1/31(水)11:00よりニコニコ生放送およびFRESH!の「麻雀スリアロチャンネル」にて放送された、The All Star League 2018 第2節の様子をお届けします。
レポートは、鈴木聡一郎(最高位戦日本プロ麻雀協会)がお送りします。
【1回戦:ぜひもう1度観てほしい、仲林のアタリ牌ビタ止めテンパイ】
近年の観戦記は、文量が多くない。
それゆえ、トップを決める華やかな場面にしかスポットライトが当たらないことが多いが、ここでは隠れた名場面を照らしてみよう。
今回の主人公は仲林である。
中をポンしてドラ3のテンパイを果たした仲林は、三原のオヤリーチに対して7pを押す。
自身の高打点を理由に押しているのだが、三原のリーチ宣言牌が8pであるため、純粋な5p6pだけ使った4p7pで当たることが若干少なくなっている(5p6p8pと持っているなら、もっと前に8pが切れているため)ということも押すことを後押しする。
続いて、7mもノータイムで押した。
根本はやはり自身の高打点を理由に押しているのだが、三原が1mの後、離れて2mを手出ししていることも打7mを後押ししている。
この手出しパターンの場合、手の内に4mがある可能性が高いためだ。4mを持っているということは、やはり純粋な5m6mという形が否定されるため、7mは切りやすくなる。
驚くべきは、仲林がこういった思考をノータイムで打牌する中でしている点である。
常に相手の手牌構成を思考し、準備しているからこそできる仲林ならではの一級技術だ。
では、この7sはどうか。
これは、もう純粋に期待値計算になる。
7sの放銃率×平均失点と、自身のアガリ率×8000点という打点。
この2つを天秤にかけ、7sを押したというわけである。
では、この6sはどうか。
仲林はここでようやく長考に入る。
この6sはかなりマズイ。
この時点で、残りスジは、3s6s、6s9s、3m6m、2p5pのたった4本になっていた。
6sを押すということは、その4本のうち2本を打つのと同じというわけである。
9pトイツ落としによる迂回する選択もあったが、シャンポン待ちが否定できないため、仲林は2sでのオリを選択した。
ギリギリの攻防で仲林の選択が光る
しかし、次巡に引く5s。
ここで仲林が手を止めたのである。
確かに完全アンパイがないため、何を切るかは悩ましいところ。
スジの4sや5s、または4p辺りが候補になるだろうか。
仲林の長考が解け、右手が動く。
選ばれたのは3s。
3s??仲林は、なんと無スジの3sを打ち出したのである。
これはすごい。
6sで無スジ2本分を打つのは割りに合わない。
だが、完全アンパイがない状況で、1本分の3sならば、テンパイ料も込みでリスクに見合う。
しかも、3sは両面待ち以外の愚形には当たらない。
こうして、仲林はテンパイ流局で三原との2人テンパイを決めた。
開けられた三原のリーチは6s9s。
仲林が止めて迂回した6s9sである。
もちろん、9sを早く掴んでいれば仲林とて打っていた。9sを早く掴む世界線ではどうしようもない。
しかし、今回のように6sを遅く掴む世界線であれば、止めてテンパイに持ち込める。
前巡にオリを選択していても、「残り2巡なら」、「無スジ1本分なら」、と再思考することができる。
これが、仲林が磨き上げた鋭い攻撃と粘り強さだ。
結果、見事な仕掛けで隙なくアガリを重ねた三原が、オーラスでも水口からアガってトップを決めた。
その陰で、仲林は600点差の2着に踏みとどまった。
600点差。
結果論だが、あのときのテンパイ料の分ではないか、と思わせてしまうのは、仲林の力ではないだろうか。
この局については、ダイジェスト動画にもなっているので、ぜひもう1度ご覧ください!
【2回戦:王者「おじまご」木原、打点志向の手牌構想力】
初日首位と、今年も絶好のスタートを切った王者おじまご。
ここでもリーダー木原の手牌構想力が光る。
ドラの2pを大事に、ここから4mを打つプレイヤーも多いだろう。
一方、木原はここから打1p。
手牌としては1pさえ切ればタンヤオが確定するため、1p2pを外すのと、4mを残してタンヤオを確定させつつ三色も狙えるのとでは、4mを残した方が柔軟性と打点成長性が高い。
また、1pを切ったからといって、すぐにドラを手放さなければいけないということもなく、3pなどを引いたらそのときにまた考えればいいだけの話である。
結果は、いずれにしても同じハネマンツモになっていそうだが、木原の構想力がキラリと光る1打であったように思う。
一見不要牌の9pだが…
続いて、トップ目オヤ番での選択。
ふわっと9pをツモ切ってしまいそうだが、木原はここで手を止める。
この手牌は、もう後手を踏むことになるだろう。
その場合、押し返せるのは打点があるテンパイだけだ。
この手牌で打点とは、ドラを使った手か、イッツー。
では、その2つに必要のない4mをここで先打ちし、アンパイの9pを持っておいた方がいいのではないか。
木原は4mを打ち出すと、目論見通りテンパイしたのは終盤。
安全な9pを宣言牌にした構想通りのリーチで、テンパイ流局に持ち込んだ。
木原が得意とする打点志向の構想力によるトップで、おじまごがさらにポイントを伸ばした。
【3回戦:大ブレイク中の松本、再逆転トップ】
昨年發王位を獲得し、今年はRTDリーグにも参戦している大ブレイク中の松本が登場。
この2600オールでトップ目に立った松本だったが、南2局に手詰まりから痛恨の8000放銃で転落してしまう。
しかし、南3局で大澤のリーチに追いかけて8000を取り返すと、そのままトップでゴールテープを切った。
【4回戦:そうだ、ホンイツに行こう。矢島亨のぶらり途中下車の旅】
対局前に矢島が本の紹介にやってきた。
『大きく打ち大きく勝つ麻雀』
ほう、どちらかというと細部を追求してきた矢島が意外な本を書くなと思えば、なんと対戦相手・近藤の著書であった。
矢島「これで研究してきたんでね、さっきも近藤さんとの熾烈なラス争いを制しました」
こういう冗談を言いながらも、麻雀業界全体を盛り上げようと、他プレイヤーの本の宣伝までしっかりやっていく。
ここに、チーム名にもある矢島主宰の研究会「やじ研」が発展してきた理由を見て取れる。
対局では、著者・近藤のオヤ番で、リーチハイテイツモドラ3のハネマンを決め、トップ目に立つと、矢島の看板番組『矢島亨のぶらり途中下車の旅』がスタート。
こういう遠い手牌でも、高打点が見えるならとりあえず仕掛けてみるのが矢島流。
そうだ 京都、行こう。
そんなノリでぶらりとホンイツへ向かう。
こういった「とりあえず仕掛けてみる」ということには、自分の手を進めるということ以外にも、「相手の対応を見ることができる」というメリットも存在する。
この仕掛けに対し、ピンズや役牌を真っすぐ打ち出してくる打ち手がいれば、そこに対して警戒すればいいという具合だ。
そして、いよいよ相手の手牌が育ったと思ったら、無理せずオリていく。
どこで途中下車するか、相手の出方を見ながら常に考えていくのである。
今回は、手牌がぐんぐん育ち、ターツが足りたリャンシャンテンにまでたどり着いた。
すると、矢島はここで6pを打つ。
MAX打点「役牌×2+ホンイツ」の12000だけを見て手牌を狭める代わりに、テンパイ臭を出して相手に制限を与える狙いだ。
しかし、対戦相手も矢島のことはわかっているため、ちょっと6pが切られたぐらいでは足を止めない。
多井が8pを打ち出し、矢島がこれをポンしてイーシャンテンに構える。
この8pポンも、6p先打ち時のメリット。
ホンイツなら6pを先切りすることが少なさそうであるため、トイトイが意識に入り、若干2p5pが出やすくなるというわけだ。
また、このときに打ち出す牌が生牌の北ではなく2枚切れの東であることもポイント。
うっかりアンパイの東を残して北から切ってしまいそうだが、北→東の順で打つとターツが足りた十分形であることが臭ってしまう。
しかし、東→北なら「まだ字牌を重ねたい不十分な段階なのではないか」と思わせ、今のうち!と、字牌が打ち出されることも増えるわけである。
ここまで細部に気を遣う打ち手が、さきほど『大きく打ち大きく勝つ麻雀』を宣伝していたかと思うと、ちょっと笑ってしまった。
そして、望外の發ツモでテンパイ。
これに、坂本が5pで飛び込み、矢島が7700でトップを決めた。
この坂本の5p、「プロでもこんな見え見えのホンイツに打つの?」と思われた視聴者の方もいるかもしれないが、この5pを引き出すまでに矢島がしていた上記工夫が見事だったということなのである。
加えて、こういう遠い仕掛けをし続けてきたことが与える効果が大きい。
「矢島なら、まだバラバラかもしれない」
それこそが、矢島が途中下車をせずアガリという終点までたどり着く最も重要な要素なのかもしれない。
「矢島なら何でもある」
この放送において矢島がした1番の宣伝は、やはりこれなのだろうと思うのであった。
本日ワントップながら、石井がきっちりプラスでまとめた「シンデレラwith B」が2節を終えてトップに立っている。
第3節は、2/7(水)11:00よりニコニコ生放送およびFRESH!の「麻雀スリアロチャンネル」にて放送予定!