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  • 一問一答「あなたは、自分のことをどれくらい理解できていると思いますか?」【自己愛&反芻対策】

    2022-07-28 12:00  
    330pt
    あなたは、自分のことをどれくらい理解できていると思いますか?

    今回は、コロナ以降仕事にやる気も向上心も感じられないという看護師の方の相談をもとに、本来の自分を理解するための心理学について解説させてもらいます。
    Q. 看護師として働いていますが、コロナ以降仕事に対してやる気も向上心も感じません。このままではダメだと思いながら、ただ日々が過ぎて人生に焦りや不安を感じています。こんな自分はダメだと思いつつ何をしたらいいのかわかりません。何かアドバイスをお願いします。

    おそらくコロナとは関係ないような気がします。
    自分はダメだと考えてしまうというのは、いわゆるバーンアウト:燃え尽き症候群のような状態だと思います。
    おそらく医療従事者としてすでにかなり頑張っていると思います。
    頑張っている自分は偽物で、本当の自分はダメな人間だと考えてしまいます。

    これについてはバーンアウトの対策を参考にしてみてください。
    自分がダメなのではなく、そう思ってしまうぐらい磨り減っているということだと思います。

    Dラボ▶やる気がなくなる【バーンアウト】の7つの要因〜 ゼロからはかどるやる気の科学②

    「本当の自分とは何なのか?」

    いわゆる自分探しの旅とか、本当の自分とはなんだろう、自分のしたいことは何だろうかと迷う方も結構いると思います。
    「本当の自分とは何なのか?」
    この質問自体はっきり言って意味がない質問です。

    そもそも本当の自分というものを決める必要はなく、なぜかと言うと、それは決まっているものではなく変化していくものだからだというのがキャロル・ドゥエック博士も示してくれています。

    僕たちは本当の自分というものが自分の中にあったり、 なるべき理想の自分というものがどこかにあり、そんな自分になったり見つけないといけないと思い込んでいますが、人間というものは常に変化していくものです。
    例えば、去年したかったことと今年したかったことでは違うでしょうし、今やりたいことを見つけたとしてもそれが5年10年経った時にやりたいことではなくなっている可能性の方が高いわけです。

    どちらかと言うと、人は変化し成長して生きていくものだということを受け入れて生きていく方が、はるかに自分自身を知ることになるのではないでしょうか。

    本当の自分はどこかにあるとか、どこかに自分のやるべき使命のようなものがあると考えてしまう固定マインドセットを持っている人は、それによってその人の行動や意識というものを制限してしまいます。
    その本当の自分というものが分かるまで全く行動しなくなってしまいます。
    あるいは、自分のしたいことややるべきことを決めつけてしまい、それ以外の事をしなくなったり可能性に目を向けることがなくなってしまいます。
    それによって成長の機会やチャンスを失ってしまいます。

    人間というものはそもそも変化し続けるものです。
    自分はどのように変わっていくのかということを知ることが自分を知ることです。

    「自分はどうあるべきか」ではなく、
    「自分はこれからどのように変わっていくのだろうか」
    「来年は何をしているだろうか」
    「3年経ったらどんなことをしたいだろうか」というように変化していく自分を眺め続けるということが自分を知るということです。

    自分探しというものは意味がありません。
    唯一正しい自分があるとしたら、それは変化し続ける自分だけです。

    皆さんは、「本当の自分とは何なのか」ということを考えるのではなく、
    「これから自分はどう変わっていくのか」ということを考えるようにしてください。

    自分がわからなくなる自己愛&反芻対策法

    自分がどのようなことを求めていて、どのようなキャラクターで、どのような人生を歩みたいのか、本当は何をしている時が一番楽しくて何をしたいと思っているのか、このような自分を知ることを「自己省察」といい、この自己省察の能力が高ければ高いほど、実際の人生が良い方向に進むということが様々な研究でも確認されています。

    自分がどんな時に情熱を感じて幸せなのかがわからなければ、人生の目的が感じられなくなります。
    そんな自分がどんな時に情熱を感じるのかということを確認するための10の質問がこちらです。

    <情熱を確かめるための10問>
    各質問に対する答えは、具体的に考えてください。それぞれの質問に対して10個程度は考えて書くようにしてもらいたいですが、難しくても最低5個は書くようにしてください。それぐらいでないとなかなか具体化されません。
    質問1 :朝起きてすぐに活動したいと思う日はどのような日でしょうか? 理想の1日をイメージしてみてください。
    質問2 :自分が飽きることなくできたプロジェクトや仕事、活動や計画はどのようなものでしたか?
    質問3 :自分が全く楽しめないプロジェクトややる気が出なかった活動はどのようなものでしたか?
    質問4 :明日仕事を辞めてしまったとして、後で一番やりたくなるのは仕事のどの部分でしょうか?
    質問5 :あなたの趣味は何ですか? その趣味のどこが好きですか?
    質問6 :若かった頃に、大人になったらなりたいと思っていたものは何ですか? それに魅力を感じていたのはなぜですか?
    質問7 :今の時間の使い方は自分にとって意味があると感じるだろうか? 何かが足りないと思うのであれば、それは何でしょうか?
    質問8 :第三者になったつもりで考えてください。自分は普段どんなことに情熱を持とうとしているだろうかということを観察してみてください。どんな感情を抱きますか?
    質問9 :この世界にどのような足跡を残したいですか?
    質問10 :もし皆さんの寿命が残り1年だとしたら、どのように過ごしますか?

    とはいえ、ここで問題があります。
    「自分がわからない人」の性格的な特徴が判明しています。
    それが「反芻」と「自己愛」です。

    自己省察を妨げる「反芻」と「自己愛」

    自分のことを見ることができていないだけでなく、それ以外の部分に問題がある場合もあります。
    自己愛は本来の自分を歪めてしまいます。
    自分が見たい自分を見ているだけで、本来の自分を見ることはできていません。

    反芻はずっと同じ内容を繰り返し悩んでしまう問題ですが、これら2つは自己省察の強力な敵になってしまいます。
    どちらも気付いていない人が多いので、それぞれ自分の度合いを調べるテストを紹介しておきます。

    自分が本当に求めているものがわからなければ、余計なものに惑わされたり、人生で間違った選択をしてしまうこともあります。
    人生を見失わないために参考にしていただけたらと思います。

    反芻の危険性と自己省察
    自分の悪いところばかり見ていると、本来の自分を見ることも自分の良いところに目を向けることもできなくなります。
    これによって自己省察ができなくなります。

    人にはそれぞれの成功があります。
    ところが、みんなの成功はわかりやすいので、自分がわかっていないと思わずそれに飛びついてしまいます。
    自分に合っていない成功に向かって努力しても苦しいだけです。

    自己省察は自分に合ったものを見つけるためにも必要ですし、自分に合わないものを斬っていくことにも役に立ちます。
    人間は死ぬまで自分と向き合いながら生きていきます。

    自分は反芻の傾向はないと思っている人でも、そう思っているだけでずっと同じ失敗に悩んでいたりするものです。

    オハイオ州立大学が簡単な質問で反芻傾向をチェックするテストを作ってくれています。
    7つの質問にそれぞれ点数をつけて最後に合計してみてください。

    ほとんどない :1点
    少ない :2点
    時々ある :3点
    結構ある :4点
    ほぼいつもある :5点

    <反芻尺度テスト>
    質問1.考えるのはやめたいと思うようなことでも、意識が集中してしまうことが多い
    質問2.自分が言ったこととやったことを、何度も頭の中で振り返っている
    質問3.自分に関するネガティブ思考を止めるのが難しい時がある
    質問4.やってしまったことを振り返って考え込むことがよくある
    質問5.議論や対立が過ぎてからしばらく経った後で、その内容について思い返すことがよくある
    質問6.過去の特定の状況について、自分が振る舞った行動を頭の中で再生することがよくある
    質問7.恥をかいた体験を頭の中で思い返す作業に時間を使うことがよくある

    それでは採点方法を解説します。
    7つの質問の点数を合計して7で割り平均点を出してください。

    1点から2点:反芻なし
    ほとんど反芻しない自己省察にかなり向いているタイプです。
    人は内省する状況は必ず訪れますが、内省が始まってもうまく断ち切ることができます。
    過去のネガティブな体験が思い浮かんでも、その余計な思考を自分で断ち切ることができます。

    余計なことに脳のリソースを使うことがないので、自己省察のテクニックをもっと使っていただけると、自分の進むべき道がより明確に見えてくると思います。

    2点から4点 :軽度〜普通の反芻
    反芻のレベルは普通です。
    反芻を自分で止めることもできますが、時に反芻にとらわれてしまうこともあります。

    対策としては「反芻日記」をつけてみてください。
    どんな状況で反芻が起きているのか?
    どんな感情に紐づく反芻が多いのか?

    過去の失敗に対しての反芻がある人もいれば、人間関係の後悔についてが多い人もいます。
    お酒を飲んでいる時に反芻が起こりやすい人もいます。
    どんな状況でどんな反芻が起こりやすいのかを日記で把握するだけでも、自己認識を深めるために役に立ちます。

    そして、自分のよくある反芻のパターンが理解できたら、それに合わせて止めるための対策をあらかじめ用意しておいてください。
    例えば、自分は悪口を言われた時に反芻思考に陥るというのであれば、その時の嫌な感情をそのまま紙に書き出して、その紙を丸めてゴミ箱に捨てると決めておきます。
    反芻思考を止めるための儀式のようなものですから、ワンクッション置くことができればどんなことでも構いません。
    怒りを感じたら、意識して呼吸をゆっくり行うということでもいいと思います。

    4点から5点 :強度な反芻
    かなり強めの反芻ですから、より意識をして反芻日記をつけてください。
    自分で反芻していることがわかっても止めることができないレベルです。

    対策としては、反芻トリガーをまずは理解してください。
    そのトリガーを把握するためには次の3つのポイントに注意してみてください。
    ①誰かに会った時に反芻が増えていないだろうか?
    ②特定の場所で反芻が増えていないだろうか?
    ③特定の状況で反芻が増えていないだろうか?

    この3つに気を配って反芻日記をつけてみてください。
    これによってトリガーを理解できたら、それをひとつずつ潰していくようにしてください。

    反芻を徹底的に潰す方法
    シロクマ実験で有名なハーバード大学のダニエル・ウェグナー博士が、反芻対策について調べてくれています。
    そこから5つのポイントを紹介させてもらいます。

    ポイント1 :集中的に気をそらす
    人間は気をそらそうと思ってもそらすことができません。
    気をそらしたいのであれば、別の何かに集中するしかありません。

    ですから、反芻思考が起きそうになったら集中する何かをあらかじめ決めておいてください。
    自分がこれなら集中できるということを準備しておきましょう。

    ポイント2 :ストレスと精神的不安を減らす
    焦りやメンタル的なストレスは、ネガティブ思考に対処するための力を失わせます。
    自然の中を散歩したり運動習慣を大切にしてください。
    日常的なストレス対策を欠かさないようにしてください。

    ポイント3 :ネガティブを先延ばしする
    ネガティブな感情が湧いてきたら、ネガティブ思考を止めることはできませんが先延ばししてください。
    実験では、不安を感じやすい参加者に対して、「不安を感じたら30分後にまた不安になってください」とお願いしたところ、逆に不安が減ったという結果が確認されています。

    あらかじめスケジュールに「不安になる時間」を予定として入れておくというのもいいと思います。
    それによって、それ以外の時間に急に不安になったり反芻思考に襲われることが減っていきます。

    ポイント4 :ネガティブ思考に集中する
    これは少し上級者向けになりますが、ネガティブな思考が消えないのであれば、逆にその思考に集中してみるという方法もあります。
    あえて嫌な状況に自分を晒すことによって、その感情に対する耐性をつけていくエクスポージャーのテクニックです。

    ポイント5 :筆記開示
    書くことは心を整理するためにとても良いことです。
    書くことのメンタルへの効果についてはこの2冊が役に立つと思います。
    自分の思いや考えていることを紙に書き出すだけでメンタルに良い影響が出ます。
    ストレスの改善やトラウマの解消にも効果があると言われています。

    こころのライティング―書いていやす回復ワークブック

    筆記療法: トラウマやストレスの筆記による心身健康の増進

    ここから先は、さらに自己愛人格尺度と自己省察について解説していきます。
    自分をより理解し強く前に進んでいくために、ぜひ続きもチェックしてみてください。