• 東方WITH A MISSION~狼達が幻想入り~ MISSION26 地底の旧都で大騒ぎ!? ハプニングだぜ!地霊殿

    2017-05-20 21:132
    トーキョータナカが幻想入りしてから早数日、旧都は今日もにぎわっていた。そんなにぎわいを見せる中、スケボーに乗り、地霊殿へと颯爽と街中をかけて行くタナ輩の姿があった。

    (マサカ地霊殿ニスケボーガアルトハ思ワナカッタナ)

     地霊殿の敷地内に偶々置いてあったスケートボード。さとりに聞いてみたところ、どうやらこいしが無意識で持ってきていたらしく、使いたいのなら好きにしていいそうだ。

    (使ワナイワケニワイカナイヨナ、チョットダケボロイケドマダマダ乗レルシ)

     そんなこんなで何事も無く地霊殿に到着したタナ輩、時刻はちょうど昼食時。今日はお燐がご飯を作るらしい。お燐の料理は燻製に香辛料をふんだんに使ったものが多く、少々塩辛い。食事時にはカボチャや芋類の甘口スープが欲しくなる。

    (昨日ノ飯ハ美味カッタナア)

     昨日のご飯はお空が作っていた。まるで老舗の定食屋の料理でも食べているかのような、そんな満足感が口と胃を朝昼晩満たし続けていた。お空曰くなんとなく作っているそうだが、そんなことを言われてしまえば、プロの料理人は皆嫉妬するだろう。

    「あら、お帰りなさいタナカさん、もうお昼は出来ていますよ」

     地霊殿の玄関を開け、エントランスに入ると、そこにはエプロン姿のさとりの姿があった。ん? あれ? 待って? なんでさとりさんがエプロンしてるの? 思考の追いつかないタナ輩に、さとりが簡単に説明をした。

    「お燐の仕事が少し立て込んでるみたいですので、代わりに私が作っておきましたよ」
    (Oh,my God.)
    「え!? なんで!?」

     困惑するさとり、落胆するタナ輩。タナ輩が落胆するのも無理はない。さとりの料理はとにかく味付けが濃いのだ。揚げ物をつくれば胃がもたれるほど油が多く、みそ汁をつくれば舌に激痛が走るほど塩辛く、ケーキをつくれば吐き気を催すほどに甘ったるくなる。その腕前はかの星熊勇義でさえ1週間トイレに籠らせるほどである。後ほど勇義は「ニ度と食わん」としかめっ面で言い放ったらしい。
     そんなゲテモノであるにもかかわらず、等のつくった本人は何食わぬ顔で完食し、その後も体に影響が無かったそうだ。
     因みに妹のこいしは1月程、永遠亭と呼ばれる場所で入院したそうだ。恐るべし古明地さとり。
     しかし、和気あいあいとした寸劇は突如として終わりを迎える。轟音とともに地霊殿全体が激しく揺れたかと思うと、今度は聞いたことも無い雄たけびが響き渡り、雄たけびが鳴りやむと同時にお燐が必死の形相で地霊殿に駆け込む。

    「た、たた、たたたたた鯛、た、大変です! さとり様!!」
    「何があったの!?」
    「地下牢のお、奥の方からなんかあの、アレです、あの、あれとんでもなくデッカイ、お、鬼みたいな、鬼じゃないみたいな、とにかくとんでもなくあのあれが、あ、あの……」
    「落ち着いて!」
    「は、はい……」

     一喝するさとり。落ち着こうと深呼吸するお燐。

    「で? 何の騒ぎなの?」
    「はい、あ、あのですね、地下牢の奥から囚人名簿に乗っていない、謎の妖怪が飛び出しまして、旧都の方へと飛び出してしまいまして、現在お空が迎撃中です」
    「謎の妖怪?」
    「はい、以前さとり様に見せていただいた名簿には載っていませんでしたので……」
    「……映姫さんに聞いてみるわ、勇義さん達にこのことは?」
    「はい、既に妖精が伝えに行っております」
    「分かったわ。じゃあお燐も今すぐその妖怪の所に向かいなさい、お空のカバーをして頂戴」
    「分かりました!」

     さとりの指示を聞いて即行動に移すお燐。地霊殿は再びタナ輩とさとりだけになった。

    「ごめんなさい、タナカさん。いきなりわけのわからないことに巻き込んでしまって」
    (気ニスルナ、ソレヨリソノ妖怪トヤラハ、街ノ方ニ向カッタンダヨナ?)
    「え? ええ……、そうですけど」
    (ヨシ、俺モ行コウ)
    「!? いえ、タナカさんを危険にさらすわけにはいきませんよ!」
    (大丈夫ダ、コレデモ死地ヲ数エ切レナイホド乗リ越エテキタ)
    「……嘘ではないようですね……」

     任せろと言わんばかりにサムズアップするタナ輩。それを見たさとりは、小さくため息を取ると頭を下げてタナ輩に言い放った。

    「恥を忍んでお願いします。お空とお燐と一緒に件の妖怪を止めてください」
    (マカセロ)

     さとりの方にポンと手を置くタナ輩。さとりがタナ輩の顔を見上げると、今度はさとりの頭に2、3回手をポンと置いた。

    「は、速く行ってくださいよ……」

     さとりの顔が少し赤くなっていた。頭をポンポンされるとは思ってなかったのだろう。そのまま地霊殿を後にするタナ輩。普段仕事をする部屋へと向かうさとり。

    「あ、お燐が泡食っていた時に能力使えばよかった、まあいいや」

     地霊殿の門前にきたタナ輩、街の方では土煙と火柱が立っている場所が確認できた。

    (アノ辺リカ……)

     確認すると、その場からお空と謎の妖怪が戦っているところに向かって、何度かジャンプして向かった。
     地霊殿内、さとりは執務室内にて電話をかけていた。ろうそくの様な形の電話機の先は地獄の閻魔、四季映姫ヤマザナドゥにつながっていた。

    『あ、もしもし? 私地霊殿の古明地さとりですが』
    『あ、どうも四季映姫です、どうしました?』
    『えっとですね、地霊殿の地下牢あるじゃないですか』
    『ああ、ありますね、それがどうしました?』
    『実は、そこの奥から名簿に載っていない囚人が脱走したらしくて、そちらの方でも調べていただけないかと』
    『……同じ名簿ですよね? こちらにあるのと』
    『はい、この一つしかないので間違いはないですね……』
    『うーん、こちらも地霊殿の囚人名簿は一つしかないので漏れは無いはずですが』
    『そうですか……』
    『こちらでも全部の名簿と照らし合わせて調べておきますので、鬼達と協力して拘束して置いてください』
    『はい、そちらの方は既に対応してます』
    『そうですか、分かりました。では、確認が取れ次第そちらに向かいますので』
    『わかりました。お忙しい中申し訳ありません、お手数おかけしてしまいまして』
    『いえいえ、これも仕事ですから、気にしないでください』
    『はい、ありがとうございます』
    『はい、でわまた』
    『はい、失礼します』

     電話を切るさとり。もう一度くまなく名簿に目を通すが、やはりそれらしいものは無い。
     一方の地獄の映姫の方でも。地霊殿の名簿に目を通すが、同じくそれらしいものは無かった。
     
    「小町、チョットいいかしら?」
    「何でしょう?」
    「この名簿に漏れが無いか手伝ってほしいのだけど」
    「あいあいさー」

     映姫の執務室で偶々くつろいでいた小町に手伝いを頼む。

    「なんの話だったんです?」
    「地霊殿の地下牢で脱獄。今は鬼達と一緒に捕縛中」
    「へえ、大丈夫なんですか?」
    「それよりも今はこっち。名簿の漏れを確認して」
    「はいはい、……んん? 四季様、この地霊殿の名簿、なんで一番最後の名簿が消されてるんですか?」
    「え? 消されてる? そんなはずは……本当だ。よく気づいたわね小町」
    「かなーり薄くなってますけど、確かに消された後だったんで、あれ? ってなったんですよ」
    「さすが私の自慢の部下ね、さぼりが無ければ」
    「そりゃないっすよぉ」
    「でも、だとしたら、なぜ消されているのかしら、向こうの名簿に名前が無いとしたら、此方の原本の名前が消された後に複写されたことになるわね」
    「そっすねえ、じゃあ、どっかの名簿に名前のってたりするんですかねえ」
    「ありえるわね、妖しいのはこの”囚人護送名簿”ぐらいね」
    「もう見たんですか、数え切れないだけの名前があるのに……」
    「中身は全部覚えてるし、消えているかどうかの痕跡を見つけるのは、一度見れば何とかなるから、ちょっと難しいけどね」
    「映姫様すげえ、じゃあもう今から出発するんですか?」
    「そう言うことになるわね、頼むわよ小町」
    「おまっかせくだしゃあ」
    「そういうのいいから」
    「Sir,Yes,Sir!」

     執務室を出る時、もう一度卓上の囚人護送名簿に視線を送る。

    (もし、もし間違いが無ければ、地底で暴れている妖怪は……、だとしたら勇義さん”だけ”では、少々分が悪いかもしれないわね)
    「四季様? 速く行きますよ?」
    「ええ、今行くわ」

     卓上の囚人護送名簿の最後のページ、その欄外には、赤字で記されていた。

     ――要注意指定妖怪「牛鬼」護送警備隊壊滅のため”一時”中断灼熱地獄跡にて仮封印――

    「少し急がないと」

    to be NEXT MISSION!!

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  • 東方WITH A MISSION~狼達が幻想入り~ MISSION25 DJサンタモニカ&スペア・リブ

    2017-02-13 00:343
    妖怪の山から、文に抱えられて人里へと飛ぶ狼サンタモニカは、後頭部に当たる柔らかいたわわと、わきの下が占められる痛みと格闘していた。

    (ワキノシタガ痛イ、文チャンノ腕ガ思ッタヨリモ細イカラ食イコム……)
    「そろそろ着きますよ、お仲間がいると良いですね」
    (早イナア、マダカップ麺クライノ時間シカタッテナイヨ)

     おそらくかなりスピードを抑えていただろう、かなり加減しているのが感じられていた。それでも、ものの数分で付いてしまうあたり、全力で飛べばどれだけ速いのか、想像に難しくない。そうこうしないうちに、人里の出入り口に降りた。

    (オオ、ハヤイハヤイ)
    「さて、それでは早速人里の中へ行きましょうか!」

     文の後ろをついて行くサンちゃん、入った途端に里の人々から一斉に視線を浴びる。奇異の目で見られることは慣れっこだったが、この時ばかりは違った。何か待ち望んでいるかのような、期待に満ちた目をしているのが多かった。イベントやライブ以外でこんな視線を浴びることはあまりなかったのだ。

    (アレ? ナンカ珍シイ目デ見ラレナイナ、ナンデダロ?)

     不思議に思っていると、気さくそうな一人の青年が語りかけてきた。

    「よう、リブ! 今日は太鼓叩かないのかい?」
    「? その方はサンタモニカさんですよ? 狼違いではないですか」

     訂正する文。しかしリブと間違えるということは、この人里にスペア・リブがいるということだ。

    「え? そうなの?」

     頷くサンタ。

    「なんだ、違うのか、じゃあお仲間か何かか?」

     もう一度頷くサンタ。

    「サンタさんのお仲間さんを知っているんですか?」
    「うん、太鼓の九十九神と殆んど毎日太鼓叩いてるよ」
    「おお! 本当ですか!? これは耳よりな情報ですね!」

     確かに耳よりの情報だ。もしかしなくても今日中に合うことが出来る。再開したら何を話そう。何処から話そう。そう思っていると、文が更に聞き込みを続けた。

    「因みにそのリブさんは普段どのあたりで演奏していますかね?」
    「リブかい? リブは普段寺子屋の辺りで演奏してるよ。もしかしたら今日も見れるかもね」
    「寺子屋ですか。ありがとうございます。ではサンタさん、早速向かいましょう!」
    (Yes!)

     サムズアップをするサンタ。二人はそのまま寺子屋に向かって歩き出した――。

     その頃、寺子屋傍の慧音宅では、リブは数泊数食の恩義として、薪割りをしていた。鉈が薪を叩き割るこぎみ良い音が家の中に響き渡る。黙々と薪を割るリブのもとに慧音が歩み寄る。

    「どうだリブ殿、薪割りは進んだか……、言うまでも無いな。これだけあれば2週間弱は持つな。本当にありがとう、助かったよ。おかげで仕事が捗ったよ」
    (気ニシナクテイイニク。ソレヨリモ仕事ガ進ンダナラ良カッタニク)

     ハンドサインで軽く片手を振るとそのままサムズアップで答える。

    「さあ、薪割りはその辺にして片付けようか。夕食の買い出しにも行かねばいけないからな」

     こくりと頷くと片付けを始めるリブ。取り合えず慧音の見よう見まねで、薪置き場に薪を重ねていく。二人で片付けたため、30分とかからずに全ての薪を片付け終えた。鉈も鞘に納めて慧音に渡すと、全ての作業が終わった。あとは晩飯を食べてお風呂に入ればおしまいだ。

    「よし、薪割りも教師としての仕事もひと段落したし、晩御飯の買い出しに行くか!」

     そう言い放ちリブを引き連れて玄関の戸を開ける慧音。開けると少し先に新聞記者がいた。

    「何の用だ新聞記者? 内にネタになるようなものは無いぞ?」
    「いえいえ、こちらに狼頭人身の外来者が住んでいるとか聞きましてね? 真実を確かめるために確認に来たんですよ」
    「何だそんなことか、だとしたら何だ? 私はこれから夕食の買い出しに行くんだ取材なら又後日にしてもらえないか?」
    「いやー、それがこちらも似たような方を見つけましてね? もしかしたらお仲間なんじゃないかな? と思いましてね?」
    「似たような方?」
    (似タヨウナ方? ヒョットシテジャンケンチャンニク? ソレトモタナ輩カサンチャンニクカナ? ボイタンカモシレナイニクネエ)

     慧音のすぐ後ろで話を聞いていたリブは、ひょっこりと顔を出すと、同じく文の後ろからひょっこりと顔を出したサンタと顔を合わせる形となった。

    (オ、オオ、オリブ!!)
    (ア! サンチャンダニク!)

     久々の再開? にはしゃぐ2匹。その姿にニコニコとほほ笑む文。最初は戸惑ったものの、直ぐに理解し、ニカッと笑顔を見せる慧音。

    (ト言ウカ何処ニイタニク?)
    (山ニアル神社デ三日三晩酒飲ンデタヨ。後モグラト熊ノモンスターモブッ倒シタヨ)
    (マジニクカ。リブモ此処ニ来タ時ニヨクワカンナイ化ケ物倒シタニク)
    (マジデ!? モシカシテ此処ッテデンジャーナ所ナノカナ?)
    (多分デンジャーニクネ、デモ此処ガ一番安全ニク)
    (ソウナノカ、他ノメンバーモ無事ダトイインダガ……)
    (大丈夫ニク、僕タチハMAN WITH A MISSIONニク。ソンナ簡単ニハクタバラナイニク)
    (ソレモソウダナw)

     何を話しているのかは分からなかったが、仲間にあえて安心していることだけは伝わり、ほほえましくなる慧音。嬉しそうなため息を吐きながら、つぶやいた。

    「やれやれ、今日は4人分の夕食を用意せねばなるまいな」
    「あや? 4人と言うことは私も入っていますね?」
    「ああ、そうだが? 嬉しいことは共有した方がいいだろう、それともいらないのか?」
    「いえいえ、滅相もございません。ありがたく頂かせてもらいます」

     その日の慧音宅での夕食は一層にぎやかだったそうな。そして、リブとサンタモニカの仲間が他に3人いること、紫からのMISSION?で幻想郷に来たこと、幻想入りする場所も日にちもバラバラであることが発覚し、その情報は文のおかげで人里に伝わった。

    to be NEXT MISSION!!
  • 東方WITH A MISSION~狼達が幻想入り~ MISSION24 天狗と天狗と狼

    2017-01-04 01:471
    サンちゃんが迷子になる少し前、哨戒天狗の犬走椛は、山の異変を千里先まで見通すことが出来る能力で注視していた。そばには、三日程前にサンちゃんを守谷神社まで案内した射名丸文の姿もある。

    「椛、あれは何ですかね?」
    「チョット待ってください、土埃が舞ってよく見えないです」

     山の麓の森では木々が揺れ、揺れた先では土煙が舞い、様々な小動物が八方に逃げて行く様が見て取れる。

    「見えました。先日文さんが送り届けた狼と……熊? が戦っていますね」
    「ほうほう、サンタさんと熊さんですか。 二面記事か三面記事ぐらいには使えそうですね」
    「珍しいですね、文さんがこの騒動を一面記事にしないなんて」
    「一面はもう決まっていますからねぇ、今はそれ以外を探しているところです」
    「そうですか」
    「あれ? 興味無さげですね」
    「はい興味無いです」
    「かぶせるように返事してきましたね……、そんなに興味無いですか」
    「ええないです」
    「興味持って下さいよー」
    「尻尾をモフらないで下さい、ブラッシング面倒くさいんですから」
    「ああー気持ちい」
    「ほら、そんなことより終わったみたいですよ、行きましょうサンタさんも無事みたいですし」
    「ほう、終わりましたか、では早速」

     椛が異変の終息を伝えるや否や、文は目にもとまらぬ速さで終息場所へ飛んで行った。

    「ちょ、待って下さいよ! 文さん、速いですって! ……あ、黒のTバックだ。私と色違い」

     時は戻って迷子の迷子の狼さん。

    (晩御飯捕レタノハイイケド、持ッテ行クノ面倒クサイナ)
    「……ンタさーん、サンタさーーん!!」
    (ア、文チャンダ、Heyyyyy.)
    「ま、待ってくださーい!」

     文の声が聞こえ、視界に入り手を振るサンちゃん、少し息を切らしながら、遅れて椛も文に追いつく。視線がサンちゃんではなく、文の腰辺りに向いているのがいささか気になるが、まあ、いいだろう。

    (ア、黒ノTバックダ、椛チャンノ方ハ白ノTバックカ)

     二人ともサンちゃんのほぼ真上にいるおかげか、下着がもろに見えていたのだ。

    (ジャンケンダッタラ興奮シマクッテイタダロウナ、絶景ダ)

     下りてくる二人。周囲を見回し、熊とサンちゃんを見る。

    「これだけ暴れて怪我一つしていないとは、丈夫なんですねえ」
    「数発思いっきりくらってましたからねえ」
    (椛チャンハナンデ文チャンノケツヲ真顔デガン見シテルノカナ)

     地面に降りても一向に視線をずらさない椛を他所に、文とサンタはそのまま状況説明と取材を始めた。

    「サンタさんは何故この熊と争っていたのですか? しかも事切れさせてまで」
    (コイツヲ目ニシタ時カラ熊鍋ガ食イタクナッテネ)

     食べることを身振り手振りで伝え、四苦八苦しながら伝えるサンタ、文が理解した直後に筆談にしましょうと提案したのは言うまでもない。そして文がサンタに質問したい内容をメモ帳に書いて渡した途端、文が驚いたように後ろを振り向いた。

    「あひゃあ! な、何するのよ椛!」
    「え? 何するも何も、文さんのスカートをめくってこの絶景を目に焼き付けているんですが、何か問題でも? あ、安心して下さい。私の今晩のおかずにするだけで周りに言いふらしたりはしないので」
    「そういう問題じゃありません! こら! 揉みしだくな! 人前でやらない!」

     真剣に文の桃源郷を揉みしだく椛だが、文の鉄拳が椛の頭にタンコブを作るまでその手が休まることは無かった。

    「文さん、頭が痛いです」
    「自業自得です」

     凛々しい顔で頭をさすりながら、熊に近づき観察する椛。特に詳しく見るまでも無くサンタの淡い期待を根本から折る。

    「この熊殆んど妖怪化していますね。食べれないことは無いですけど、食べたら体に毒どころじゃなくなりますよ?」
    「ああ、やっぱり妖怪化していたんですか。したいから妖気を感じたのでうすうす気が付いていましたが、やっぱりそうだったんですね」
    (エ!? 食ベレナイノ?)

     驚くサンタに対し、椛は特に気にすることも無く続けた。

    「まあ、妖怪化したいのなら話は別ですが、というかあなた妖怪じゃないんですか?」
    (妖怪? 違ウヨ?)

     違うと首を横に振るサンタ。

    「外の世界にも不思議な生き物はいるもんですねえ」
    「文さん私達もそのカテゴリに入ってます」

     文の言葉を切り捨て熊の調査を続ける椛だが、熊の爪で手を切ってしまった。

    「痛ッ」
    「大丈夫? 椛?」
    「ええ、チョット切っただけです。完全に不注意でした」

     傷口を拭う為スカートのポケットから手ぬぐいを出す椛。その手ぬぐいはひらがなの「の」がびっしりと書き込まれていた。

    (スゲエ)
    「えっ、なんですか椛そのハンカチは……」
    「ののハンカチですか? そんなに驚くものですかね?」
    「普通驚くよ?」
    「そうですかね?」
    「今のは見なかったことにします……。まあそれはさておき、何時までもこんなところにいるのも危ないので、人里にでも行きますか。案内しますよサンタさん」
    「では私は持ち場に戻りますね、ではまた」
    「ありがとう椛」

     三人は熊を埋めて簡易的な墓をつくると、椛は本来の持ち場に、文はサンタを抱えて一路人里へと飛んで行った。


    to be NEXT MISSION!!