閉じる
閉じる
×
・1949年に発表されたSFの古典名作、「20億の針」が新訳で出版された。
私は「姿なき宇宙人」というタイトルの偕成社版をたぶん小学1年生か2年生頃読んだ。
最も初期に読んだSF作品のひとつ。井上勇氏の訳で創元推理文庫(初版は1963年と奥付にあるが、出たのは65年みたいな記述もある)に入っていた原作も、小学校高学年の頃に読んだと思う。その後続編「一千億の針」が出るときに文庫の表紙がリニューアルされた。これは1979年だったみたい。その後も表紙は何度か変わっているようだ。
こうしたSFの古典名作みたいのはいつでも買えて当たり前に思っていたけど、今回の新訳版のあとがきによると、長年クレメントの作品は新刊書店では入手できない状態だったようだ。
この作品については以前にもブロマガに書いたことがある。
http://ch.nicovideo.jp/metabou/blomaga/ar681390
今回の新訳版帯には、
「寄生獣」「ヒドゥン」など、様々な共生生命SFの原点となった歴史的傑作を新訳で贈る。と書いてある。
作者のハル・クレメントについては旧版解説に厚木淳さんが「ハーバード大学で天文学を専攻し、さらにボストン大学で教育学を専攻して修士号をとった。現在はマサチュセッツ州ケンブリッジに住み、科学の教師を務めるかたわら、余暇に小説を書いている。創作を売りはじめたのはカレッジの学生時代からで、この習慣はB24のパイロットとしてアメリカ第八空軍に応召中も続いていた」と紹介しているが、日付は1965年になっているので、1963年の初版発行時にはこの文章は無かったのかもしれない。あるいは奥付が1965年の間違いなのか。
新訳版には牧眞司さんのボリュームのある解説があり、本名がハリイ・クレメント・スタップスであること、八歳の頃に新聞で読んだ「バック・ロジャース」で科学と天文学とSFに興味を持ったこと、天文学、教育学のほかシモンズ大学で理学も学び修士号を得ていること、第二次大戦中は空軍爆撃機パイロットとしてヨーロッパ戦線で戦ったこと、戦後は故郷で高校の化学教師を務めるかたわら、生涯を通じてSFファンでありつづけ、生活のために小説を書いたのではなく、SF作家としての収入はSF大会の参加費用などSFファンであるためにあてていたこと、アマチュア画家としても活躍し、自分の本の表紙に使われていたりすること、作品としての受賞暦はほとんどないが、SF界に対しての貢献は多くの人の認めるところであり、生涯功績賞のようなものは何度も受けていること、2003年に睡眠中に亡くなったことなどが紹介されている。1922年生まれとあるので、単純計算で81歳。いい人生だったように思う。
日本語訳があるのは「20億の針」「一千億の針」「重力の使命(重力への挑戦)」「超惑星への使命」「テネブラ救援隊」「アイスワールド」「窒素固定世界」の7つの長編で、私は「テネブラ救援隊」と「窒素固定世界」が未読。入手が困難というほどでもないので、読んでみるかな。「一千億の針」も来月新訳で出るようだし、他のも読み直してみたい。だが当分忙しいのでなかなか時間がとれそうにない。実はこれも買っただけでまだ読んでおらず、まとまった時間がいつ取れるかわからない。こういう作品は通勤電車の中とかではなくて、落ち着いた時間を作ってゆっくり読みたいのだが。
巻末の作品リストによれば、未訳の長編や短編集もあるようだが、ついでに訳出されないものだろうか。SFではない、天文学関係の著作もあるみたい。
はじめて知ったが、「星からきた探偵」というタイトルで児童書として出たこともあるようだ。最初は「宇宙人デカ」というタイトルで岩崎書店から出て、その後改題されて何度か再刊されているらしい。子供向けのSFの入り口としては、とてもふさわしい作品なので、孫でもいたら私もすすめたいところ。
広告
コメントコメントを書く