。
「いたっ、何をするのですか! しかも何故キック!」
「やかましい! あたいが見るにあんたは弾幕の何たるかを分かっていない!」
憤怒する純狐に向かってチルノは弾幕について説明する。
「弾幕勝負とはいっても同じ弾幕ばかりではつまらない。
あんたの弾幕は壁みたいなのばっかりじゃないの?」
「え? あ、はい」
チルノの問いに頷く純狐。今の時点で用意している弾幕は壁が迫ってくるようなものばかり。
「でも、殺意の百合とかそんな事はないのだけど」
実際に弾幕を空に放ってチルノに見せる。今度の弾幕は先程の壁とはうって変わって百合をイメージしたものとなっている。
「へぇ、やれば出来るじゃない。後は、なんとか符っていうスペルカードは無いの?」
チルノの問いに首を振る。
「それはダメ! 新しく考えなきゃ! クラピもこっちに来て考えて!」
かくして3人でスペルカードを考える事と相成った。
「まずはなんとか符の部分を考えなきゃ。氷符とか、恋符、獄符とか」
「友人様の能力は純化する程度の能力だから純符とか?」
そう言って純狐の方を見るが当の純狐はぽかんとして話の流れについていけていないようだ。
「よく分かりませんがスペルカードについて考えるのは重要な事、なのですか?」
その問いに二人同時に頷く。
「スペルカードはその人の特徴を現す特徴の一つ。このままだと純狐さんつまんない人になっちゃうよ!」
「はぁ。私はあまり特徴の無い弾幕を好んで使っているのですがそれではダメでしょうか?」
純狐のその言葉にチルノは考える。確かにそれも一つの特徴ではある。
「それでもいいかもしれないけどなんとか符は作らなくちゃダメだよ!」
「そうですか。そこまで言うのなら考えましょう」
チルノとクラウンピース、純狐と3人で近くに寄ってあーでもないこうでもないと新たなスペルカードを考える。
しかし、主立って考えるのは妖精二人だ。あまり良い案もないまま時間が過ぎていく。
「うーん、このままじゃ埒が明かないね。とりあえず名前だけでも決めようか」
テキトーに思いついた名前をみんなで挙げていく。
そこから気に入ったものを寄せ集めて組み合わせる。
「よし、決まった! 純符『ピュアリーバレットヘル』!」
「ピュアリーバレットヘル……」
決まったスペルカードの名前を呟き弾幕を想像する。
「スペルカード名も決まりましたし早速弾幕を考えましょう」
符名が決まった事で先程よりも積極的になった純狐。彼女の目は輝いている。
「一つ思いついたものがあるんです。こういうのはどうでしょうか?」
自分の思い描く弾幕を図解して説明する純狐。
「それはちょっと難しくありませんか? 順々に難しくしていけばこれでもいけるかもしれません」
クラウンピースの言葉に、なるほどと頷く純狐。
「それは良い案ですね。採用しましょう」
それから少し案を煮詰めて実際に弾幕を撃って試して純符「ピュアリーバレットヘル」は完成した。

「弾幕を考えるというのはこんなにも楽しいのですね」
純符が完成してから純狐は上機嫌だ。
「んー、ひっさびさに色々考えて疲れたー」
手を挙げてぐぐーっと伸びをするチルノ。
「そういえば、あたいって何でここにいるんだっけ?」
「何でだっけ?」
首をかしげるチルノとクラウンピース。
「あ、そうだ! 月の住民があまりにも馬鹿だから幻想郷が危ないんだ!」
さしもの純狐もその意味が分からずチルノに尋ねる。
「幻想郷が危ない、とは?」
月を攻撃しているのだから月が危ないのは道理だがそれで幻想郷が危ないとは一体どういうことなのか。
「えっと、月は危ないから幻想郷に避難するんだって。
それで、幻想郷にいる人達を皆殺しにするんだって」
「はぁ。それは根本的な解決にはなってないような気がするのですが?」
その言葉にチルノは肩をすくめる。
「あたいに言われても困るよ」
「それもそうですね。ではどうしましょう?」
チルノと二人一緒になって考える。
「いっそのこと、こちらから解決手段を提案するのはどうでしょう?」
見かねたクラウンピースがとっさに思いついたことを提案する。
「なるほど。逃げ場を用意すれば幻想郷に月の民を丸ごと移動させるなんて事もしなくなるかもしれませんね」
「どんな条件にするの?」
「そうですね。今しがた考えたスペルカードを使いたいのでノーミスでここまで来たらという条件でどうでしょう?」
ラスボスまでノーミスで来るのは難しくないかな、とチルノは考えたが思えばチルノも被弾なしでここまで来ていた。
月の勢力がどのような人を送り込むのかは分からないが不可能な事ではないだろう、とチルノは判断した。
「いいねいいね。それで行こう」
「問題は誰がそれを伝えに行くかですが……。
私やクラウンピースは敵対していますし。チルノ、頼めますか?」
純狐の言葉に頷くチルノ。
「任せといて! あ、でもちょっと気になることがあるんだけど」
そう言って純孤の方を見る。
「純化っていうのを使えば強くなれるって聞いたんだけどあたいも強くなれるかな?」
チルノの言葉に頷く純狐。
「ええ。今から月の都に行くのなら少しの間しか純化しないほうが良いですが」
純化した妖精はもはや命そのもの。生死を拒絶する月の民が最も忌み嫌うものでありその状態で会話するなどもってのほかだ。
「じゃあじゃあ、試してみて!」
目をキラキラさせながら期待するチルノ。
「それではいきますよ!」
純狐が何かの動作を行うとチルノの内から力が溢れ出てくる。
その力は留まる事を知らず光となってチルノの周りを駆け巡る。
「これが、純化の力! すごい!」
抑えきれないほどの力を試してみたくて動き回るチルノ。
「予想以上に強化されていますね。少しやりすぎましたか?」
久しぶりに楽しい気分になったのではしゃぎすぎたと反省をする純狐。
「よーし! これでパーフェクトフリーズを使えばどうなるかなっと」
何もないところへ弾幕を少しばら撒いてパーフェクトフリーズを使う。いや、正確には使おうとした。
体から溢れるエネルギーが止まらない。制御出来ない。純化によって強化された力を、操れない。
「このままじゃ、失敗する!? 止まれ、止まれ!」
その意思とは裏腹にエネルギーは肥大化し更に制御出来なくなっていく。
ある一点を過ぎたところで周りが全て真っ白になりやがて停止した。
「あれ? 止まった?」
目をこすって周りを良く見てみる。自分で放った弾幕は凍っている。
クラウンピースや純狐は特に変わった様子は無い。
とはいえ心配な事には変わりない。あわてて駆け寄る。
そして、気が付く。動いていない。両者とも何の反応も無い。
「そんな…。なんで、こんなことに?」
ふと、純孤の尻尾らしきものを見る。先ほどまで揺ら揺らゆれていたそれが全く動いていない。
「止まっている?」
そう呟いた瞬間、尻尾が動き出す。安堵した瞬間チルノの意識は薄れていった。
完全に意識を失う前にふと、ドレミー・スイートの言葉を思い出す。
『この先を行けば今までとは比較にならない悪夢が待ち受けているでしょう』

チルノは知らない場所にいた。いや、知らないとは語弊がある。川に流されていたから場所を把握出来なかったが正解か。
場所としてはチルノの知るところではある。運がいいのか悪いのか流木の上で寝ていたので濡れてはいない。
よく分からない状況ではあるがとりあえず飛び上がり川から離れる。
「ここはどこだろう?」
自分は月にいたはずだ。向かいに見えるは妖怪の山。ここはどう見ても幻想郷。
山に背を向けて人里の方を良く見ると一匹の兎が見えた。
「あれは確か人里で薬を売っている兎」
話した事はないが何度か見かけたことはある。気になって後をつけることにした。
が、しかしだ。竹林に入ったところで完全に迷ってしまった。勘を頼りに竹林を進む。
いざとなれば飛んで脱出出来る。そんな考えでどんどん進んでいく。そして、開けた場所に出た。
和風の屋敷がそこにあった。縁側に少女が一人佇んでいた。
兎の耳はなく、長い黒髪に紫と赤の着物。永遠亭の主、蓬莱山輝夜その人である。
チルノは無論、それとは知らない。近付いて話しかけようとする。
「誰?」
「あたい? あたいは妖精だよ?」
輝夜はチルノを一瞥し訝しむ。
「妖精が何でこんなところに? いえ、妖精はどこにでも現われるものか」
一人で問答し納得する輝夜。
「それで妖精がこの私に何か用なの?」
どうでもいいことならそこらの兎に追い出させようと考えていた。
「あたいね、月に行って来たんだよ!」
月、という言葉にそんな考えを捨て去る。
「へぇ、面白い事を言うわね。こっちに来て話してみなさい」
自分の隣をポンポンと叩きこちらへ来るように指示する輝夜。けれど本当に月へ行ったとは思ってはいない。興が乗ったというべきか。輝夜に言われた通り隣に座るチルノ。
「どうやって月に行ったの?」
ここから聞けばどのような創作話が飛び出るだろうか。そう思って尋ねてみる。
「月に行く方法? えっとねー」
ほら、案の定考え出したと予想通りの展開に少しだけつまらなそうな顔をしてしまう。
「夢、だよ」
だが、それを聞いて表情が一変する。
夢、だ。嘘八百でそのような言葉が出てくるだろうか。
「あのね、妖怪の山の湖の上になんか建物があって兎がモチつきしてて…。あ、そういえばあのモチをもらい損ねたなー」
少し動揺していたらどんどん話が逸れていく。が、しかしだ。何か重要な事を聞いた気がする。
「妖怪の山に、兎?」
そんなところに建物はあるのだろうか? 兎がいるのだろうか? 少し不安になって永琳を呼び寄せる。
「今の話を聞いていたでしょう? どう思う?」
輝夜の言葉に首を振る永琳。
「今の段階ではなんとも。ただ、今の話、本当なら永遠亭にいる兎ではないようですね」
二人のやり取りについていけずぽかんとするチルノ。
「ごめんなさいね。こっちだけで話をして。もっと話を聞かせてもらえないかしら?」
永琳の言葉に頷くチルノ。
「どこまで話たっけ? せーらんの話? いや、違う。夢の世界の話かな?」
清蘭という単語に少し反応する。やはり本当の事を言っているのではないか、と。
「確かドレミーだったかな? そいつを倒したら月の都に着いたんだよ」
ドレミー。永琳には覚えのある名。ドレミー・スイート。獏だ。
「月の都はどんな感じだった?」
そう輝夜に問われて答えるのを少し躊躇う。
「確かここの人って元々月にいた人だよね?」
そう問われて二人頷く。チルノもそれくらい大雑把な情報なら知っていた。
「月の都にはほとんど誰もいなかったよ。いたのは確かサグ…。サグなんだっけ?」
「稀神サグメ、ですか?」
話が進まないのにのを見かねて答えを出す永琳。
「そうそうサグメ。きしん、かどうかは覚えてないけど。
確か、しゃべると世界が変わるとかなんとか言ってた」
口に出すと事態を逆転させる程度の能力。それを拙いまでもチルノが知っている。それが不気味でならない。
「それで、サグメ様は何と?」
「月がやばいから幻想郷にせん……移り住んで! 移り住んで、えっと幻想郷の皆を殺して回るとか言ってた、はず」
その言葉に輝夜と永琳顔を見合わせる。
「一体どうなっているの?」
最後まで話を聞かないとやはり分からない。そう思い、チルノに話の続きを促す。
「で、幻想郷の皆を殺されるのはあたいとしても困るから月がやばい原因と話を付けに行くわけだ」
「そのやばい原因? というのは何なのですか?」
「純孤さんだよ。あ、そういえば純孤さんには名乗ってなかったなー」
とはいえクラウンピースには名乗ったからいいか、と思いなおすチルノ。
「なるほど、純孤様ですか」
「純孤の名は私も聞いたことがあるわ。なかなか厄介な事になっているようね」
「前々から月の都にちょっかいをかけていましたが今回もそれの延長線上ということでしょうか」
「詳しい事は分かんない。ひとまずは純孤さんの元にノーミスで辿り着く事を勝利条件とするって事で話がまとまったんだ」
その後、純化の力を使ってもらった事を二人に話す。
「そこから先が良く分からないんだけど…」
分からないなりに見たこと感じた事を話す。
「純化の力の影響でしょうか。冷気を操る程度の能力が強化されて全てを凍らせる能力、
更に進化して時間を巻き戻す能力になったというのはどうでしょう?」
「それなら月にいたはずのあなたが今ここにいるというのも頷けるわね」
「時間が戻ったって事? でも、あたいはあの出来事を覚えたままだよ?」
確かに、時間が巻き戻ったにしてもチルノに元の記憶があるのは不自然だ。
「それほどおかしなことではないのかもしれません。『紺珠の薬』というものがありまして。
それは飲めば少し先の未来が見えるという薬です」
「あなたが体験した出来事が未来の事だとしてもやる事は変わりないわ。
その純孤ってやつのところまで行って倒せばいいのよ」
輝夜の言葉になるほど、と納得するチルノ。
「その役目はウドンゲに任せましょう。ついでに霧雨魔理沙にも依頼しておきましょうか」
永琳の言葉に頷く輝夜。
「そういえば鈴仙って銃を持ってたじゃない? あれって今だと型落ちなのよね。
最新式の銃を持っていくように言っておいて」
「畏まりました」
少し静かになったなと思いふと、チルノの方を見る。
「あら、寝ているわ」
喋りつかれたのか、色々あって元々疲れていたのか。とにかくこのまま寝かせる事にした。自身の膝を枕にしてチルノを横に寝かせる輝夜。
「まだ色々聞きたいこともあるけれど今のままでも十分でしょう。
永琳、私は彼女の話を本当の事だと判断するわ」
「えぇ、しかし油断は禁物です。事態は刻一刻と変化しています。
被弾なしで辿り着くという条件は恐らく前提条件でしょう。彼女の目的は月の民への復讐でしょうから。
例え時間が戻っていたとしても彼女を倒すのであればそうしなければ倒せないはずです。
そこで『紺珠の薬』を使用します。未来を知る事が出来る薬。
これがあれば被弾する未来を回避する事が出来るでしょう。
この薬は私一人の力では作る事は出来ません。姫様、力を貸して頂けますか?」
「勿論よ。私達が乗り込むわけにはいかないからそれくらいはしないとね」
二人は月から逃げてきた身だ。月でも重要なポジションにいた二人が戻るわけにもいかない。なれば同じく月から逃げてきた鈴仙・優曇華院・イナバならばよいのか。よいのだ。地上でも月でも兎は下っ端。兎の未来はそんなに明るいものではない。

それから数日が過ぎた。紺珠の薬を服用し、単身月に乗り込むは地上の兎。鈴仙・優曇華院・イナバである。ろくに情報を与えられぬまま夢の世界に入り込み、月へ向かう。月の都で出会った稀神サグメに導かれ静かの海を飛び、いよいよ純孤と対面する。
「月の兎(せんし)、ですか。まさか単身乗り込んでくるとは…」
「私はもう月の兎ではないわ。今は地上の兎なのよ」
レイセンの言葉に素直に驚く純孤。
「なんと! 地上に堕ちた兎を私にぶつけるなんて。なんて愉快な奇策でしょう」
「そんなことよりあなたは誰?」
「私は純狐。月の民に仇なす仙霊」
「月の民にこんな敵がいたなんて聞いて……」
そこまで言って思い出す。数日前、人里へ薬を売りに言った帰りの事だ。途中で妖精につけられているのに気付き、竹林で撒いたと思っていた。それが何故か蓬莱山輝夜の元にいたのだ。その時の話をレイセンは少しだけ聞いていた。確かにあの妖精が純孤の名前を口にしていた。これは一体どうしたことか。
「ですが既に勝負は決しました。
例え地上の兎だとしてもここに無傷で来た時点で今回の作戦は失敗したのです」
「えっ、どういうこと?」
突然の敗北宣言に意気込んでいたレイセンは驚く。
「不甲斐ない月の民の為にそういうシナリオが用意されていたのです。
作戦は失敗したというのに。なのにあぁ、なんと心が晴れやかな事か」
なんとも爽やかな純孤を前にレイセンは戦意が無いものと判断する。
「じゃあじゃあ、もしかして戦わなくてもいいの?」
その言葉には首を振る。
「いいえ、作戦は失敗しましたが戦ってはもらいますよ」
「よく分からないけど戦うというのなら受け立つ!」
「彼女とは桃園に盃を交わさずとも喜びだけが純化する。
その喜びを彼女と共有出来ないのが実に口惜しい!
この想い、かわりにお前にぶつけてやろう。
名も知らぬ妖精の友人が切り拓いた運命の結果である私の勝利の為に!」

おしまい


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さすがは、凄い作品です。
小説の書き方とはこういうモノなんでしょうね。
46ヶ月前
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