4/7(土)14:00よりニコニコ生放送およびFRESH!の「麻雀スリアロチャンネル」にて放送された、The All Star League2018 決勝の様子をお届けします。
レポートは、鈴木聡一郎(最高位戦日本プロ麻雀協会)がお送りします。
『ゼウスが選択』と『きむしもにゃん』は、ここでぜひ『おじまご』に並んでおきたいところ。
そんな、どうしてもトップがほしい場面で本当にトップを取ってきたのが、ゼウス・鈴木たろうである。
まずは南をアンカンしたリーチをツモって、ウラ2の4,000オール。
すると、次局にはこの手牌で1pトイツ落としから入っていく。
これは面白い。
真っすぐに打つなら1枚浮いているダブ東切りになるが、手牌が持つ標準打点力にもう1翻追加できないか常に探すのが、たろうの「もう1翻よくばり打法」。
この手牌の場合、現状のリーチのみでは満足できず、ドラの4pにくっつけたドラ1リーチがたろうの本線になっている。
ということは、そもそもトイツの1pを切り出していく構想になるため、1p切りを1巡早くする代わりに、打点力の種になる東を残しておこうという思考だ。
すると、わずか2巡でドラそのものとダブ東を引くという3翻アップを実現してみせた。
この東、河に並べてしまっている打ち手も多いのではないだろうか。
こうなってしまえばたろうの土俵。
2フーロで愛内のリーチをかわして4,000オールを決めた。
これでたろうがかなり抜け出したのだが、ここから簡単にトップを取らせてもらえないのが決勝戦。
今回粘ったのは『MKHY』松ヶ瀬だった。
トータルポイント的にトップが絶対条件の松ヶ瀬は、まず5,800を下石からアガると、リーチドラ1の3,900を再び下石から。
これで2着目に浮上すると、勝負どころであるたろうのオヤ番を迎えた。
しかし、勝負どころであることを承知しているのはたろうも同じ。そのたろうからオヤリーチが入り、一発目の松ヶ瀬。
トップ目たろうのリーチが安いはずはないため、いったん現物の8p辺りを打ちたくなるところ。
一方、松ヶ瀬の選択は打9s。
タンヤオで自らの打点を確保しやすく、1枚通れば2巡凌げるし、放銃した場合の失点期待値も低く抑えることができる攻めの1打である。
すると、さらに選択。
真っすぐなら打4mで456三色を残すのだが、5s、6pともに2枚切れで456三色は現実的に難しそうである。
さらに、無スジが開拓され始めたため、4m7mの危険度も上がっている。
松ヶ瀬、ここはいったん打6sとし、「テンパイしたら勝負」の手順を選択していった。
もし松ヶ瀬が強引に4mで斬り込もうとしたなら、4mでたろうに12,000を打ち上げていた。
ここまで正解しても試練が続く逆境の松ヶ瀬。
リーチにはなりそうだが、4mを切るか7mを切るか。
3mが2枚切れでカン4m待ちのパターンが半減しているため、4m切りリーチにいく打ち手が多そうだが、松ヶ瀬は基本通りに赤5m含みのカン4m待ちをケアし、打7mでリーチを宣言した。
すると、2軒リーチに挟まれた下石から3sを打ち取って2,600。
打点はさほど高くないが、細い道を間違えずにたろうのオヤリーチを蹴ってトップへの望みをつないだ。
そして、松ヶ瀬は、ラストチャンスのオーラスオヤ番でも2軒リーチに挟まれる逆境の中、チートイツドラ3のテンパイを果たした。
これは非常に難しい。
8s単騎:待ちとしては非常に優秀なのだが、打ち出す1sがかなり危険。
1s単騎:待ちとしては悪くないが、打ち出す8sがわりと安全。
8s単騎に受けたいが、1s単騎が悪くはないだけに安全度で8s切りリーチとしてしまいそうなところである。
松ヶ瀬の選択は・・・
1sを勝負して8s単騎リーチ!!!!
アガリやすさMAXに受ける選択で、しかもこの1sが通った。
もし1s単騎にしていたらヤマには1枚も残っていなかったが、8sはなんと2枚残り。
死線で踏みとどまる見事な選択で、優勝への細い糸を残したが・・・
オリていたたろうに8sが流れ、流局となった。
与えられた手材料ではほぼ完璧に打ったように見えた松ヶ瀬だったが、結果がついてこず、『MKHY』はここで事実上の脱落。
逆に、『ゼウスが選択』はついに『おじまご』に並んだ。
【5回戦:大澤タイフーン再来】
悲運の国士放銃からなんとか借金を返してきた『きむしもにゃん』。
トップ必須の5回戦を任されたのはさきほど大トップを取った大澤。
松本のリーチを受け、テンパイを果たしたオヤの大澤は、6mか8mの選択で6mを選んだ。
カン7mの方がヤマに残っていそうなことはわかっているが、4枚目の6mを見せることで8mでの出アガリがあるのが打6mの強み。
前に出るしかない河野が、6m4枚切れを見て7m8mターツを外しにいくと、8mで大澤に12,000放銃となった。
大澤はこれでトップ目に立つと、南2局ではこのドラ表ペンチャンをリーチしてツモ。
普段の大澤からするとかなりアグレッシブなリーチだが、ここを勝負どころと踏んだ決断が実を結ぶ。
これで、なんと3チームがほぼ並びで最終戦へ。
最終戦の優勝条件は、若干の素点条件はあるものの、3チームの中で最も上位だったチームが優勝というわかりやすいものとなった。
【6回戦:仲間のために勝つ男】
3チームそれぞれが最後の作戦会議。
金に念を送る『きむしもにゃん』大澤。
と、最後までマイペースな下石。
あとは任せた、と託される『おじまご』木原。
とにかくデカイ『ゼウスが選択』のたろう・松本。
しかし、そんな3チームを置き去りにしたのは『MKHY』河野だった。
河野は、いきなりのマンガンツモで発進すると、直後にこのハネマンツモでダントツとなる。
現実的に優勝は厳しいが、河野はオーラスまで絶対に手を抜かない。
この大会を通して、河野はいつも言っていた。
「柚花さんと松ヶ瀬をみんなに知ってもらいたい」
この最終戦は、おそらく2人に向けた激励のメッセージだろう。
「おれは最後まで河野高志の麻雀を打つよ。そこから何かを感じ取ってくれればうれしいな」
いつも陽気なおっちゃんなのにな。やっぱかっけーっす、河野さん。
優勝戦線が動いたのは東3局。
この手牌、横に広く構えるなら打5pになるのだろうが、ドラのないこの手牌では、できればトイツ手を残して高打点を狙いたいため、木原は打7pといく。
すると、構想通りのチートイツテンパイで即リーチ。
これにドラアンコのたろうが飛び込み、ウラが乗って8,000。
木原が1歩リードする。
しかし、木原はリードしても攻撃の手を緩めない。
河野のリーチに対して、たろうが押してこのテンパイを組んだところ。
ここで、木原にもテンパイが入った。
耳を疑う。
「リーチ」
えっ!?おじいちゃん、いま何て?
まごの園田も言う。
園田「頭おかしくなったかと思った」
そりゃそうだ。現状で優勝条件を満たしているのだから、残り1巡でわざわざ放銃リスクを負ってリーチする必要はない。
やりすぎには変わりないが、この攻めっ気は木原らしいなとも思う。
7sはヤマにいてもおかしくないし、木原と河野の共通アンパイを探しにくい河になっているため、ノーチャンスの7sは脇から出てもおかしくない。
ここは流局となるが、木原の攻撃姿勢を理解するには十分なリーチであった。
すると、次局に木原のピンチがやってくる。
自分の手牌がアガれなさそうであるため、金の1mに併せ打ちしてオリ始めたところ。
そこで、たろうにテンパイが入る。
ここで2mを切って2枚切れの1m単騎に受けることができると、次巡に木原の1mを捉えることができるかもしれない。
しかし、それは難しいだろう。
この手はイッツーで、ペン3mも悪くないのだから。
ところが、ここでたろうが驚愕の1打を放つ。
打2mである。
ちなみにこれは、木原のトイツ落としを狙ったものではない。
たろう「1mはトイツ落としとは思わなかった。この手でペン3mに決めちゃうのは窮屈だし、1mは打ちやすいから3m6m9mとか字牌単騎に替えられる方がいいと思った」
木原が危ない。
しかも、この巡目で河野・金から2軒リーチが入り、木原が引いたのが4枚目の2mだったのだ。
この2mがきたことで、1mは単騎にしかアタらない。
完全アンパイの南を後に取っておくとすると、候補はともに2枚切れの東か1mになりそうだ。
1mを選ぶとたろうに放銃となり、優勝争いが一気に混沌とするが・・・
木原の選択は打東。
なんと、1mを打たずに凌ぐ。
木原「たろうさんがドラの西を切った後に2m手出し。あの後、もうマンズは打たないです。ドラを切った後の打2mでもし2枚切れの東単騎になっているなら、そもそも東を切ってドラを残しそうでしょ?1mは、手なりで1m2mから2mを切った1m単騎の仮テンがある。だから一応東から切りました」
ズバリの回答に震えた。
ここを金から河野への横移動で凌いだ木原は、オヤ番では再び攻撃性を取り戻し、シャンポンをきっちりリーチして一発ツモの4,000オール。
さらにドラ3仕掛けをツモって4,000オール。
この2発で優勝を決め、偉業となる連覇を達成した。
優勝 『おじまご』
木原浩一(日本プロ麻雀協会)
園田 賢(最高位戦日本プロ麻雀協会)
愛内よしえ(日本プロ麻雀協会)
本日のオープニングで木原は言った。
木原「昨日、女流名人戦の決勝で、よしえが心に響く負け方をしたんですね。だから、今日はよしえのために勝ちたいと思います」
園田「あのー、ぼくは?」
木原「あっ、もちろん(園田のためにもがんばるよ)ww」
おじいちゃんだからね、そういうとぼけたところは許してやってくれ。
そういえば、昨年も木原は言っていたな。
木原「いつも惜しいところでタイトルに恵まれなかった2人を、なんとか勝たせてあげたいんですよね」
http://ch.nicovideo.jp/marchao/blomaga/ar1249892
木原という攻めっ気の強い男は、ことごとく仲間のために勝つ男である。
そして、愛内は笑った。
いや、木原が笑わせたのか。
愛内のこの笑顔を見るために、このチームがあったようにさえ思えた。
いつもとぼけたことばかり言うおじいちゃんの教えも、こればかりは否定する要素が見当たらなかった。
鈴木聡一郎(最高位戦日本プロ麻雀協会)
<執筆後記>
オールスターリーグ2018観戦記を読んでいただきありがとうございます。2年連続で観戦記者を務めました、鈴木聡一郎です。
いやー、まさか連覇とは驚きましたね!『おじまご』のみなさん、おめでとうございます!
この企画、ほんと面白いですよね。メンバーが豪華なのはもちろんのこと、ルールも麻雀番組などでは珍しいアガリ連荘で、これがまた放送にめちゃめちゃ向いててね!
かなりタイトなスケジュールの放送だったため、観ていただくのも大変だったと思いますが、アガリ連荘のおかげで放送時間も他の番組に比べて短くなっているので、見逃した回がある方はぜひ観てみてください!
どこを取っても面白いオールスターリーグですが、スリアロのBOSSがバックヤードでも「ぜひ来年も!」って言ってくださってたんで、期待が高まりますね(*´ω`*)
では、また来年、『おじまご』の3人、および個性豊かな豪華メンバーとオールスターリーグ2019でお会いしましょう!
今年も3か月間、ありがとうございました!
▼▼▼『The All Star League2018 決勝戦』アーカイブはこちら▼▼▼
https://freshlive.tv/threearrows-ch/198291
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