• 「常識として知っておきたい日本語(柴田武著)」①微苦笑を誘う日本語

    2019-12-12 19:0014時間前




    ・語源ネタみたいのがちょっと気になるのでその手の本を買うのだけど、読まないまま放置状態になってしまったりする。これもそういう一冊なので読んで処分するつもり。
     パート10まであるけどまず最初は。

    ・箱入り娘
     隙間を利用して駒を移動する遊びが語源と書いてある。一方で箱入り娘という言葉が先にあってこのゲームの名前になったと書いてあるサイトもあった。

     画像は http://hanabishi-k.co.jp/shopping/wood.html#p1 より引用。

    ・いなせ
     江戸時代に出世魚であるボラの幼魚・イナの背びれのような髷を好んで結った若者から、みたいに書いてある。これが何故かっこいいのか今の感覚だとわからない。
    http://www.newsplusnow.net/article/440343997.html

    ・おもはゆい
     漢字で書けば 面映い で、好きな相手の顔がまぶしくて直視できないみたいなことらしい。今は死語かもしれない。

    ・奥手
     稲なんかで成長が早いのを早稲(わせ)、遅いのを 奥手 といったことかららしい。

    ・ちょっかい
     猫が片足でものを掻き寄せるような動作をすることかららしい。

    ・ないしょ話
     仏教用語の 内証 (真理を悟る)というのから来ているらしい。そんなたいそうな出だったとは。

    ・絶倫
     技術や力量が人並みはずれてすぐれている というのが本来の意味だそうで、あちらが強いとか子供がたくさんいる、とかの意味は無かったらしい。

    ・奥床しい
     ゆかし は 行かし で 知りたいという意味、その奥にあるものに心ひかれて、もっと先が知りたい みたいなことらしい。

    ・派手
     三味線は本来撥で弾くが、手で爪弾く演奏法もあって 細かくにぎやかなものを特に従来の演奏法を破った、破手だ、と言ったことかららしい。それがいつしか品のないけばけばしさを指すように転じたという。

    ・フリの客
     フリーの客という意味ではないらしい。フラリと風のように入ってきた一見の客、ということで一見の客、風(フリ)の客という語源らしい。

    ・カマトト
     カマゴコはトト(魚)で出来ているのを知らないというような、わかりきっているはずのことを知らないふりをして聞く女性からきた言葉だとか。

    ・お袋 
     諸説あるらしく金銭を袋から出し入れするからとか子供は胎内ではエナという一種の袋に包まれているからとか子供をフトコロに抱くからとか。どれもそれらしいような違うような。

    ・ちょうだい
     漢字では頂戴で、両手で受けて頭のてっぺんに載せること。うやうやしい所作だが今どきそんなことをする人はいない。昔の映画では給料袋を両手で受け取って額に袋をつけるような動作を見た記憶はある。

    ・巷
     チマタとは道がいくつかに分かれる分岐点で、街中の賑やかな場所である世間を表わす言葉になったらしい。修行する人にとっては 夜の巷 や 巷の灯り は妨げになるみたいな。

    ・ままならぬ
     母親になれないとか、小さなスナックのママにさえなれないとかいうことではなくて、随(マニマ)に、つまり随意にふるまえない、思い通りにならなくて物事のなりゆきにまかせるしかできない、みたいな意味らしい。

    ・市松模様
     黒い四角と白い四角が交互に並んだ模様のことで、江戸中期の歌舞伎スター・佐野川市松おいう人がこの柄の衣装を着て評判をとったことかららしい。

    ・取沙汰
     沙汰は たより とか 評判 というような意味で使われるがもともとは米や砂金に混じった砂を取り除くような意味で使われたそうでこれが物事を処理するみたいになって、さらに噂する、みたいな意味になったらしい。

    ・ハイカラ
     明治になって洋行する人が多くなり、帰国するとあちら風にネクタイやハイカラーと呼ばれるたけの高い襟で闊歩するようになったので新聞記者がこうした風潮をハイカラと呼んだのが語源だと書いてある。
     一度死語になったけど はいからさんが通る で甦ったような。

    ・じゃじゃ馬
     誰でも頭に浮かぶのはシェイクスピアの「じゃじゃ馬馴らし」だけど原題には馬という意味はないらしく、口やかましい女のトレーニング みたいな感じらしい。あばれ馬、邪邪馬みたいなやかましい女性を馴らすというような意訳で、訳者のセンスが光ると誉めている。

    ・初夜
     本来は仏教で午後8時から9時頃に行う読経をいうらしい。だから一年中毎日初夜はあり、お坊さんによっては毎日初夜のおつとめをしている場合もあるとか。それがどうして新婚夫婦の行為を指すようになったのかは書いてない。

    ・年増
     江戸時代には結婚してお歯黒をした女性は年増と呼ばれ、未婚でも二十歳前後になると年増、アラサーになると中年増、もっと歳をとると大年増と呼ばれたとか。二十歳過ぎるとオバサンというのは現代に江戸の息吹を伝える言葉なのかも。

    ・紅葉狩り
     日本人は本来農耕民族で狩猟民族では無いはずなのに「狩り」がつく言葉は多いという。あちらこちらと鑑賞して歩くことも狩りといい、紅葉狩りはその代表的な用法。あまり聞かないけど桜狩り、ホタル狩りなどという言葉もあるらしい。潮干狩りやキノコ狩りなんかもそんな系統に近いらしい。

    ・おしゃま
     もともとは江戸時代の流行歌からきている言葉で 猫じゃ猫じゃとおしゃますが(おっしゃいますが)~ みたいな歌詞から おしゃま=猫 みたいになって、それが猫みたいなませて生意気なふるまいをする女性 みたいになったらしい。語源を聞くとあまりほめ言葉ではないような。

    ・目白押し
     語源は鳥のメジロで、一本の枝に何羽も押し合いへしあいしながら並ぶ修正があることから先を争って並ぶようなさまをこう呼ぶようになったという。とりぱんなんか読むとメジロはあまり集団で来ない感じでエナガ押しとかオナガ押しとかムクドリ押しの方が実体に合っているような。

    ・お転婆
     輸送手段が馬だったころに伝馬という郵政関係みたいな馬がいて、多少荒れ気性でも若くて元気な馬がこれに使われたという。これが転じて 若くて元気はつらつで多少はねっ返りの娘をお転婆と呼ぶようになったとか。婆という字が入っているのは何かあてつけなのか。

    ・一笑
     一笑に付す とはバカにして相手にならない、わらいぐさにして問題にしないという笑いに満たないものみたい。

    ・糊口をしのぐ
     糊はおかゆのことで、おかゆをすするような生活をがまんして過ごす みたいな意味になるとのこと。
     
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  • 「蘭学事始(杉田玄白著)」

    2019-12-11 19:00




    ・有名だけど中身を実際に読んだことない本。何を思ったか買ったことがあるらしく、本棚の隅から出てきたので読んで処分することに。

     紹介されているのは玄白本人が蘭学(当時はこの言葉は無かったらしく玄白たちの造語らしい)を志したきっかけや、一緒に志した仲間のことなど。この本を書いたのは玄白82歳の時。彼は八代将軍吉宗の頃に医家の子供として生まれる。彼の誕生と引き換えに母親は死亡。医学や漢学を学びながらしだいに交友を広め、その中には和蘭(オランダ)の文物に興味を持つ者が少なからずいて、日本の医学書よりもあちらの医学書の図の方が正しいのではないか、と思うようになる。その思いから罪人の腑分け、今でいう解剖に立ち会ってこれを確かめ、いわゆるターヘル・アナトミア(というのは原書の書名ではないらしいが)として知られる解体新書の翻訳を思い立つ。これが十代将軍家治の時代。

     腑分けに立ち会ったのは大勢だったらしいが全員の名は書かれておらず、帰り道が一緒だった前野良沢、中川淳庵と語り合ううちに良沢と玄白が入手していたターヘルアナトミアの翻訳を思い立つ。これが39歳の時。41歳の頃にはほぼ訳が終わり、42歳の時にこれを出版する。
     彼がこの蘭学事始を書く頃には、学ぶ人が少なかった蘭学をやる人がものすごく大勢となっているが中には事実でないことを話す人もいるようなので後でわからなくならないよう当事者として知る限りの事を書き残しておく、みたいな事が執筆動機として語られている。

     解体新書翻訳の具体的な作業内容などはわずかに書かれているだけで、全般的に当時どのような蘭学を志す人がいて、彼はこんな背景を持つ人でこんなことをやった、でも今は亡くなった、みたいなことが列記されているような印象。本職のオランダ語の通訳である通詞についてはあいつら全然オランダ語ができない、とけっこう厳しいことを書いているけど本人も学ぼうとして挫折している様子。貴重な記録だがけっこう勘違いや間違いもあるらしいことが注に書いてある。
     自分自身のことは粗漫にして不学で力もないと書きつつも、これを翻訳して世に出せば日本の医学は進歩して多くの人の役に立つという情熱は誰よりも強かった様子が感じられる。良沢のオランダ語の才能が無ければできないことだったとも書いて称えている。
     一方で当時は西洋のことを書いた本が幕府によって出版差し止めになるなどの事例も多かったらしく、これを避けるために様々な伝手を頼って幕府要人や公家にお伺いを立てたり見本をもっていって見てもらったりと根回しをした様子。こうしたことは良沢より玄白の方が適任だったらしい。
     多くの関わった人を紹介しつつも 各々志すとことありて一様ならず などと人間集団のとりまとめに苦労したらしいことも書いてあるが基本的には誰かを責めたり罵倒したりするような言葉はなく、彼はこんなことをやってくれた、彼のおかげでこんなふうにできた、みたいなプラス評価が多く書かれている。それだけに通詞への厳しい記述は目立つ。注には玄白が書いたほど能力の無い通詞ばかりではなかったらしいことが書いてある。このへん個人的に何かあったのかもしれない。
     全般的に謙虚で真面目な人柄が感じられる。この人の性質があってこその蘭学の発展だったのかもしれない。
     文庫本では玄白の書いた本編は全体の半分くらいで、注や年表、解説などが残り半分を占めている。
     最近読んだ磯田道史さんの本でも、一つでも多くの古文書を牛が草を食べるように読み解いて世に残していきたい、みたいなことが書かれていたけど、なんか似たものを感じる。

     でもこの本を苦労して読むよりみなもと太郎さんの「風雲児たち」や、これを元にして三谷幸喜さんがテレビドラマにした「風雲児たち~蘭学革命篇」を見た方が若い人には有意義だと思う。こういうのを学校の授業で教材として使えるようにしてほしいものだけど。


     菊池寛さんにも蘭学事始という小説がある。この内容には玄白の蘭学事始に書かれていないこともけっこうあるけど、菊地さんの創作なのか元ネタがあるのかよくわからない。
    https://www.aozora.gr.jp/cards/000083/files/497_19867.html

     原本は安政の大地震で焼失したそうで、写本が何冊か伝えられているものの互いに相違があったりするらしい。明治になって福沢諭吉が斡旋して出版したものは、神田孝平という人が幕末に露店で買い求めたものを元にしているという。

     それかどうかわからないけど国会図書館で原本は読める。読めるものなら読んでみろ、という感じだけど。
    http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/826051
  • 「火星の遺跡 (ジェイムズ・P・ホーガン著)

    2019-12-10 19:00




    ・「星を継ぐ者」で日本のSF界に大きなショックを与えたように記憶しているジェイムズ・P・ホーガン氏も、今は鬼籍に入ってしまった。なので今ごろ新刊が出るとは思わなかったのだが、2001年に書かれて未訳だった作品がようやく訳されることになったみたい(といっても出たのは昨年の暮れだからもう一年放置してしまった)。そのへんの事情は特に解説などには書かれていない様子ではっきっりわからないけど。

     舞台はドーム都市がいくつも建設されて人間の住む場所がどんどん拡張されつつある火星。農場や工場などもある様子。ここではまだ国家というものは十分に発達しておらず、地球の保守的な科学界にうんざりしたようなベンチャー企業が多く進出して斬新な研究を行っている。いくつかの都市が覇を競っているような感じで観光客や移民たち、企業などを惹きつけるべく様々な試みを行っているが、人がいるところいかがわしい商売や犯罪組織も進出してくる。
     国家権力や警察組織のようなものは十分に発達していないので、民間の警備会社のようなものが成功をおさめつつある人たちには必要になってくる。

     主人公はフリーの紛争調停人といったところで、未整備な法律を利用して人々の財産を奪ったり、力ずくで商売に成功したものから金を巻き上げようとする連中を知恵と力で撃退するみたいな仕事。非常に人の心をつかむのがうまく、仕事をするたびに様々な専門や知識を持った人間のネットワークを増やしていく、というタイプ。顧客だった者が彼の友人になり、協力者になり、情報提供者になり、時には共に戦う同志になり、みたいな。

     彼には恋人がいて、彼女はフリーの科学情報ブローカー兼アドバイザー。どんなベンチャー企業がどんな研究をしているかをいち早くとらえ、マスコミが大騒ぎしてもみくちゃにされないように情報を管理してそれをそうした技術を欲しがっている顧客や学術雑誌に適切なタイミングで紹介したり、契約したりのサポートをしている。火星だけでなく太陽系全体に人類が進出して百億個を超える有人小惑星に起きる出来事を全て知っている者はなく、自分で調べてもなかなか必要な相手とは出会えない。そこで彼女のコネや顔の広さや知識が役に立つみたいな。

     主人公は何度も火星に仕事に来ているのだが、今回は休暇で彼女のアパートに滞在中。そこで彼女が協力している、とある実験の成功を知る。それは人間を瞬間的にある地点から別の地点に転送する技術。これが実用化されればいまだにロケットでしか人も物資も送れない、という制約が無くなることになり、これを開発した会社は一躍一流企業の仲間入りで膨大な利益を独占できる。
     彼は好奇心で彼女のコネでそのベンチャー企業に行き、実験スタッフや経営者と顔をつなぐ。しばらくして、ある男から彼に相談が来る。その男こそ開発の中心となった科学者でありながら、自ら志願して転送される人間第一号としてこの偉業を成功させた人物だった。
     この実験に不都合が起きたと知られれば一気に株価が暴落し、会社も潰れかねない。だから男はこのことをおおやけに公的機関に相談したりできないのだ。発生した不都合とは、転送される前の男と転送された後の男の記憶に差異が生じてしまったこと。彼は親しかったはずの人間を数名、覚えていないというのだ。その中には恋人もいたはずなのだが。

     さらに新たな事実が発覚する。瞬間移動といいながら、万一を考えてもとの身体も一定期間保管されていたのだ。つまりパソコンの操作で言えば切り取って貼り付けするのではなくて、
    コピーして貼り付けて、貼り付けられたものがオリジナルと同じかどうか確認してからオリジナルを消去する、という手順を踏んでおり、人間の瞬間移動というよりも人間の複製技術という方が実態に近かった。身体検査などは十分に行ってオリジナルを消去したはずだったが脳の中の記憶まではチェックできなかったのだ。

     男は他にも困惑を抱えている。男はこの実験に参加することで多額の報酬を得たのだが、その報酬がそっくり銀行口座から消えてしまったという。そしてこれを引き出したのは男本人らしい。つまり男は二人いるらしいのだ。オリジナルが消去されていなかったとしか考えられない。こうなると事故ではなく、何者かが仕組んだ計画的な犯罪が疑われて来る・・・

     ということで主人公は男が記憶と恋人と財産をもう一人の自分から取り戻すために活躍することになる。というのが第一部。

     第二部は一部登場人物に重複はあるものの別の事件になっていて、第一部で知り合った地質学者から考古学兼地質学の遠征調査チームの欠員を埋めてほしいと依頼された主人公が自らこの遠征に参加。遠征隊は火星の古代遺跡を掘り当てて、これは人間ではない古代文明が作ったものらしく、地球上のピラミッドなどの巨石文化の作り手と同じ存在がかかわっていると思われる。

     だがここで邪魔が入り、この土地の採掘権を持つという不動産会社が傭兵を差し向けて調査隊を排除にかかる。もともとこの土地は開発する価値なしと彼らが放棄したので調査に入ったはずだったのだが何かおかしい。調査隊は科学者・技術者ばかりでこうした事態に対処できる人間がいない。主人公以外は。ということで彼は事態収拾に乗り出し、その陰にはある陰謀と、以前彼に邪魔をされて復讐を試みる集団がいることを突き止める。

     ということで、この主人公が様々なトラブルを解決する、連続テレビドラマの原作みたいな印象。主人公はほとんど相手の先回りをして完璧な計画を立てるのでほとんど危なげがない。ラスト近くだけちょっと思惑が外れてピンチになるけど、基本的にはほとんどハラハラしたりしないで安心して読んでいられる。

     ホーガンの他の作品に比べると軽い印象を受ける。タイトルの火星の遺跡も、その遺跡そのものを探索して謎を解いたりするのではなくて、その遺跡を価値もわからないくせに下心のある人間たちに渡さないように奮闘する話なのでちょっと謎はおいてきぼりになる。

     あまり考えないで読むにはちょうどいいかな、という感想。