• 「セコハン・ラブ(やまだ紫著)」

    2019-08-22 19:0013時間前


    ・「ゆらりうす色」と同じ単行本に収録されている作品。2年ほどあとにCOMICばくに連載されたとのこと。

    1.
     ゆらり よりも髪が長く、少し若い感じのヒロイン。妻子ある恋人を待っている。7時に来ると行ったが9時になっても来ない。結局仕事が終わらないと言って来ない。

    2.
     弟夫婦を訪ねるヒロイン。父親が同居している。父親には愛人がいたが10年前母親が突然死んで関係は切れた。以来父は自分が母に許されない余生をただ過ごしている。

    3.
     ヒロインは喫茶店をやっている。タバコの煙に男を想う。客で上に吐いたケムリを手でバタバタと散らす人は隠し事があると。

    4.
     ヒロインは男に別れを切り出す。店もたたむ。父の不倫に心を痛めたまま死んだ母を想う。
    男と付き合っていたのは父への仕返しだったような気がすると。
     ヒロインは父と一緒に旅行に出ることに。父は娘に対し、妻に言えなかった懺悔を言う。

     ということで4回で終わってしまうが、掲載誌は季刊だったようで足掛け1年連載されたみたい。
     
     単紺本には他に夕刊紙に三田誠広さんの「恋する家族」が連載された時に描いたという挿絵が一部収録されている。
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  • 「ゆらりうす色(やまだ紫著)」

    2019-08-21 19:00



    ・この作品は「しんきらり」がまだ連載中だった頃にコミックモーニングに連載されたとのこと。主婦が主人公だった「しんきらり」に対して、こちらは独身女性が主人公で、妻子ある男性と不倫中という設定。主人公の名前は笑美(えみ)。

    ・青い炎
     男といさかったようで心の中で絶望が青く燃える。男がピンクの花束を持って戻ってくる。

    ・風が
     欲しいものはと男に聞かれ、どうにもならないものには手を出さないと答える。

    ・男の家庭
     男に料理をふるまう。男の家庭の食事や奥さんについて聞こうとしてやめる。

    ・毛虫
     なんとも思ってない男が家に押しかけてくる。毛虫を見た目をしてみせる。

    ・水割り
     待ち人が来るか来ないかわからない時、水割りを飲んで過ごす。

    ・それぞれの朝
     男が帰った朝、妻や子とどのように過ごしているのだろうと思う。

    ・踏んで咲く
     男を朝まで起こしたくないと思うが起こす。帰っていく男がうらめしい。

    ・幻影
     洗濯をして、すっきりした日曜の半分が空いている。

    ・ゆらゆらと
     僕のどこが好き?と聞かれて好きではじまったのではないと思う。

    ・不毛 
     つきまとう男が彼女と不倫相手の待ち合わせを見て不毛だと電話してくる。

    ・むこう側に居るひと
     友人が妻子もちと付き合ってると聞いたけど、とやってくる。

    ・幻想
     泊まった友人に、前の彼との破局のいきさつを話す。

    ・帰らない日
     男の勤め先を訪ねて、彼の妻子を目撃する。見たくないものであり見たかったものであり。

    ・紀子という女
     不倫相手の男から奥さんの名前を聞き出す。紀子だという。

    ・おなじ朝
     男を帰さないように引っ張り、朝を迎える。男は彼女がまどろんだ隙に去る。

    ・気付いていること
     男の出張先の旅館で一緒に泊まる。どうしてもこの男じゃないと、というわけではないが。

    ・電話
     最近無言電話がある。男が俺が出ようか?と言うので奥さんだったら?と言うと黙る。

    ・出逢い
     会社の同僚男性のふられ話に付き合う。兄に呼び出されて出かけると、若い男がいる。

    ・視線
     兄の紹介した男は会社の部下。いきなり結婚しない主義ですか?と視線を向け聞いてくる。

    ・わかれ
     引越しを決める。男が何でもするというので奥さんと別れてとは言わない。

    ・傷
     自分を傷つけた人間たちに腹を立て、自分も男を傷つけたと泣く。

    ・欲しいもの
     欲しいものが何かわからないとわかる。兄の紹介した男から電話があるが手をのばさない。

    ・日曜日の桜
     男が電話をしても出ない。兄から断るならはっきりしろと。桜を見たい時、男が来る。

    ・ふたり
     男にも事情がある。女にも過去がある。でもまたやってみる。

     みたいな感じで27歳の女性が38歳の不倫相手との仲を清算して新しい男と付き合いはじめるまで、みたいな話。
     漫画評論家に「シュフ漫画」「主婦漫画家」みたいに紹介されることが多かったので、それだけじゃないぞ、と描いたのかもしれない。みたいなことが村上和彦さんの解説に書いてある。




  • 「しんきらり(やまだ紫著)」

    2019-08-20 19:00




     今では当たり前に思って特に感じないような、暮らしの中の女性の感性みたいなものを漫画のなかに持ち込んだ作品の源流みたいな人がやまだ紫さんという事で、この人のアシスタントだった杉浦日向子さんや近藤よう子さんにそうしたものは引き継がれたみたいに書いてある。

     この作品は自身の結婚生活を下敷きにしたのか、実生活と同じ夫と二人の娘を持つ主婦を主人公に平凡な家庭が平凡であるためにはどれだけ主婦がおのれを犠牲にして毎日を過ごしているかみたいな日々がどこかリアルに描かれている。

    ・淋しいシンデレラ
     夫は残業だと帰ってこない。子供二人を寝かせた後、就寝時間になるまでが主婦の自由時間。だがテレビも本もうつろでぼんやり時間だけが過ぎる。無為に過ごした自分がうしろめたい。

    ・ひとり歩き
     知人の結婚式なのかめかしこんで出かける女性。夫と子供に見送られて。駅まで歩く道すがら、切符を買う時、改札を通る時、何か忘れている気がする。電車が入ってくる。気をつけて、と声をかけようとして気付く。
     子供がいないんだ、独りで電車に乗るのは6年ぶりなんだと。

    ・抱きしめる
     幼稚園か小学校の行事なのか、先生がおかあさん方に指示したのは、子供を抱きしめる体操。次にお母さん同士のマット相撲。最初は二人で、次に三人で。強敵は連携して二対一で倒すが残った二人がゆずらない。

    ・バナナの出てきた日
     家で遊ぶ娘と友だち二人にイチゴを出すと、だれそれちゃんちはミルクとお砂糖をかけるんだって、家はだめだけどさ、みたいに娘に言われる。よそはよそ、うちはうち。母は子供の頃バナナが食べたくて仕方がなかった話をする。これからきっと何度もする。

    ・にんきもの
     友だちと遊ぶ娘がちょっと剣呑な言葉を使ったのでさりげなくたしかめると、紙人形につけたおかしな名前の一部だった。紙人形は他にもたくさんあって、どれにもヘンテコな名前がついている。その命名センスに感心もしおかしくもあり夫に話して二人で笑う。子供って育つんだね、と。

    ・いつも初体験
     娘の突然の発熱に、子供の頃の自分を思い、娘と自分の違いを思う。家庭の医学の小児の病気 欄はそらんじている。

    ・人間(ヒト)を産んじゃった
     子供が物を無くして見つからないということが度々ある。そのたびに就寝前のわずかな一人になれる時間が探し物で削られる。すっとんでいって殴りたくなる。夫はお前が探してやれよと言うのだが。何を言ってるんだと思う。

    ・ときどき子供が降ってくる
     寝転がって本を読んでいる子供に見とれてしまう。この子はどこからきたんだろうと。子供は気付いてどうして見るの?と聞いてくる。大きくなったな、と思ってととりつくろうと、質問は続く。赤ちゃんの時、わたしかわいかった?姉妹でどっちがかわいかった?と競争になる。

    ・泣いた赤鬼
     子供同士のいたずらで、相手の親が抗議にやってくる。子供同士のことと見過ごしていたのだが相手は深刻に受け止めている。あちらの子の方がいじめっ子なのに、と理不尽にも思う。
     自分の子供を注意しているうちに涙がこぼれてしまう。

    ・ドロップス
     娘が親友と喧嘩したという。理由を聞けばドロップの好きな色を相手が取ったから。編み物やってみる?と気をそらす。娘はうまく編み物に夢中になってドロップのことは忘れた様子だが、今度は編み物がうまくできなくて泣く。

    ・平和な家庭
     突然専業主婦をやめてパートに出ようと決心する妻。

    ・わたしは誰か
     日曜日、寝床でごろごろする夫がうっとうしい。自分が洗濯している間、コーヒーを飲もうとする夫がいらだたしい。これは夫の自由への嫉妬とわかっている。夫のことは何でもわかる。今何を好むか、どんな時に不機嫌になるか、着るもののサイズがどう変化しているか。
     夫はわたしのことをどれだけ知ってくれているかと思う。

    ・また春
     パートの仕事を決めてきた妻。子供も夫も驚く。夫は何で急に相談もなく、と抵抗するがもう決めたこと。

    ・家庭内太陽
     10時から15時までの仕事に出る。母が帰る頃、子供は既に学校から帰っている。子供は母が帰るのを待っていたようで甘えてくる。姉妹で母親を奪い合う。
     夫がパート生活はどうだ、と聞いてくる。弱音を期待していたのかもしれないが、子供が私を取り合ったのよ、と自慢する。

    ・どしゃ降り
     どしゃぶりの日、パートからの帰り。気持ちがざわつく。裸足で歩いてみる。子供がお母さん、はだしで帰ってきたの、何で何で?と聞くのをうるさいと思い、あんたたちもやってくれば、と送り出しておいて、癖になったらまずいなと思う。
     翌日は晴れ。つまんない、という子供に晴れの日は晴れの日、雲に乗りに行こう、と誘う。
    水溜りに映る雲に子供と乗る。

    ・夢からさめて
     妻は思う。夫と交際して6年、結婚して10年。16年、夢を見ていたと。でももう夢からは覚めた。これまで自分を無欲で平和な女と思い、ただ平和な日々が送れたら、とささやかな願いしか持たない女だと思っていた。
     でも夫婦が長く平和に過ごす、ということはささやかなんかじゃなくて、激しいことなんだと察する。夢から覚めてしまった夫婦は、どうやって平和に過ごせばいいんだろう。

    ・専務
     センムというのは飼い猫の名前。子供は猫で遊んだかと思うと猫を置いて遊びに行く。家には猫1匹の他にもザリガニ5、フナ7、クチボソ5、和金3、コメット2、カエル1、イナゴ1。みんな名前がある。でもウチなんかまだまし。ご近所ではペットが夫婦いさかいの種になっているところもある。センムが帰ってこないと、探しに出ながら思う。

    ・自由への垂幕
     離婚した友人が妻に愚痴りに来る。あのヒト水商売の女がいたのよ、そして妊娠させたの、と。妻は友人の水商売の女を蔑む姿勢が嫌だけど何も言わない。サバサバしたわ、という乾燥にも何も言わない。めんどうだから。絶望に気付かせたくないから。
     省みて自分の家庭を、夫を思う。二人三脚で維持してきたつもりの家庭を、夫はいつしか俺が養ってやってるんだ、と見下している。夫を異物のように思う。

    ・サンタクロース
     娘二人がサンタクロースってお父さん?と聞いてくる。さあね、とごまかす。プレゼント頼みたいから電話して、とせがむので会社の夫に電話する。夫は鼻をつまんで子供と話す。
     子供が頼んだのは、赤ちゃんだったらしい。おかあさんは赤くなる。

    ・雪の日
     ネコのセンムが帰ってこない。娘二人はネコの声がした、といっては外を見に行き、肩を落として帰って来る。妹が母親に、おねえちゃん今日学校で泣いたんだって、と教える。理由は雪が降ってきたからだって?母は姉の気持ちわかるわ、と答える。センムが寒いと思ったのね、と自分も泣く。

    ・微熱
     夜、微熱がある。娘二人は心配して食事の片づけを手伝い、冷たい枕を持ってきてくれたりする。翌日はパートを休むつもりだが夫にはそれを言いたくない。妻の病気をいまいましげに見る男なんて、早くでかけてほしい。休みたいんだ。

    ・すて犬
     子供が近所の子と玄関先で騒いでいる。何かと見れば、犬を拾ってきたらしい。センムがいなくなって悲しかったの忘れたの、犬なんて飼えないわよ、と叱るが一晩置いてしまうと自分もかわいくなってしまう。その夜子供が寝てから犬と一緒に散歩に出る。犬は暗がりに走っていって見えなくなる。翌朝起きてきた子供に、犬は自分の家に帰ったよ、と言う。

    ・お母さんの誇り
     お母さんは娘二人に1本も虫歯無しで幼稚園を卒園させたことが誇り。無理やり口をあけさせて磨いたらしい。姉は今も虫歯ゼロだが妹は学校の検査でムシバになりそうな派が1本あると言われたという。母は一大事、と歯医者に連れて行くが予約できるのはひと月後と聞いてなにィ、と怒る。

    ・怒った
     夫が海外に研修旅行だという。だが何の研修かははっきり言わない。妻はわかっている。
    子供が寝るのを待って、夫にマッチを突きつける。ラブホテルのマッチ。夫が雀荘だとごまかして捨てたもの。今度の旅行も女を買いに行くのだ。
     憎しみに近いほど怒っていることを伝える。なんとかしてくださいと。

    ・背中
     夫がめずらしく早く帰って来る。旅行は中止になったという。先日のマッチのことだけど、と切り出すが、妻は聞きたくないと台所に立ち、一度洗った食器をもう一度洗って夫に背中を向ける。遊びならいい。でももし夫が真面目な恋をしてときめいてしまったなら絶対に聞きたくない。だから背中を向けて泣く。

    ・開放日
     夫が娘二人を連れて旅行に出かける。妻は行かない。三日間の自由時間だ。

    ・パートタイム
     パートに行くと、知らない若い女性がいる。経営者の姪だという。ふらふらしてるのでめんどうを見てくれ、みたいに彼女の親に頼まれたらしい。見るからにやる気が無い娘だが、ていねいに仕事を教える。子供が病気だ、PTAだ、と休むパートより、必ずいるうすのろの方がいいとか聞く。私はそろそろお払い箱かな、と思う。

    ・卵焼き
     娘は手伝いをしたがるが、させられるのは嫌い。うまく興味を引いて姉にニンジンの面取りを教え、妹に玉葱を炒めさせる。ふと姉が口をすべらす。こないだ、妹がお母さんの留守中に卵焼きを作ったと。あなたの知らない怖いことがいっぱいあるのよ、やってみいいけど内緒じゃだめよ、と叱る。
     夫から子供が寝たら出てこないか、と外から電話してくる。夫の行きつけらしい店で、結婚記念日のお祝いだった。あの夫がこんなことをするなんて。でも月を間違っている。

    ・巣立ち
     姉がバレーボールチームの入部願書みたいのを持ってくる。見れば土日も全部練習で休む暇がない。いいの?と聞けばいいのと答える。
     夫に大丈夫かしらと相談するがいいんじゃないかという返事。夫は淋しいんだろう?娘が母親のテリトリーから出て行って、と言う。夫と一緒に酒を飲む。
     最初の日曜日、娘は体操着で出かけて行く。

    ・ゴキブリをする
     夫が実家の両親のところに一緒に行ってほしいという。家族会議だというのだが。妻はもし行くなら台所仕事はしませんよ、と思い切って言う。会議なら自分にも席がほしいと。
     夫はわかったと答える。

    ・一過
     パート先をやっぱり、という感じでお払い箱になる。二年間だった。子育てには子供の感謝という報酬があるが、妻には夫は感謝せず報酬は無い。
     夫にパートで稼いだ分手をつけずに貯めた通帳を見せる。夫はこんなに、と驚きたいしんたもんだ、とほめる。妻はもっとほめて、と報酬を求める。

    ・断髪
     髪を切る。姉がなんで?と聞く。ヘンシン と答える。妹の方がこっそり帰って来る。すぐに自分の部屋に行く。夕食の時、ごはんおいしいと言い、髪型ナウいね、と姉妹で母親をほめる。おべっかはやめて猫連れてらっしゃい、と言う。妹が拾ってきた猫。
     夫は帰宅して、妻の髪を見てあっと言い、猫を見てまたあっと言う。

    ・二起
     時々娘に思い切り過保護したいと思う。何でもしてやりたい。その一方で自分でやりなさいとも言う。
     ブティックの一角を借りて、手作りのぬいぐるみなどを置かせてもらい、売れたら6割をもらう、という商売を見つける。保証金にはパートの貯金を使う。夫に相談するが、それは報告じゃないか、と言い返される。

    ・山川ちはる
     山川ちはるというのは彼女の名前。ブティックに最初の商品を納めに行く。見ていきます?と言われるがとんでもない、と退散。売れたろうか、とドキドキする。
     店から電話があり、人形が三つ売れましたと報告がある。帰宅した夫に報告すると、俺以外に二人も、と答える。

    ・同朋
     主婦は退屈だわー、みたいに愚痴をこぼしに来る知人。働きに出たことが無い人。若ければ子供をもう一人産むのに、時間つぶしに、などというのでちょっと気に障る。
     でもそれならばと人形つくりに誘う。

    ・金満おばさん
     ブティックの仕事は順調。ある日夫が早く帰って来るが、いつも家で食べないので食事の支度ができていない。夫は思わず声を荒げ妻も言い返す。
     しばらくして夫はポツリと言う。俺は君が独り立ちしていくのが怖いよ。俺なんか必要じゃなくなるんじゃないかって。
     妻は答える。わたしずっと前に貴方に捨てられたと思ってた。「家庭」というイレモノの中に。でも今はちがったかもしれないと思う。仕事をしてみるようになって、自由だったと気付いたのと。

     これで終わり。「ガロ」に連載されたとの事で、最初は「しんきらり」「続しんきらり」と2冊に分けて単行本化されたものを一冊にまとめて復刻出版したのがこの版らしい。
     著者本人が60歳で急逝したのが復刻のきっかけだったという。